• 2020年5月22日
  • 2022年2月10日

尿道カテーテルQ&A「尿道カテーテル挿入・留置時の尿道損傷、どう防ぐ?」

 

『エキスパートナース』2018年3月号<尿道カテーテル[挿入][継続][抜糸]の根拠Q&A>より抜粋。「Q1.尿道カテーテル挿入・留置時の尿道損傷、どう防ぐ?」を紹介いたします。

松本尚子 大阪市民病院機構 大阪市立十三市民病院 看護部、6階病棟看護師

尿路管理におけるカテーテルにはさまざまなものがあります。そのなかで看護師が行える手技が「尿道カテーテル留置」「間欠導尿」です。そこで、どうしたら尿道損傷の事故なく挿入できるのか考えていきましょう。

なお、今回は特殊なカテーテルではなく、看護師が扱う一般的な尿道カテーテル(表1)について述べます。

尿道カテーテルは必ず医師の指示のもとでの挿入となります。

カテーテルの種類にはラテックス製とオールシリコーン製のものがあります。ラテックス製の製品を使用する場合は、ラテックスアレルギーがないことを挿入前に確認します。シリコーンバルンカテーテルは粘膜刺激が少なく、コーティングが不要で、実際の内腔が広く、沈殿物が多い尿の排出に適しています。

患者が強い痛みを生じる場合は無理せずに主治医に相談、または泌尿器科医に依頼することが重要です。

女性:尿道カテーテル挿入時に注意する点

女性の尿道は約4cmと短く直線的です。しかし妊娠や加齢により骨盤内臓器脱が生じ、外尿道口がわかりにくいときがあります。解剖学の図のように尿道口が正中にあるとは限らず、大きく上下左右にずれていることもあります[引用文献1]。

そのため、確実に尿道口に挿入することが重要であり、以下がポイントとなります。

●膝を屈曲させ、開脚位をとる(開脚位を保持できない場合はクッションを使用したり、看護師2人で行う)
●小陰唇を“しっかり”広げることで尿道口が見える(尿道口がわかりにくいときは、小陰唇をしっかり開き上部に引っ張る。縦方向に伸びるのが尿道口)
●潤滑油をつけてゆっくり挿入する。口呼吸を促しリラックスを促す

また、挿入後は尿流出を必ず確認します。尿流出が見られないときは尿道ではなく腟に挿入されていることがあります。必ず流出を確認し、バルンを膨らませてください。
上記のポイントを明示した手技の進め方を図1[引用文献1]に示します。

男性:尿道カテーテル挿入時に注意する点

男性の尿道は約20cmと長く、そのうえ湾曲しています。
個々によって陰茎の長さも違い、目に見えない尿道にカテーテルを挿入することに不安をもつ看護師も多いと考えます。
尿道の伸展を心がけることが、尿道損傷を防ぐ最大のコツです(図2)[引用文献1]。

包茎や陰茎が短いときにはどうしても引っ張り上げることが難しいですし、また看護技術の本では陰茎の持ち方として「握り持ち」しているものが多いです。しかし、泌尿器科医は陰茎を挟んで持ちます(図2-4)。泌尿器科医が挿入するときの技を盗んでください。

患者の多くは羞恥心があり、股関節に力が入ることがあります。そのため、リラックスできる環境作りが必要です。

なお、カテーテルは細いほうが入りやすいと考えるのは間違いです。ある程度こしがあるほうがよく、成人では14~16Frのカテーテルが適当です。
男性においては図2の方法でも抵抗が強く挿入困難なときは、中止して医師に報告します。

固定テープの注意点

尿道カテーテル挿入後は固定します。これは尿道カテーテルが動くことで、尿道や膀胱内に傷がつくことを予防しています。

カテーテル固定器具もありますが、当院ではテープを2枚使用しています。1枚は皮膚に直接貼用し、2枚目はカテーテルをしっかり固定します。

同一箇所で固定するとバルンが膀胱粘膜と摩擦するため、膀胱内、および皮膚で潰瘍形成の危険があります。また、清潔ケアに合わせて1~2日に一度は固定テープを交換しましょう。


[引用文献]
1. 田中悦子:尿道カテーテル管理の実際、清潔間歇導尿の実際.NPO愛知排泄ケア 研究会 編,排泄機能指導士テキスト:6.
[参考文献]
1.NPO快適な排尿をめざす全国ネット会:間歇導尿指導認定セミナーテキスト.
2.吉川羊子:排尿管理におけるカテーテル管理の基本.NPO愛知排泄ケア研究会 編,排泄機能指導士テキスト:1-2.
3.後藤百万:尿道カテーテルの実際.NPO愛知排泄ケア研究会 編,排泄機能指導士テキスト:129-130.


[PROFILE]

 

南里純代(なんり・すみよ)

大阪市民病院機構 大阪市立十三市民病院看護部主査 (感染管理認定看護師)

2010年感染管理認定看護師認定。2016年名古屋市立大学大学院博士前期課程修了。院内感染対策担当者を務める。

[PROFILE]

 

貝崎亮二(かいざき・りょうじ)

大阪市民病院機構 大阪市立十三市民病院外科医長

1999年医師免許取得。2009年4月より現職。2014年ICDを取得 し、現在ICTメンバー。

[PROFILE]

 

松本尚子(まつもと・なおこ)

大阪市民病院機構大阪市立十三市民病院 看護部、6階病棟看護師

6階病棟外科、泌尿器科、消化器内科病棟勤務。排泄機能指導士、日本コンチネンス協会電話相談員、おむつフィッター、間歇導尿指導士。

本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。/著作権所有(C)照林社 [出典]エキスパートナース2018年3月号 P.56~「尿道カテーテル 挿入・継続・抜去の根拠Q&A」


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