看護現場では、看護師が患者さんに対してさまざまなケアを行います。そのなかでも、身体的な理由で全身浴が困難となった患者さんに対し、清潔維持や血液循環の促進を目的に行うケアが「足浴(そくよく)」です。
足浴は、患者さんの身体面での負担が少なく、かつリラクゼーション効果が期待できるため、看護現場だけでなく介護現場でも主に行われている有効性の高いケアといわれています。
今回は、看護師として活躍するなら知っておきたい足浴の概要から目的、行う流れ、注意点までを詳しく解説します。足浴の目的や方法、基礎知識をしっかり把握して業務に活かしたいと考える看護師さんは、ぜひ参考にしてください。
そもそも足浴とは?
足浴(そくよく)とは、その名の通り患者さんの足のみお湯につけ、ふくらはぎあたりから足首、足先までの足全体を洗浄するという入浴方法のことです。身体の一部のみをお湯につける入浴方法を指す「部分浴」の1つで、主に病気やけがによって毎日の全身浴が困難となった寝たきりの患者さんに行うケアとなっています。足浴以外の部分浴としては、手浴・陰部洗浄が挙げられます。個人差はあるものの、毎日や2日に1回など高い頻度で行うことが特徴です。
足浴は、看護師にとってさほど重要な知識ではないと考える方も多いでしょう。しかし、訪問看護や臨床では積極的に行うことも多く、看護現場でも取り入れられている重要なケア方法となっています。
看護師が知っておきたい足浴の目的

看護現場において、患者さんに対する足浴は欠かせないケアと説明しました。しかし、なぜ足浴を行うのか、その目的を詳しく知らない看護師さんもいるのではないでしょうか。
足浴の最大の目的は「足を清潔にする」ことですが、それだけではありません。ここからは、足浴の主な目的を4つ紹介します。
足を清潔にする
前述の通り、足浴の最大の目的は足を清潔にすることです。寝たきりの患者さんは、問題なく歩行できる人と比べて足が汚れることは少ないものの、寝ている間の汗やほこり・菌などの付着は避けられません。
足が不衛生なまま放置すると、菌の発生・増殖や感染症にもつながります。また、足に創傷がある場合はそこから治癒が遅くなる可能性もあるでしょう。
しかし、足浴で足をしっかりと洗い、清潔な状態を保つことによってこれらを防げます。単純に足を清潔にできるだけでなく、足を清潔にすることであらゆるメリットが得られるということも覚えておきましょう。
血行を促進する
足浴のもう1つのメリットが、血行の促進です。身体の末端にある足は、血流が滞りやすいという特徴をもっています。血行が悪くなると循環機能も低くなり、むくみなどのさまざまな症状につながります。
足浴は温かいお湯で足全体をマッサージしながら優しく洗うため、全身の血行促進効果が期待できるでしょう。循環機能が高まって老廃物の排出がスムーズとなり、結果としてむくみの緩和や床ずれの予防につながります。
足の状態を観察する
寝たきりの患者さんのなかには、足に痛みやかゆみがあるものの、なかなか上手に伝えられないというケースもあります。しかし、日頃の看護業務において患者さんの足をしっかり観察できる機会はほとんどありません。また、靴下を履いて過ごす患者さんも多いため、患者さんの足の皮膚に何らかの異常が起きても気付きにくいといえます。
しかし、足浴を行って患者さんの足の状態をしっかり観察することによって、見落としがちな足の異常の早期発見につながります。したがって、足浴は患者さんの足の状態を観察するためにも重要なケアといえるでしょう。足浴の際は、患者さんの足の皮膚の変色や乾燥がないかに加えて、爪の状態も注意深く観察することがポイントです。
リラックス効果を促す
病気やけがなどで毎日の全身浴が難しい患者さんにとって、足浴は非常に心地よいものです。足をきれいに洗うことで爽快感が得られるだけでなく、筋肉の疲れの軽減・足のしびれの緩和にも効果的といえるでしょう。
また、足浴と組み合わせてふくらはぎ周辺のマッサージも行えば、さらなるリラックス効果が期待できます。全身の血流が促進されることで、副交感神経が優位になり、睡眠促進効果も得られるでしょう。このようなリラックス効果を得るために、足浴を積極的にしてもらいたがる患者さんも少なくありません。
看護現場での足浴の流れ

看護師が患者さんに足浴を行う際は、基本的に次のような手順で実施します。
STEP(1) | 患者さんに声掛けをし、足浴の同意を得る |
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足浴スタートの前に、まずは患者さんに足浴する旨を伝えて、同意を得ましょう。足浴中、患者さんは自由に動けないため、事前に尿意・便意がないかの確認が必須です。 |
STEP(2) | 足浴環境を整える |
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患者さんから足浴の同意を得たら、室内の周辺環境を整えます。患者さんが寒さを感じないよう適切な室温に設定し、周りのものが濡れないよう移動させましょう。 必要に応じて、ケアをしやすくするため動線を整えます。また、患者さんの表情が見えやすくなるため、あらかじめ患者さんに説明したうえで、看護師の腰の位置までベッドの高さを上げるなどの調整も行います。 |
STEP(3) | 患者さんの体位を整える |
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上半身を起こせる患者さんの場合は、足底部が床につくようベッドの高さを調整します。上半身を起こせない患者さんの場合は、まず横になってもらったまま膝を曲げて、枕やクッションで身体・姿勢の安定を確保します。その後防水シートを敷いて、お湯の入ったバケツや洗面器を乗せるという流れが基本です。 |
STEP(4) | 足浴を開始する |
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患者さんの体位を整えた後は、いよいよ足浴を開始します。最初は足にゆっくりとお湯をかけてから、片足ずつゆっくりと浸水させます。その後ガーゼで石鹸を泡立ててから、指の間のしわ、爪甲などに洗い残しがないよう丁寧に洗いましょう。 |
STEP(5) | タオルで水分を拭き取る |
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両足を洗い終えた後は、ペットボトルなどに入れておいたかけ湯用のお湯をかけて片足ずつ石鹸を流し、バケツから足を出して水分をバスタオルでしっかりと拭き取りましょう。必要に応じて、爪切りをする・保湿クリームを塗ることもあります。足浴後に患者さんが痛がっている・寒がっている・皮膚状態に異常があるといった問題がないことを確認します。最後に患者さんの転倒予防のため床が濡れていないか確認し、もし濡れていた場合は拭きます。以上で足浴終了です。 |
看護師が足浴の際に注意すること

足浴を行う際は、看護師の立場から注意すべきポイントがいくつかあります。
足浴の際に注意すべきポイント |
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これらのポイントに注意しておかなければ、かえって患者さんの負担となる可能性もあります。患者さんが足浴に対して消極的にならないよう、それぞれのポイントをしっかりおさえておきましょう。
冷え対策
足浴では温かいお湯を使用するため、洗っている最中は身体を冷やす心配がありません。しかし、足浴に時間がかかると湯温徐々に低くなるうえ、患者さんの体力を余分に消耗させる原因にもなるため、15分程度を目安に行いましょう。
また、15分以上足浴をすると体が温まりすぎたことによって汗をかき、かえって体温が奪われます。15分程度はあくまでも目安であり、実際には患者さんの状況を見ながら汗をかかない程度の時間で終了させることが大切です。
お湯の温度
足浴を行う際の適切な温度は、40℃前後とされています。しかし、看護師の手と患者さんの足とでは、当然感じる温度が異なります。40℃前後のお湯を入れた後は、看護師が必ず手で温度を確認したのち、患者さんの足にお湯を触れさせて「熱くないですか? 」と確認しましょう。
また、足浴中はバケツや洗面器に入っているお湯が徐々に冷めていきます。患者さんが寒さを感じないよう、冷たくないかどうかも定期的に確認するとよいでしょう。
時間帯
足浴の効果を最大限高めるためには、足浴を行う時間帯も意識しておきましょう。
最も推奨される時間帯は、昼食を食べてから少し時間が経ったくらいです。加えて、お昼寝前の時間に行うとよりスムーズに睡眠できるでしょう。日中は気温が高いことも相まって、最大限のリラックス効果が期待できます。
しかし、食前・食後すぐの足浴は避けたほうがよいとされています。なぜなら、胃の働きが低下して消化不良を引き起こす可能性があるためです。
たとえば、12時に昼食をとってから15時にお昼寝をする場合は、14時~14時30分の間に足浴を行うとよいでしょう。
足の状態
前述の通り、足浴は患者さんの足の状態を観察できるよい機会でもあります。足浴をしながら患者さんの足の状態を観察する際は、下記のポイントをチェックしておきましょう。
- 皮膚の乾燥がないか
- 皮膚が変色していないか
- 循環障害や浮腫がないか
- 皮膚トラブル(けが・赤み・腫れなど)がないか
- 異常な臭気がないか
- 爪が長く伸び切っていないか
- 爪の状態は正常か
- 掻痒感がないか
上記のうち、掻痒感は目に見えて分かりやすいものではありません。足浴中に足に触れながら、患者さんの表情や動きの変化もよく見ておくことがポイントです。
また、症状の度合いによっては専門医の診察が必要となります。足の状態に何らかの不調の兆候が出ていた際は、症状の原因をまず探る・主治医に報告し、適切な処置を実施しましょう。
まとめ
看護現場で行われる足浴は、患者さんの足のみお湯につけて洗うという入浴方法です。主に病気やけがによって寝たきりの状態が続き、全身浴が困難となった患者さんに対して行うケアですが、患者さんの体が動ける状態でも、循環障害が生じている場合などは、マッサージをしながら行うこともあります。
足の清潔を維持するだけでなく、リラックス効果や足の状態の観察といったさまざまな目的があります。
足浴は患者さん・看護師(介護者)ともに負担の少ないケアであり、かつ高度な看護技術・介護技術が必要ないため、すぐに習得できるスキルといえるでしょう。足浴を行う際は、看護師の立場から「冷え対策」「お湯の温度」「時間帯」「足の状態」の4つにチェックしておくようにしましょう。
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