ドレーンは、術後の感染予防や創部の治癒促進を目的として広く用いられている、体内に貯留した液体を排出するための管のことです。ドレーンを使った医療行為はドレナージと呼ばれ、使用の目的や排液の排出方法、使用する原理によって複数の分類方法があります。ドレナージにあたっては、排液の性質や量、挿入部位などに応じて、ドレーンの形状を選ぶことが必要です。
この記事では、ドレーンおよびドレナージの基本的な定義から、種類や形状、看護師が行う管理方法まで解説します。ドレーン管理の基本を押さえ、適切なケアにつなげる参考にしてください。
勝木 将人(かつき まさひと)
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2016年東北大学卒。脳神経外科専門医。脳卒中、頭痛診療、頭部外傷などが専門。 |
ドレーン・ドレナージとは
ドレーンとは、体内に貯留している血液・漿液・消化液・膿汁などを体外へと排出するために、液が溜まりやすい部位に挿入する管のことです。ドレーンを使用して排液を体外に誘導する医療行為は「ドレナージ」と呼びます。
ドレナージは主に手術後に行われる処置であり、排液の排出による創部の治癒促進や感染予防を目的として行います。ドレナージを適切に行うには排液効率をよくするとともに、ドレーンのズレ防止や創部観察を行う「ドレーン管理」が欠かせません。
(出典:科学技術振興機構(J-STAGE)「VI.予防的ドレーン挿入の pros and cons」)
ドレナージの種類

体内に貯留している排液を体外に排出するドレナージは、ドレーン挿入の目的や排液の性質によっていくつかの種類に分類されています。
以下では、「目的」「排出方法」「原理」のそれぞれにおけるドレナージの種類分けを解説します。
目的による分類
どのような目的でドレーンを使用するかによって、ドレナージは下記の3種類に分類できます。
- 予防的ドレナージ
予防的ドレナージは、術後に起こり得る感染症や腫瘍形成の予防を目的として、排液が溜まりやすい位置にドレーンを留置する方法です。感染などの異常が見られた場合は、次の治療的ドレナージに移行します。 - 治療的ドレナージ
治療的ドレナージは、膿汁や血液などの貯留で感染や炎症を起こしている部位に対し、排液除去や洗浄による治療を目的として行います。 - 情報ドレナージ
情報ドレナージは、外からの観察では分からない術後の出血や縫合不全などを確認するために、ドレーンを留置する方法です。
(出典:平成23年度戦略的基盤技術高度化支援事業「腹腔内手術後に用いる感染レス閉鎖式吸引ドレナージシステム開発」研究開発成果等報告書)
排出方法による分類
排出方法による分類では、排液がどのように体外に出るかで下記の3種類に分けられます。
- 閉鎖式ドレナージ
閉鎖式ドレナージは、ドレーンが排液バッグに接続されていて、外界との接触を作らない方法です。外気に触れることによる逆行性感染のリスクがなく、排液量を正確に測定できる点がメリットです。反面で、ドレーンが排液バッグから抜けないよう、患者さんの動きを制限する必要があります。 - 開放式ドレナージ
開放式ドレナージは、ドレーンが体表に出たところで切断され、排出口が外界に開放されている方法です。排液は基本的にガーゼで吸収します。開放式ドレナージのメリットは、排液の性質を観察しやすく、閉鎖式ドレナージほど患者さんの動きを制限しないことです。しかし、排出口からの逆行性感染のリスクや、留置したドレーンが体内に迷入するケースがあり、ドレーン管理には注意が必要です。 - 半閉鎖式ドレナージ
半閉鎖式ドレナージは、開放式ドレナージの排出口側をパウチ容器で覆い、排液を容器内で管理する方法です。逆行性感染のリスクが低く、患者さんの動きを制限しにくいメリットがあります。デメリットは、パウチ接着部の剥がれや排液の漏れが起こる可能性があり、管理が難しいことです。
(出典:科学技術振興機構(J-STAGE)「術後感染対策としてのドレーンの選択」)
(出典:平成23年度戦略的基盤技術高度化支援事業「腹腔内手術後に用いる感染レス閉鎖式吸引ドレナージシステム開発」研究開発成果等報告書)
原理による分類
排液を体外に出す原理の違いによって、下記の2種類に分けられます。
- 能動的ドレナージ
能動的ドレナージは、吸引装置やバルーンなどによって陰圧をかけることで、排液の排出を促す方法です。 - 受動的ドレナージ
受動的ドレナージは、重力や毛細管現象などの陰圧ではない原理を利用して、排液を体外に出す方法です。
ドレーンの形状の種類

ドレナージで使用するドレーンの形状は、大きく分けて下記の4種類があります。
主な形状 | 特徴 | 主な用途 | |
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フィルム型ドレーン |
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チューブ型ドレーン |
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サンプ型ドレーン |
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ブレイク型ドレーン |
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看護師はドレーンの形状による違いを理解して、ドレナージ方法に適したドレーンを使えるようにしましょう。
ドレーン管理で行うこと

ドレーンは身体にとって異物であり、できるだけ早く除去する必要があります。
ドレーンの早期除去をするためには、ドレーンを留置している患者さんに異常がないかを観察し、感染トラブルにも気を付けましょう。
最後に、看護師がドレーン管理で行う4つのことを解説します。
ドレーンの固定
ドレーンの刺入後に、脱落・自然抜去や先端のズレを防ぐためにドレーンをテープで固定します。下記のポイントを押さえてドレーンを固定しましょう。
- 刺入部の観察ができるように透明のドレッシングで固定することが望ましいが、浸出液がある場合はガーゼで保護した上にドレッシングやテープで固定することもある。
- テープが剥がれにくくなるよう、テープの角を丸く切る。
- ドレーンを皮膚から少し浮かせるように固定して、皮膚の圧迫を防ぐ。
- テープは毎日交換する。
また、ドレーン留置によって患者さんは日常生活動作(ADL)の制限を受けます。ADLの制限が大きくなりすぎないように、ドレーンは適切なゆとりを持たせて固定することが大切です。
ドレーン排液の変化の確認
ドレーンから排液採取を行って、排出量・色・性状などの変化を確認します。排液の変化は、異常の早期発見につながる要素です。
例として血性の排液が多量に出ている場合は、術後出血の可能性があります。
また、排液が急に出なくなった場合には、ドレーンの閉塞や屈曲が考えられるでしょう。
排液の異常が確認できた場合は医師に報告し、トラブル対応や感染対策などを行う必要があります。
ドレーン刺入部の観察
ドレーン刺入部はドレーンと皮膚組織が接触しているため、異常が生じやすい部位です。発赤・腫脹などの感染兆候や、滲出液・ドレーンとの接触による皮膚トラブルが起きていないかを観察しましょう。
また、ドレーンが留置位置から動いていないか、ドレーン内部の閉塞が起きていないかも確認が必要です。必要に応じてドレーンの再固定や、ミルキングローラーなどを用いた閉塞解消を行います。
ただし、ミルキングが禁忌とされているドレーンもあるため、閉塞解消は適切な方法で行ってください。
患者さんの苦痛の観察とケア
ドレーンを装着している患者さんの状態を観察し、苦痛やストレスなどが見られる場合はケアを行います。
患者さんの観察では、ドレーンによる痛みや不快感がないかをヒアリングします。ほかにも、体位変換時にドレーンが引っ張られていないかや、ドレーンの装着による心理的負担がないかも確認しましょう。
患者さんの心身や日常生活動作にかかる負担を軽減することで、ドレーンによる異常の発生を予防しやすくなり、ドレーンの早期除去につながります。
まとめ
ドレナージの方法は、使用目的・排出方式・物理的原理の3軸で分類され、それぞれに応じて最適なドレーン形状も異なります。また、ドレーン管理では、固定の方法や排液の確認、刺入部の観察、患者さんの苦痛に対するケアなど、複数の視点から継続的な観察と対応が必要です。ドレーンは異物であるため、できる限り早期に除去できるよう、日々の看護ケアで患者さんの状態に気付けるアセスメントが求められます。
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※当記事は2025年4月時点の情報をもとに作成しています
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