『エキスパートナース』2016年11月号<最新エビデンスに基づく今はこうする! 患者の睡眠ケアQ&A>より抜粋。第5回は身体的予防策①「夜間頻尿に対応するためにできる工夫は?」を紹介いたします。
石川由美子 元・獨協医科大学看護学部 地域看護学 講師
A :「水分摂取の時間・量の制限」「排尿ケア用品の導入」などによって、尿意で起きなくてもよい、あるいは再び入眠しやすくすることが可能です。(石川由美子)
夜間に生じる尿意によって、熟眠感が妨げられる
夜間尿意のために起きなければならないと、睡眠が中断され、排尿後再び眠りにつくことができないなど、熟眠感が得られにくくなります。このように夜寝てから朝起きるまでのあいだに、1回以上排尿のために起きることを夜間頻尿と言います。なかには2回3回とトイレに起きる患者もおり、加齢とともに夜間頻尿の出現頻度が多くなる傾向にあります。
睡眠に満足感を得られない患者のなかにはこうした夜間頻尿が原因の人も多くいるので、入院前のふだんの排尿パターンや、どの程度困っている状況になっているかを把握しておくとともに、尿意で起きなくともいいように工夫をすることが大切です。
「夜間多尿」「膀胱容量の減少」を見分け、対策を行う
夜間頻尿の原因には、大きく分けて夜間の尿量が多くなる夜間多尿と、尿をためておく膀胱の容量の減少の2つがあります(図1/引用文献1)。どちらが原因か見るために、排尿時間と1回量を日誌につけておくと対策を考える際に役立ちます。
図1 夜間頻尿の分類
夜間多尿になりやすい基礎疾患には「高血圧」、「うっ血性心不全」、「腎機能障害」、「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」などがあります。また、膀胱容量の減少につながる疾患として「過活動膀胱」「前立腺肥大」「脳卒中」「パーキンソン病」などがあります。
このような疾患をすでにもっている患者で、新たに夜間頻尿が出現する場合は、病状の変化や治療内容に対する反応も考えられるため主治医に報告し、相談しましょう。
夜間頻尿への対策としては可能な限り夜間の点滴は避けるか、滴下量を最小限にとどめ、利尿作用のある薬剤や飲食を摂取する時間を夕方以降は避けるなど、チームで個々の患者に合った対策を考えることが重要です。
また、立ち上がってトイレまでの歩行に不安のある患者や、再び入眠に入りやすくする工夫として尿器やポータブルトイレの活用もよいでしょう(図2、図3)。ただし上手に使えるようにするために、導入時には日中に練習の機会をもつようにします。
図2 排尿を助ける器具①
スカットクリーン(パラマウントベッド株式会社)
図3 排尿を助ける器 具②
安楽尿器デラックス 女性用(浅井商事株式会社)
図2 排尿を助ける器具①
スカットクリーン(パラマウントベッド株式会社)
図3 排尿を助ける器具②
安楽尿器デラックス 女性用(浅井商事株式会社)
夜間頻尿と睡眠は関連がありますが、どちらも主観的な要素が含まれており、1人ひとりの患者で感じ方もさまざまであることから、個々に合ったアプローチをします。
また尿道カテーテルを留置している患者は、カテーテル抜去を午前中に計画して、日中は排尿自立できることが理想です。しかし、カテーテル抜去後尿失禁や尿閉などの下部尿路機能障害がある、または症状の出現が予想される患者には、排尿ケアチームと早期に連携して夜間頻尿を予防するようにしましょう。
排尿ケアチームは、所定の研修の修了や経験年数など一定の基準を満たす医師・看護師・理学療法士からなり、包括的排尿ケアを病棟看護師とともに行います。
[引用文献]
1. Pr ince D,Pedler K,Rashid P:Noctur ia:a guide to assessment and management.Australian Family Physician 2012;41 (6):399-402.
[参考文献]
1.Jayadevappa R,Newman DK,Chhatre S,et al.:Medication adherence in the management of noctur ia: chal lenges and solut ions.Pat ient Preference and Adherence 2015;9:77-85.
2.日本泌尿器科学会:夜間頻尿とは. https://www.urol.or.jp/public/symptom/ 03.html(. 2016.9.20アクセス)
3.厚生労働省:平成28年度診療報酬改定について 第2.改定の概要 平成28年度 診療報酬改定説明(医科)その6. h t t p : / /www.mh lw. g o . j p / f i l e / 0 6 – S e i s a k u j o u h o u – 1 2 4 0 0 0 0 0 – Hokenkyoku/0000115983.pd(f 2016.9.20アクセス)
本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。/著作権所有(C)2016照林社 [出典]エキスパートナース2016年11月号 P.80~「最新エビデンスに基づく 今はこうする! 患者の睡眠ケアQ&A」
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