• 2023年1月14日
  • 2023年1月31日

臨床心理士はやめたほうがいい? 仕事が大変な理由とやりがいを解説

 

臨床心理士とは、心理学的知見にもとづいて、「クライエント」と呼ばれる相談者に対して適切な心理ケアや支援を行うエキスパートです。ストレス社会といわれる近年、臨床心理士をはじめとした心理ケアの専門職は需要が高まっている一方で、「やめたほうがいい」という声も一部あります。

そこで今回は、臨床心理士の仕事の大変さを挙げながら、「やめたほうがいい」といわれる理由を深堀りします。加えて、臨床心理士の将来性ややりがいについても説明するため、これから臨床心理士を目指そうとしている方はぜひご覧ください。

臨床心理士の仕事は何が大変?

人々の心の問題をサポートする臨床心理士は、さまざまな分野で需要があります。分野によっては高い収入を得られるなど魅力的な職業ですが、一部では「臨床心理士はやめたほうがいい」といわれることがあるのも実情です。

「臨床心理士はやめたほうがいい」といわれる理由として、仕事の大変さが挙げられます。そこでまずは、臨床心理士の仕事においてどのような点に大変さを感じるかを詳細に解説します。

精神的なストレスを感じやすい

臨床心理士は、さまざまな職域・分野で心の問題を抱えた人々の話を聞き、状況に応じた心理療法・援助を行います。なかには、壮絶な背景のあるクライエントの話を聞くケースもあるでしょう。

どのようなクライエントであっても、同じ立場に立ちながらしっかりと向き合う必要があります。重たい問題を抱えたクライエントに対応する場合、感情移入をすることによって心理的負担が大きなものとなる可能性も否めません。

また、心理状態の悪化しているクライエントは、「何とか助けてほしい」という気持ちから、臨床心理士にマイナスの気持ちをぶつける場合もあります。このように、クライエントの心の問題を解決するために、臨床心理士自身の心に負担がかかることもあると覚えておきましょう。

収入が不安定になるケースがある

臨床心理士は、非常勤での募集が多いことも特徴です。教育分野の臨床心理士(スクールカウンセラー)は特に非常勤募集が多く、スクールカウンセラーとその他非常勤の職場を掛け持ちする臨床心理士も珍しくありません。

非常勤で働く場合、給料は月給制ではなく時給制または日給制となります。したがって、常勤臨床心理士と比較して収入が不安定になりやすい点に注意が必要です。反対にいうと、勤務シフトを増やせば増やすほど稼げるものの、年末年始やお盆などの長期休暇がある月はどうしても収入が減るといえるでしょう。

専門知識を勉強し続ける必要がある

臨床心理士は、人々の精神・心にかかわる専門職として、専門性の高い知識と技術を常に高め続ける必要があります。また、臨床心理士の倫理綱領においては「職能的資質の向上と自覚」が定められています。これはつまり、臨床心理士は専門家としての資質向上に努めなければならないということです。

このように、臨床心理士は生涯学習が求められる職種であることから、休日も心理職向けの研修や研究などに参加しなければならないケースも多々あるでしょう。研修や研究の参加は、臨床心理士として成長するためにも必要なことですが、日々多忙な臨床心理士にとっては大きな負担を感じるものです。

臨床心理士の将来性は?

臨床心理士の将来性は?

「臨床心理士はやめたほうがいい」といわれる理由の1つとして、将来性も挙げられます。

臨床心理士は、1988年に誕生した民間資格です。初の臨床心理士が誕生して以来、30年以上にわたり全国で活躍する職種ですが、2015年に公認心理師法が成立したことによって、心理職における初の国家資格である「公認心理師」が誕生しました。
(出典:一般財団法人 日本心理研修センター「公認心理師とは」
(出典:厚生労働省「公認心理師」

上記の通り、臨床心理士は民間資格である一方、新たに制定された公認心理師は国家資格であることから、将来的には公認心理師が心理職の代表格となることが想定され、臨床心理士の将来性も不安視されています。

しかし、臨床心理士と公認心理師は、資格取得までの過程においてカリキュラムに違いがあります。臨床における専門的知識をより有しているのは、民間資格である臨床心理士です。公認心理師が増加する今後も臨床心理士の需要はさほど変わらないといえるでしょう。

最もおすすめの方法は、臨床心理士と公認心理師のダブルライセンスの取得です。大学院で指定科目を修了すれば、同時に双方の受験資格を得られます。また、すでに大学や大学院を卒業して臨床心理士資格を取得している場合は、心理職として5年以上の実務経験があれば公認心理師国家試験を受けられるケースもあります。
(出典:一般財団法人 日本心理研修センター「公認心理師試験について」

今後、より信頼度の高い臨床心理士・公認心理師として活躍したいのであれば、ダブルライセンスを目指してみてはいかがでしょうか。

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臨床心理士のやりがい

臨床心理士のやりがい

ここまで紹介したように、臨床心理士の仕事には大変さを感じることが多くあります。しかし、その一方で多くのやりがいがあることもまた事実です。

■臨床心理士のやりがい

  • さまざまな場所で活躍できる
  • クライエントと信頼関係を築ける
  • クライエントの回復した姿を見られる

最後に、臨床心理士のやりがいをそれぞれ詳しく紹介します。

さまざまな場所で活躍できる

臨床心理士の活躍の場は広く、あらゆる領域でニーズが高まっています。具体的な活動分野・活動場所には、下記が挙げられます。

医療・保健分野

病院、診療所、精神保健福祉センター、保健所、保健センター、リハビリテーションセンター、老人保健施設など

教育分野

公立教育相談機関、教育委員会、幼稚園、小学校、中学校、高等学校、予備校(職名は、スクールカウンセラー、教育相談員、保育カウンセラーなど)

福祉分野

児童関連(児童相談所・市町村子育て支援担当課、さまざまな児童福祉施設)、障害関連(身体・知的障害施設、療育施設、発達障害支援施設など)、女性関係(女性相談センター、DV相談支援センター、婦人保護施設、母子生活支援施設など)老人福祉施設(特別養護老人ホーム、養護老人ホームなど)

大学・研究所

大学(学生相談室を含む)、短期大学、専門学校、研究所・研究機関、大学付属臨床心理センターなど

司法・法務・警察

司法関係機関(家庭裁判所など)、法務省関係機関(少年鑑別所・少年院・刑務所・保護観察所など)警察関係機関(相談室・科学捜査研究所など)

産業・労働分野

企業内健康管理センター・相談室、外部EAP(従業員支援プログラム)機関、公共職業安定所、障害者センターなど

(出典:一般社団法人 日本臨床心理士会「臨床心理士の活動の場」

教育分野や医療・保健分野、福祉分野は、比較的多くの臨床心理士に選ばれる分野です。教育分野で働く臨床心理士は「スクールカウンセラー」、産業・労働分野で働く臨床心理士は「産業カウンセラー」と呼ばれているように、各分野ではカウンセラーの認知度が広まっており、今後も需要の高まりが期待できるでしょう。

また、臨床心理士としてあらゆる分野で経験を積んだ後に、私設心理相談として個人または少数の組織で心理相談機関・メンタルクリニックを運営するケースも多々あります。

クライエントと信頼関係を築ける

臨床心理士は、クライエントからの相談を受けた後、心理検査やカウンセリング、面接などを行いながら、時間をかけて信頼関係を築き上げていきます。

心に問題を抱えたクライエントは、信頼関係の構築が比較的困難な傾向にあります。しかし、クライエントの気持ちに寄り添いながら長い時間をかけてコミュニケーションをとった結果、クライエントから心を開いてもらえたときは、言葉では表せないほどの喜びややりがいを感じられるでしょう。

真摯に向き合えば、その実は必ず結びつきます。信頼関係を築いたことによるやりがいは大きなモチベーションに変わり、結果として臨床心理士としての成長にもつながるでしょう。

クライエントの回復した姿を見られる

臨床心理士やカウンセラーに精神的支援を求めるクライエントは、さまざまな背景を抱えています。一人ひとりのクライエントが今後どのような人生を歩めるかは、相談に対応する臨床心理士の分析・判断に左右されるといっても過言ではありません。

そのため、臨床心理学にもとづいて行った自身の分析・判断が、心の問題を抱えたクライエントによい影響を与えたときは、「この仕事をしていてよかった」と思えるでしょう。加えて、クライエントが実際に回復した姿を見たときや、「ありがとう」と感謝の気持ちを述べられたときは、より大きなやりがいを感じられます。

まとめ

「臨床心理士はやめたほうがいい」といわれる理由には、第一に仕事の大変さが挙げられます。実際に、精神的な問題を抱えたクライエントと日々かかわることは決して簡単ではなく、ときには自身の心にも何らかの影響を及ぼす可能性があるでしょう。加えて、心理職の国家資格として公認心理師が誕生したこともあり、将来性を不安視する声もあります。

しかし、臨床心理士には大変な仕事だけでなく、多くのやりがいを得られる場面も多くあります。公認心理師が誕生しても、昔から活躍してきた臨床心理士の信頼性が低下することはありません。今後広い分野で活躍できる臨床心理士になりたいなら、ダブルライセンスを目指すのもよいでしょう。

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※当記事は2022年11月時点の情報をもとに作成しています

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