• 2021年11月15日
  • 2021年11月18日

ワークライフバランスの企業事例を解説!成果を上げる取り組みとは

 

仕事とプライベートをどちらも充実させて、良い相乗効果を与え合う「ワークライフバランス」。
ワークライフバランスを整えることは、働く人だけでなく雇う側にとってもメリットが大きく、ワークライフバランスの制度を充実させる企業が昨今増えています。

中小企業でも、ワークライフバランスの制度を取り入れて成果を上げている企業は多いんですよ!

こんにちは、ナースプラス編集部の吉田です。
この記事では、ワークライフバランスを推進するための具体的な取り組みや、実際にワークライフバランスに力を入れて成果を出している企業事例を紹介します!

そもそもワークライフバランスとはどんな考え方で、なぜ生まれたのかを知りたい場合は、ワークライフバランスの概要をまとめた以下の記事も参考にしてくださいね。

>ワークライフバランスの概要を今すぐ見る

ワークライフバランスを推進するための取り組み

企業がワークライフバランスを推進する場合、どんな取り組みが考えられるのでしょうか。
ここでは、近ごろ多くの企業が力を入れるようになった以下のワークライフバランス施策を紹介します。

1.育児休業
2.短時間勤務制度
3.フレックスタイム制度
4.時間単位での年次有給の取得(時間単位年休)
5.テレワーク(在宅勤務)
6.長時間労働の削減
7.人事評価の見直し
8.福利厚生サービスの充実・導入

難しそうな言葉が並んでいますが、それぞれの取り組みについてカンタンに説明していきますね。

 1.育児休業

ワークライフバランスの取り組みとして多いのが、「育児休業」に関する施策。

ワークライフバランスを推進しようとしている企業は、たとえば、法定よりも育休期間を長くするといった施策をおこなっています。

また、最近は男性従業員に1カ月以上の育休取得を推進するなど、パパ向けの施策も増えてきました。

育児休暇中の女性イメージ

ただ、「メンバーが育休で抜けてしまうと、その分どこかにしわ寄せがいくのでは……」と考える方がいるかもしれません。

安心してください。
ワークライフバランスを推進する企業は、そのあたりにもきっちり配慮できています。
特定の人に仕事のしわ寄せがいかないよう全体の業務量をコントロールしたり、現場の意見をしっかり吸い上げるなど、不公平感が出ない仕組みを採り入れているんです。

育休をとる人以外のワークライフバランスがおかしくなってしまうと、本末転倒ですよね。
そうならないために、各社はさまざまな方法で業務のバランスをとっています。

2.短時間勤務制度

育休とともに、ワークライフバランスを実現するための代表的な施策となっているのが「短時間勤務制度」。

これについては、育児や介護に関わる従業員を対象に、勤務時間を30分単位で短縮できるようにしているケースが目立ちます。

また、短時間勤務制度を取り入れている企業には、「週4で1日5時間働く」「週3で1日7時間働く」など、時間短縮のパターンを複数用意して、従業員が選択できるようにしているところも少なくありません。

3.フレックスタイム制度

「フレックスタイム制度」とは、あらかじめ定められた総労働時間の範囲内で、始業や終業の時間を従業員が自由に決められる制度のことです。

たとえば、1カ月の総労働時間が160時間と定められている場合、1カ月に働く時間が合計160時間になれば、「今日は10時間働いたけれど、明日は5時間で切り上げよう」など、柔軟に勤務時間を変えられます。

また、フレックスタイム制度を導入する場合、1日のうちに必ず出勤していなければならない「コアタイム」を設けるケースが多いです。

フレックスタイム制の解説図

 4.時間単位での年次有給の取得(時間単位年休)

1時間や2時間など、時間単位で年次有給休暇を取得(時間単位年休)できる企業も増えています。

時間単位年休の制度があると、たとえば「平日の昼間に開催されるセミナーに参加したい」「役所の手続きに行きたい」など、短時間の用事を済ませたいときに便利。
「半休や全休を取るほどの用事ではないし・・・」「休むと周りに迷惑をかけてしまう」などと悩む方も、有給を取得しやすくなるメリットがありますよ。

なお、時間単位年休を取得できる日数の上限は、年間で5日間と労働基準法で定められています。

5.テレワーク(在宅勤務)

コロナ禍で急速に拡大した「テレワーク(在宅勤務)」もワークライフバランス施策のひとつです。

働く場所がオフィスに限定されないため、子育てや介護などさまざまな理由でオフィスに出社できなかった人が仕事とプライベートを両立しやすくなります。
なかには、通勤に費やしていた時間をスキルアップにあてられるようになったという人も。

ただし、「オンとオフの切り替えが難しく、長時間労働になりやすい」「コミュニケーション不足になりやすい」といった面もあるので、勤怠管理や従業員のメンタルケアなどの仕組みづくりが求められます。

6.長時間労働の削減

長時間労働の削減は、2019年から本格的にスタートした「働き方改革」の柱でもあり、企業がさまざまな取り組みをおこなっています。

以下は、長時間労働を削減する施策の一例です。

1.従業員のタスクを「見える化」し、ムダな工程をいち早く発見できるようにする
2.評価制度を見直し、限られた時間内で成果をあげる従業員の評価を高める
3.残業の事前申請を徹底する
4.マネジメント層に長時間労働のリスクを学んでもらい、マネジメント層の意識を変える

4つ目の「マネジメント層の意識を変えるってどういうこと?」と思う方もいるかもしれませんね。

この項目の背景にあるのは、上司の中には「残業時間が長い人ほど仕事を頑張っている」と感じている人が一定数いるという事実です。

残業時間が長いことと、仕事の質が高いことはイコールではありませんよね。
しかし世の中には、残業時間で仕事の頑張りを評価する人がまだまだいるようです。

1日の労働時間別 部下が感じる、上司の「残業している人」へのイメージ
(出典:内閣府『仕事と生活の調和推進のための啓発のあり方に関する調査研究(平成27年3月)』

この事実を考えると、多くの会社の上司が残業をよしとしなければ、社会全体の長時間労働は自ずと減っていくということ。

長時間労働しにくい仕組みを整えるのはもちろん、マネジメント層から「意識改革」するのが有効というわけです。

7.人事評価の見直し

人事評価の見直しは、育休などの休業制度や長時間労働の削減と関わりが深い取り組みです。

これまでは勤務年数や総労働時間を重視して人事評価する企業が大半でしたが、今は能力や時間あたりの生産性を重視する方向にシフトしつつあります。

従業員規模別 成果や生産性を評価する仕組みの重視度
(出典:内閣府『企業等における仕事と生活の調和に関する調査研究報告書(平成31年3月)』

育休復帰後や短時間勤務であっても、成果をあげた従業員はしっかりと評価する。
それによって、他の従業員の生産性を高めようという意識が広がっているのです。

8.福利厚生サービスの充実・導入

ワークライフバランスの取り組みとして、福利厚生サービスを手厚くするケースも多くみられます。

繰り返しになりますが、ワークライフバランスとは、仕事もプライベートも充実させて相互に良い影響をおよぼし合うこと。

直接的なスキルアップに関係なさそうな福利厚生サービスであっても、従業員がプライベートを充実させ、意欲をもって働く好循環につながります。

たとえば、こんな福利厚生サービスもあるんですよ。

・レジャー施設やフィットネスジムの利用
・書籍購入費の補助
・資格取得支援
・育児・介護費用の補助

ここまでは、ワークライフバランスに関する主な取り組みについて取り上げてきました。
ここからは、実際にワークライフバランス施策に取り組み、高い成果を出している企業さんの事例を紹介します。

ワークライフバランスの企業事例

それでは、実際にワークライフバランス施策に取り組み、成果を上げた企業・組織の事例を3つ紹介していきます。

【事例1】サイボウズ株式会社
『働く時間と場所が選べる制度で、離職率が28%から3%に減少!』

新型コロナウイルスの影響でテレワークが一般的になる前から、働く時間と場所を自由に選べる制度を導入していたのが「サイボウズ株式会社」。
男性の育休取得を推進するために、社長自らが3回の育休を取ったことでも有名です。

それでは、サイボウズ株式会社の取り組みを見ていきましょう。

【サイボウズ株式会社】

●取り組み
・勤務時間と勤務場所をそれぞれ3パターンから選べる「選択型人事制度」の導入(※2018年に廃止し、現在は「働き方宣言制度」を運用)
・最長6年間の育児・介護休暇制度
・在宅勤務制度
・子連れ出勤制度


●効果
・2020年時点で離職率が3%前後と大幅に低下
・出産や育児を理由とする退職がゼロ
・取り組みをメディアに取り上げられたことで、女性の新卒応募が増加

●参考資料
内閣府 平成28年度「社内におけるワーク・ライフ・バランス推進のための職場マネジメント事例集」

サイボウズ株式会社では2007年からは「選択型人事制度」を導入し、勤務時間と勤務場所を以下の選択肢からそれぞれ選べるようにしました。

●勤務時間
・時間に関係なく働く
・少し残業して働く
・定時・短時間で働く

●勤務場所

・オフィス
・自宅
・オフィス以外の就業場所

その結果、子育て中の社員だけでなく、勉強したい社員や、ゆったりと働きたい社員が「定時・短時間で働く」を選択するなど、働き方が多様化したそうです。

在宅ワークをしている男性

さらに、「最長6年間の育児・介護休暇制度」「子連れ出勤制度」などのユニークな制度も次々に導入。

一時期は28%と非常に高かった離職率が、3%前後にまで減少しました。

2021年現在は、「選択型人事制度」が「働き方宣言制度」に変更され、従業員一人ひとりが「自分の働き方」を自由に宣言、実行するスタイルに。
より多様性を大切にする企業として、ワークライフバランスに取り組んでいます。

【事例2】株式会社お佛壇のやまき
『定時退社と有給取得を促進し、業績が40%アップ!』

次に紹介するのは、静岡県で仏壇や墓石の販売をしている「株式会社お佛壇のやまき」の事例です。

【株式会社お佛壇のやまき】

●きっかけ・課題
お客さまの気持ちに寄り添った接客を従業員に定着させたい

●取り組み
・定時退社の徹底
・年次有給休暇の消化を徹底し、消化率100%の従業員に対して休暇を10%上乗せするほか、金一封を付与
・「ファミリー休暇制度」を導入し、休暇取得時に3万円を支給
・従来の担当制から、一人の従業員が数種の業務をこなす多能職に変更

●効果

・従業員満足度が向上し、離職率が低下
・定時退社が徹底された
・年休消化率98%を達成
・業績が40%向上

●参考資料

内閣府 平成26年度「社内におけるワーク・ライフ・バランス浸透・定着に向けたポイント・好事例集」

この会社がワークライフバランスに取り組んだきっかけは、自社全体の接客レベルを上げるために、営業成績が良い一人の従業員の働き方に注目したことでした。

その従業員が、なぜお客さまの気持ちに寄り添った接客ができるのかを分析したところ、普段から残業せず、有給休暇も消化して、家族との時間を大切にしていることがわかったのです。

家族との時間を楽しむ様子

そこで同社は、定時退社と年次有給休暇の消化を徹底。
年休を100%消化できた従業員に対し、休暇の上乗せや金一封の付与もおこないました。

また、一人が特定の業務を担当するのではなく、数種の業務をこなす多能職に変更するなど、休みやすい雰囲気づくりにも着手しました。

すると年休消化率が98%と高い数字になり、離職率が改善。
ワークライフバランスに取り組む前よりも、業績が40%もアップしたのです。

ちなみに、多能職になって各職種に新たな視点が加わったことも、業績アップを後押しする一因となっています。

【事例3】株式会社オーシスマップ
『長時間労働が多い業界で残業を大幅カット! 育休後の復職率も100%』

続いての事例は、測量事業を展開している「株式会社オーシスマップ」。
従業員約70名ほどの中小企業です。

【株式会社オーシスマップ】

●きっかけ・課題
長時間労働が当たり前となり、従業員の健康状態が悪化

●取り組み
・残業の申請制度の導入
・管理職を除く従業員で「社員満足度向上ミーティング」を実施
・従業員が毎月1回、自分でノー残業デーを決められる「家族の日」を導入

●効果

・残業時間が大幅に削減
・離職率の改善
・産休・育休取得者の増加
・育休後の復職率100%

●参考資料

内閣府 平成26年度「社内におけるワーク・ライフ・バランス浸透・定着に向けたポイント・好事例集」

測量業界は長時間労働が当たり前となっており、同社も同じ状況でした。
繁忙期には、体調を崩す従業員も出てしまっていたそうです。

この状況に危機感を覚えた同社は、残業の申請制度を導入。
社長自らが「定時退社を目指す会社」を公言し、社内の意識改革を進めました。

また、管理職以外の従業員がワークライフバランスについて話し合う「社員満足度向上ミーティング」を設け、そこでのアイデアも制度化しました。

社内MTGの様子

まとめ

ワークライフバランスを推進し、成果を上げている企業の事例を紹介してきました。
優秀な人材を定着させ、生産性を向上させるためにも、企業がワークライフバランスの制度を整えることは大変重要です。

以下の記事では、ワークライフバランスのメリットを雇う側・働く側の視点で詳しく解説しているので、ぜひご覧ください。

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人生100年時代ともいわれ、ワークライフバランスを整えることは今後ますます重要になっていきます。
充実感をもって長く働き続けられるよう、働き方を見つめ直していきましょう!