看護師が給料アップを目指すためには、同じ職場で長く働き続ける・役職につくなどさまざまな方法がありますが、どのような方法においても「努力や成果を評価してもらうこと」が重要です。
努力や成果を評価してもらうために最も効率的な手段としてよく考えられるのが、資格取得です。看護業務に役立つ資格を取得することで、あらゆる専門スキルを習得できるだけでなく、キャリアアップ・給料アップの可能性も高まるため、一石二鳥といえるでしょう。しかし、給料アップのみを目的に資格取得を目指すことはおすすめしません。
そこで今回は、給料アップを目指す看護師さんに向けて、資格取得のメリット・デメリットからキャリアアップや転職にも役立つ資格まで徹底解説します。
給料アップに資格は役立つ? メリットとデメリットを解説
資格取得は、手っ取り早く給料アップを目指したい看護師さんが選択する1つの手段です。しかし、給料アップの手段として資格を取得することにはメリットだけでなくデメリットもあります。下記は、資格を取得するメリット・デメリットです。
メリット:資格手当がある |
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看護師が資格を取得する最大のメリットが、資格手当を受けられるようになるという点です。
国内約60%の病院では、資格を取得した看護師に対して資格手当を支給しています。 また、日本看護協会が公表した2022年の調査では、看護師の代表的な資格である「専門看護師」の資格手当は月額(平均)11,566円、「認定看護師」の資格手当は月額(平均)8,556円となっています。 資格取得に向けた勉強をするなかで、特定分野における専門的知識を習得できるうえ、約10万円以上の平均年収アップが見込めるという点は、非常に大きな魅力といえるでしょう。 |
デメリット:昇給や昇進を資格取得で目指せない |
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看護師が医療行為や看護業務に関連する資格を取得したからと言って、必ずしも昇給や昇進が叶うわけではありません。
実際に、国内80%以上の病院が専門看護師・認定看護師資格を評価の対象にしていないことが分かっています。昇給や昇進を資格取得のみで目指すことは、やや困難と考えておきましょう。 |
デメリット:資格取得に時間やお金がかかる |
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専門看護師資格を得るためには、認定された看護系の大学院で修士課程を修了する必要があります。そして、認定看護師資格を得るためには、日本看護協会が定める600時間以上の認定看護師教育を修めなければなりません。
資格取得の学習のためには教育機関に通わなければならず、勉強時間も学費もかかります。忙しい看護師の仕事と両立することは、時間面・費用面のいずれにおいても困難と言っても過言ではありません。 |
(出典:日本看護協会「専門看護師」)
(出典:日本看護協会「認定看護師」)
資格手当のつく職場も多く、取得した資格によってはさらに幅広い看護師業務を任せてもらえるなど、資格取得は給料アップを目指すために有効な手段であることには間違いありません。
しかし、資格を取得したからと言って必ずしも昇給・昇進を叶えられるわけではないほか、日々忙しい仕事との両立を考えると現実的とはいえないケースもあります。
したがって、給料アップのためだけに資格を取得するのはおすすめできません。
給料を上げるためには転職+資格取得が効果的
准看護師が給料を上げるためには、看護師免許取得が確実です。そして、看護師が確実な給料アップを目指すためには、資格取得に加えて転職も効果的です。
今の職場に夜勤がない・資格手当の制度がないという場合は、むしろ転職が最優先と言っても過言ではありません。条件のよい職場へと転職すれば、夜勤を増やす・資格を取得するなどの方法で、多くの手当を得られるようになります。
また、夜勤や資格手当制度のない職場であっても、医療職俸給表の等級を上げることで賃金向上はもちろん期待できます。しかし、全体のうち80%の看護師が2級にとどまっていることから分かるように、ただ同じ職場で長く働き続けるだけで給料アップを叶えることは決して簡単ではありません。
加えて、病院によっても賃金格差があるため、より待遇のよい病院に転職することがおすすめといえます。
一般的に、希少性・専門性の高いスキルを有している方は待遇のよい就職先を見つけやすくなっています。転職をするなら資格取得後がよいでしょう。
【看護師の年収(総支給金額)】
金額 | 割合 |
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130万円未満 | 10.1% |
130万~149万円 | 2.0% |
150万~199万円 | 3.5% |
200万~249万円 | 6.6% |
250万~299万円 | 6.0% |
300万~324万円 | 10.7% |
325万~349万円 | 5.1% |
350万~374万円 | 5.6% |
375万~399万円 | 5.0% |
400万~424万円 | 11.5% |
425万~449万円 | 4.9% |
450万~474万円 | 6.0% |
475万~499万円 | 5.4% |
500万~549万円 | 9.2% |
550万~599万円 | 4.3% |
600万~699万円 | 3.3% |
700万円以上 | 0.9% |
看護師の転職に役立つ日本看護協会認定資格
待遇のよい医療機関への転職を望むなら、日本看護協会認定の資格が役立ちます。
日本看護協会が認定する資格には、「専門看護師」「認定看護師」「認定看護管理者」の3つが挙げられます。ここからは、看護師の転職に役立つ3つの認定資格について、それぞれ詳しく説明します。
また、日本看護協会認定資格についてより詳しく知りたい方は、下記の記事もぜひあわせてご覧ください。
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いつかは取りたい!キャリアアップ資格の代表格 「認定看護師」
専門看護師
専門看護師とは、特定の専門看護分野において、患者さん本人やその家族に対して質の高いケアを提供するための卓越した専門知識・技術・臨床実践能力を有した看護師に与えられる資格です。
専門看護師は、がん看護をはじめとした13分野において、実践・相談・調整・倫理調整・教育・研究の6つの役割を果たしながら、施設や地域全体の看護の質向上に努めます。
専門看護師の資格を取得するためには、看護師資格を保有したうえで通算5年以上の実務経験(うち通算3年以上は専門看護分野の実務経験)を積み、看護系の大学院で修士課程を修了したのち、専門看護師認定審査に合格する必要があります。
(出典:日本看護協会「専門看護師」)
認定看護師
認定看護師とは、特定の専門看護分野において、複雑な看護問題を抱える患者さん本人やその家族に対して、より質の高い看護ケアを効率よく提供するための熟練した高度な看護技術と知識を有した看護師に与えられる資格です。
認定看護師の具体的な役割は、救急看護や訪問看護などをはじめとした21分野において、実践・指導・相談の3つの役割を果たしながら、看護の質向上に努めます。
認定看護師の資格を取得するためには、看護師資格を保有したうえで通算5年以上の実務経験(うち通算3年以上は認定看護分野の実務経験)を積み、600時間以上の認定看護師教育を修了したのち、認定看護師認定審査に合格する必要があります。
(出典:日本看護協会「認定看護師」)
認定看護管理者
認定看護管理者とは、多種多様なヘルスケアニーズを有する個人や家族、地域住民に対する「質の高い組織的看護サービスの提供」を目的に、看護水準の維持および向上に寄与し、地域の保健医療福祉の発展に貢献できると認められた看護師に与えられる資格です。
認定看護管理者の具体的な役割は、患者さんやその家族に対する質の高いサービスの提供や、地域全体の医療・看護の質向上を目的に、組織の課題を明確化する・適切な働きかけを行う、組織間の連携を図るといったことです。
認定看護管理者の資格を取得するためには、看護師資格を保有したうえで通算5年以上の実務経験(うち通算3年以上は看護師長相当以上の看護管理経験)を積み、日本看護協会が定める465時間以上の認定看護管理者教育を修了する、または大学院で修士課程を修了後、認定看護管理者認定審査に合格する必要があります。
(出典:日本看護協会「認定看護管理者」)
看護師の転職に役立つ医療系国家資格
看護師の転職・給料アップに役立つのは、日本看護協会認定看護師資格だけではありません。医療系国家資格を取得することで、より待遇のよい職場に転職できる可能性があります。
ここからは、看護師の転職に役立つ医療系国家資格を2つ紹介します。
保健師
保健師とは、保健・医療・福祉・介護などの分野において乳幼児から高齢者まで幅広い年齢層の地域住民を対象に、適切な保健サービスの提供や保健活動を実施する職業です。主な勤務先は、自治体(保健所・市区町村など)が挙げられますが、近年では企業や学校で働く保健師も増えています。
保健師になるには、看護師国家試験の合格が前提です。4年間の保健師選択課程を修了して看護系大学を卒業した場合は、看護師国家試験の合格のみで保健師国家試験の受験資格を満たせますが、それ以外の場合は看護系大学院や保健師養成所などに1~2年間通う必要があることに注意してください。
(出典:厚生労働省職業情報提供サイト「保健師」)
助産師
助産師とは、妊産婦の相談対応や母子に対する妊娠~産後までの保健指導の実施や、不妊治療・性に関する相談に携わる職業です。主な職場は、病院・クリニック・助産所となっています。
助産師になるには、保健師と同様看護師資格が必須です。また、4年間の助産師選択課程を修了して看護系大学を卒業した場合以外は、看護師国家試験の合格後さらに看護系大学院や助産師養成所などで1~2年間学ぶ必要があります。
(出典:厚生労働省職業情報提供サイト「助産師」)
助産師になるには? 必要資格・学校・助産師国家試験の難易度を解説
【専門別】看護師の転職に役立つ民間資格
さらなる給料アップを目指すなら、日本看護協会認定資格・医療系国家資格のほか、専門分野に特化した民間資格の取得もおすすめです。ここからは、分野別の民間資格を紹介します。
循環器科 |
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救急・外科 |
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精神科 |
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介護・高齢者医療 |
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技師 |
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民間資格の取得は給料アップに直接的な影響を及ぼすことは少ないものの、スキルアップによって将来的なキャリアによい影響を与える可能性は十分にあります。これらの資格は、より専門分野に特化した資格となるため、自身が日々携わる分野から選択するとよいでしょう。
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まとめ
業務に関連する資格の取得は、看護師が給料アップを目指すための1つの方法です。しかし、資格を取得すれば誰もが必ず昇給・昇進を叶えられるわけではない点や、資格取得に多大な時間とお金がかかる点を考慮すると、給料アップのみを目的にすることは避けておいたほうがよいといえるでしょう。
より確実な給料アップを目指すなら、看護師経験を経て資格を取得した後、よりよい条件の職場に転職することがおすすめです。
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※当記事は2023年3月時点の情報をもとに作成しています