• 2021年7月30日
  • 2022年2月28日

尿道カテーテルQ&A「尿道カテーテル留置中のトラブル:こんなときどうする?」

 

『エキスパートナース』2018年3月号<尿道カテーテル[挿入][継続][抜糸]の根拠Q&A>より抜粋。「Q5 尿道カテーテル留置中のトラブル:こんなときどうする?」を紹介いたします。

南里純代
大阪市民病院機構 大阪市立十三市民病院 看護部主査(感染管理認定看護師)

1.尿道カテーテル内に尿が停滞して流れていない!

尿道カテーテルの屈曲はありませんか?

*最も重要:まず、尿道カテーテルからランニングチューブにかけて屈曲がないかを確認しましょう

蓄尿バッグは膀胱より高い位置に設置されていませんか?

尿道カテーテルが自然抜去されていませんか?

ミルキングしても流れませんか?

  • ⇒上記に当てはまらず、完全に尿の停滞を認めた場合は、閉塞が考えられます。
  • ⇒医師に報告して抜去、および必要であれば再挿入を考慮します。状況によっては、(必要に応じて)膀胱洗浄をすることで解決することもあります。

2.固定水を抜いたのに、尿道カテーテルが抜去できない!

  • ⇒強引に引っ張って抜去してはいけません。必ず医師に報告し指示を受けます。

抜去できない原因

  • ●長期に尿道カテーテルが留置されている、尿の混濁がある場合には、尿道カテーテルの先端に結石が付着している
  • ●固定水を抜く際、過剰な陰圧がかかった
  • ●圧により尿道カテーテル内部がつぶれてしまうことで、固定水が抜けなくなっている
  • ●固定水に生理食塩水を用いたために、尿道カテーテル内で塩分の結晶化を生じてしまっている
  • ●尿道カテーテル自体の欠損がある

対応・対策

  • ●挿入前には必ずバルンを膨らませて破損がないかを確認する
  • ●固定水の成分による影響を受けないために、バルンの固定水は滅菌蒸留水を用いるようにする
  • ●尿量が少ない場合、結石の付着の原因となるため、尿量の確保に努める必要がある

3.挿入中の尿道カテーテルの周囲から尿漏れがある!

  • ⇒尿道カテーテルの状況(屈曲、ねじれ、圧迫)、尿の性状(血塊、浮遊物の有無)、尿の流れを観察し、閉塞の有無を確認します。

考えられる原因

  • ●尿道カテーテルの屈曲や内腔の閉塞、ドレナージ不良
  • ●長期間の留置に伴う尿道粘膜、周囲組織の萎縮により尿道と尿道カテーテルの間に隙間ができる
  • ●尿道カテーテルの接触や慢性膀胱炎などの膀胱刺激による収縮反応
  • ●固定が緩すぎることによりバルンの位置が移動する
  • ●尿道カテーテルのサイズが大きいことによる刺激
  • ●尿道カテーテルのサイズが適切ではなく、抜け出ているなど

対応・対策

  • ●固定の位置を変えて、屈曲のないように調整する
  • ●固定がしっかりできているか確認する
  • ●尿の流出状態、尿の性状を確認する。混濁や血尿を認めた場合は、ミルキングを行い、閉塞予防に努める
  • ●適切な尿道カテーテルのサイズ、材質を選択する(Q4参照)
  • ●発熱、尿の混濁などの感染徴候がみられた場合は、医師に相談する(Q6参照)

こんな対応は要注意!

  • ●大きいサイズにしたからといって尿漏れを防ぐことにはなりません
  • ●そもそも尿漏れが起こるのは尿道の状態が良好でないからです。専門医への相談と正しい評価を行う必要があります

4.尿道カテーテル留置中に血尿が出た!

  • ⇒凝血があった場合、尿道カテーテル閉塞の原因となるため留意が必要です。
  • ⇒濃い血尿は治療が必要となる場合があります。血尿の色の変化をよく観察し、必ず医師に報告します。

血尿の原因

  • ●尿路感染症
  • ●結石
  • ●尿道カテーテル留置による膀胱粘膜のびらん、慢性膀胱炎

血尿症状を呈する疾患

腎盂腎炎・腎腫瘍・腎結石・尿管損傷・尿管結石・膀胱腫瘍・膀胱炎・膀胱結核・尿道腫瘍・尿結石・前立腺肥大症・前立腺がん など

観察項目

  • ●時間ごとの排尿量
  • ●尿閉の有無
  • ●残尿感の有無
  • ●尿の流出状態
  • ●色・性状(凝血の有無)
  • ●下腹部膨満・圧痛の有無
  • ●貧血症状の有無
  • ●バイタルサイン

5.蓄尿バッグ内とチューブの壁が紫色になっている!

  • ⇒紫色蓄尿バッグ症候群(PUBS)が考えられます(Q3「尿道カテーテル留置時は尿の何をどう観察する?」・図1参照)。
  • ⇒原則、無症候性細菌尿を背景としているため、抗菌薬投与の必要はありません。ただし、熱がある場合には、治療の対象となります。

原因

  • ●紫色蓄尿バッグ症候群(PUBS)は、高齢の女性に多くみられるもので、便秘と尿路感染により生じるとされる(文献1)
  • ●尿中細菌が色素を産生することが原因となり、蓄尿バッグ内とチューブ内に沈着する
  • ●色調には変化が見られる(藍色~紫~ピンク)。

対応・対策

  • ●尿道カテーテル留置の必要性を再検討する
  • ●排便コントロールを行う
  • ●尿量を確保をする
  • ●患者には適切な説明を行い、無用の不安を与えないように配慮する
  • ●適度な水分摂取と食事など、日常生活の指導を行う

6.患者が尿道カテーテル留置の不快感を訴えている

  • 訴えの内容(疼痛・違和感・しみるなど)を確認します。
  • ⇒尿道カテーテルの固定位置の変更、潤滑剤の塗布を行います。
  • ⇒疼痛が強い場合は、尿路感染や結石などの尿路の問題が考えられるため主治医に報告します。


[引用文献]
11. 小林陽子:カテーテル留置中の管理Q&A.後藤百万 編,排尿管理の技術Q&A 127,メディカ出版,大阪,2010:113.

[参考文献]
1高田英子:先輩ナースが伝授! 泌尿器科の夜勤 こんなときどうする? (1)血尿が出た!.泌尿器ケア 2009;14(6):28-31.
2.後藤百万,渡邉順子 編:徹底ガイド排尿ケアQ&A.総合医学社,東京,2006.


 

[PROFILE]
南里純代(なんり・すみよ)

大阪市民病院機構
大阪市立十三市民病院 看護部主査(感染管理認定看護師)

2010年感染管理認定看護師認定。2016年名古屋市立大学大学院博士前期課程修了。院内感染対策担当者を務める。


本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。/著作権所有(C)照林社
[出典]エキスパートナース2018年3月号
P.56~「尿道カテーテル 挿入・継続・抜去の根拠Q&A」


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