看護師にとって、医療についての深い知識や看護技術と同様に重要なスキルがコミュニケーション能力です。患者さんの話を傾聴してアセスメントを行い、医師やリハビリ職、技術職など多様な医療職の方と情報を適切に共有してケアする力は、あらゆる看護業務で必要になります。患者さんと医療職双方と円滑にコミュニケーションできるようになれば、より患者さんを適切にケアできるようになるでしょう。
この記事では看護師に求められるコミュニケーションスキルや、スキル向上に使える技術、高めるポイントを解説します。
看護師にとってコミュニケーションが大切な理由
看護師として働くうえで、患者さんやほかのスタッフとのコミュニケーションは非常に重要です。
病院を訪れる患者さんは、病気の症状や治療に対して不安・ストレスを抱えていることも少なくありません。通院や入院にかかる経済的な負担や仕事の調整に加え、家事・育児への取り組み方なども不安要素になり得ます。
看護師が積極的にコミュニケーションを図れば、患者さんの不安感を和らげることが可能です。対話を通じた関係構築により、患者さんは自身の抱える不安・疑問を打ち明けやすくなります。
コミュニケーションスキルを磨くと医療説明がより分かりやすくなる効果も期待でき、治療の円滑化にもつながるでしょう。
また、病院で働くスタッフには、医師や看護師のほか、理学療法士、作業療法士などのさまざまな職種があります。それぞれの職種で作業空間が分けられている場合が多いため、チーム医療において情報共有はもっとも重要となります。
多職種が良好な人間関係を築いてワンチームとして協働するには、スタッフ間の円滑なコミュニケーションが不可欠です。
看護師のコミュニケーションスキル向上に使える技術3つ

日本看護協会では、職場や担当業務にかかわらず、すべての看護師に求められる能力として「看護実践能力」を定めています。看護実践能力は、「専門的・倫理的・法的な実践能力」「臨床実践能力」「リーダーシップとマネジメント能力」「専門性の開発能力」の4つに分かれます。
(出典:日本看護協会「看護師のまなびサポートブック」)
看護実践能力の1つである「臨床実践能力」とは、患者さんの特性に合わせた適切な看護を提供するため、状況に応じた判断・行動をする能力です。
臨床実践能力は、以下の4つの構成要素に分類されます。
【臨床実践能力の構成要素】
能力の構成要素 | 能力および構成要素の定義 |
---|---|
ニーズをとらえる力 | 体系的な情報収集とアセスメント(整理・分析・解釈・統合)を行い、看護問題の優先順位を判断し、記録共有する。 |
ケアする力 | ケアの受け手とのパートナーシップのもと、それぞれの状況に合わせた看護計画を立案・実施・評価し、実施した看護への対応を行う。 |
意思決定を支える力 | ケアの受け手や関係者との信頼関係と対話、正確かつ一貫した情報提供のもと、ケアの受け手がその人らしく生きるための意思決定を支援する。 |
協働する力 | ケアの受け手や保健・医療・福祉および生活に関わる職種・組織と相互理解し、知識・技術を活かし合いながら、情報共有や相談・提案等の連携を図り看護を実践する。 |
臨床実践能力の4つの構成要素では、どの項目でも患者さんや医療スタッフとのコミュニケーションスキルが必要です。
ここでは、看護師がコミュニケーションスキルを磨くために備えるべき技術について詳しく解説します。
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傾聴
傾聴とは、相手の話を聞いて心に寄り添うことです。口から出た言葉をそのまま受け止めるだけでなく、表情や話し方から真意を汲み取り、共感・受容するのがポイントです。
看護師が傾聴の姿勢を心がければ、患者さんは安心して自分の気持ちや悩みごとを話せます。傾聴力を身につけて患者さんとよい関係性を築ければ、普段の関わりや治療がスムーズになるでしょう。
また、看護における傾聴では、看護師がいつでも見守っており、役に立ちたいと考えていることを患者さん自身に実感してもらうのも大切です。
リフレーミング
リフレーミングとは、物事をとらえる際の枠組みを外し、異なる枠組みに変えることです。簡単にいえば、自分の中のイメージや考え方を柔軟にして、物事の見方を変える思考方法を表します。
リフレーミングのメリットは、ネガティブなイメージをポジティブなイメージへと変化させられる点です。例として、患者さんから「なぜ自分が病気になったのだろう」と投げかけられた場合には、以下のような声掛けができます。
- 「疲れが溜まっていた身体からのSOSだったのかもしれませんよ」
- 「無理し続けて体を壊す前にしっかりとケアできてよかったです」
リフレーミングを活かしたコミュニケーションができれば、患者さんが前向きに治療に取り組めるでしょう。
アサーティブ・コミュニケーション
アサーティブ・コミュニケーションとは、自分と相手の両方を尊重した対話技法を指します。まずは自分の意見や思いを正確に伝え、その後、相手の自己表現を受け止めるのが基本の流れです。
看護師のなかには、患者さんの役に立ちたい、優しくありたいという思いから、患者さんに自分の意見を伝えにくいという人もいます。また、スタッフ間において、先輩看護師や医師にはっきりと自分の考えを述べられない場面もあるでしょう。
アサーティブ・コミュニケーションを取り入れることで、「話す」「聞く」の両方を大切にした対話ができます。注意点として、言葉遣いやタイミングなどの基本マナーを忘れず、状況に応じた対応を意識しましょう。
コミュニケーションスキルを高めるために気を付けるポイント

看護師がコミュニケーションスキルを高めるためには、いくつかのポイントを押さえることが重要です。ここでは、患者さん・ほかの医療スタッフのそれぞれの場合に分けて、気を付けるべきポイントについて解説します。
【患者さんに対して】ゆっくり話をする時間をつくる
患者さんと円滑なコミュニケーションを図るには、ゆっくり話をするための時間の確保や環境づくりが不可欠です。患者さんとコミュニケーションを取りたい時間帯を決めたら、チーム内のスタッフに伝えて協力を仰ぎましょう。
看護師が業務をしながら会話する・話の途中で何度も離席するなどの状況下では、患者さんは落ち着いて話すのが難しくなります。事前にほかのスタッフに伝達しておけば、その時間はゆっくりと話せるよう配慮してもらえるでしょう。
大部屋の患者さんの場合は、場所を変えて個室を用意するのも有効です。また、看護師側の都合を押し付けないよう、患者さんの体調や気分に合わせてコミュニケーションの場をセッティングするのが重要です。
【患者さんに対して】オープンクエスチョンで質問する
質問には、「オープンクエスチョン」と「クローズドクエスチョン」の2種類があります。
オープンクエスチョンとは、はい・いいえでは答えられない質問です。具体的には「どのような症状がありますか」「治療はどうでしたか」などの質問が該当します。
対して、クローズドクエスチョンとは、はい・いいえで答えられる質問です。「痛みを感じますか」「説明は理解できましたか」などの質問が該当します。
クローズドクエスチョンは患者さんの受け応えを限定することになるので、不安や疑問があっても自分からは切り出せないという場合も少なくありません。オープンクエスチョンを活用すれば、患者さんとのスムーズなコミュニケーションのきっかけとなるでしょう。
【ほかの医療職者に対して】話の要点を復唱する
スタッフから指示・指導を受けたときやチーム内で情報共有があったとき、「分かりました」と返事をするだけでは、相手は何がどこまで伝わっているのかを把握できません。
医療現場では次々と業務が押し寄せてくるため、情報伝達のミスを防ぐのは非常に重要です。会話の最後に要点や合意内容を復唱すれば、正しく情報が伝わっているのを双方が確認できるうえ、口に出すことで自分の記憶にも定着しやすくなります。
また、要点・合意内容の復唱は、相手の話をしっかり聞いているという傾聴の姿勢を示せる点でもメリットです。
【両方に対して】表情やボディランゲージを活用する
コミュニケーションには「言語的コミュニケーション」「非言語的コミュニケーション」の2つがあります。
言語的コミュニケーションは、文字通り言葉を通したコミュニケーションです。対して、非言語的コミュニケーションは、表情や声のトーン、ボディランゲージなど、言葉以外の要素を指します。
対話において相手に与える印象は、非言語的コミュニケーションから読み取れる内容が大半を占めるとされています。そのため、患者さん・ほかの医療職者のどちらにおいても、表情やボディランゲージを活用することは非常に有効です。
また、自分が話を聞く側のときには、相槌の打ち方やトーンに気を付けると好印象を与えられます。
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まとめ
看護師にとって、患者さんおよびほかの医療スタッフ双方と円滑なコミュニケーションを行う力は重要です。
患者さんに対してはゆっくりと会話できる時間を取り、オープンクエスチョンで話すとコミュニケーションを取りやすくなります。また、ほかの医療職と報連相をするときには、相手が伝える内容の要点を復唱するとコミュニケーションエラーを防げます。患者さん・スタッフどちらに対しても、非言語的コミュニケーションを活用し、相手の話を聞き、伝える力を身につけてください。
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※当記事は2023年11月時点の情報をもとに作成しています
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