• 2023年1月14日
  • 2024年1月9日

臨床心理士になるには? 資格の取得方法と必要な素質を解説

 

精神的な問題を抱えた人々に対し、心理学的知見にもとづき適切なケアや支援を行える専門職が「臨床心理士」です。心理職として活躍できる資格のなかには、「公認心理師」という比較的新しい国家資格もありますが、臨床心理士は古くから代表的な心理職として知られてきました。

心の問題に苦しむ方をサポートすべく、まずは臨床心理士を目指そうと考えている方も多くいるでしょう。そこでこの記事では、臨床心理士の概要から臨床心理士資格を取得するための方法、さらに臨床心理士に求められる素質まで詳細に解説します。

臨床心理士とは

臨床心理士とは、臨床心理学にもとづいて精神的な悩みを抱える人々を援助する心理専門のエキスパートです。公益財団法人 日本臨床心理士資格認定協会による民間資格であり、医療機関・学校・企業などさまざまな分野において高い需要があります。

臨床心理士の主な役割は、精神的な悩みを抱えた相談者(クライアント)への心理療法です。具体的には臨床心理面接や心理アセスメントを実施し、適切な臨床心理学的技法を用いてあらゆる視点からクライアントの心理ケアを行います。さらに、ほかの職種と協働しながら、クライアントを取り囲む地域環境への働きかけや臨床心理的調査・研究活動を行うことも臨床心理士ならではの仕事内容です。

参照元:公益財団法人 日本臨床心理士資格認定協会「臨床心理士とは」

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臨床心理士とは? 公認心理師との違い・仕事内容・なり方・難易度も

臨床心理士なるには

臨床心理士になるには、日本臨床心理士資格認定協会による資格試験に合格しなければなりません。

臨床心理士資格試験は受験資格が定められています。受験資格を満たしたうえで資格試験を受験し、晴れて合格することで臨床心理士の資格取得が可能です。

以下では、臨床心理士資格を取得するためにおさえておきたい、受験資格と試験内容について詳しく紹介します。

受験資格

臨床心理士試験を受けるためには、日本臨床心理士資格認定協会が定める下記5種類の受験資格基準のうち、いずれかを満たす必要があります。

  1. 第1種指定大学院を修了する
  2. 第2種指定大学院を修了し、その後1年以上の心理臨床経験を有する
  3. 大学院において、「臨床心理学」または「臨床心理学に準ずる心理臨床関連分野を専攻する専門職学位課程」を修了する
  4. 諸外国において、①または②のいずれかと同等以上の教育歴を有し、かつその後国内で2年以上の心理臨床経験を有する
  5. 医師免許を取得し、その後2年以上の心理臨床経験を有する

最も代表的なのは、①の第1種指定大学院を修了したのち、臨床心理士試験を受けるというパターンです。なお、各種類の受験基準に関する所定の必要証明資料を提出できなければ、受験資格は認められないので注意しましょう。

臨床心理士になるには、どのルートにおいても大学院で学ぶ必要があり、独学での資格取得はできません。したがって、取得難易度はやや高いといえるでしょう。

参照元:公益財団法人 日本臨床心理士資格認定協会「受験資格」

試験内容

臨床心理士の資格試験には、「一次試験」と「二次試験」があります。

一次試験は筆記試験であり、「多肢選択方式試験(マークシート方式試験)」と「論文記述試験」の2種類を1日で行います。

種類 試験内容 時間
多肢選択方式試験 ・100問のマークシート
・臨床心理士の専門基礎知識や倫理、法令といった内容が出題される
150分
論文記述試験 ・心理臨床に関する1つのテーマにつき、1,001字以上1,200字以内で内容を記載する 90分

そして、二次試験では2名の面接官による「口述面接試験」が実施されます。受験者ごとに時間が設定されており、限られた時間内で臨床心理士としての姿勢や人間関係に関する能力が問われます。

なお、二次試験の口述面接試験は一次試験の多岐選択方式試験において一定水準の成績を満たす受験者のみに実施されます。したがって、多肢選択方式試験に合格できなかった場合は二次試験に進めません

参照元:公益財団法人 日本臨床心理士資格認定協会「資格審査の実施」

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臨床心理士資格の取り方は? 受験資格・難易度・更新制度も解説

臨床心理士試験の合格率

臨床心理士試験の合格率

日本臨床心理士資格認定協会の公式ホームページでは、各年度における臨床心理士試験の合格率が発表されています。直近3年間の合格率は、下記の通りです。

2020年 2021年 2022年
64.2% 65.4% 64.8%

上記表の通り、臨床心理士試験の合格率は60~65%程度です。難易度の高い資格試験というイメージは強くあるものの、実際には10人中に約6人が合格できることを考えると、狭き門とはいえないでしょう。大学院で学んだうえで試験勉強もきちんと行えば、合格の可能性は大幅に高まります。

参照元:公益財団法人 日本臨床心理士資格認定協会「「臨床心理士」資格取得者の推移」

臨床心理士に必要な5つの素質

臨床心理士に必要な5つの素質

臨床心理士は、教育分野・福祉分野・産業分野・司法分野などさまざまな分野で活躍可能です。どの分野で働く場合でも、心の専門家として人間的資質や倫理観が問われます。実際に日本臨床心理士資格認定協会では、臨床心理士の倫理綱領を定めて具体的な倫理観やポイントを述べています。

ここでは、日本臨床心理士資格認定協会が定めている倫理綱領をもとに、臨床心理士に必要な素質を詳しく紹介します。臨床心理士として働くならほとんどの職場で求められるようなスキルでもあるため、臨床心理士を目指している方は確認しておきましょう。

参照元:公益財団法人 日本臨床心理士資格認定協会「臨床心理士の職業倫理」

1.責任感があること

日本臨床心理士資格認定協会が定める倫理綱領の第1条には、「基本的倫理(責任)」が挙げられています。

基本的倫理(責任)とは、いわゆる「臨床心理士は、関わる人々の基本的人権を尊重し、信条や思想で差別をすること・自らの価値観を矯正することはしない」という義務や、「自らの知識や能力について十分に自覚したうえで、専門家としての活動を行う」という責務を示しています。

臨床心理士は、単純に幅広い専門知識を有することよりも、臨床心理士としての強い責任感をもつことのほうが大切といえるでしょう。

2.向上心があること

臨床心理士に必要な素質には、向上心も必要です。これは、日本臨床心理士資格認定協会が定める倫理綱領の第5条「職能的資質の向上と自覚」としても示されています。

時代の流れや環境の変化にともない、人々が抱える心の問題の傾向も変わっていきます。クライアントの幅広い悩みや価値観に対応できる臨床心理士になるには、資格取得後も常に最新かつ専門的な知識・技術を身につけ、専門家としての資質向上に努めなければなりません。

向上心を保つためには、臨床心理士向けの研修や学会に積極的に参加するなどして、最新の知識を取り入れようとする勤勉性が欠かせないといえるでしょう。

3.秘密を守れること

日本臨床心理士資格認定協会が定める倫理綱領の第2条では、「秘密保持」が記載されています。

臨床心理士は、クライアントからの相談を受けるうえで、個人に関するさまざまな情報を得ます。臨床心理士とクライアントとの関係は、あくまで臨床心理学にもとづくケアを行う専門家と心のケアを求める相談者です。

社会的契約にもとづく関係性であることを自覚したうえで、その関係を適切に維持するためにも、業務上知り得た個人情報や秘密をクライアントの同意なしで第三者に開示してはなりません。

臨床心理士は、クライアントの秘密を保護する責任があります

4.他職と連携を取れること

臨床心理士は、他職と連携を取りながら業務を進める場面が多くあります。たとえば、医療・保健分野で働く臨床心理士の場合、チーム医療の一員となって主治医や看護師と日常的に緊密な連携を取るのが基本です。

患者さんやクライアントを多方面からケアするために、多職種連携は欠かせません。そのため、他職と問題なく連携を取れる臨床心理士は非常に重宝される存在となるでしょう。

また、他職と連携を取るためには、自ずとコミュニケーション能力が必要となります。連携力だけに着目せず、コミュニケーションスキルもしっかり磨いておくとよいでしょう。

5.倫理観があること

臨床心理士には、倫理観も求められます。倫理観とは、人として遵守すべき善悪の判断や価値観、物事の捉え方のことです。最低限の倫理は法律としても定められていますが、心理職として活躍するのであれば、それ以上の倫理観をもつことが重要といえます。

基本的な倫理観は、前述の通り「関わる人々の基本的人権を尊重し、信条や思想で差別をすること・自らの価値観を矯正することはしない」ことなどが挙げられます。加えて、ここまで紹介した「専門家としての資質向上に常に努める・相談業務上で知り得た個人的な情報を外部に漏らさない」といった部分も、臨床心理士に必要な倫理観として含まれます。

「人として守るべき普遍的な基準」を超え、「人として臨床心理士として守るべき考え方」をもった臨床心理士は、幅広い分野で活躍できるでしょう。

まとめ

臨床心理士とは、臨床心理学にもとづいて精神的な悩みを抱える人々を援助する心理専門のエキスパートです。臨床心理士になるには、公益財団法人 日本臨床心理士資格認定協会による資格試験に合格しなければなりません。

また、臨床心理士資格の受験には基準が定められています。どのルートにおいても大学院の修了が必須であることから、難易度の高い資格試験というイメージが強いものの、実際の合格率は65%前後で推移しています。きちんと試験対策を行えば、狭き門ではありません。

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