胃の位置はどこにある? 胃にまつわる疾患も解説
  • 2024年8月24日
  • 2024年8月22日

胃の位置はどこにある? 胃にまつわる疾患も解説

 

胃は、人体の消化器系の中で非常に重要な役割を果たしている臓器です。上腹部のほぼ中央、みぞおちあたりに位置しており、形はJ字型をしています。胃の位置が痛むときは、胃になにかしらの疾患がある可能性もあるため、病院での早めの診察が大切です。

当記事では、胃の形や機能、日本人に多い胃の形態、胃の位置が痛いときに考えられる疾患について詳しく解説します。人体の仕組みや疾患について、さらに知識を深めましょう。

胃の位置はどこ?

胃は、胸とおへその間の凹んだ部分であるみぞおちのあたりに位置する臓器です。食道から続き、上腹部のほぼ中央にあります。肋骨の一番下あたりからおへその2~3cm上あたりをイメージすると分かりやすいでしょう。

全体の形は、左側の部位が大きくふくらんだJ字型です。入口は食道につながり、下部は十二指腸につながっています。

胃のはたらき

胃のおもなはたらきは、以下の2点です。

  • 食道を通って送られてきた食物を一時的に貯蔵する
  • 消化しやすい形にして次の器官に送り出す

胃は、栄養を直接吸収するのではなく、吸収しやすい形に変えて十二指腸に送り出す重要な器官です。具体的には、胃全体をリズミカルに収縮させて動く蠕動運動によって小さく砕く、胃液や胃酸と混合するなどの方法で食べた物を粥状にします。

胃液はpH値が1~2と、とても強い酸性です。また、タンパク質を分解する酵素が含まれます。

胃の各部の名称は、入口が噴門部、出口は幽門部です。左側の大きくふくらんだ部分は大彎、反対側を小彎といいます。胃壁は粘膜・粘膜下層・筋層・漿膜下層・漿膜の5つの層からなり、厚みは3mmほどです。もっとも内側にある粘膜が、胃を強い酸性である胃酸から守る役割を果たしています。

日本人に多い胃の形

日本人に多い胃の形

胃は左側が大きくふくらんだJ字型という点では共通しているものの、人によって形に違いがあります。胃の形は大きく3種類です。

ここでは、具体的にそれぞれの形について解説します。

牛角胃

全体的に横長ですらりとした形で、欧米人に多く見られます。名前の牛角胃は牛の角に似ていることに由来します。

胃で粥状になった食べ物が十二指腸に流れやすい形をしているので、あまり胃もたれが起きません。一方、すぐに食べ物が腸へと移動するため満腹感を得にくく、牛角胃ではつい食べすぎる方が多い傾向にあります。

内蔵や内臓脂肪が胃の中央を下から押し上げることで横長の形状になるので、太り気味の方にもよく見られます。過食して肥満が進まないよう注意が必要です。

なお、牛胃角の方は十二指腸潰瘍になりやすいとされています。

鉤状胃

左側が立ちあがった縦長の形で、日本人に多いとされています。鉤状胃の名前は、鉤のような形をしていることが由来です。

鉤状胃の特徴は、出口である幽門部より底部のほうが位置が低い点です。出口が高いため、胃で粥状になった食べ物がスムーズに流れず、溜まりやすい傾向にあります。

健康で胃がよく動くときは、あまり問題はありません。しかし、ストレスがかかるなどして胃の動きが悪くなると、胃もたれを起こしやすくなります。また、胃潰瘍になりやすいといわれています。

瀑状胃

瀑状胃は、上部が大きく傾いて折れ曲がり、Jよりも「く」の字に近くなった形です。病気ではないものの、胃の形態異常として扱われ、日本人では10人中2、3人の割合で見られます。

食道から流れてきた食べ物が、底部だけでなく折れ曲がった上部にもとどまりやすい点が大きな特徴です。構造上、食べ物がスムーズに流れず残るため胃酸が出やすく、胃もたれや胸やけが起こりやすくなります。

また、胃酸がよく出る影響で、食道に逆流する酸逆流症も起きやすい傾向にあります。食後2~3時間してみぞおちあたりにじりじりと焼けるような痛みを感じる、酸っぱい液体がこみあげてくる感覚を覚えるといったことがあれば、酸逆流症の可能性があります。

瀑状胃に起きる酸逆流症は胃の形に根本的な原因があるので、市販薬を飲んでもあまり効き目はありません。改善しないまま酸の逆流を繰り返すと、逆流性食道炎になることもあります。

胃の位置が痛いときに考えられる疾患は?

胃の位置が痛いときに考えられる疾患は?

胃があるあたりに痛みを感じる場合、さまざまな疾患の可能性が考えられます。ここでは胃の痛みの原因となりうる疾患を紹介します。

激しい腹痛が突然起きたときや吐血を伴うときは重篤な病気が関係している可能性があるため、すみやかに消化器内科や内科などの専門医の診療を受け、検査する必要があります。

胃潰瘍

胃潰瘍は、胃壁に傷がつき、炎症を起こして組織が崩れる疾患です。おもな原因には以下のようなものがあります。

  • ピロリ菌(胃に生息する細菌)
  • 非ステロイド系消炎鎮痛薬の長期服用による粘膜障害の発生
  • ストレス・喫煙・アルコールなどの生活習慣

原因としてもっとも多いのがピロリ菌で、60~70%を占めます。

(出典:慶応義塾大学病院 医療・健康情報サイト「胃潰瘍と十二指腸潰瘍」

胃潰瘍では以下のような症状が見られます。

  • 上腹部の痛み
  • 背の痛み
  • 食欲の低下
  • 吐血
  • 下血
  • 胸やけや胃もたれ

約70%の患者は無症状との報告もあり、症状が出ず、健康診断などで見つかるケースも少なくありません。

胃がん

胃がんは胃の粘膜に悪性腫瘍ができる疾患です。胃壁の5つの層のうち、粘膜・粘膜下層にとどまっている場合は早期胃がん、筋層より下の層まで広がっている場合を進行胃がんと呼びます。

おもな原因には以下のようなものがあります。

  • ピロリ菌
  • 喫煙
  • ストレス
  • アルコール

おもな症状は以下の通りです。ただし、いずれも胃がん特有の症状ではないため分かりづらく、早期では症状が出ないこともめずらしくありません。

  • 嘔吐
  • 吐血
  • 下血
  • 食欲低下
  • 体重減少

胃がんは、早期に発見できれば高い割合で治癒が可能です。進行している場合は、一般的には手術を行い、進行の度合いによっては薬物療法を行います。

胃炎

胃炎は胃に発生する炎症を指し、急性胃炎・慢性胃炎・神経性胃炎などがあります。急性胃炎は突発的に起こる胃炎、慢性胃炎は症状が繰り返しもしくは持続的に続く胃炎です。神経性胃炎は急性胃炎の一種です。

おもな原因として、以下が挙げられます。

  • 急性胃炎:アルコール、薬品、薬物、ピロリ菌の感染など
  • 慢性胃炎:ピロリ菌の感染
  • 神経性胃炎:強いストレスや不安による胃酸の過剰分泌や異常収縮

逆流性食道炎

逆流性食道炎は、おもに胃酸が食道に逆流し炎症を招く疾患です。胃と食道の間にある下部食道括約筋が食べ物を通すとき以外で緩んでしまい、胃酸が食道に上がって起こります。

下部食道括約筋が緩むおもな理由は以下の通りです。

  • 過食
  • 早食い
  • 加齢
  • 腹部の締め付け

逆流性食道炎の場合、以下のような症状が見られます。

  • 胸のあたりのじりじりと焼け付く感覚
  • 酸っぱいものの込みあげ
  • 食事した後に起こる胸やみぞおちの痛み
  • 咳や声のかすれ

欧米で多い疾患でしたが、近年は日本でも増加しています。

胃下垂

胃下垂は胃があるべき位置より下がっている状態を指します。体質によるところが多く、必ずしも疾患とはいえませんが、胃の働きが弱まることで発生するケースもあります。

以下のような原因で胃の働きが弱ると、胃下垂が起こりやすくなります。

  • 暴飲暴食
  • 疲れ
  • 不安やストレス

あまり自覚症状がないことが一般的ですが、以下のような症状が出る場合もあります。

  • 胃部膨満感
  • 上腹部不快感
  • 腹痛
  • 胃もたれやむかつき

胃痙攣

胃の周りの筋肉で痙攣が起きた状態を指し、病名ではありません。起きるおもな原因は以下の通りです。

  • ストレス
  • 暴飲暴食や過度の飲酒、刺激物の摂取、早食い
  • 胃炎や胃潰瘍、アニサキス症など消化器官の異常
  • 薬物の副作用
  • 虫垂炎
  • 胆管炎
  • 膵炎

胃痙攣が起こると、以下のような症状が現れます。

  • 腹痛
  • 吐き気・嘔吐
  • 腹部膨満感
  • 胃もたれ
  • 冷や汗

症状は数分で終わることもあれば数時間に及ぶこともあり、ひどいときには動けなくなります。消化器の異常が原因のときは、もとの疾患をしっかり治療することが必要です。

まとめ

胃は胸とおへその間の凹んだ部分、みぞおちのあたりにあります。胃の形には大きく牛角胃、鉤状胃、瀑状胃の三種類が存在し、特定の形状が胃もたれや逆流性食道炎のリスクを高めることがあります。

胃の位置に痛みを感じた場合には、胃潰瘍や胃がん、胃炎、逆流性食道炎、胃下垂、胃痙攣などさまざまな疾患の可能性が考えられます。早期発見と適切な対処が重要なので、定期的な健康診断や症状が現れた場合の早期受診が大切です。

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※当記事は2024年6月時点の情報をもとに作成しています

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