• 2021年11月25日
  • 2024年9月15日

看護師長とは | 役割・年収・求められる能力を解説

 

「看護師長はどのような仕事をしているの? 」「年収はどのくらいなの? 」など、看護師長について興味をもっている方は多いのではないでしょうか。また、看護師長に限らず管理職をめざしている方もいるでしょう。

この記事では、看護師長の役割や給料事情を解説。看護師長に求められる資質やなり方もまとめているので、キャリアアップをめざす方はぜひ参考にしてください。

看護師長とは

看護師長とは、病棟や外来といった看護部門を統括する役職です。
患者さんのケアを主な業務とする一般職の看護師とは異なり、看護師の配置やシフトの管理、教育・指導、業務調整、患者さんやその家族への対応などを行います。また、医師やほかの職種、病院の管理部門と密接に連携し、医療チーム全体の業務がスムーズに進むように調整しています。

看護師長の役割

看護師長は、一般企業でいうと「課長」にあたる役職です。担当部署のマネジメントや看護師の管理、他部門との連携、患者さんの状況把握などを行っています。

以下では、看護師長の役割や業務内容について詳しく解説します。

担当部署のマネジメント

看護師長は病棟や外来、手術室など、所属している部署の看護師がスムーズに仕事ができるよう、副師長や看護主任と協力して部署をまとめます。また、担当部署の目標を設定し、達成できるように全スタッフに働きかけも行います。

看護師の育成・管理

担当部署に所属する看護師の育成を行うのも、看護師長の大事な役割です。看護師一人ひとりの知識・技術レベルを把握して教育を行うだけでなく、キャリアプランや部署異動の相談に乗るなどキャリア支援も行います

また、定期的に面談の機会を設け、メンタル面のケアも実施。皆が前向きにやりがいをもって働けるようサポートするのも、看護師長の務めです。

他部門との連携

看護師長は担当部署のトップとして、医師や他部署と交渉・折衝を行います。現場の看護師と他部門をつなぐ橋渡し役です。

医師や他部署と連携が必要な問題が発生した際には、看護師長が代表して交渉を行い、早期解決を図ります。また、経営陣に現場の状況を伝えるなどして、看護師が働きやすい環境をつくるのも看護師長の役目です。

患者さんの状況把握

看護師長は病棟に入院している患者さんの人数や状況に加え、これから入院・転院・退院をする患者さんの情報も把握します。

ベッドに空きがあるからといって重症患者をどんどん受け入れていたら、現場が回らなくなる恐れがあります。看護師に疲労が溜まり、インシデントを起こす可能性もあるでしょう。

病棟全体の状況を把握することが、適切な治療や看護の提供につながります。

トラブル発生時の対応

患者さんやその家族とトラブルが発生することもあります。ちょっとした誤解やすれ違い程度のトラブルであれば、看護師本人や看護主任によって解決は可能でしょう。しかし、なかなか解決できないトラブルが発生した場合は、看護師長が間に入ります

また、緊急入院や急変などがあり現場の看護師だけで手が回らないときは、一時的にフォローに入ることもあります。

看護師長の1日の流れ

看護師長は看護師の管理や患者さんの把握、他部署との連携など、1日を通してさまざまな業務を行います。

看護師長の1日のスケジュール例は、以下のとおりです。

時間帯 業務内容
8:30 病棟の朝礼
9:00 管理者の申し送り
10:00 ラウンド
11:00 入退院の調整業務
12:00 昼休憩
13:00 会議
14:30 ラウンド
15:30 業務の進捗確認
16:00 スタッフとの面談
17:15 終礼

朝は病棟の朝礼の後に、管理者同士で部署間の申し送りを行います。
管理者の申し送りでは、当日のスタッフの出勤状況や患者さんの入退院の情報を共有。状況によっては、看護師長たちが話し合い、病棟間で人員調整を行うこともあります。

日中は病棟内のラウンドを行い、患者さんの様子や看護状況を把握します。患者さんや現場の看護師とコミュニケーションを取るのも、看護師長の大事な仕事の一つです。業務の合間にメールをチェックするなど、事務的な業務も行います。

看護師長に求められる資質・スキル

ここでは、看護師長に求められる資質・スキルを6つ紹介します。看護師長をめざす方は、これらが自身に備わっているか確認してみましょう。

リーダーシップ

看護師長は所属する部署のトップに立つため、リーダーシップが必要不可欠です。

リーダーシップといっても、皆に指示を出して引っ張っていく力だけではありません。部署の目標に向かって率先して取り組んだり、現場で働く看護師の声に耳を傾けて意見を拾い上げたりすることが大切です。

部下のキャリアをサポートするために、長所や適性を見極める力も必要といえます。

コミュニケーション能力

看護師長は担当部署の代表として他部署と連携や交渉を行うため、高いコミュニケーション能力が求められます。他部署の意見を尊重しつつも、自分たちの意見を積極的に発信しなければなりません。

また、上層部からの意見を担当部署の看護師たちに分かりやすく伝える力も必要です。どうすれば理解が深まるか、伝えられる側の立場に立って考える姿勢が大切といえます。

状況把握能力と冷静な判断力

看護師長は、担当部署の状況を常に把握しておかなければなりません。業務内容や患者さんの状況、人間関係、職場環境など、あらゆる観点から物事を見ておく必要があります。

トラブルが起こったときには、冷静な判断力も必要です。トラブルの原因を分析し、早期解決に向けた行動が求められます。

看護師としての豊富な知識と技術

患者さんの容体が急変する場面では、看護師から相談を受けて看護師長が対処法を判断することもあります。不測の事態でも慌てずに看護師をサポートするためには、さまざまな患者さんと接するなかで培われた豊富な知識や技術が必要です。

また、豊富な知識と技術を持つ看護師長は自分自身が周囲の看護師の手本となり、組織としての看護の質の向上を後押しできます。ほかの看護師の成長を促す意味でも、「看護師長が目標」と周囲に感じさせられるほどのスキルを持つことが大切でしょう。

さらに、看護師長には最新の医療動向を常に勉強し続ける姿勢も求められます。現在持っている知識・技術に満足せずにスキルアップをめざす方が、看護師長として活躍する資質があるといえるでしょう。

長所を見極める能力

組織としての看護の質は、働く看護師のモチベーションによっても変わります。担当部署の看護師のモチベーションを高めるためには、長所を見極める力が必要です。

長所を褒められたスタッフは「自分が必要とされている」という実感を持ち、部署に対する帰属意識が高まります。また、長所を褒めてくれる相手に対しては多くの方が好感を持ちます。スタッフが看護師長に好感を持てば信頼関係が強化され、アドバイスを素直に聞き入れてもらえる体制を構築できるでしょう。

マネジメントスキル

担当部署の運営や管理を行う看護師長には、マネジメントスキルが求められます。看護師のシフト管理や患者さんのケア計画、リソースの適切な配分は、看護業務の効率を高めるうえで重要です。

看護師長は限られた時間や人員、物資をどのように最適に活用するかを常に考え、チームが効果的に働けるように調整する必要があります。シフトに合わせて適切なスタッフを配置し、緊急対応が必要な場合にも迅速に対応できるよう準備を整える能力が求められます。

看護師長の年収

日本看護協会の「2012年病院勤務の看護職の賃金に関する調査」によると、看護師長の基本給月額の平均は37万949円です。管理職手当額の平均が4万5,439円のため、看護師長の月給は41万6,388円になります。勤務する医療機関によって基本給や手当は異なりますが、看護師長の月給は40万円前後が相場です。

なお、看護師長を含む中間管理職の賞与は124万5,754円です。そのため、看護師長の年収は624万2,410円となります。

同資料によると非管理職の基本給月額の平均は32万3,298円で、賞与が89万1,909円です。単純計算すると、年収は477万1,485円になります。夜勤手当などの諸手当をつけても、年収は500万円前後でしょう。

看護師長は非管理職に比べて、100万円ほど年収が高いことが分かります。

一般的に看護師は給料が高いといわれていますが、管理職にキャリアアップすることで、さらなる収入アップが見込めるでしょう。

参照元:日本看護協会「2012年病院勤務の看護職の賃金に関する調査」

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看護師長になるメリット・デメリット

メリット

看護師長は目標や教育方針の決定など、担当部署のマネジメントを行います。1人の看護師としては言いづらかったことでも、看護師長という役職がつくことで意見を言いやすくなる場合もあるでしょう。

また、看護師長は責任ある仕事の分、管理職手当がつきます。勤務する医療機関によって異なりますが、4~5万円ほどの管理職手当がつくのが一般的です。非管理職のころと比べると、かなりの給料アップになるでしょう。さらに、看護師長には基本的に夜勤がありません。日勤がメインとなるため、規則正しい生活ができるのもメリットといえます。

デメリット

看護師長は担当部署をまとめる立場のため、非管理職の看護師よりも責任が重くなります。担当部署の看護師が起こしたインシデントについて、責任を問われることもあるでしょう。

また、看護部長や経営陣といった病院の上層部と、部下である看護師の板挟みになることも。経営を行う上層部と現場で働く看護師の考え方は異なるため、ときには意見が割れることもあります。間に立つ看護師長は、どちらの意見も理解できるでしょう。双方の意見を理解したうえで、難しい判断をしなければならない場面もでてきます。

看護師長になるには

看護師長になるには

看護師長になるには、管理職としての経験や実績を積み重ねることが重要です。具体的には「看護師として臨床経験を積んだ後に看護主任を経て看護師長に昇進するルート」と「転職を通じて看護師長の役職に就くルート」の2つがあります。以下では、それぞれの方法について詳しく説明します。

看護主任として経験を積む

看護師長をめざす多くの看護師は、まず看護主任として経験を積むのが一般的です。

看護主任は看護師長の補佐的な役割を担っており、看護現場で業務を管理・調整しています。看護師のシフト管理や看護の質の向上に向けた取り組みを行うことで、看護師長として必要なマネジメントスキルやリーダーシップを磨けます。また、スタッフの育成やトラブル対応、他部門との連携といった実践的な業務経験を通して、看護師長としての資質を身につけるのです。

転職して看護師長の役職に就く

ほかの医療機関に転職して看護師長の役職に就くことも可能です。転職活動では、自分の実績や経験をアピールすることが重要です。また、看護師長に必要なマネジメントスキルやコミュニケーション能力を備えていることを明確に示すと良いでしょう。

転職によって看護師長に就く場合は、新しい職場環境での適応力や柔軟な対応力も求められます。新しい医療機関の文化や方針に馴染みながらも、自分の管理スタイルを活かしてチームをまとめる力が必要です。

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まとめ

看護師長になると管理職として責任は重くなりますが、その分やりがいも増えます。部署のマネジメントに携われるようになるので、問題点や改善点があれば解決に向けた取り組みをすることも可能です。同じ病院に長く勤めてキャリアを築きたい方は、自身が働きやすい環境をつくるために看護師長をめざすのも良いでしょう。

なお、看護師長になるにはタイミングも重要です。看護師長になりたくても、ポストに空きがない場合は難しいでしょう。また、勤めている医療機関に看護師長やそれに値する役職がなければ、就くことはできません。現在勤めている医療機関で看護師長をめざすのが難しい際は、転職をするのも一つの手です。転職先で経験を積んで看護師長をめざす方法のほか、看護師長の求人に応募する方法もあります。

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