住宅ローンを借りると税金が安くなるって本当?
住宅を購入する際に借りる住宅ローン。住宅ローンは借金の一種。できれば早く返したいと、繰上げ返済をして、出来るだけ早く返そう! と意気込んでいる方もいることでしょう。 ですが、もしかしたら“繰上げ返済”しないほうがいい場合もあるのです。 繰上げ返済するとトクになるのはどんなタイミングなのか、どんなケースなのかをチェックしていきましょう。
住宅ローン控除(減税)を受けられる期間ってなに? いつ、どんな人が使えるの?
マイホームの購入を考えている方は、「住宅ローン控除(減税)」という制度について、もうご存知かもしれません。 さて、この制度を使うにはいくつか条件があり、この制度ならではの特徴があります。 一体、どんな制度で、どんな場合に使えて、どれくらいオトクなのかをまずは確認してみましょう。
住宅ローン控除ってなに?
正式な名称は、「住宅借入金等特別控除」(※)といいます。住宅ローンを利用して、マイホームの新築や購入(中古でもOK)をするほか、リフォームした時にも使える制度です。 ローンの残り年数や残高によりますが、所得税を安くすることができます。 この制度は、「税額控除」になります。本来支払わなければならない税金から、この制度による控除額を引くことができます。
※この控除を使っているマイホームが、災害によって被害を受けた際には特例があります。東日本大震災などで被災し、住めなくなった方などはチェックをしてみると良いでしょう。
税額控除と所得控除の違い
私たちは税金を納めています。税金額を計算する場合には「所得」を計算し、その所得によって税額が決まります。
実は、「給料(収入)」=「所得」ではありません。払わなければならない「年金や健康保険などの社会保険料」や、そもそも引いてもらえる「給与所得控除」や「基礎控除」など、様々な項目による金額が給料から引かれて「所得」が決まります。この所得そのものを減らすことを「所得控除」といいます。
住宅ローン控除は、その所得から計算された所得税から、控除額を引くため、「税額控除」となります。
住宅ローン控除(減税)が受けられる人とは?
住宅ローン控除(減税)を受けられるのは、次の条件をすべて満たした場合です。また、贈与による取得や、親族などから購入した場合も制度を使えません。
住宅ローン控除(減税)を受けられる条件
・マイホームの購入(新築)から6ヶ月以内に住み始め、控除を適用する年の12月31日まで住んでいること。例えば、同居していない祖父がローンを組むなどその家に住んでいない人がローンを組んでも、控除されません。けれども、転勤などで一時的に住まなかった場合や単身赴任した場合は、状況によって制度が使えます。
・控除を受ける年の合計所得金額が3,000万円以下であること。副業などで高収入がある人は要注意!
・床面積が50㎡以上。また、1/2以上が自身の居住用であること。店舗や事務所と併用の場合も、条件によって使えます。
・10年以上の住宅ローンやリフォームローンがあること。ローンのトータル期間が10年未満になると、利用できなくなるので要注意! また、親族や知人から借りた場合も、この制度は使えません。
・新しい住まいに住んだ年、前後2年(合計5年間)の間に、「居住用財産の譲渡による長期譲渡所得の課税の特例」などを受けていないこと。買い替えの場合は、住宅ローン控除を受けられないことがあります。
繰上げ返済をしすぎると 住宅ローン控除を受けられなくなる!?
住宅ローン控除について、「どのような場合」に使え、「どのような人」がその恩恵にあやかれるのかがわかったところで、どれくらい安くなるのかを確認していきましょう。
いくらくらい税金が安くなるの?
住宅ローンが年末にどれくらい残っているかで決まります。基本的には、「12月31日の残高×1%」が税金から控除されます。所得税で引ききれなかった場合は、翌年度の住民税からも控除できます。ちなみに、年間の控除限度は40万円です。
では、年収500万円のサラリーマンで、専業主婦の妻と0歳の子どもがいる場合のケースで確認してみましょう。
このケースの場合、所得税は約10万円、住民税は約21万円になります。わかりやすくするため、所得税10万円、住民税20万円ということで進めていきます。
また、住宅取得時の消費税が8%または10%の「特定取得」に当たる購入ケースとします。
1年目の住宅ローンの残高が3000万円の場合
【例】
・年収500万円のサラリーマンで、専業主婦の妻と0歳の子どもがいる家庭
・1年目の住宅ローンの残高が3000万円の場合
3000万円×1%=30万円
●所得税10万円
すべて払う必要がありません。
しかし、まだ控除できる金額が20万円あります。この場合、住民税からも控除できます。
●住民税
A)「所得税-住宅ローン」で引ききれなかった金額。この場合は、20万円になります。
B)所得税の課税所得金額×7%(限度額13万6500円)
(課税所得金額とは、収入から「社会保険料」「生命保険料」「地震保険料」「配偶者控除」「給与所得控除」など控除額が引かれた金額になります。この例題のケースの場合は、13万6500円の方が低くなりますので、13万6500円で記事を進めていきます)
住民税で控除できる金額は、AとBのいずれか低い方になります。つまり、13万6500円を控除できることになります。
(結果発表) 10万円+13万6500円=23万6500円の節税効果!
※令和元年10月1日~令和2年12月31日までに住み始め、住宅の購入が「特別特定取得」の場合、控除期間が13年になり、11~13年目は計算方法が1~10年目と異なります。 ※いつから対象の住宅に住み始めたかで計算方法が異なるため、詳しくは金融庁のホームページで確認してください。
そして、ここからがもう一つ、大事なポイントです。
この制度は、「年末の住宅ローン残高」によって、節税効果が変わってきます。
集まり、2年目以降になると、返済により住宅ローンの残高が減っていきます。例えば、上記のケースで、年間100万円返済したとして、2年目の残高が12月31日の時点で2900万円になっていた場合は、「2900万円×1%」になるので、所得税から控除できる金額が29万円となります。
「年々、計算式が変わる」ということを、ぜひ覚えておいてください。
繰上げ返済と減税効果どっちがトクか確認しよう
本当に難しくて複雑な、税金の問題。ややこしくて面倒になるかもしれませんが、あと一息です。
上の小見出しで説明したように、年々控除金額が変わってくるので、節税効果も異なります。
また、住宅ローンのトータル返済期間が10年以下になると、この制度が使えなくなってしまいます。ちなみに、繰上げ返済には、「期間短縮型」と「返済額軽減型」があるのですが、「期間短縮型」の方が利息の軽減効果が高くなります。
同じ額を繰上げ返済するとしても、「時期が早い」「金利が高い」方が効果が大きくなります。
つまり、繰上げ返済をして、できるだけ利息を減らしたいところではあるのですが、「住宅ローン控除の減税効果」と比較してみることが大切です。
また、子どもが育ってくると、教育費にも変化が起きたり、生活費も変わってくるもの。「住宅ローンを早く返そう!」とするあまり、毎月の生活が苦しくなってしまうのも、ちょっと考えものです。
2020年2月時点の、フラット35の最多金利は1.280%(9割以下の融資率)。もちろん35年間ともなると金利に支払う額は少なくありません。
しかし、「繰上げ返済しすぎて教育費が思うように貯まらず、子どもの大学入学時に教育ローンを組むハメになってしまった」というのでは、頑張って繰上げ返済した努力が報われません。
ですから、住宅ローンの繰上げ返済をせずに、教育費をつみたてNISAなどを利用して貯めていった方が効果的である可能性もあるのです。
ローンの借り方は計画的にする方が多いかと思いますが、「返し方」もぜひ計画的に、よりお得な方法で行なうといいですね!
さいごに
住宅ローンの繰上げ返済時のポイント
●住宅ローン控除が使えるのはトータルの返済期間が10年以上の場合
●所得税で控除しきれなかった場合は、住民税からも控除できる
●控除額は年末時点のローン残高で決まる
●今は低金利時代。
公益社団法人 生命保険文化センター ほけんガイドWeb「こども保健とは?」
https://www.jili.or.jp/h_guide/kodomo/01/
公益社団法人 生命保険文化センター「生命保険に関するQ&A」
https://www.jili.or.jp/knows_learns/q_a/life_insurance/life_insurance_q13.html