2020年1月15日、「看護業務の効率化 先進事例アワード2019」の表彰式と事例報告会が東京国際フォーラム(東京都千代田区)で開催されました。本イベントは、看護業務の効率化に関する取り組みを全国から募集し、ひときわ優れた事例を表彰するもの。ここではイベント当日の様子と、最優秀賞を受賞した熊本地域医療センターのユニークな取り組みを詳しく紹介します。
看護業務の効率化は喫緊の課題となっている
「看護業務の効率化 先進事例アワード2019」は、厚生労働省からの委託事業として、公益社団法人日本看護協会が実施する一大イベント。「看護業務の効率化に関する優れた取り組みを広く周知し、全国の医療機関における労働生産性を向上させること」を最大の目的とし、看護業務における「ムリ」や「ムダ」をなくすことで、働き方改革、医療サービスの改善、医療安全といった幅広い効果を生み出すことが期待されています。
当日のプログラムは、開会式、表彰式、事例報告会の3部構成となっており、第1部の開会式では、日本看護協会会長の福井トシ子さん、厚生労働副大臣の橋本岳さんに加えて、選考委員会の代表者からもあいさつがありました。
日本看護協会会長の福井トシ子さんは、「マンパワーの確保だけでなく、看護業務の効率化も欠かせません。そのためには、日々の『現場における知恵の集積』が大切になってくるはずです」と話した。
「医療需要がさらに高まっていくことを考えれば、チーム医療のキーパーソンとなる看護師の業務について、他の産業のように効率化を図ることは欠かせません」と話した、厚生労働副大臣の橋本岳さん。
第2部の表彰式では、選考委員長を務めた九州大学名誉教授の尾形裕也さんが壇上に立ち、「わずか1カ月という短い募集期間ながら、全国から57件の応募がありました。普及のしやすさなども考慮しながら、11人の委員で厳正に審査しましたが、いずれの取り組みも非常に高いレベルであったことが印象的です」と総評。その後、最優秀賞の一般社団法人熊本市医師会熊本地域医療センターをはじめ、各賞を受賞した計10施設が表彰され、会場は大きな拍手に包まれました。
晴れやかな表情で表彰状を手にする受賞者たち。最優秀賞(1件)、優秀賞(4件)、奨励賞(3件)、特別賞(2件)のうち、最優秀賞と優秀賞の5施設が第3部で事例報告を行った。
日勤バーガンディ、夜勤はピーコックグリーン
さて、ここからは最優秀賞を受賞した熊本地域医療センターの取り組みを詳しく紹介していきましょう。
熊本地域医療センターは、かつて残業に疲弊する看護師が多く、それが原因で離職に至る例も少なくなかったといいます。恒常的に中途採用を行い、その教育のために実力のある中堅看護師が忙殺され、また退職につながる……。そんな「離職の悪循環」も生まれていました。
同センターでは、そうした悪い流れを「断ち切りたい」という思いから、職場の皆が集まる忘年会で若手看護師によるユニフォームのファッションショーを開催。ユニフォーム更新のタイミングに合わせて、実際に職場で採用するものを投票で選ぶことにしました。当初は六つの候補から一つを選ぶ予定でしたが、攻守がきれいに入れ替わるアメリカンフットボールから着想を得た院長が、日勤用と夜勤用のユニフォームを別々に選ぶことを提案。投票の結果、一番人気だったバーガンディが日勤用、次点となったピーコックグリーンが夜勤用に採用されました。
当初は、「コストがかかるのでは?」と懸念する事務職員もいたそうですが、リース契約にすれば、コストが抑えられるうえに在庫管理業務も削減できるとわかり、なんとか同意を得ることができたといいます。 ユニフォーム2色制を導入して以降は、勤務時間内外の区別が明確になり、看護師たちの意識も大きく変化。業務内容を吟味したり、交代可能な残務を助け合ったりすることで、定刻に退勤できる看護師が徐々に増えていきました。また、「どの勤務帯で働く看護師なのか一目瞭然」「夜勤明けと知らずに指示を出すことがなくなった」と医師からの評判も上々だったそうです。
ユニフォーム2色制が導入されたのは2014年のこと。投票という民主的な方法で選ばれたこともあり、改革はスムーズに実現できたとか。院内の随所にポスターを掲示することで、患者さんに対しても取り組みの意図を周知しているそうです。
「働いてよかった」と思える病院をめざして
とはいえ、ユニフォーム2色制の導入だけで、すべての課題が解決したわけではありません。例えば、緊急入院や急変があった場合の対応もその一つ。看護師が業務過多になりがちで、始業時間より20分以上早く出勤して引き継ぎを行うといった働き方が常態化していました。
そうした状況から抜け出すために、熊本地域医療センターが2017年から取り組みをスタートさせたのが、ポリバレントナースの育成とwalking conferenceの実施です。
ポリバレントナースとは、サッカーの「ポリバレントプレイヤー(複数のポジションをこなすことのできる選手)」をヒントにした言葉で、複数の部署で活躍できる看護師を意味します。つまり、各部署で経験できる業務を一覧にし、看護師一人ひとりの意向を確認したうえで、積極的に院内留学やジョブローテーションを実施。突発的な業務にも柔軟に対応できる看護師を育成していったのです。
一方のwalking conferenceというのは、引き継ぎを行う担当者が一緒に現場を回り、ベッドサイドで患者情報を確認するスタイルのこと。そうすることで、口頭や書面での引き継ぎよりも効率が良くなり、バトンタッチがスムーズになったといいます。そして、そうした取り組みが功を奏し、2018年には出勤時間の正常化と残業時間の削減を実現。深夜残業に至っては「ゼロ」を達成することができました。
「はじめのうちは、“人を入れては辞める”の繰り返しでした。『働いてよかった』と思ってもらえる病院をめざした取り組みが、こうして実を結んだことは本当にうれしく思います」と話す、看護部長の大平久美さん。
仕事のオン/オフをはっきりさせ、働く人の心を豊かにすることを目指した同センターの取り組みは、「2018年度の看護師離職率が10%を切る」という成果にもつながっています。また、取り組みのすべてが「大規模投資が不要でありながら、持続可能性や汎用性が高い」という点も、審査員に高く評価されていました。
こうした取り組みを参考にして、看護師が働きやすい職場環境の整備に力を入れる医療機関が増えていってほしいですね。
取材・文:ナレッジリング 撮影:ブライトンフォト
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