• 2023年9月16日
  • 2023年11月10日

准看護師は通信制で看護師資格を取得できる? 費用やメリットを解説

 

看護師国家試験の受験資格は基本的に養成学校に通うことでしか取得できないものの、准看護師として働いている方は通信制の学校でも受験資格を得られます。ただし、通信制の学校で資格取得を目指す場合は、一定の実務経験やスクーリングが必要となります。

当記事では、准看護師さんが看護師資格を取得するときの流れや学費について詳しく解説します。准看護師から看護師にスキルアップするメリットも解説するため、准看護師の方が自らのキャリアを見つめなおすきっかけにしてください。

看護師資格・准看護師資格は通信制学校で取得できる?

看護の資格には、厚生労働大臣発行の国家資格である「看護師」と、都道府県知事発行の免許である「准看護師」の2種類があります。看護師と准看護師は、業務内容に大きな違いはありません。しかし、看護師は自らの判断で看護を提供できるのに対し、准看護師は、医師・歯科医師または看護師の指示のもと、看護業務を行います。看護師・准看護師になるためには、基本的には養成学校に通うことが必要です。

看護師になるには、高校卒業後に3年以上の看護師養成所に通い、看護師国家試験への合格を目指します。養成学校とは、4年制の看護大学もしくは3年制の看護短期大学・看護専門学校です。中卒で看護師を目指す方は、5年一貫看護師養成過程校に通います。ただし、一定の要件を満たした准看護師は、通信制学校で看護師資格を取得することが可能です。

准看護師になるためには、中学校もしくは高等学校卒業後に、准看護師学校養成所に2年間通い、都道府県が実施する准看護師試験に合格する必要があります。准看護師は、看護師に比べ受験資格を得るまでの期間が短く、費用も抑えられるのが特徴です。

准看護師の制度は、戦後の急激な病院増設にともなう、看護師需要の高まりに対応するために生まれました。当時は女子の高校進学が一般的ではなかったため、准看護師の要件は中学校卒業となっています。しかし現代では、医療の高度化が進み、准看護師免許の取得課程では、教育内容と時間が不足していると指摘されています。日本看護協会では、准看護師の養成停止に取り組んでいるため、准看護師の方は、看護師免許の取得を目指すとよいでしょう。
(出典:公益社団法人 日本看護協会「准看護師制度について」

准看護師が通信制で看護師資格を取得するには?

准看護師が通信制で看護師資格を取得するには?

准看護師が通信制で看護師資格を取得するには、看護職として7年以上の実務経験が必須です。就業場所(福祉施設、訪問看護等)や就業形態(常勤、非常勤、パート等)は問われません。

通信制では、52単位以上の理論学習に加え、16単位以上の臨地実習を履修します。臨地実習は、紙上事例演習、病院見学実習、面接授業(スクーリング)などです。紙上事例演習は24事例程度とされており、病院等の見学実習は16日以上、面接授業は24日以上、対面による授業は10日以上と定められています。

通信制は、養成校によってスクーリングの日数や日程が異なります。仕事や家庭と両立しながら学習計画を立てられる学校を選ぶことが大切です。科目ごとに、複数の登校日を設けている学校もあります。

学校によっては、放送大学を併用したカリキュラムもあります。放送大学とは、文部科学省と総務省所管の通信制大学です。放送大学は15歳以上なら誰でも入学でき、全国どこでも放送による授業を受けられます。放送大学で修得した単位は、各養成学校の判断により、最大34単位まで卒業単位として認定できます。放送大学との併用カリキュラムがある学校に進学する場合は、入学前に放送大学での単位を修得しておくと、余裕を持って学習できるでしょう。
(出典:放送大学「看護師国家試験の受験資格」
(出典:公益社団法人 日本看護協会「准看護師が看護師資格を取得するには?」

准看護師が通信制学校に通うときにかかる費用

准看護師が通信制学校に通うときにかかる費用

通信制学校に通うときにかかる費用は、入学金、授業料、教科書代、ユニフォーム代、学校や実習先までの交通費などです。また、養成所入学前には、受験料や学校説明会に参加するための交通費や宿泊費、入学後は、健康診断や感染症抗体検査費などの諸経費もかかります。通信制の学費(入学金、授業料、通信費)は、2年間で100万円以上かかることが一般的です。

放送大学と併用した学習を行う看護師養成学校では、上記に加えて放送大学への入学金・授業料が、通信課程とは別途でかかります。放送大学の授業料は、養成校で必要とされる単位数によっても変わります。

実際にかかる費用は養成校によって異なるため、あらかじめ資料請求や学校説明会で確認し、生活費も含めた無理のない資金計画を立てておくと安心です。

利用できる奨学金

准看護師の通信制学校進学を支援するために、さまざまな奨学金制度や給付制度があります。制度を利用する条件や方法を確認し、必要に応じて活用しましょう。ここでは、代表的な支援制度を解説します。

  • 看護師学校養成所2年課程(通信制)進学者に対する奨学金
    日本看護協会による奨学金制度です。貸与額は年額36万円または48万円で、無利息・貸与型であり、金利がかかりません。応募要件は、①日本看護協会の会員であること、②看護師学校養成所2年課程(通信制)に在籍しているか入学許可があることの2点です。就業先や居住している都道府県などの条件は問われません。
    (出典:公益社団法人 日本看護協会「看護師学校養成所2年課程(通信制)進学者に対する奨学金」
  • 教育訓練給付制度
    厚生労働大臣が指定する教育訓練を修了した際に、受講費用の一部が支給される制度です。対象となる教育訓練は3種類に分かれており、看護師資格取得の場合は、最大で受講費用の70%が支給されます。教育訓練給付を受けるには、雇用保険の加入期間などの条件があります。給付条件の詳細はハローワークで確認可能です。
    (出典:厚生労働省「教育訓練給付制度」
  • 高等職業訓練促進給付金
    資格取得を目指すひとり親に向けた、生活費を支援する給付金制度です。訓練期間中は月額10万円(住民税課税世帯は月額70,500円)、訓練終了後は5万円(住民税課税世帯は25,000円)の支給を受けられます。訓練を受けている期間の最後の1年間は、支給額が4万円増額されます。対象者は、①児童扶養手当の支給を受けているか、同等の所得水準にある人、かつ②養成機関で6月以上のカリキュラムを修業し、資格取得が見込まれる人です。
    (出典:厚生労働省「高等職業訓練促進給付金のご案内」

上記のほか、日本学生支援機構、都道府県等自治体や病院などが独自に設けている奨学金制度などもあります。

准看護師が通信制で看護師を目指すメリットは?

准看護師が通信制で看護師を目指すメリットは?

准看護師が通信制で看護師を目指すことは、さまざまなメリットがあります。ここでは、主なメリットとして「働きながらキャリアアップできる」「看護の現場でできることが増える」の2点を紹介します。

働きながらキャリアアップできる

准看護師の方は、通信制で看護師資格を取得することで、働きながらキャリアアップできます。全日制の場合、日中に登校するため業務から離れる期間が必要です。定時制は仕事を続けながらでも通えますが、通学時間を考えると通信制のほうが余裕を持って学習できるでしょう。

スクーリングや実習は必要ですが、毎日通学するわけではありません。通信制だと比較的スケジュールを組みやすく、仕事を続けたい方や子育てをしている准看護師の方でも看護師を目指せます

看護の現場でできることが増える

看護師と准看護師の大きな違いは、自己判断で看護業務を行えるかどうかです。看護師になると、自分の判断で臨機応変に業務を行えるだけでなく、准看護師に指示を出すこともできます。自ら看護計画の立案を行い、業務の効率化を進めることも可能です。

看護師は准看護師に比べて業務の幅が広く、待遇面でもメリットがあります。看護師を目指すと、年収アップや管理職への昇進、希望条件にあった職場への転職などが見込めます。待遇が良くなると、仕事のやりがいにもつながるでしょう。

日本看護協会は、准看護師の教育課程について、現代の医療においては内容や時間が不十分だとしており、看護師への一本化を目指しています。准看護師制度は、将来的に廃止される可能性もあるため、准看護師の方は看護師資格取得を目指すとよいでしょう。

まとめ

准看護師の資格を持っている方は、7年以上の実務経験があれば通信制の学校に通うことで看護師国家試験を受験できます。自らの判断で看護業務を行えない准看護師は、将来的に制度が廃止される可能性もあるため、看護師資格の取得を目指すとよいでしょう。取得を促す奨学金制度や給付金制度も多く用意されています。

通信制の学校に通う場合、一定日数のスクーリングや病院見学実習が必要です。働きながら勉強する方は、職場と相談しながらスケジュールを立てましょう。

※当記事は2023年7月時点の情報をもとに作成しています

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