• 2022年9月20日
  • 2023年12月28日

血管造影(アンギオ)とは|仕事や働くメリット・看護ポイントを解説

 

血管造影(アンギオ)とは、血管の狭窄や膨らみ、閉塞などを調べる検査方法です。主にくも膜下出血や脳腫瘍、心筋梗塞などの脳や心臓、腹部などで血管の異常が見られる疾病を発見するために用いられます。高度なスキルと専門性が求められるので、スキルアップを考えている看護師には魅力的な仕事です。

当記事では、血管造影室(アンギオ室)での仕事内容や、検査の手順、看護ポイントについて解説します。血管造影室で働くメリットについても紹介しますので、血管造影の仕事に興味のある看護師さんは、ぜひお読みください。

血管造影(アンギオ)とは

血管造影(以下、アンギオ)とは、透視装置を用いて血管の疾患を調べる検査のことです。一般的にはカテーテルを使用し造影剤を注入することで、病巣や血管の状態を詳しく調べる手法を取ります。また、アンギオの技術を応用し、血管の形状改善や止血などの血管内治療も可能です。

アンギオから分かる疾患や、検査内容の違いについて詳しく説明します。

血管造影(アンギオ)の目的

アンギオは、脳、冠動脈、腹部、下肢の血管の状態を検査し、閉塞や狭窄によるさまざまな疾患の判別・治療を目的として行われます。各部位の検査内容と見つけられる疾患は、以下の通りです。

・脳血管造影検査 

脳血管の病変や脳血管障害、脳腫瘍の状態把握を行います。主にくも膜下出血、脳動脈瘤、脳梗塞の診断や治療方針を決める際に用いられます。ほかにも脳出血、血管閉塞、硬膜内・外出血、脳動静脈奇形などの脳疾患を見つけられます。

・腹部血管造影検査

肝臓、腎臓、膵臓など腹部の血液の流れを見て、腫瘍や出血の有無を調べます。肝臓がん、腎臓がん、膵臓がん、腎がん、泌尿器系のがん、肝硬変、腹部大動脈瘤、肺梗塞、消化管出血などの診断に用いられます。

(出典:国立病院機構熊本医療センター「血管造影」

血管造影(アンギオ)と心臓カテーテル検査(心カテ)の違い

心臓カテーテル検査は、心拍出量(心臓が1分間に送り出す血液の量)の測定、心臓の先天異常の検出、粘液腫などの 心臓の腫瘍の検出と生検を目的として行われます。

心カテでは、首や腕、鼠径部、太ももの付け根などに針で穴を開け、カテーテルを血管内に挿入します。小さな検査器具をカテーテルの先端まで入れることで、血圧測定や血液サンプルの採取、心臓内部の組織採取などが可能です。

心臓の動きや心臓内圧の評価、心拍出量の測定、組織検査が行えるため、心不全や虚血性心疾患、弁膜症といったさまざまな心疾患の診断・治療方法として用いられています。外科的手術を行わずに心臓と冠動脈の検査ができ、患者さんへの負担を減らせる検査方法といえるでしょう。
(出典:MSDマニュアル家庭版「心臓カテーテル検査と冠動脈造影検査」

血管造影(アンギオ)とIVRの違い

IVRとは、インターベンショナル・ラジオロジー(Interventional Radiology)の略で、画像診断装置の技術を使った治療の総称です。アンギオは血管内の動脈瘤や腫瘍の有無、大きさ、状態把握のための検査を指すのに対し、IVRは診断された病変への治療法を意味します。

IVRは透視装置で身体の内部を見ながら処置を行うため、外科手術と比較して身体の負担が少ないのが特徴です。なかでも、アンギオの技術を応用したIVRを血管系IVRと呼びます。

血管系IVRでは、カテーテルを介してバルーンやステントを病変部まで挿入し、狭窄した血管の拡張、動脈瘤の治療、出血した血管の止血などが行われます。がんに対しては、がんを栄養する血管に薬を注入する動脈化学療法が施される場合もあります。

その他として、非血管系IVRでは腎がんに対する凍結治療も知られています。
(出典:北里大学病院 放射線部「血管造形検査・IVR」
(出典:金澤大学附属病院 放射線部「部門紹介~血管造影~」

血管造影(アンギオ)の種類

血管造影(アンギオ)の種類

アンギオはカテーテルを利用するのが一般的とされているものの、カテーテルを利用せずに行うケースもあります。アンギオの種類として、以下の3つがあげられます。

  • カテーテル血管造影法
  • MR血管造影法(MRA)
  • CT血管造影法(CTA)

以下では、それぞれの検査方法と特徴を紹介します。

カテーテル血管造影法

一般的に「アンギオ」や「血管造影」と呼ぶ場合、カテーテル血管造影法を指します。カテーテル血管造影法では、大腿部や腕の血管からカテーテルを挿入して、検査部位まで到達させます。到達後はカテーテルからX線造影剤を注入し、血管造影装置を用いて静止画または動画による血管撮影をします。

カテーテル血管造影法のメリットは、異常が見つかった場合に検査と同時にIVRが行えることです。たとえば、血管が細くなっている部分を見つけたなら、バルーンやステントを狭窄部位に留置し、血管を広げるカテーテル治療を施せます。
(出典:日本赤十字社 伊勢赤十字病院「アンギオ(血管造影)について」

MR血管造影法(MRA)

MRIを使ったアンギオをMR血管造影法(以下、MRA)といいます。カテーテルを用いたアンギオは、アレルギーや既往歴、健康状態によっては受けられない、または造影剤を使うのにリスクが伴うケースがあります。しかしMRAであれば、カテーテルや造影剤を使用しない手法もあるため、そのような患者さんの血管の状態確認や検査が可能です。

MRAは、主に脳梗塞や脳動脈瘤の検出など頭部血管の検査で用いられます。たとえば、血流の速い血管はきれいに映り、遅いもしくは流れていない血管は画像に鮮明に映らないため、脳梗塞を招く血管の詰まりを発見できます。また、造影剤と併用する場合はコントラストが強く鮮明な画像が得られ、四肢や胸部、腹部への検査にも利用されることがあります。

その一方で、MRAは撮影に時間がかかるのがデメリットです。また、横向きに走る血管は映りにくく、脳梗塞のように見えるケースもあるでしょう。デメリットをカバーするため、撮影法の工夫や機器の改良によって検査時間の短縮と画像の鮮明化が図られています。
(出典:脳血管障害におけるMRAの現状「MR angiographyの原理と撮像法」
(出典:放射線利用技術データベース「MR血管造影法(MRA)とCT血管造影法(CTA)」

CT血管造影法(CTA)

CT血管造影法(以下、CTA)は、CT装置を用いて血管の状態把握を行う検査方法です。ヨード造影剤を静脈に注入し、複数の角度から撮影された画像を組み合わせて三次元画像を再構成します。医療技術の進歩により、カテーテルを用いたアンギオとほとんど変わらない明瞭な血管情報の取得が可能となり、血管の検査にも広く利用されるようになりました。

画像処理の手間と時間がかかるとはいえ、カテーテルに伴うリスクを避けられる検査方法です。ただし、治療は行えないため、検査と同時に処置が求められるケースでは従来のカテーテルを用いたアンギオが必要です。
(出典:MSDマニュアル プロフェッショナル版「コンピュータ断層撮影」
(出典:放射線利用技術データベース「MR血管造影法(MRA)とCT血管造影法(CTA)」

【看護師】血管造影室(アンギオ室)の仕事内容と必要なスキル

【看護師】血管造影室(アンギオ室)の仕事内容と必要なスキル

血管造影検査(以下、アンギオ検査)は、医師の働き方改革において看護師に推進される仕事のうちの1つです。「タスク・シフト/シェア」への取り組みの一環として、アンギオ検査に関する業務の習得が進められています。
(出典:厚生労働省「現行制度上実施可能な業務の推進について」

また、血管造影室(以下、アンギオ室)は、主に心臓・脳・腹部などさまざまな部位の血管の検査を行うため、看護師にはさまざまなスキルが求められます。ここでは、アンギオ室の仕事内容と看護師に求められるスキルについてご紹介します。

仕事内容

・アンギオ検査

カテーテルを使ったアンギオでは、看護師は検査過程に異常がないか、患者さんの状態に変化はないかなどの記録する作業を行います。血管には動脈と静脈があり、それぞれの検査方法は異なります。

動脈造影検査 鼠径部の大腿動脈や、前腕部の橈骨動脈または肘動脈から、直径数mmのカテーテルを造影する位置まで進め、造影剤を注入し撮影する方法です。
静脈造影検査 下肢などの静脈瘤の検査は、直接針を刺して造影剤を注入場合と、カテーテルを挿入して造影する場合があります。肺静脈造影は、動脈造影検査と同じようにカテーテルを使用して造影剤を注入し、撮影します。

(出典:公益社団法人 日本放射線技術学会「血管造影検査」

・患者さんのサポート

アンギオ検査では、患者さんは長時間同じ体勢でベッドに横になり、検査を受ける必要があります。患者さんにとって、アンギオ検査は身体的・精神的に負担が大きいため、看護師のサポートは必要不可欠です。

また患者さんに、検査内容や、検査によって引き起こされる恐れがある併発症について分かりやすく説明するほか、検査前の健康状態のチェックも行います。検査中には患者さんに励ましの声をかける、苦痛を感じていないかを確認するなど、患者さんの負担軽減につながるサポートをします。

求められるスキル

アンギオ室で働く看護師には、以下のようなスキルが求められます。

・コミュニケーション能力

アンギオ室で働く看護師には、コミュニケーション能力が求められます。検査中の患者さんを励まし、会話をして気を紛らわせることは、看護師の重要な役割の1つです。

・観察力、洞察力

アンギオ検査には、出血や造影剤使用によるショック症状などの偶発症を引き起こす恐れがあります。看護師には、患者さんの異変やトラブルの兆候を見逃さない高い観察力・洞察力が必要でしょう。

・臨機応変な対応

アンギオ室において看護師は、患者さんに配慮しつつ異変やトラブルがないか観察し、そのうえで医師や技師と連携し検査を進めます。さまざまな対応を同時進行で行うので、その場の状況を見極めて臨機応変に対応するスキルが求められます。

看護師が血管造影室(アンギオ室)で働くメリット

看護師がアンギオ室で働くと、自身のスキルアップはもちろん、働き方や取り入れる知識によってはキャリアアップにつながる可能性があります。

ここでは、看護師がアンギオ室で働くメリットを2つ紹介します。アンギオ室での勤務を考えている方は、ぜひ参考にしてくださいね。

専門性が高まりスキルアップにつながる

アンギオ室で働くと、血管や疾患についての専門知識を身につけることが可能です。検査を行ううちに脳や心臓、手足の血管の状態が分かるほか、血管の障害の程度を認識できるようになります。血管の状態や障害の程度が分かると、患者さんの症状やレベルに合わせた看護が可能となります。

通常の看護のスキルに加えて専門知識を高めることで仕事の幅が広がり、患者さんやご家族の方、同僚からも信頼を得られるでしょう。

患者さんの疾患の状態について把握しやすくなる

アンギオ検査専門で勤務する看護師は少なく、一般の病棟勤務と並行して業務を行うことが多い傾向です。アンギオ検査を行う頻度が高い病院で働くと、脳や心臓などエリアごとの疾患の内容や程度を実際に確認しながら知識を増やせます。

疾患への理解が深まると、患者さんの変化に気づきやすくなり、アセスメント力の向上も期待できるので、医師や一緒に働くほかの業種の方とよりスムーズな連携をとれるでしょう。

血管造影検査(アンギオ検査)の手順

血管造影検査(アンギオ検査)の手順

アンギオ検査の手順は、検査部位や疾患によって異なります。ここでは、一般的なアンギオ検査の手順について紹介します。

検査前
  • 患者さんに検査内容や方法、検査による合併症や偶発症の説明をする
  • 検査の12時間前に絶飲食をしてもらう
  • 検査前に排せつを促す
  • カテーテルを挿入する部分の除毛をする
  • 検査着を着用してもらい、義歯などの装着物を外す
  • 医師の指示で検査前に鎮静目的の投薬をする

検査中
  • 循環血液量維持目的の点滴を行う

  • 患者さんにアンギオ検査室の検査台に移動してもらう

  • 心電図や血圧計を装着する

  • 検査中は身体を動かさないように説明する(状況によっては患者さんから許可を得て四肢を固定する)

  • カテーテルを挿入する部分を消毒し、局所麻酔をする

  • カテーテルを挿入する

  • 患者さんに適宜声かけと説明、バイタルのチェックをする

  • レントゲン撮影をする

  • カテーテルを抜き取る

検査後
  • 医師が圧迫止血をする

  • 患者さんが帰室後、4時間ほど仰向けの姿勢で安静を保つ

  • 特に異常がなければ水分摂取をすすめ、軽食をとってもらう

  • 検査後、半日~1日は腕や足を屈折しないように安静を保つ

  • 検査翌日の入浴は避けてもらう(程度による)

(出典:医療法人 原三信病院「血管造影検査(アンギオ)」
(出典:北海道大学病院 放射線部「血管造影」
(出典:MSDマニュアル家庭版「血管造影」

血管造影検査(アンギオ検査)における看護ポイント

血管造影検査(アンギオ検査)における看護ポイント

アンギオ検査のなかでも、カテーテルの挿入は合併症や副作用のリスクが高く、患者さんにとっては不安を感じる工程です。そのため、看護師には、バイタルチェックで患者さんの少しの異変も見逃さないこと、患者さんの不安に寄り添うことが求められます。

ここでは、アンギオ検査における看護のポイントを検査前・検査中・検査後に分けて解説します。

●検査前

  • 患者さんの検査を受ける目的や体質の確認
    アンギオ検査の前には、患者さんに検査方法や当日の流れ、検査目的の説明が必要です。同時に、検査による合併症や併発症についても説明し、同意書へサインをもらう必要があります。

    また、患者さんの体質の確認も大切です。患者さんが薬物や食物にアレルギーがある場合、投与する予定だった鎮静剤や鎮痛剤が使えない恐れもあります。

●検査中

  • 時折声をかけて患者さんの状態を把握する
    患者さんのバイタルチェックと声かけを行い、患者さんの状態を把握することもポイントです。特に、気分が優れず嘔吐がある場合は、誤嚥に注意しましょう。

●検査後

  • 検査前と検査後の状態を比較する
    血圧や体温、呼吸状態などのバイタルサインを検査前と検査後で比較するのも重要です。検査後も異常が継続する場合は、速やかに医師に報告し対処しましょう。
  • 副作用や合併症の確認・観察をする
    患者さんに副作用や合併症が起きていないかを確認・観察することは、アンギオ検査において重要な業務の1つです。患者さんに胸部不快などの症状がないか、カテーテル挿入部位に出血や血腫がないかを観察しましょう。

血管造影室(アンギオ室)で働く看護師に役立つ資格

血管造影室(アンギオ室)で働く看護師に役立つ資格

アンギオ室で働きたい場合、看護資格以外に必須資格はありません。ただし、以下の資格を持っていると、患者さんへのケアや業務に役立つケースがあります。

・インターベンションエキスパートナース(INE) 

IVRに関する技術と専門知識を示す専門資格です。医師の指示のもと、カテーテルを用いた高度な治療・検査をサポートし、患者さんのケアを行うことが求められます。

・クリティカルケア認定看護師

クリティカルケアが必要な看護分野において、高水準の看護や看護職に対する指導、患者さん・ご家族への適切なケアを行える看護師に与えられます。アンギオ室では脳卒中やがん、心筋梗塞など特別なケアが求められる患者さんと接する機会が多く、資格取得で得た知識を活用する場となるでしょう。

どちらの資格も受験資格として看護師免許と実務経験、各専門分野での実績、講習受講が求められます。スキルアップのためには、アンギオ室での実務経験を積みながら資格取得を目指すのがよいでしょう。
(出典:インターベンションエキスパートナース「試験のご案内」

■クリティカルケア認定看護師について詳しくはこちら

クリティカルケアとは? 看護師の役割やキャリアパス例など

まとめ

血管造影(アンギオ)は、装置を利用して血管の様子を映し出し、病巣や血管の状態を詳しく調べる検査手法です。「カテーテル血管造影法」、「MR血管造影法」、「CT血管造影法」の3つの手法があり、一般的にアンギオ検査と呼ぶ場合はカテーテル血管造影法を指します。

アンギオ検査は医師の働き方改革において看護師に推進されている仕事の1つで、自身のスキルアップやキャリアアップにつながるというメリットがあります。アンギオ室で働くと、血管や疾患についての専門知識が深まり、仕事の幅を広げることも可能です。

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※当記事は2023年10月時点の情報をもとに作成しています

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