NSTは「ノンストレステスト」の略で、妊娠後期に行われる検査の1つです。妊娠後期になると、子宮の収縮が増えます。NSTは、胎児の心拍パターンに異常がないかを確認する重要な検査です。
NSTでは、妊婦さんがリラックスした状態で横になり、2つの装置をお腹に装着します。胎児の心拍数と母体の子宮収縮をモニタリングし、赤ちゃんの活動状態や健康状態が適切であるかを評価します。胎児が元気であればすぐに終了しますが、何らかの問題が疑われる場合は、さらなるモニタリングや検査が行われることがあります。
当記事では、NSTの目的や実施方法について分かりやすく紹介しますので、ぜひご覧ください。
NSTとは? 行う理由や必要なケース
NST(ノンストレステスト)とは、お腹の中にいる胎児がお産のストレスに耐えられるかを確認するために行われる検査です。お腹の上から装置を装着し、胎児の心拍数を計測・分析し、胎児の状態を調べます。装置には、分娩監視装置などが使用されます。
(出典:公益社団法人 日本産婦人科医会「【ノンストレステスト(NST)】」)
以下では、NSTの目的とメリットや、必要なケースなどを解説します。
NSTの目的とメリット
NSTの目的としては、まず胎児の健康状態を評価することが挙げられます。NSTは、妊娠後期に入り、お腹の張りが出てくる頃に実施されるケースが多いです。この時期に検査を行い、胎児がお産に耐えられるかどうかを確認することが主な目的です。また、子宮収縮時に「苦しい」というサインを出せるかどうかを確認することも目的として挙げられます。
胎児が元気かどうかを判断する主な指標として、胎児の心拍の変動と、子宮の収縮状況を観察します。これにより、胎児が酸素不足に陥っていないか、健康状態に問題がないかなどを確認することが可能です。特に高リスク妊娠の場合や、胎児の動きが少ないと感じる場合にNSTは有効とされます。
(出典:厚生労働省「産科医療について」)
また、NSTは非侵襲的な検査方法のため、妊婦さんや胎児に痛みや負担がかかりません。検査時間は30~40分程度であり、検査結果も早く出ますが、胎児が寝ているなどの理由でグラフが反応しない場合はそれ以上の時間を要するケースもあります。
NSTが必要なケース
NSTは必ずしもすべての妊婦さんが受ける検査ではありませんが、多くの妊婦さんが妊娠後期に受けます。特にリスクがない場合でも、妊娠34~36週以降の妊婦健診でNSTを行う病院が多いです。
また、以下のケースに該当する場合は、もっと早い段階からNSTを実施することもあります。
- 過去に妊娠や出産に問題があった場合
- 妊婦さん自身に高血圧や糖尿病などの合併症がある場合
- 胎児の成長が遅れていると疑われる場合 など
上記のようなケースでは、定期的にNSTを実施することで胎児の健康状態を継続的にチェックします。
NSTの実施方法
NSTは、妊婦さんのリラックス状態を確保したうえで、胎児の健康状態を確認するために行われる検査です。
以下では、NSTの準備方法や手順などについて、詳しく解説します。
NSTの準備と手順
NSTの準備と手順は、主に以下の通りです。
【NSTの準備】
妊婦さんがリラックスできるよう、静かな検査室を用意し、部屋は適度に暖かく保ちます。用意するものとしては、分娩監視装置、超音波ジェル、ティッシュ、タオル、毛布などが挙げられます。
【NSTの手順】
1 | センサーの装着 |
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2 | 記録の開始 |
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3 | モニタリング |
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4 | 観察終了と後処理 |
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NSTのプロセスと注意点
NSTでは、胎児が活動的なときに心拍数が増加するため、胎動が活発であることが健康状態の良い指標とされています。検査中、胎児が眠っている場合は、VAST(振動音響刺激試験)を使用し、音振動を用いて起こすのが一般的です。
検査結果は担当医が評価し、胎児の健康状態に異常がないかを確認します。NSTは安全な検査方法ですが、結果が不十分な場合や異常が疑われる場合は、再検査が必要となることもあります。
NSTの結果の見方
NSTは、胎児の心拍数と子宮の収縮をモニタリングして得られる情報から胎児の健康状態を評価します。検査結果はグラフで表示され、医師が確認し、必要に応じて追加検査の必要性を検討するケースも少なくありません。
以下では、グラフの読み方と、結果の解釈・分析について紹介します。
グラフの読み方
NSTの結果は、胎児の心拍数と子宮の収縮を示すグラフ形式で表示されます。
正常なNST結果では、胎児の心拍数が一定の基準値内で変動しており、通常は110bpmから160bpmの範囲内にあります。つまり、109以下では徐脈、161以上では頻脈なので注意が必要です。
※bpmとは、1分あたりの心拍数のことです。
細変動(心拍数の細かな変動)も重要な指標で、グラフ上での小さなギザギザとして確認できます。胎児が動く際には、心拍数が急激に上昇し、グラフ上で突起として表れます。この心拍数の一時的な増加は、胎児が元気である証拠の1つです。
また、NSTグラフを読む際には、これらの心拍数の変動と基線の安定性をチェックすることが重要です。基線が安定しており、適切な範囲内で心拍数の変動が観察されれば、胎児は健康であると判断されます。
胎動と心拍数の関連性を評価することもNSTの重要な部分であり、活動的な胎児の心拍数は動きに応じて増加します。
結果の解釈と分析
胎児の健康状態に問題がない場合、NSTの結果は胎児の心拍数が一定の基準内で適切に変動しており、胎動時に心拍数が増加しています。
一方で、結果が正常範囲から逸脱している場合、胎児が元気ではない可能性や、または何らかの異常がみられる可能性があります。胎児機能不全の疑いがある場合は、超音波検査や血液検査など、さらなる検査が必要です。胎内にいるよりも外にいたほうが安全と判断された場合は、帝王切開によって早急な出産を行うケースもあります。
特に胎児の心拍数に細かな変動が見られない場合や、一過性の心拍減少が確認された場合は、即座に対処する必要があります。
NSTにおける痛みの対策とケア
NSTは、一般的に痛みを伴わない検査であり、妊婦さんの快適さを重視した環境で行われます。しかし、検査の性質上、30~40分間同じ姿勢でいなければならないため、特に妊娠後期の妊婦さんにとっては不快感や体調不良を覚えるケースもあるでしょう。検査中に不快感を覚えた場合は、少しだけであれば体位を変えても問題ないとされていますが、センサーの位置がずれないよう注意が必要です。
また、不快感や体調不良が生じるのは、仰臥位低血圧症候群が1つの原因と考えられています。
仰臥位低血圧症候群 |
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仰臥位低血圧症候群とは、妊娠後期や下腹部腫瘤のある患者さんが仰向け(仰臥位)になった際に、子宮や腫瘤が下大静脈を圧迫し、心臓への血液の戻りが悪くなることで、血圧が低下する症状です。
妊娠後期には胎児や子宮が大きくなるため、仰向けになると重力で下大静脈が圧迫されやすくなります。 |
もし、体調不良を妊婦さんが訴える場合は、椅子やベッドの角度を調整して仰向けになるのを避け、左側臥位を取るのが推奨されます。
より正確で安全な検査結果を得るためには、妊婦さんが自身の感じていることを積極的に伝え、医療スタッフと協力して検査を進めることが重要です。不快感が強い場合は、途中で休憩を取ることも検討しましょう。
まとめ
NSTは胎児の健康状態を把握し、胎児機能不全の早期発見につながる重要な検査です。妊婦さん自身が、NSTを通じて胎児の心拍音や胎動を感じられるため、胎児の元気さを実感し、安心感を得ることもできます。
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※当記事は2024年8月時点の情報をもとに作成しています