• 2022年9月20日
  • 2025年2月21日

アンギオとは? 検査の流れ・看護師の役割・注意点をわかりやすく解説

 

アンギオとは、血管の狭窄や膨らみ、閉塞などを調べる検査方法です。主に脳や心臓、腹部などで血管の異常が見られる疾病を発見するために用いられます。

この記事では、アンギオの概要と種類、検査の手順について解説します。また、アンギオ検査における看護ポイントも紹介しているので、ぜひ参考にしてください。

アンギオとは

アンギオとは、血管の状態を詳しく調べるために行われる「血管造影検査」のことです。造影剤を用いてX線で血管の形態を確認し、狭窄や閉塞、動脈瘤の有無を評価します。特に心臓や脳の血管疾患の診断に欠かせない検査です。カテーテルを使用する侵襲的な方法と、MRIやCTを使用する非侵襲的な方法があります。

アンギオ検査の目的

アンギオ検査は、血管の異常を正確に把握し、適切な治療計画を立てるために行われます。動脈硬化や血栓、動脈瘤などの診断が主な目的です。心筋梗塞や脳梗塞のリスク評価にも役立ちます。

また、治療の効果を確認する目的で実施されることもあります。適切な治療を選択するための重要な情報を得られる検査です。

アンギオと心カテの違い

アンギオと心カテ(心臓カテーテル検査)は混同されやすいですが、目的が異なります。アンギオは血管全般を対象にするのに対し、心カテは心臓の血管(冠動脈)に特化した検査です。

心臓カテーテル検査は、心拍出量(心臓が1分間に送り出す血液の量)の測定、心臓の先天異常の検出、粘液腫などの 心臓の腫瘍の検出と生検を目的として行われます。

心カテでは、首や腕、鼠径部、太ももの付け根などに針で穴を開け、カテーテルを血管内に挿入します。小さな検査器具をカテーテルの先端まで入れることで、血圧測定や血液サンプルの採取、心臓内部の組織採取などが可能です。

心臓の動きや心臓内圧の評価、心拍出量の測定、組織検査が行えるため、心不全や虚血性心疾患、弁膜症といったさまざまな心疾患の診断・治療方法として用いられています。外科的手術を行わずに心臓と冠動脈の検査ができ、患者さんへの負担を減らせる検査方法といえるでしょう。

参照元:MSDマニュアル家庭版「心臓カテーテル検査と冠動脈造影検査」

アンギオとIVRの違い

IVRとは、インターベンショナル・ラジオロジー(Interventional Radiology)の略で、画像診断装置の技術を使った治療の総称です。アンギオは血管内の動脈瘤や腫瘍の有無、大きさ、状態把握のための検査を指すのに対し、IVRは診断された病変への治療法を意味します。

IVRは透視装置で身体の内部を見ながら処置を行うため、外科手術と比較して身体の負担が少ないのが特徴です。なかでも、アンギオの技術を応用したIVRを血管系IVRと呼びます。

血管系IVRでは、カテーテルを介してバルーンやステントを病変部まで挿入し、狭窄した血管の拡張、動脈瘤の治療、出血した血管の止血などが行われます。がんに対しては、がんを栄養する血管に薬を注入する動脈化学療法が施される場合もあります。

その他として、非血管系IVRでは腎がんに対する凍結治療も知られています。

参照元:
北里大学病院 放射線部「血管造形検査・IVR」
金澤大学附属病院 放射線部「部門紹介~血管造影~」

アンギオの種類

アンギオの種類

アンギオはカテーテルを利用するのが一般的とされているものの、カテーテルを利用せずに行うケースもあります。アンギオの種類として、以下の3つがあげられます。

カテーテル血管造影法

カテーテルを血管内に挿入し、造影剤を注入してX線撮影を行う方法です。一般的に「アンギオ」や「血管造影」と呼ぶ場合、カテーテル血管造影法を指します。

カテーテル血管造影法では、大腿部や腕の血管からカテーテルを挿入して、検査部位まで到達させます。到達後はカテーテルからX線造影剤を注入し、血管造影装置を用いて静止画または動画による血管撮影をします。

カテーテル血管造影法のメリットは、異常が見つかった場合に検査と同時にIVRが行えることです。たとえば、血管が細くなっている部分を見つけた際は、バルーンやステントを狭窄部位に留置し、血管を広げるカテーテル治療を施せます。

参照元:日本赤十字社 伊勢赤十字病院「アンギオ(血管造影)について」

MR血管造影法(MRA)

MRIを使ったアンギオを、MR血管造影法(MRA)といいます。カテーテルを用いたアンギオは、アレルギーや既往歴、健康状態によっては受けられない、または造影剤を使うのにリスクが伴うケースがあります。しかし、MRAではカテーテルを使用しません。さらに、造影剤を使用しない手法もあるため、そのような患者さんの血管の状態確認や検査が可能です。

MRAは、主に脳梗塞や脳動脈瘤の検出など頭部血管の検査で用いられます。たとえば、血流の速い血管はきれいに映り、遅いもしくは流れていない血管は画像に鮮明に映らないため、脳梗塞を招く血管の詰まりを発見できます。また、造影剤と併用する場合はコントラストが強く鮮明な画像が得られ、四肢や胸部、腹部への検査にも利用されることがあります。

その一方で、MRAは撮影に時間がかかるのがデメリットです。また、横向きに走る血管は映りにくく、脳梗塞のように見えるケースもあるでしょう。デメリットをカバーするため、撮影法の工夫や機器の改良によって検査時間の短縮と画像の鮮明化が図られています。

参照元:
脳血管障害におけるMRAの現状「MR angiographyの原理と撮像法」
放射線利用技術データベース「MR血管造影法(MRA)とCT血管造影法(CTA)」

CT血管造影法(CTA)

CT血管造影法(CTA)は、CT装置を用いて血管の状態把握を行う検査方法です。ヨード造影剤を静脈に注入し、複数の角度から撮影された画像を組み合わせて三次元画像を再構成します。医療技術の進歩により、カテーテルを用いたアンギオとほとんど変わらない明瞭な血管情報の取得が可能となり、血管の検査にも広く利用されるようになりました。

画像処理の手間と時間がかかるとはいえ、カテーテルに伴うリスクを避けられる検査方法です。ただし、治療は行えないため、検査と同時に処置が求められるケースでは従来のカテーテルを用いたアンギオが必要です。

参照元:
MSDマニュアル プロフェッショナル版「コンピュータ断層撮影」
放射線利用技術データベース「MR血管造影法(MRA)とCT血管造影法(CTA)」

アンギオ検査に適応する疾患

アンギオ検査に適応する疾患

アンギオ検査に適応する主な疾患は以下のとおりです。

脳動脈瘤、脳梗塞、脳腫瘍、くも膜下出血、脳出血など
心臓 心筋梗塞、狭心症、冠動脈狭窄、心臓弁膜症、心不全など
腹部 肝臓・腎臓・膵臓などの腫瘍、肺梗塞、気管支疾患、縦隔腫瘍、腹部大動脈瘤、消化管出血など
下肢 閉塞性動脈硬化症、四肢血管狭窄など

アンギオ検査は心筋梗塞や脳梗塞、動脈瘤、大動脈解離など、さまざまな診断に活用されます。適応疾患は多岐にわたり、早期発見と適切な治療の選択に重要な役割を果たしています。

アンギオ検査の手順

アンギオ検査の手順

アンギオ検査の手順は、検査部位や疾患によって異なります。ここでは、一般的なアンギオ検査の手順について紹介します。

検査前

  1. 患者さんに検査内容や方法、検査による合併症や偶発症の説明をする
  2. 検査の12時間前に絶飲食をしてもらう
  3. 検査前に排せつを促す
  4. カテーテルを挿入する部分の除毛をする
  5. 検査着を着用してもらい、義歯などの装着物を外す
  6. 医師の指示で検査前に鎮静目的の投薬をする

検査中

  1. 循環血液量維持目的の点滴を行う
  2. 患者さんにアンギオ検査室の検査台に移動してもらう
  3. 心電図や血圧計を装着する
  4. 検査中は身体を動かさないように説明する(状況によっては患者さんから許可を得て四肢を固定する)
  5. カテーテルを挿入する部分を消毒し、局所麻酔をする
  6. カテーテルを挿入する
  7. 患者さんに適宜声かけと説明、バイタルのチェックをする
  8. レントゲン撮影をする
  9. カテーテルを抜き取る

検査後

  1. 医師が圧迫止血をする
  2. 患者さんが帰室後、4時間ほど仰向けの姿勢で安静を保つ
  3. 特に異常がなければ水分摂取をすすめ、軽食をとってもらう
  4. 検査後、半日~1日は腕や足を屈折しないように安静を保ち、検査翌日の入浴は避けてもらう(程度による)

参照元:
医療法人 原三信病院「血管造影検査(アンギオ)」
北海道大学病院 放射線部「血管造影」
MSDマニュアル家庭版「血管造影」

アンギオ検査における看護ポイント

アンギオ検査のなかでも、カテーテルの挿入は合併症や副作用のリスクが高く、患者さんにとっては不安を感じる工程です。そのため、看護師にはバイタルチェックで患者さんの少しの異変も見逃さないこと、患者さんの不安に寄り添うことが求められます。

ここでは、アンギオ検査における看護のポイントを検査前・検査中・検査後に分けて解説します。

検査前

アンギオ検査の前には、患者さんに検査方法や当日の流れ、検査目的の説明が必要です。同時に、検査による合併症や併発症についても説明し、同意書へサインをもらう必要があります。

また、患者さんの体質の確認も大切です。患者さんが薬物や食物にアレルギーがある場合、投与する予定だった鎮静剤や鎮痛剤が使えない恐れもあります。

検査中

患者さんのバイタルチェックと声かけを行い、患者さんの状態を把握します。特に気分が優れず嘔吐がある場合は、誤嚥に注意しましょう。

検査後

血圧や体温、呼吸状態などのバイタルサインを検査前と検査後で比較します。検査後も異常が継続する場合は、速やかに医師に報告し対処しましょう。

また、患者さんに副作用や合併症が起きていないかも確認します。患者さんに胸部不快などの症状がないか、カテーテル挿入部位に出血や血腫がないかを観察しましょう。

まとめ

アンギオは、装置を利用して血管の様子を映し出し、病巣や血管の状態を詳しく調べる検査手法です。「カテーテル血管造影法」「MR血管造影法」「CT血管造影法」の3つの手法があり、一般的にアンギオ検査と呼ぶ場合はカテーテル血管造影法を指します。

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