家族構成図(ジェノグラム)は、家族の構成や関係性、健康状態などを視覚的に整理できる重要なツールであり、看護や医療、福祉の現場でアセスメントを行う際に欠かせません。しかし、記号の意味や書き方のルールを理解していないと、正確な情報整理が難しくなってしまいます。
そこで本記事では、ジェノグラムの基本の書き方から複雑な家族関係の表現方法まで、図解を交えて解説します。
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家族構成図(ジェノグラム)とは?
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ジェノグラムは、対象者を中心に家族関係を図式化したもので、一般的には3世代程度を整理することが多いツールです。単なる家系図ではなく、家族構成や関係性を示し、対象者の生活背景や支援体制を把握するための臨床的な情報整理ツールとして活用されます。
ジェノグラムが3世代以上で描かれるのには理由があります。家族の価値観や役割分担、介護に対する考え方は、親世代から無意識のうちに受け継がれることが少なくありません。また、高血圧や糖尿病、がんなどの家族歴が参考になる疾患を把握するために、親・祖父母世代の情報は重要です。
そこで、3世代の情報を俯瞰することで、家族の役割や価値観、健康課題の傾向を把握し、より深いアセスメントを行う必要があります。
ジェノグラムとエコマップの違い
ジェノグラムとよく比較されるのがエコマップです。
エコマップとは、家族以外とのつながりを図式化し、本人を取り巻く社会資源(友人、職場、医療機関、地域、訪問看護、ケアマネジャーなど)とのつながりを可視化したものです。
一方で、ジェノグラムは血縁・婚姻関係を中心に家族構成や関係性を整理する図です。
つまり、ジェノグラムは「家族構造」、エコマップは「社会とのつながり」を示す図となります。両者を組み合わせることで、家族内のキーパーソンや支援者だけでなく、外部資源の活用の可能性まで含めた包括的なアセスメントが可能です。
ジェノグラムが必要な理由
ジェノグラムの最大のメリットは、視認性の高さにあります。
家族構成を図式化することで、文章の記録だけでは見えにくい「キーパーソンは誰か」「介護を担う人はいるか」といった情報が見えます。チーム内で瞬時に同じ全体像を共有できるのが特徴です。特に、多職種カンファレンスの場では、ジェノグラムが共通言語となることで短時間で状況を共有でき、意思決定がスムーズになります。
また、ジェノグラムは家族の支援力や潜在的リスクを評価する場面でも大きな力を発揮します。
退院支援や在宅移行支援を行う際、同居家族の有無だけでは実際にどの程度介護が可能かは判断できません。そこで、ジェノグラムで家族構成や年齢、就労状況、居住地などを整理することで、「同居しているが高齢で介護力は乏しい」「遠方に住む長女が実質的なキーパーソンである」といった実態を把握しやすくなります。
家族背景がわかると、早期からMSWやケアマネジャーと連携し、必要な社会資源の導入を検討するといった対応も可能です。
このように、ジェノグラムは情報収集からアセスメント、看護計画立案へとつなげるための思考整理ツールとして活用できます。医師やリハビリ職、MSWやケアマネジャーなど他職種との連携を円滑にする橋渡し役にもなるのです。
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ジェノグラムで用いられる記号・線
ジェノグラムを描く際には、標準化された記号や線を用いて人物や関係性を表現します。
以下では、基本的な書き方をご紹介します。
※細かな表記は文献や施設によって異なる場合があるため、所属先のルールに従ってください。
人物
人物を表す記号は、以下のとおりです。

同居している家族の構成員は点線(または実線)で囲みます。別居している家族は囲みから外す、または居住地を記載するなどして区別します。
婚姻・離婚・別居・再婚
婚姻・離婚・別居・再婚は、それぞれの記号を線でつなぐことで表現します。

それぞれの書き方は以下のとおりです。
親子・兄弟姉妹
親子や兄弟姉妹の表記の方法は、以下のとおりです。

ジェノグラムの基本的な作成方法
ジェノグラムを作成する際の基本的な流れは、下記のとおりです。
- 対象者の配置
作成する用紙の中央に対象者を配置します。図の中央に配置することで、対象者と取り巻く家族の関係性の把握が容易になります。 - 配偶者の配置
対象者に配偶者がいる場合は、男性を左、女性を右にして婚姻線(直線)で結びます。離婚歴・再婚歴がある場合は、左から右に時系列順に記載します。 - 子どもの配置
婚姻線から下に線を引き、左から右へ年齢順に子どもを配置します。 - 親・兄弟姉妹の配置
対象者の親を対象者の上に配置し、対象者の兄弟姉妹がいれば対象者の横に配置します。 - 情報の書き込み
年齢・職業・病歴・死亡年齢・死亡日・死因を書き込みます。疾患や既往歴は家族性疾患の把握にもつながります。職業や勤務形態が分かると、介護力を確認することができます。 - 同居の有無
現在対象者と同居している家族を点線(または実線)で囲んで示します。
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ジェノグラムの作成例
ここからは、以下の事例を用いて実際にジェノグラムを作成してみましょう。
【事例】
80歳代女性、大腿骨頸部骨折で入院している。夫はすでに死亡。長男は県外在住、次男は同居しているがフルタイム勤務で帰宅は夜遅くになる。同居の次男の妻はパート勤務で、小学生の息子と幼稚園児の娘がいる。兄弟の中で一番年下である長女は車で15分程度の距離に住んでいる。
文章による記録のみだと、「同居家族あり」となり、次男が主介護者と判断される可能性があります。
それではジェノグラムを作成した場合、アセスメントは変わるのでしょうか。情報から作成したジェノグラムは、以下のとおりです。

ジェノグラムは対象者である80歳代女性を中心に置き、夫は死亡しているため黒で塗りつぶします(四角に×を記入する表記もあります)。
次に、対象者には3人の子どもがいるため、長男、次男、長女と年齢順に左から配置します。次男は婚姻しているので、右側に妻を配置します。次男夫婦には子どもが2人いるため、左から年齢順に息子、娘を配置します。
そして、現在わかっている情報を人物の下に書き込みます。現在対象者と同居しているのは次男家族のため、点線で対象者と次男家族を囲みます。
事例をジェノグラムに落とし込むと、次男と次男妻は同居しているものの日中不在であることや、小さい子どもがいるため、介護力が限定的といえます。一方、長女は近隣在住であり、子どもがおらず、ある程度の介護力があることがわかります。
追加情報として、対象者が入院前に通院していた際は長女が付き添いをしていたこと、長女はフリーランスとして勤務しており仕事の調整がしやすいこと、対象者の生活の支援に協力的なことが判明したとすると、長女が主な支援者となる可能性が高いことが考えられます。
今回の事例では、文章上では一見同居している次男がキーパーソンと考えられますが、ジェノグラムに表記することで、実際は長女がキーパーソンとなることが見えてきます。
ジェノグラムは手書き・パソコンのどちらで作成すべき?

ジェノグラムは手書き・パソコンのどちらでも作成可能です。
手書きとパソコン作成にはそれぞれメリットがあるため、状況に応じて使い分けて作成することをおすすめします。
手書きで作成するメリット・デメリット
手書き作成のメリットは、どこでもすぐに作成でき、直感的に修正できることです。追加情報があった際にも新たに書き入れやすいでしょう。
デメリットは字や作図が汚いと読みづらく、修正時に見づらくなりやすいことです。追加情報を書き入れていくうちに、スペースが不足して配置がわかりづらくなってしまう可能性もあります。
手書きで作成する場合は、あらかじめ対象者周辺のスペースは広く取り、新たな情報が増えても書き入れやすいようにしておくことがポイントです。情報として残すジェノグラムの場合は、鉛筆である程度下書きしてから作成するのもよいでしょう。
ExcelやWordで作成するメリット・デメリット
ExcelやWordで作成するメリットは、電子データとして保存しやすいこと、再利用しやすいこと、見やすく整えやすいことです。
ただし、ExcelやWordの操作に慣れていない人の場合は作成に時間がかかる点に注意が必要です。
ExcelやWordでジェノグラムを作成する場合、オートシェイプ(図形描画)の機能を使って作成します。
まず、「挿入」タブから「図形」を選択し、男性は四角、女性は丸を配置します。図形を複数並べた後は、Ctrlキーを押しながら対象の図形を選択し、「図形の書式」→「配置」→「上下中央揃え」や「左右に整列」を活用すると、位置がきれいに揃います。
さらに、婚姻線や親子線を引いた後は、関連する図形と線をまとめて選択し「グループ化」しておくと便利です。図形や線をグループ化しておけば、家族単位でまとめて移動できるため、後からスペースを調整する際も配置や見た目が崩れにくくなります。
また、兄弟姉妹が複数いる場合は、最初に一人分のセットを作成し、コピー&ペーストで横に展開すると時短になります。配置後に「均等配置」を使えば、間隔も自動で調整可能です。
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まとめ
ジェノグラムは単なる家系図ではなく、対象者の家族関係や背景を理解し、より質の高いケアを提供するためのアセスメントツールです。
適切な表記とルールを理解することで、アセスメント能力向上とチーム内での迅速な情報共有が可能になります。手書きとパソコン作成を状況に応じて使い分け、日々の情報整理やアセスメントに役立てましょう。
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