• 2022年2月22日
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【尿道カテーテルQ&A抜去編】「尿道カテーテルをなるべく抜く…医師はどう考えているの?」

 

『エキスパートナース』2018年3月号<尿道カテーテル[挿入][継続][抜糸]の根拠Q&A>より抜粋。Q7「尿道カテーテルをなるべく抜く…医師はどう考えている?」を紹介いたします。

貝崎亮二
大阪市民病院機構 大阪市立十三市民病院 外科医長

抜去基準を示し、院内全体で抜去に向けて意識づけを

A.患者に尿道カテーテルが留置されていること自体が意識されていない場合もあります。抜去基準を示し、院内全体で抜去に向けて意識づけをしていく必要があります。(貝崎亮二)

尿道カテーテルは不必要に長期に留置されている場合も多い

尿道カテーテルは、入院患者の15~20%に留置されていると言われています。

多くの場合、尿道カテーテルは不適切な適応に対して留置されているうえ、医療従事者が患者に尿道カテーテルが留置されていることに気づいていない場合も多く、長期間の不必要な使用を招いています(引用文献1)。

尿道カテーテル抜去後は、発熱の有無や残尿測定などの観察が重要です。

臨床現場では、手術症例にはクリニカルパスを使用していることが多く、そのなかには「尿道カテーテル抜去」の指示が組み込まれていることと思われます。しかし、手術以外の症例や重症例では、尿道カテーテル抜去の指示がないケースが多いです。入院時に尿道カテーテル留置の指示を医師が行ったまま、病状安定時には、尿道カテーテルが入っていることすら覚えていない医師もいるのではないでしょうか。看護

師に指摘されてからはじめて尿道カテーテル抜去の指示を出すケースもあると思われます。

尿道カテーテル留置に伴う最も大きな問題は尿路感染症であり、細菌尿の出現率は1日あたり3~10%ずつ増加していきます。原則として尿道カテーテルを留置した原因を取り除くことができれば、抜去を考慮する必要があります(引用文献2)。尿道カテーテル抜去の指標について以下に示します。

前立腺肥大症、前立腺がん、神経因性膀胱、尿道狭窄などの尿閉をきたす疾患

尿道カテーテル留置によって腎機能が回復した時点で抜去を考慮します。具体的には、尿量の安定や血清クレアチニン値の安定が指標になります。

腎盂腎炎や尿路性敗血症(ウロセプシス、urosepsis)などの排尿障害を伴う尿路感染症

解熱や炎症反応の低下などの感染状態からの回復が指標になります。

膀胱や尿道、前立腺に対する尿路手術の術後

術後出血や膀胱タンポナーデのリスクがあります。したがって、血尿がない、または軽度であり、血塊が見られなくなることが指標になります。

心不全や腎関連疾患、敗血症、侵襲の大きな手術や外傷などの尿量管理が必要な症例

重症感染や急性期から離脱し、全身状態が安定することが指標になります。

術後や褥瘡のある患者で手術創や褥瘡が尿で汚染される危険がある場合

創の治癒が進み、QOLが向上した時点が抜去の指標となります。

尿道カテーテル抜去の“意識づけ”を

尿道カテーテル留置に対する意識の低さ”が、長期カテーテル留置につながっています。しかし、導尿やおむつを用いたほうが感染のリスクは低いし、導尿やおむつでも大まかな尿量の把握は可能です。これらの知識をもたずに漫然と尿道カテーテルを使用していることも少なくないでしょう。

尿道カテーテル抜去に関しては、担当医師のみならず、病棟看護師・ICTチーム(感染対策チーム)と、病院全体での取り組みが必要です。抜去基準(表1/引用文献2)を定めるなど、早期抜去に努めるシステム作りが重要であると思われます。


[引用文献]

1. 満田年宏:カテーテル関連尿路感染とその予防.INTENSIVIST 2011;3(1):45-49.
2. 和田耕一郎:「尿道留置カテーテル」抜去の基準とケア.エキスパートナース 2014;30(15):28-33.


[PROFILE]貝崎亮二(かいざき・りょうじ)

大阪市民病院機構 大阪市立十三市民病院外科医長
1999年医師免許取得。2009年4月より現職。2014年ICDを取得 し、現在ICTメンバー。


本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。/著作権所有(C)照林社[出典]エキスパートナース2018年3月号P.56~「尿道カテーテル 挿入・継続・抜去の根拠Q&A」

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