【問題】
A君(2歳6カ月、男児)。両親との3人暮らし。脳性麻痺(cerebral palsy)と 診断され、自力で座位の保持と歩行はできず専用の車椅子を使用している。話しかけると相手の目を見て笑顔を見せ、喃語を話す。食事はきざみ食でスプーンを使うことができるが、こぼすことが多く介助が必要である。排泄、清潔および更衣は全介助が必要である。
A君の食事について看護師が母親に尋ねると「食べこぼしが多く、食べながらうとうとしてしまい時間がかかるし、十分な量も食べられていません」と話した。
A君の食事に関する母親への指導で最も適切なのはどれか。
- 「経腸栄養剤の開始について医師と相談しましょう」
- 「ホームヘルパーの依頼を検討しましょう」
- 「食事時間を20分以内にしましょう」
- 「ペースト食にしてみましょう」
【解答】
- 1.経口摂取が可能な状態なので、経腸栄養剤の開始を検討する必要はありません。
- 2.母親の負担を軽減するためホームペルパーを依頼することは考えられますが、指導の優先度は低いでしょう。
- 3.食事時間を制限しても問題解決にはつながりません。
- 4.できるだけ経口摂取を維持するため、きざみ食からペースト食に変更して様子を見ることが適切です。
現場ではこうする!

食事を苦痛に感じさせてはならない!
一般的に、食事を口から取り入れて味わうことは人生の楽しみのひとつです。それは2歳6カ月の幼児であっても同じでしょう。また、摂食機能を維持する観点からも、幼児の発達を後押しする観点からも、経口摂取が可能な状態であれば、安易に経腸栄養を選択するのではなく、経口摂取を支援することが望ましいといえます。
とはいえ、A君のように脳性麻痺を抱え、「食べこぼしが多く、食べながらうとうとしてしまい時間がかかるし、十分な量も食べられていません」という状態では、適切なサポートをしなければ食事をすること自体が苦痛になってしまうことも考えられます。A君が食事という人間の営みと上手に付き合っていけるようにし、ひいてはA君の人生そのものを豊かにするためには、単に「食べこぼしが少なくなる」「あまり時間をかけずに十分な量を食べられるようになる」というだけでは不十分かもしれません。
食事は正しい姿勢から始まる
A君はきざみ食を食べることが難しい状態で、摂食・嚥下機能が低下していると考えられます。そのため、食べやすく飲み込みやすいペースト食に変更することが正答となっていますが、A君へのアプローチの仕方はほかにもあるでしょうか?
たとえば、A君は自力で座位の保持ができない状態なので、座位保持装置を導入して食事の際の姿勢を正しく保持することが考えられます。座位保持装置は椅子型の補助具で、座面や背面、フットレストの角度が細かく調節でき、脳性麻痺などの患者の座位保持をサポートする目的で使われます。しっかりと座位を保ち、特に頭部の位置を安定させることで、A君自身も介助する母親も大幅に食事が楽になるばかりか、誤嚥を防ぐためにも有用です。
また、グリップを曲げて手に巻き付けることができるスプーン、縁が立ち上がっており片手でもすくいやすいお皿など、自力での食事を助けるように工夫された食事用具を使ってみるのもいいでしょう。
2歳6カ月といえば、健常な子どもでも上手に食事できないことが多いもの。それほど食事という行動には高度な機能が求められ、それは試行錯誤しながら身に付けていくものなのです。脳性麻痺による運動機能障害の程度は人それぞれで一概には言えませんが、A君も適切な補助具を使いながら正しい姿勢、咀嚼の仕方、嚥下の仕方を学ぶことで、次第に食事が困難でなくなっていくかもしれません。
重要なことは、単に「今の段階でさほど問題なく食事ができればよし」とするのではなく、A君の将来を見越して過剰でも不足でもないサポートをしていくことだといえるでしょう。
監修:医療法人鵬志会 別府病院 看護部長 行徳倫子
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解説
脳性麻痺は、受精してから生後4週までの間に何らかの原因で脳に損傷をきたし、運動機能障害を生じるものです。原因は不明なことも少なからずありますが、明らかになっているものとしては、遺伝的要因、脳奇形、脳血管障害、胎内でのサイトメガロウイルスやヘルペスウイルスへの感染、分娩時の仮死などがあります。運動機能障害は多くは2歳頃までに現れますが、そのほか知的障害やてんかんを伴うこともあります。なお、ポリオウイルス感染で引き起こされる小児麻痺(急性灰白髄炎)とは別物なので、混同しないようにしましょう。【状況設定問題】2017年 第106回 過去問題(午前104) ●小児看護学