心疾患とは? 虚血性心疾患の種類・治療方法も紹介
  • 2024年11月23日
  • 2024年11月21日

心疾患とは? 虚血性心疾患の種類・治療方法も紹介

 

心疾患は、心臓の働きに何らかの異常が起きて血液循環がうまくいかなくなることによって起こる病気の総称であり、いわゆる「心臓病」です。

日本人の死因として、心疾患は男女を問わず上位に位置しています。加齢や日常生活における習慣、さらに高血圧や糖尿病などの基礎疾患が影響することから、予防と早期発見の重要性が強調されています。

そこで今回は、心疾患の概要から主な種類、さらに治療方法まで詳しく紹介します。医療に関する知識を増やしたいと考えている看護師の皆さんは、ぜひご覧ください。

心疾患とは?

心疾患とは、心臓に異常が生じて血液循環が妨げられる病気の総称です。通常、人間の心臓は血液を全身に送り出すポンプとして重要な役割を担っています。しかし、心臓の構造や機能に何らかの異常が生じると正常な血流が保たれなくなり、血液の循環不全が起こります。その結果として引き起こされる疾患が、心疾患です。

心疾患には加齢や生活習慣が原因となるもののほか、高血圧や糖尿病などの基礎疾患が影響するものまでさまざまな種類があります。

加齢や生活習慣が原因で発症する心疾患は「虚血性心疾患」です。心疾患の大部分を占めていることから、予防と早期発見の重要性が特に強調されています。
(出典:スマート・ライフ・プロジェクト「心疾患」

心疾患が怖い理由

心疾患は、日本人の死因として男女問わず上位に位置しており、がんに次いで死亡率の高い病気とされています。それもそのはず、心臓は全身に血液を送り出すための重要な臓器であり、心臓の停止は「死」を意味するといっても過言ではありません。

また、心疾患が恐ろしい病気とされる理由は、無症状の間に徐々に進行するためです。健康だと思って過ごしていたはずが、ある日発作を起こして突然死するケースも決して珍しくありません。事実、働き盛りの方を襲う突然死の多くは心臓のトラブルによるものです。なお、突然死とは「症状の出現から24時間以内に死亡すること」を指します。

健康に問題がなく日々熱心に働いている方にとって、心疾患は身近に感じるような病気ではないでしょう。しかし、前述の通り心疾患による突然死は決して珍しくありません。万が一自動車の運転中に発作が起きた場合は周囲にいる他人を巻き込む可能性もある点を考えると、心疾患がどれほど怖い病気なのかをより深く理解できるでしょう。
(出典:全国健康保険協会「【心疾患】 「がん」に次いで死亡率の高い病気」
(出典:厚生労働省「令和5年(2023)人口動態統計月報年計(概数)の概況 結果の概要」

心疾患(虚血性心疾患)の種類

心疾患(虚血性心疾患)の種類

心疾患には、虚血性心疾患や心不全、不整脈、心筋症などのさまざまな疾患があります。なかでも、心疾患の大部分を占めるのが虚血性心疾患です。

虚血性心疾患とは、動脈硬化や血栓などが原因で心臓の血管が狭くなり、心筋(心臓の筋肉)に血液が行き渡らなくなることで心臓が酸素不足に陥る状態を指します。発症には生活習慣が大きく関係するとされており、特に高血圧症・高脂血症(脂質異常症)・糖尿病(高血糖)・喫煙は虚血性心疾患の4大危険因子となっています。

また、虚血性心疾患には「狭心症」と「心筋梗塞」の2種類があります。ここからは、それぞれの概要を分かりやすく説明します。
(出典:全国健康保険協会「【心疾患】 「がん」に次いで死亡率の高い病気」

狭心症

狭心症とは、動脈硬化によって心臓を取り巻く冠動脈が一時的に狭くなり、心筋に必要な酸素・栄養が十分に供給されなくなった状態を指します。

普段は無症状であることが多いものの、運動時や過度な飲酒時のほか、ストレスを感じたときなど心筋の酸素消費量が高まった際には、必要な血流が得られないことによって胸部に痛みや圧迫感・締め付け感、さらに息切れを感じることが特徴です。こうした狭心症の発作は、基本的に数分から長くても15分程度の短時間で治まることが多くなっています。

また、狭心症には「安静時狭心症(異型狭心症)」と「労作性狭心症」の2つのタイプがあります。安静時狭心症は早朝や就寝中に、労作性狭心症は激しい運動をしたときに発作が起こりやすいことが特徴です。
(出典:健康長寿ネット「狭心症」

心筋梗塞

心筋梗塞とは、冠動脈が血栓などで完全に閉塞することで心筋への血流が途絶え、心臓の収縮機能が失われた状態を指します。心筋梗塞の主な原因は、狭心症と同じく主に動脈硬化です。動脈硬化のリスク因子としては、喫煙や高血圧、糖尿病などが含まれます。

一般的な心筋梗塞の症状には、胸痛・呼吸困難・めまい・動悸・吐き気などが挙げられます。特に胸の痛みは非常に強いことが特徴で、焼けるような痛みが15分以上続く場合もあります。狭心症の症状に似ていますが、安静にしても症状がおさまらない点が違いです。

また、随伴症状として、肩や腕、首に痛み、歯の痛みがひろがったりすることもあります。男性では冷や汗を伴うことが多く、女性は呼吸困難や吐き気をもよおすことがあります。

しかし、高齢者や糖尿病患者さんは発作症状を自覚しにくく、「疲れやすいだけ」「食欲がないだけ」と勘違いすることも多々あります。健康診断の心電図異常で初めて指摘されるというケースも珍しくありません。

一時的な症状であることの多い狭心症と比べて、心筋梗塞はより深刻な状況です。心筋梗塞の発症から1か月以内の状態を指す急性心筋梗塞の死亡率は高く、死亡例の約半数は発症数時間以内に集中しているため、早期発見・早期治療が特に重要となります。
(出典:健康長寿ネット「心筋梗塞」

心疾患の治療方法

心疾患の治療方法

「心疾患は恐ろしい病気」というイメージを強くもつ方も多くいますが、実際には早期治療によって大きく改善するケースがほとんどです。

心疾患の治療方法には、薬物療法やカテーテル治療などさまざまなものがあり、症状や進行度、さらに患者さんの健康状態に応じて治療法が適用されます。適切な治療を受けることで、心疾患の進行を抑えることが可能です。

最後に、心疾患の主な治療方法4つをそれぞれ詳しく紹介します。
(出典:厚生労働省「働く世代のあなたに 心疾患の治療と仕事の両立 お役立ちノート」
(出典:厚生労働省「心疾患に関する留意事項」

薬物療法

薬物療法とは、薬を服用して症状を管理し、心臓機能の維持・改善を目指す治療方法です。主に初期段階の心疾患や慢性的な症状のコントロール、さらに再発予防を目的に広く用いられています。

薬物療法では多くの場合、心臓の負担を減らしつつ心筋へのダメージを軽減できる「心筋保護薬」が処方されます。また、狭心症の患者さんには心臓への負荷を軽減できる「硝酸薬」や「β遮断薬」が、虚血性心疾患や心房細動の患者さんには血栓の発生を防ぐ「抗血小板薬」や「抗凝固薬」が用いられます。

薬物療法は継続的な服用が必要となる場合が多く、生活習慣の改善やほかの治療方法と併せて実施されることが一般的です。

カテーテル治療

カテーテル治療とは、足の付け根や手首などの動脈に「カテーテル」と呼ばれる細い管を挿入する治療方法です。主に、虚血性心疾患の治療に用いられています。

カテーテル治療では、冠動脈の狭窄・閉塞部分にバルーンを膨らませて血管を広げた後、ステントを挿入して狭窄・閉塞の改善を目指します。なお、頻脈性不整脈の患者さんにおいては、不整脈の要因となっている場所を電流で焼く「アブレーション(焼灼)」という治療にもカテーテルが用いられます。

医療行為の区分としては手術に分類されるものの、開胸手術に比べて患者さんへの負荷が少なく、入院期間も短いことが特徴です。

デバイス治療

デバイス治療とは、ペースメーカーや植込み型除細動器(ICD)などの医療機器を使って心臓の電気的機能を調整し、症状の改善や突然死の予防を目指す治療方法です。主に、不整脈の治療に用いられます。

徐脈性不整脈の患者さんに対しては、心臓を刺激することによって脈拍を正常に保つことのできるペースメーカーを植え込むのが基本です。これまでの日常生活とほぼ同じ生活を送ることができますが、ペースメーカーが体内にあると、自宅の家電で注意が必要になるものがあり、直接身体に電気を通すもの、外へ強い電磁波を出すものの使用は避けるなど、退院指導も必要です。

致死的不整脈やそれによる突然死リスクの高い患者さんに対しては、心室細動などの危険な不整脈が発生した際に自動的に電気ショックを与え、正常な心拍に戻す植込み型除細動器を用います。

これらのデバイスはいずれも、長期的に心臓機能を補助し、突然死のリスクを軽減する役割を果たします。手術は局所麻酔で行われることが多く、外科的手術よりも負担が少なくなっています。

外科的手術

外科的手術とは、医師による開胸手術で心臓の問題の直接的な対処・改善を目指す治療方法です。主に薬物療法やカテーテル治療では効果の得られなかった重度の心疾患患者さんに対して、冠動脈の狭窄や心臓弁の異常を修復するために行われます。

心疾患の種類により、異なった種類の手術を実施することが必要です。たとえば虚血性心疾患の患者さんには、狭窄・閉塞した冠動脈を迂回させるための「冠動脈バイパス手術」が行われます。

外科的手術は、長期的な予後改善に効果的である一方、ほかの治療方法に比べて入院期間が長く、手術後のリハビリも不可欠です。しかし、これまでは全身麻酔下で人工心肺を使用する開胸手術が一般的でしたが、近年では「人工心肺を用いない・心臓を止めない」という負担の少ない手術も行われています

まとめ

心疾患は、心臓機能の異常を原因とした血液の循環不全によって起こる、心臓の病気の総称です。多くの方は心疾患を「怖い病気」とイメージしていますが、早期発見・早期治療によって大幅な改善も見込まれます。心疾患管理においては、生活習慣の改善はもちろん、定期的な健康診断や医療機関の受診・検査も大きな役割を果たすでしょう。

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※当記事は2024年9月時点の情報をもとに作成しています

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