• 2022年1月18日
  • 2022年12月27日

助産師のクリニカルラダー認証とは? 取得のメリット・申請方法

 

看護師にとって、「クリニカルラダー」という言葉は浸透しています。クリニカルラダーとは、看護の質の向上や臨床における看護実践能力を高めることを目的とした支援システムです。近年では、看護師のみならず、助産師にもクリニカルラダー(CLoCMiPレベルⅢ)認証制度が始まりました。

助産師にとっては比較的新しい制度であるため、具体的にどのような制度なのか把握できていない人も多いでしょう。そこで今回は、助産師のクリニカルラダー制度について、概要や申請方法、取得に必要なスキルや取得のメリットなどを挙げながら詳しく解説します。看護師から助産師へのキャリアチェンジや、スキルアップを目指す助産師の方は、ぜひ参考にしてください。

助産師のクリニカルラダー(CLoCMiPレベルⅢ)認証制度とは?

助産師のクリニカルラダー(CLoCMiPレベルⅢ)認証制度とは、質の高い助産ケアの実施や実践能力を高めることを目的に設けられた制度です。いわゆる就業後のキャリアプランであり、2012年に日本看護協会から「助産実践能力習熟段階(クリニカルラダー:Clinical Ladder of Competencies for Midwifery Practice,CLoCMiP)」として創設(開発・公表)されました。クリニカルラダー(CLoCMiPレベルⅢ)の認証を受けた助産師は、「アドバンス助産師」として活躍できます。

クリニカルラダー(CLoCMiPレベルⅢ)認証制度について
目的
  • 妊産褥婦や新生児に対する、質の高い安全な助産ケアの提供
  • 助産師自身による継続的な自己啓発
  • 助産師自身による実践能力の自覚
  • 社会や組織による助産師の実践能力の客観視
活用方法
  • 助産師自身が目標を設定し、客観的な視点で自らを評価する
  • 評価の結果により、どのように取り組むかを判断する
  • キャリアアップに役立てる
  • 人材活用の基準を定める

助産師資格は数年おきに更新が必要な資格ではないため、資格取得後の個人個人の経験や能力を細かに把握してもらうことができません。クリニカルラダー(CLoCMiPレベルⅢ)認証制度は、助産師にとって「自身の経験や能力を第三者に示せる制度」ともいえるでしょう。

また、助産業務ガイドラインに準拠した運営ができているかのチェックリストのなかには、アドバンス助産師の項目があります。産院や産婦人科のある病院では、クリニカルラダー(CLoCMiPレベルⅢ)認証を受けた助産師の需要が高いことも覚えておきましょう。
(出典:厚生労働省「助産所における連携医療機関確保推進の手引き」

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助産師のクリニカルラダー認証の申請方法

助産師のクリニカルラダー認証の申請方法

助産師のクリニカルラダー(CLoCMiPレベルⅢ)認証制度の認証機構は、一般財団法人 日本助産評価機構となっています。申請は、日本助産評価機構の「アドバンス助産師プラットフォーム」から行うこととなります。下記は、新規申請の場合における各認証申請要件です。

申請対象者

〇下記の要件をすべて満たす人

  • 助産師資格の保持者
  • 5年以上の実務経験がある
  • 新規申請要件を満たしている
  • 過去にCLoCMiPレベルⅢを認証・取得したことがない
申請要件

〇下記の要件をすべて満たしたうえで、施設内承認を受ける

  • 総合評価:B以上
  • 必須研修:21項目(各90分)
  • 実施例数:実施した分娩介助・健康診査が指定例数以上
  • 学術集会:指定の学術集会に一度参加
申請料 50,000円(審査料20,000円+会費30,000円)
認証期間 5年間(更新制:5年ごとに「更新申請」を行う必要がある)

(出典:一般財団法人 日本助産評価機構「アドバンス助産師の申請」

クリニカルラダー認証制度の申請を行えるアドバンス助産師プラットフォームは、誰でも利用することが可能です。認証申請時は新規ユーザー会員登録が必要となるため、あらかじめ登録しておくことをおすすめします。なお、更新申請の際は新規申請とは別の「更新申請要件」を満たす必要があることを覚えておきましょう。

クリニカルラダー認証の申請から認証までの流れ

前述した申請要件を満たしていることを確認したら、申請期間中に下記の手順で申請・認証を行いましょう。

【STEP1:申請項目の記入】

アドバンス助産師プラットフォームに登録し、申請要件を満たしていることを確認した際は、アドバンス助産師プラットフォームのWeb上から申請を行います。申請要件の達成項目を更新し、申請書を印刷する流れとなります。達成項目を更新する際は、他者評価・上司評価として評価者名や職位の記入も必要となるため、必ず上司へ相談してください。

【STEP2:申請書の提出】

申請項目を記入したら、表示された申請書のフォーマットをプリントアウトします。申請書には、申請者本人だけでなく承認者(職場の上司など)による確認も必要なため、承認者の印鑑・署名をもらいましょう。その後アップロードして、承認者の確認が入ったことが分かる申請書を提出します。

【STEP3:審査・申請料の支払い】

申請書を提出した後は、日本助産評価機構による審査が行われます。審査に通れば審査通過の通知が届くため、すみやかに定められた申請料を支払いましょう。

【STEP4:試験・試験通過・認証】

申請料の支払いが完了すると、いよいよ試験が行われます。試験はWebのシステム上で行われるため、自身でスケジュールを立てて必ず指定の期間内に受験しましょう。試験結果もシステム上から確認することが可能です。試験に合格すれば、認証書や認証バッジ・カードが自宅に郵送されます。

助産師がクリニカルラダー認証を取るメリット

助産師がクリニカルラダー認証を取るメリット

助産師がクリニカルラダー(CLoCMiPレベルⅢ)認証を取得することには、下記のようなメリットがあります。

  • 助産師としてのスキルアップにつながる
  • 認証の取得で「資格手当」が得られる
  • 患者さんからの信頼を得やすくなる
  • 転職に有利となる

クリニカルラダー(CLoCMiPレベルⅢ)認証を取得した助産師は、「アドバンス助産師」として活躍できるため、多くの産院・産婦人科からの需要が高まるだけでなく、多くの患者さんからの信頼も得やすくなります。資格手当を得られるうえ、よりよい条件の職場への転職も有利となるため、キャリアアップ・年収アップも期待できるでしょう。

また、申請に必要な研修会に参加することで、日々の仕事に役立つあらゆる知識も得られます。助産師としてのスキルアップを目指す方は、アドバンス助産師を目指してみてはいかがでしょうか。

【助産師】クリニカルラダー認証の取得に必要なスキル

【助産師】クリニカルラダー認証の取得に必要なスキル

クリニカルラダー認証を取得する・しないにかかわらず、助産師には「コア・コンピテンシー」が重要とされています。コア・コンピテンシーとは、日本の助産師における必須の実践能力であり、下記4つの要素で構成されることが特徴です。

  • 倫理的感応力
  • マタニティケア能力
  • ウィメンズヘルスケア能力
  • 専門的自律能力

クリニカルラダー認証には、CLoCMiPレベルⅢだけでなく、新人からⅣまでの各レベルがあります。CLoCMiPレベルⅢの認証を取得するためには、上記に示した4つの要素において、それぞれレベルⅢに到達する相応のスキルが必要です。
(出典:公益社団法人 日本看護協会「助産実践能力習熟段階 [クリニカルラダー]活用ガイド2022」

倫理的感応力

倫理的感応力とは、患者さんの言動に対し、必要となるニーズを見極めて適切な支援を提供するスキルのことです。

クリニカルラダー(CLoCMiPレベルⅢ)認証を取得するためには、提供したケア事例を具体的に想像しながら、助産師としてあるべき姿勢を自己評価できるようにならなければなりません。

マタニティケア能力

マタニティケア能力とは、妊娠期から分娩期、出産、産褥期、乳幼児期まですべての期間を通じて、母子とその家族に適切なケアを提供するスキルのことです。

クリニカルラダー(CLoCMiPレベルⅢ)認証を取得するためには、母子の経過診断に必要となる情報を理論的な根拠に基づいて収集するスキルや、予測的判断を持ったうえでハイリスク・ローリスクな要因・対応を明らかにするスキルを習得しなければなりません。

専門的自律能力

専門的自律能力とは、助産ケア・管理における役割や、助産の専門職として自律を保つための役割を実践に反映できるスキルのことです。

クリニカルラダー(CLoCMiPレベルⅢ)認証を取得するためには、教育指導や研究、コミュニケーション、倫理、管理・マネジメントなど各分野において、規定を理解し特定プロセスに基づいて適切な行動ができるようにならなければなりません。

ウィメンズヘルスケア能力

ウィメンズヘルスケア能力とは、女性特有の健康問題に取り組める支援者であるよう、ウィメンズヘルスにおける提供者としての役割を実践に反映できるスキルのことです。

クリニカルラダー(CLoCMiPレベルⅢ)認証を取得するためには、女性特有のライフサイクルを隅々まで理解したうえで、適切なケアを提供できるようにならなければなりません。

助産師のクリニカルラダー:CLoCMiP

助産師のクリニカルラダー:CLoCMiP

助産師のコア・コンピテンシーには、レベル新人からレベルⅠ~Ⅳまでの5つの習熟段階があります。各習熟段階は、主に経験年数・助産師としての発達状況で区分されます。

レベル 経験年数
レベル新人 半年~1年
レベルⅠ 2~3年
レベルⅡ 3~4年
レベルⅢ 5~7年
レベルⅣ 7年~
(出典:公益社団法人 日本看護協会「助産実践能力習熟段階 [クリニカルラダー]活用ガイド2022」

ここからは、レベル新人~レベルⅣの各習熟段階に分けて、到達目標となる4つのスキル(助産実践能力習熟段階)を詳しく紹介します。また、各レベルにおける内容はあくまでも日本看護協会が公表したデータの抜粋であるため、詳細を知りたいという方は下記ページもご覧ください。
(参考リンク:助産実践能力習熟段階 [クリニカルラダー]活用ガイド2022

レベル新人

倫理的感応力
レベル新人においては、ケアリングの意味や概念、重要性を理解することに加えて、これらの知識にもとづき行動できるというスキルが基本的な習熟段階となっています。

マタニティケア能力
対象者(妊娠期~産褥期)の行動診察や経過判断などに必要な情報を、先輩助産師などからの支援を受けながら理解できることや、助産ケアの手順に沿って適切な用語・表現で記録できることなどが基本的な習熟段階となります。

専門的自律能力
対象者のニーズをあらゆる側面から把握できるよう努めることや、専門職としてのアイデンティティをもち、専門性・責任性・自律性を理解して実践にあたるスキルなどが基本的な習熟段階です。

ウィメンズヘルスケア能力
女性特有の成長に伴う身体状況についてはもちろん、メンタルヘルス・不妊問題・家族問題などさまざまな悩みを抱えた対象者に対する適切なケアについて学習できるスキルが求められます。

(出典:公益社団法人 日本看護協会「助産実践能力習熟段階 [クリニカルラダー]活用ガイド2022」

レベルⅠ

倫理的感応力
レベルⅠにおいても、レベル新人と同様に、ケアリングの概要や重要性を理解し、かつ主要な概念にもとづいて行動できるスキルが基本的な習熟段階となります。

マタニティケア能力
妊娠期から産褥期に至るまでのあらゆる必要な情報を収集するスキルや、先輩助産師などからの支援を受けながら基本的な助産技術を実践するスキル、さらに助産ケアにおける疑問点を質問し、解決させられるスキルも求められます。

専門的自律能力
先輩助産師などからの支援を受けつつ、妊婦を対象とした保健指導を実施するスキルや、チーム医療のメンバーとして役割を理解しながら協働できるスキルなどが基本習熟段階となります。継続教育プログラムへの自主的な参加も、レベルⅠの重要な到達目標です。

ウィメンズヘルスケア能力
女性特有の悩みや状況に対し、共感的態度で理解を示すスキルや、対象者はもちろん、対象者の家族の支援に必要なアセスメント知識・支援方法などについても理解できるというスキルが、基本的な習熟段階です。

(出典:公益社団法人 日本看護協会「助産実践能力習熟段階 [クリニカルラダー]活用ガイド2022」

レベルⅡ

倫理的感応力
レベルⅡにおいては、各レベルの対象者へ実施するケアについて、提供事例を具体的に思い浮かべながら助産師としての姿勢を自己評価できることが基本的な習熟段階となります。

マタニティケア能力
個別的な助産ケアを立案・実施すべく、健康生活行動診断・経過診断をはじめとしたさまざまな情報の収集と分析ができるスキルが求められます。また、診断・分析した情報から問題の優先順位を考えるスキルも目標となる習熟段階です。

専門的自律能力
自己課題の明確化・解決に向けた行動などの自己開発スキルから、インシデント事例の経過の振り返り・チームメンバーへの適切な指示といったマネジメントスキルの習得が目標となります。

ウィメンズヘルスケア能力
女性特有のライフサイクルの観点から、アセスメントした支援計画を立案し、かつ先輩助産師などからの指導を受けながら妊娠期~子育て期の母親とその家族に対し、支援を計画・実施・評価できるスキルが求められます。

(出典:公益社団法人 日本看護協会「助産実践能力習熟段階 [クリニカルラダー]活用ガイド2022」

レベルⅢ

倫理的感応力
レベルⅢにおいても、レベルⅡと同様に、各レベルの対象者へ実施するケアについて、提供事例を具体的に思い浮かべながらケアリング実践に向けた課題を明確にし、かつ助産師としての姿勢を自己評価できることが基本の習熟段階です。

マタニティケア能力
妊娠期から産褥期に至るまでのあらゆる必要な情報を理論的な根拠にもとづいて収集するスキルや、予測的判断にもとづいて潜在ニーズを明確化するスキル、さらに緊急時において適切な計画を立案するスキルなどが求められます。

専門的自律能力
新人助産師や後輩助産師への指導の場において、中心的な役割を担うことが目標です。専門分野を深めるための課題に取り組み、助産ケアに結果を活用できるスキルや、多職種間との調整スキルの習得も基本的な習熟段階となります。

ウィメンズヘルスケア能力
女性特有のライフサイクルや悩みの観点からアセスメントした支援や、さまざまな悩みや問題を抱えた対象者とその家族への支援を計画・実施・評価するスキルが求められます。

(出典:公益社団法人 日本看護協会「助産実践能力習熟段階 [クリニカルラダー]活用ガイド2022」

レベルⅣ

倫理的感応力
レベルⅣにおいては、ケアリングの概念を後輩助産師などに説明できるほど十分に理解し、かつケアリングの理論にもとづいた助産ケアに向けて、教育・指導的な役割を果たすことが基本の習熟段階となります。

マタニティケア能力
個々の対象者の特性や家族背景などをとらえ、必要領域に絞って情報収集のできるスキルや、診断プロセスに沿ったリスクの把握・診断スキルが求められます。助産ケアにおいては、常にリーダーシップを発揮しながら教育・指導的な役割を果たすことも大切です。

専門的自律能力
施設内スタッフの教育・指導だけでなく、他部門との連携を図ることや、組織単位の目標にもとづいた活動の推進・業務改善に取り組めることが基本的な習熟段階となります。

ウィメンズヘルスケア能力
女性のすべてのライフステージに必要な支援体制を構築するスキルや、女性のメンタルヘルスケアに関する知識や技術にもとづき、後輩助産師や同僚に教育的指導を行うスキルの習得が目標となる習熟段階です。

(出典:公益社団法人 日本看護協会「助産実践能力習熟段階 [クリニカルラダー]活用ガイド2022」

助産師の今後の需要・役割

助産師の今後の需要・役割

日本の出生数の減少に伴い、分娩取扱医療機関数は徐々に少なくなっています。また、医療従事者も産科医を筆頭に減少傾向にあることが実情です。

加えて、人々のニーズが多様化した近年では、全員が女性である助産師に産前産後ケアを求める患者さんも増加しました。そのため、分娩介助や妊産褥婦、新生児・乳幼児のケアを行う助産師は、今後も需要が高まる職業といえます。

また、クリニカルラダー(CLoCMiPレベルⅢ)認証を取得したアドバンス助産師であれば、より多くのフィールドで活躍できるだけでなく、医療従事者・患者さんともに信頼される助産師となれるでしょう。

まとめ

看護師業界で浸透していた「クリニカルラダー認証制度」は近年、助産師にも浸透し始めています。クリニカルラダー(CLoCMiPレベルⅢ)認証を取得した助産師は、アドバンス助産師として活躍することが可能です。高度なスキルの保有を証明できるため職場や患者さんから信頼されやすくなり、キャリアアップも期待できるでしょう。

また、クリニカルラダー(CLoCMiPレベルⅢ)認証を取得した助産師は転職も大いに有利となります。クリニカルラダー(CLoCMiPレベルⅢ)認証を取得してよりよい条件の職場に転職したいなら、全国の求人情報を掲載する「マイナビ看護師」をチェックしてみましょう。

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※当記事は2022年10月時点の情報をもとに作成しています

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