キャリア10年の元看護師ますみさんと、鋭いツッコミの知咲さんによる掛け合いで、看護師さんのハードな日常をユニークに切り取った“天才ピアニストの看護師あるある”連載。

第3回目は、看護師さん547人に聞いた「仕事で最も苦戦したのは…?」に関するアンケートをもとに、多重課題の乗り越え方について経験談を語ってもらいました。
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多重課題を乗り越えるには「タスクを書き出すこと」がポイント


仕事で最も苦戦したのは「多重課題のクリア」と回答した人がいちばん多いみたいやけど、どういうこと?

看護師だけに限らん話やけど、同時にやらなあかんことが多いのよ。
私の場合やけど、日勤やとしたら看護師1人に対して15名くらい患者さん持ってて、さらに緊急入院の人が来たりして……

うわ〜聞いてるだけで大変そうやわ……。

1日をトータルで見た時の優先順位が大事なんよね。
パッとできることでも、それより先に終わらせなあかんことを優先したりして。
点滴したり、部屋移動したりしている時に優先順位を考えるから、退勤時に「あ!あの時のあれやってない」ってなることもちらほら……。

ひやっとするな。



そういうのってやってないことだけ言われるよな。

せやねん。
先輩に「なんにもできてへんやん」って言われるけどさ……。
「ちゃうねん!その時、患者さんに『リモコンどっかにやっちゃいました。探してください』って言われて……」みたいな。

いや、リモコンは完全に優先度低いやつやん。

でも、すぐにやらないと患者さんに怒られんねん。

あ〜、「ヒルナンデス終わっちゃうでしょ!!」ってか。


ますみちゃんは、多重課題をどう乗り越えたん?

もうね、これは経験を重ねるしかないんやけど……
まずは、紙にやらなあかんことをブワーッて箇条書きして、タスク完了したら消していく。
書いてたらイレギュラーなことが起きても対応できるようになると思う。

なるほど。タスクを可視化すると優先度をつけやすくなりそうやな。

せやねん、頭の中だけで考えても難しいんよ。
多重課題をクリアしないと「ほんまいつまでたっても……」って先輩ナースから休憩所で小言を言われんねん。

うわわわわ!それは休まらんな……。

せやねん。だから、とにかく書くのが良いと思う。
たしかに書かずにパパッとできたらかっこいいねんけど、書かずにできてへんのは怒られに行ってるようなもんやから。


たしかに。書くことで小言攻撃防げるなら、書いた方がよさそうやな……。

あとは動線も意識せなあかんな。
バタバタ走って行ったり来たりとムダな動きが多いなら「その間に2〜3個やれることあったんちゃうん?」って思っちゃうことがあって。
優先順位と最短で済ませるルートを知っているのがプロのナースかなって私は思ってた。

なんかさ、この間、旅館の女将のインタビュー記事読んでん。

なに読んでんねん(笑)。

その記事に、自分の優先順位で動くとめちゃくちゃクレーム来るって書いててん。
あくまでお客様優先やないとって。
それに似てるな。

それめっちゃわかるな!
患者さんからの「リモコン取ってくれ」やら「とろみの茶が飲みたい」に「ちょっと待ってくださいね〜」言うてたらクレーム対象やもん。

女将状態やん。


“やるべきこと”と患者さんとの兼ね合いが大事やな。
でもまあ、若手のうちに忙しい部署に配属されるのはいいことかもな。

あなた、いいこと言うた!ほんま、そうやねん。
もちろん、落ち着いた部署やと、1対1のケアもしっかりコミットできるし、忙しい病棟では学べないことがあると思う。
でも、なんでも知識が入るスポンジ状態の1年目看護師さんが、多重課題だらけの病棟に行くと、経験的にもプラスになるねん。

忙しい部署を経験した後で、落ち着いた部署に異動したら、周りが止まって見えるやろうしな。

そうそう、パチスロ状態になるやろうな。高速すぎて「止まって見えるわ〜」って。
私、ギャンブルせえへんけど。

いや、そのたとえ分かりづらいわ!
看護師は休日も多重課題あり!?アップデートし続ける日々

今話したんは勤務中の話やねんけど、多重課題っていうのは勤務外の自主学習でもあって。


自主的に勉強せなあかんのか。

機械のことも勉強せなあかんし、疾患もすごい数あるからね。
さらに病院によっては、委員会とか看護研究もあって。休みの日もやらなあかんことが多かった。

勤務外も多重課題……。

私の場合やけど、休みの日は県外へ心電図の勉強しに行ったことがあったな。有給使って、1万2000円くらい払って。
あれは最初「なんで〜?」って感じやった。
※編集部注:上記はあくまでますみさんのご経験です。自主参加の学会・研修等における参加費・交通費規定は勤務先によって異なりますのでご留意ください。

命に関わることやから、新人さんだけでなく全看護師が常に勉強し続けないとあかんねんな。

それに病院や部署が変わると全然勝手が違うからな。
「前の病棟ではこうでしたけど」言うと、悪口言われちゃうからな。タブーワードやで。
避けては通れない医師との連携。機嫌の悪いドクターから素早く指示をもらうには?

アンケートを見ると「ドクターとの関わり」「患者とのコミュニケーション」と人間関係で苦戦している人も多いな。


ドクターに指示を仰いだ時に「ちょっと待って」って待たされるの、なかなかしんどい。
看護師としては患者さんのケアをするために早く指示が欲しいねんけど。


「いつもこの患者さんにはこう対応していますよ!」って看護師から言うと、ドクターから「何様なんや」って思われちゃうし。

まあ、そうなるよな。

ドクターに対して「患者さんが待ってるんで」とキッパリ言える先輩を見て、すごいなって思ったもんやで。
あとは、どこの病棟にも“ご機嫌取りナース”いうのがいて。


なんですかそれ。

よく喋って、常にテンション高めな看護師は、ドクターが機嫌悪くても「ちょっとあの患者さん見とったって」ってうまいこと気軽にお願いできるんよ。
めちゃくちゃ頼りにしてたわ。

心強いな〜それ。どこの世界でも、明るく振る舞える人が勝ちやな。
「仕事で最も苦戦したこと」にまつわるエピソードを披露してくれたますみさん。どの職種でも多重課題で苦労することはありますが、まずはタスクを書き出して優先順位を意識した最短フローを目指したいですね。天才ピアニストの看護師あるある、次回もお楽しみに〜!
執筆:於ありさ、企画・編集:藤田佳奈美(TAC企画)