看護師にとって、「クリニカルラダー」という言葉は浸透しています。クリニカルラダーとは、看護の質の向上や臨床における看護実践能力を高めることを目的とした支援システムです。近年では、看護師のみならず、助産師にもクリニカルラダー(CLoCMiPレベルⅢ)認証制度が始まりました。
助産師にとっては比較的新しい制度であるため、具体的にどのような制度なのか把握できていない人も多いでしょう。そこで今回は、助産師のクリニカルラダー制度について、概要や申請方法、取得に必要なスキルや取得のメリットなどを挙げながら詳しく解説します。看護師から助産師へのキャリアチェンジや、スキルアップを目指す助産師の人は、ぜひ参考にしてください。
助産師のクリニカルラダー(CLoCMiPレベルⅢ)認証制度とは?
助産師のクリニカルラダー(CLoCMiPレベルⅢ)認証制度とは、質の高い助産ケアの実施や実践能力を高めることを目的に設けられた制度です。いわゆる就業後のキャリアプランであり、2012年に日本看護協会から「助産実践能力習熟段階(クリニカルラダー:Clinical Ladder of Competencies for Midwifery Practice,CLoCMiP)」として創設(開発・公表)されました。クリニカルラダー(CLoCMiPレベルⅢ)の認証を受けた助産師は、「アドバンス助産師」として活躍できます。
クリニカルラダー(CLoCMiPレベルⅢ)認証制度について | |
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目的 |
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活用方法 |
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助産師資格は数年おきに更新が必要な資格ではないため、資格取得後の個人個人の経験や能力を細かに把握してもらうことができません。クリニカルラダー(CLoCMiPレベルⅢ)認証制度は、助産師にとって「自身の経験や能力を第三者に示せる制度」ともいえるでしょう。
また、助産業務ガイドラインに準拠した運営ができているかのチェックリストの中には、アドバンス助産師の項目があります。産院や産婦人科のある病院では、クリニカルラダー(CLoCMiPレベルⅢ)認証を受けた助産師の需要が高いことも覚えておきましょう。
(出典:厚生労働省「助産所における連携医療機関確保推進の手引き」)
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助産師のクリニカルラダー認証の申請方法

助産師のクリニカルラダー(CLoCMiPレベルⅢ)認証制度の認証機構は、一般財団法人 日本助産評価機構となっています。申請は、日本助産評価機構の「アドバンス助産師プラットフォーム」から行うこととなります。下記は、新規申請の場合における各認証申請要件です。
申請対象者 |
〇下記の要件をすべて満たす人
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申請要件 |
〇下記の要件をすべて満たしたうえ、施設内承認を受ける
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申請料 | 50,000円(審査料20,000円+会費30,000円) |
認証期間 | 5年間(5年ごとに「更新申請」を行う必要がある) |
クリニカルラダー認証制度の申請を行えるアドバンス助産師プラットフォームは、誰でも利用することが可能です。認証申請時は新規ユーザー会員登録が必要となるため、あらかじめ登録しておくことをおすすめします。なお、更新申請の際は新規申請とは別の「更新申請要件」を満たす必要があることを覚えておきましょう。
クリニカルラダー認証の申請から認証までの流れ
前述した申請要件を満たしていることを確認したら、申請期間中に下記の手順で申請・認証を行いましょう。
【STEP1:申請項目の記入】
アドバンス助産師プラットフォームに登録し、申請要件を満たしていることを確認した際は、アドバンス助産師プラットフォームのWeb上から申請を行います。申請要件の達成項目を更新し、申請書を印刷する流れとなります。達成項目を更新する際は、他者評価・上司評価として評価者名や職位の記入も必要となるため、必ず上司へ相談してください。
【STEP2:申請書の提出】
申請項目を記入したら、表示された申請書のフォーマットをプリントアウトします。申請書には、申請者本人だけでなく承認者(職場の上司など)による確認も必要なため、承認者の印鑑・署名をもらいましょう。その後アップロードして、承認者の確認が入ったことがわかる申請書を提出します。
【STEP3:審査・申請料の支払い】
申請書を提出した後は、日本助産評価機構による審査が行われます。審査に通れば審査通過の通知が届くため、すみやかに定められた申請料を支払いましょう。
【STEP4:試験・試験通過・認証】
申請料の支払いが完了すると、いよいよ試験が行われます。試験はWebのシステム上で行われるため、自身でスケジュールを立てて必ず指定の期間内に受験しましょう。試験結果もシステム上から確認することが可能です。試験に合格すれば、認証書や認証バッジ・カードが自宅に郵送されます。
【助産師】クリニカルラダー認証の取得に必要なスキル

助産師のクリニカルラダー認証は、CLoCMiPレベルⅢだけでなく、新人・I〜Ⅳのレベルがあります。CLoCMiPレベルⅢの認証を取得するためには、到達する相応のスキルが必要です。代表的な必要スキルは、下記の通りとなっています。
- 倫理的感応力
- マタニティケア能力
- 専門的自立能力
- ウィメンズヘルスケア能力
ここからは、それぞれのスキルを簡潔に紹介します。
倫理的感応力
倫理的感応力とは、患者さんの言動に対し、必要となるニーズを見極めて適切な支援を提供するスキルのことです。
クリニカルラダー(CLoCMiPレベルⅢ)認証を取得するためには、提供したケア事例を具体的に想像しながら、助産師としてあるべき姿勢を自己評価できるようにならなければなりません。
マタニティケア能力
マタニティケア能力とは、妊娠期から分娩期、出産、産褥期、乳幼児期まですべての期間を通じて、母子とその家族に適切なケアを提供するスキルのことです。
クリニカルラダー(CLoCMiPレベルⅢ)認証を取得するためには、母子の経過診断に必要となる情報を理論的な根拠に基づいて収集したり、予測的判断を持ったうえハイリスク・ローリスクな要因・対応を明らかにしたりできるようになることが必要です。
専門的自律能力
専門的自律能力とは、助産ケア・管理における役割や、助産の専門職として自律を保つための役割を実践に反映できるスキルのことです。
クリニカルラダー(CLoCMiPレベルⅢ)認証を取得するためには、教育指導や研究、コミュニケーション、倫理、管理・マネジメントなど各分野において、規定を理解し特定プロセスに基づいて適切な行動ができるようになることが必要です。
ウィメンズヘルスケア能力
ウィメンズヘルスケア能力とは、女性特有の健康問題に取り組める支援者であるよう、ウィメンズヘルスにおける提供者としての役割を実践に反映できるスキルのことです。 クリニカルラダー(CLoCMiPレベルⅢ)認証を取得するためには、女性特有のライフサイクルを隅々まで理解したうえ、適切なケアを提供できるようになることが必要です。
助産師がクリニカルラダー認証を取るメリット

助産師がクリニカルラダー(CLoCMiPレベルⅢ)認証を取得することには、下記のようなメリットがあります。
- 助産師としてのスキルアップにつながる
- 認証の取得で「資格手当」が得られる
- 患者さんからの信頼を得やすくなる
- 転職に有利となる
クリニカルラダー(CLoCMiPレベルⅢ)認証を取得した助産師は、「アドバンス助産師」として活躍することができるため、多くの産院・産婦人科からの需要が高まるだけでなく、多くの患者さんからの信頼も得やすくなります。資格手当を得られるうえ、よりよい条件の職場への転職も有利となるため、キャリアアップ・年収アップも期待できるでしょう。
また、申請に必要な研修会に参加することで、日々の仕事に役立つあらゆる知識も得られます。助産師としてのスキルアップを目指す人は、アドバンス助産師を目指してみてはいかがでしょうか。
まとめ
看護師業界で浸透していた「クリニカルラダー認証制度」は近年、助産師にも浸透し始めています。クリニカルラダー(CLoCMiPレベルⅢ)認証を取得した助産師の人は、アドバンス助産師として活躍することが可能です。職場や患者さんから信頼されやすくなり、キャリアアップも期待できるでしょう。
また、クリニカルラダー(CLoCMiPレベルⅢ)認証を取得した助産師は転職も大いに有利となります。ここまでの内容を参考に、クリニカルラダー(CLoCMiPレベルⅢ)認証を取得してよりよい条件の職場に転職したいという助産師の人は、ぜひ全国の求人情報を掲載する「マイナビ看護師」をご利用ください。マイナビ看護師の無料転職サポートをご利用いただいた人には、専門のキャリアアドバイザーによるあらゆる転職支援を提供いたします。