• 2021年11月17日
  • 2022年12月13日

特定機能病院とは? 役割・仕事内容や他病院との違い・働くメリット

 

第二次医療法改正において、1993年より「特定機能病院」の区分が制度化されました。特定機能病院は、地域にある一般的な病院と同様、医療を提供するという目的は同様です。しかし、定義や役割において細かな違いがあります。そのため、特定機能病院で働くスタッフ・看護師の仕事内容も、一般病院とやや異なるでしょう。

そこで今回は、特定機能病院の役割・その他病院との違いから、指定が取り消されるケース、特定機能病院の仕事内容と働くメリット・デメリットを徹底的に解説します。最後に特定機能病院で働くことが向いている看護師の特徴や転職時のポイントを解説するので、特定機能病院に興味があるものの、自分に合っているのか分からず悩んでいる方はぜひ参考にしてください。

特定機能病院とは?

特定機能病院とは、高度医療の提供や、高度の医療技術の開発および評価、高度の医療研修の実施能力を備えた病院のことです。

特定機能病院としてみなされるためには、承認要件を満たしたうえで厚生労働大臣からの承認を受けなければなりません。2022年4月時点では、全国で87もの病院が厚生労働大臣から特定機能病院として承認を受けています。
(出典:厚生労働省「特定機能病院について」

特定機能病院の役割

特定機能病院の最も大きな役割は、「高度の医療提供」です。高度の医療とは、一般病院では対応できないケガや病気、疾患に対応できる医療技術を指します。

また、「高度な医療技術の開発・評価」も特定機能病院として欠かせない役割となっています。主に研究を行う規模の大きい大学病院やがんセンターでは特定機能病院として承認を受けていることも多く、実際に特定機能病院として承認を受けている87病院のうち79病院が大学病院です。

上記のほかにも、「高度の医療に関する研修」や「高度な医療安全管理体制」も特定機能病院の重要な役割として挙げられます。高度な治療を来院患者に提供するだけでなく、高度な医療提供のための体制づくりも欠かせません。
(出典:厚生労働省「特定機能病院について」)

また、医療法第十二条の三により、特定機能病院の開設者は毎年厚生労働大臣に業務報告書を提出することが規定となっています。提出した業務報告書の内容は、厚生労働省や各都道府県ホームページにて公表されます。

第十二条の三 特定機能病院の開設者は、厚生労働省令の定めるところにより、業務に関する報告書を厚生労働大臣に提出しなければならない。

2 厚生労働大臣は、厚生労働省令で定めるところにより、前項の報告書の内容を公表しなければならない。

(引用:e-Gov法令検索「医療法」

特定機能病院と一般病院の違い

一般病院や診療所は誰でも受診でき、患者さんは自由に来院することが可能です。一方で特定機能病院は、高度な治療が必要な患者さんに対して最優先での医療提供を図るべく「紹介制」となっています。一般病院で診察・治療を受けた後、特定機能病院の紹介状をかかりつけ医から受け取らなければ、特定機能病院での受診ができません。

その他にも、特定機能病院と一般病院には主に承認要件・規模・医療体制においてあらゆる違いがあります。

承認要件

特定機能病院は、厳しい要件を満たす必要があります。特定機能病院として承認を受けるためには、特定機能病院の定義ともなる承認要件をすべて満たさなければなりません。特定機能病院の承認要件は、下記の通りです。

  • 高度の医療提供、開発および評価、研修を実施する能力を有している
  • 地域の病院・クリニックからの紹介患者に医療を提供している
    (紹介率50%/逆紹介率40%以上)
  • 400床以上の病床を有している
  • 定められた人員配置を満たしている
  • 院内に集中治療室・無菌病室・医薬品情報管理室を有している
  • 医療安全管理体制を整備している
  • 16の診療科を掲げ表わしている
  • 査読のある雑誌に掲載された英語論文数が年間70件以上ある

規模

特定機能病院の承認要件には、人員配置の条件が存在します。特定機能病院は一般病院よりも多くのスタッフを配置しなければならず、最低でも下記規模の人員配置が必要です。

医師:一般病院のおよそ2倍(配置基準の半数以上が何らかの専門医)

薬剤師:入院患者数÷30

看護師など:入院患者数÷2

管理栄養士:1名以上

なお、一般病院において薬剤師は「入院患者数÷70」、看護師などは「入院患者数÷3」が最低配置基準となっています。このように、特定機能病院は一般病院よりも多くの人員配置が必要です。

医療体制

一般病院は、主に「地域のかかりつけ医」として、地域住民に必要な医療を提供します。しかし特定機能病院は、地域住民に対してではなく、高度医療技術での治療が必要な患者さんに対して機能する病院です。一般病院の医療体制のような、いわゆる「地域完結型」ではありません。

このように、特定機能病院と一般病院はあらゆる面において大きな違いをもつものの、それぞれ「患者さんをサポートする」「医療の安全を確保する」という1つの目的は同様です。そのため、互いに連携をとりつつ役割分担をすることも重要とされています。
(出典:厚生労働省「特定機能病院について」

特定機能病院とその他病院との違い

特定機能病院とその他病院との違い

病院には特定機能病院以外にも種類があり、病院の種類によって患者さんに提供する医療サービスや治療法が異なります。看護師さんに求められる仕事内容も病院ごとに異なるので、就職や転職の際には各病院の特徴を知っておくとよいでしょう。各病院によって求められる能力や資質の違いを知ることで、より自分に合った働き方ができるようになります。

ここでは、特定機能病院以外の病院にはどのような種類があるのかを紹介します。

地域医療支援病院

地域医療支援病院とは、地域の一般病院や診療所と連携しながら高度な医療サービスを提供することを目的とした病院です。MRIやCTといった高度医療機器を地域のかかりつけ医と共同で利用しながら、患者さんに身近な地域で高度な先端医療サービスを提供します。救急医療や地域の医療従事者への研修なども引き受けているので、幅広い領域の知識と高度な医療技術が身につく職場といえるでしょう。

規定により病床数は200床以上の大規模な職場となるため人員体制が充実している場合も多く、子育てをしている方も働きやすいメリットがあります。
(出典:厚生労働省「地域医療支援病院について」

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臨床研究中核病院

臨床研究中核病院とは、医薬品や医療機器の開発に必要となる臨床研究を行うことを目的とした病院です。臨床研究中核病院を中心に、新たな治療法や医薬品が次世代の医療現場に提供されます。

「国立がん研究センター」および複数の大学病院がその役割を担っており、2022年10月現在、全国で14か所の病院が臨床研究中核病院に指定されています。
(出典:厚生労働省「臨床研究中核病院について」

臨床研究中核病院は、病床数400床以上、診療科10以上と規模が大きいことが特徴です。看護師さんは最先端の技術や新たな症例への対処が求められるなど、柔軟で臨機応変な対応が期待される職場です。
(出典:厚生労働省「臨床研究中核病院の医療法での位置づけについて」

精神病院

精神病院とは、精神障害者への医療及び保護を目的とした病院です。また、患者さんの自立や社会復帰のために必要な援助を行うことも、精神病院の役割の1つです。患者さんとの意思疎通が困難な場合もあるため、現場で働く看護師さんには、人権に配慮した医療を行う意識と資質が求められます。

患者さんへの虐待防止のため、相談窓口の設置やアンガーマネジメントなどの研修が充実しています。都道府県の担当職員による年1回の実地指導が実施されるため、職場環境による問題の把握が素早く、改善に対しての取り組みが手厚いことが特徴です。
(出典:厚生労働省「精神保健福祉法について」

結核病院

結核病院とは、結核の治療を目的とした病院です。近年、入院患者数の減少により、院内に一般病棟と結核病棟を併設した「ユニット化」を行って治療に当たる取り組みが推進されています。また、一般病床や精神病床で結核治療を行えるよう、換気・陰圧設備などを備えた病床を設置して治療を行う「モデル病床」事業も展開されています。

医療現場では、今後結核病院よりも「ユニット化」や「モデル病床」の活用によって結核の治療が進められていくと予測されています。
(出典:厚生労働省「結核の医療提供体制について」

特定機能病院の指定が取り消されるケース

特定機能病院の指定が取り消されるケース

特定機能病院に指定されていても、病院として十分な機能が果たせていないと判断された場合は承認を取り消される場合もあります。厚生労働省が発表した資料によると、承認が取り消されるのは以下のような場合です。

4 厚生労働大臣は、次の各号のいずれかに該当する場合においては、特定機能病院の承認を取り消すことができる。

一 特定機能病院が第四条の二第一項各号に掲げる要件を欠くに至つたとき。

二 特定機能病院の開設者が第十二条の三第一項の規定に違反したとき。

三 特定機能病院の開設者が第二十四条第二項の規定に基づく命令に違反したとき。

四 特定機能病院の管理者が第十六条の三第一項の規定に違反したとき。

(引用:厚生労働省「特定機能病院の承認後の対応のあり方について」

実際に承認を取り消された例として、「東京女子医大病院」と「群馬大学医学部附属病院」が挙げられます。いずれも患者さんが亡くなる医療事故をきっかけに承認が取り消されました。承認を取り消された両病院は、チーム医療体制において連携や情報交換が不足していたこと、事故に対する要因分析が不十分であったこと、病院長が事故についての情報を正確に把握していなかったことが大きな要因です。

体制の不備や情報の開示方法に問題があるとされた場合は、医療安全が確保できていないとして、承認の取り消しが行われます。
(出典:公益社団法人全日本病院協会「東京女子医大病院と群大病院の特定機能病院を取り消し」

特定機能病院の仕事内容

特定機能病院の仕事内容

特定機能病院は、高度先進医療を提供する病院です。そのため、一般病院での仕事内容とはやや異なる点が存在します。

とはいえ、特定機能病院として承認を受けている医療機関に適した仕事を行うことが基本です。特定機能病院として承認を受けている医療機関は大学病院がほとんどであることから、基本的には大学病院での仕事内容と同様と考えてよいでしょう。

参考として、大学病院での仕事内容は下記の通りです。

  • 患者さんへの検温・脈拍測定・投薬・身の回りのケア・巡回・記録など
  • その他配属される診療科に応じた業務
  • 研究・学生の教育

看護師が特定機能病院で働くメリット・デメリット

看護師が特定機能病院で働くメリット・デメリット

規模が大きく、あらゆる経験を積むことのできる特定機能病院には働くメリットが多く、キャリアアップを目的とする転職者にも適した職場といえます。しかし、働くデメリットも少なからずあるため、特定機能病院での看護師求人を探す前に、あらかじめメリット・デメリットを把握しておくことが大切です。

ここからは、看護師さんが特定機能病院で働くメリット・デメリットを紹介します。

メリット

看護師さんが特定機能病院で働くメリットは、下記の3つです。

実際に高度な先端医療に触れ、技術や知識を身につけられる

特定機能病院は、一般病院にはない医療設備を有しているだけでなく、定期的に研究機関による研修会や勉強会なども開催されます。先進的医療を身近に触れながら日々業務に携われるため、一般病院では身につけられない技術や知識を得ることが可能です。特定機能病院で培った経験は、今後の転職でも有利になるでしょう。

資格取得などスキルアップに関するサポートが充実している

特定機能病院は、医療従事者の教育・スキルアップにも積極的です。特に資格取得などのスキルアップに関するサポートが充実している職場は多く、成長しやすい環境が十分に整備されているといえるでしょう。

福利厚生が充実している

特定機能病院として承認を受けている医療機関は基本的に規模が大きく、勤務スタッフに対する待遇や福利厚生が充実していることが特徴です。保育所が併設されているほか、男女問わず育児休暇を得られる職場もあります。

デメリット

看護師さんが特定機能病院で働くデメリットは、下記の3つです。

24時間体制で夜勤があるため、多忙になりがち

特定機能病院の多くが24時間対応可能な医療体制を整えています。夜勤・当直業務もあり、多忙になりやすい点がデメリットです。人材不足の職場では、なかなか希望する休みが取りにくいケースもあるでしょう。

大きな医療事故が発生する可能性がある

高度な医療を提供する特定機能病院は、大きな医療事故が発生する可能性もゼロではありません。医療事故が発生した場合は特定機能病院としての承認が取り消されるケースもあります。承認が取り消されると経営に大きなダメージが生じ、働くスタッフの収入・待遇に重大な影響を及ぼすでしょう。

看護師が手技をする機会が少ない場合がある

特定機能病院は医師の教育の場という役割もあります。そのため、職場によっては点滴や採血といった基本的な手技を新人医師や研修医が担当し、看護師さんの仕事内容に手技が少ないことも特徴です。手技をしっかりと身につけたいと考えている方にとっては業務内で技術を磨く機会が少なく、希望に添った働き方が叶わないこともあります。医師と看護師のどちらが手技を担当するかといった決まりは病院ごとに異なるため、事前に確認しておくことも大切です。

特定機能病院の現状と看護師の需要

特定機能病院の現状と看護師の需要

特定機能病院では、近年外来患者数が増加しています。そのため、本来特定機能病院に期待される高度な医療サービスのための医療費が逼迫し、負担が増えているのが現状です。

現在は、大学附属病院以外で高度な医療を提供できる医療機関を、幅広く特定機能病院として認めるかについて、検討がされています。また、地域の病院との連携を強化し、外来患者が受診する際は原則紹介状を必要とする制度へと見直しがされつつあります。
(出典:厚生労働省「特定機能病院の現状とあり方について」

特定機能病院に指定される病院の数が増えれば、看護師さんへのニーズも伸びていくと予想されます。外来患者さんの受け入れが紹介制になったことを受けて、特定機能病院ではより高い専門性に特化した医療が行われることになるでしょう。

なお、科によって求められる動きや資質が大きく変わるため、看護師さんも仕事内容の特色を見極め、柔軟に対応する力が求められることになると予想されます。

特定機能病院で働くことが向いている看護師の特徴

特定機能病院で働くことが向いている看護師の特徴

特定機能病院で働くことが向いている看護師の特徴は、下記の通りです。

  • 学ぶこと、成長することに貪欲な方
  • 高い専門性を身につけたい方
  • 働きながら資格取得を目指している方

前述の通り、特定機能病院は一般病院では得られないあらゆる知識や経験を身につけることが可能です。特定の診療科に配属するだけでなく、特定機能病院ならではの高度な医療に身近に触れられるため、学ぶことや成長することに貪欲な方・高い専門性を身につけたい方は向いているといえるでしょう。

また、日々の研究業務や定期的な研修や講習会、さらに職場によっては資格取得のサポートが受けられるため、働きながら資格取得を目指す方にも向いています。

看護師が特定機能病院に転職する際のポイント

看護師が特定機能病院に転職する際のポイント

特定機能病院に就職・転職を考える際に押さえておきたいポイントが2点あります。1つは職場の雰囲気が自分の理想と合っているか。もう1つは給与や休日が自分の理想と合っているかです。

自分の理想の条件に当てはまらない場合、ライフスタイルと合わず無理をする結果になることもあります。

ここでは、施設見学の機会や求人情報を見る際にチェックしておきたいことについて紹介します。

施設見学で病院や職員・利用者の雰囲気をチェックする

施設見学でチェックしておきたいポイントは、下記の通りです。

  • 職員の挨拶があるか
  • 職員と患者さんの表情は明るいか
  • 夜勤の形態はどうなっているか
  • 無理なく通える通勤ルートか

職員同士で挨拶が活発な職場は、日ごろのコミュニケーションも円滑な場合が多いです。ちょっとした疑問や問題も会話の中で共有しやすく、働きやすい人間関係がつくられている可能性も高いでしょう。職員や患者さんの表情が明るいことも、職場環境や提供しているサービスの満足度を知る目安となります。

夜勤の回数や時間の実態は、実際に働いている人に直接聞くとよく分かります。夜勤のための仮眠室など、設備がどの程度充実しているかもチェックしておきたいポイントです。

また、施設見学の際に、実際に通勤ルートを移動することで、混み具合やかかる時間を把握できます。想像していた働き方とのギャップがないかを確かめてみましょう。

求人情報を客観的にチェックする

求人情報に記載されている条件が好待遇に見える場合も、実は手当や休日が少ないことがあります。給与体制や休日数をチェックする際のポイントは、下記の通りです。

  • 給与の内訳
  • 年間休日数
  • 教育体制や福利厚生

給与については、調整手当や夜勤手当を含めて多く見積もったものを給与額として記載している場合があります。給与は基本給とその他手当の内訳までしっかり確認しましょう。また、賞与についても有無だけではなく、「基本給〇か月分」といったように具体的な金額が算出できると、年収の見通しが立ちやすくなります。

1週間のうち2日休める週が月に1度でもある場合は、求人情報に「週休2日」と記載できます。そのため、実際に毎週2日休めるかどうかは「年間休日数」で確認します。毎週2日が休日として取得できる場合、年間休日は52週×週休2日で、104日以上あるかが目安です。

新人教育が手厚いか、育児や介護のサポートをしてくれる体制が整っているかなど、自身の立場やライフスタイルに合った福利厚生制度が整った職場かを調べておくことも大切です。

まとめ

特定機能病院は、高度な医療を提供できる能力を備えた病院のことです。承認要件を満たしたうえで厚生労働大臣からの承認を受けて、初めて特定機能病院として運営できます。

特定機能病院は、高度医療・最先端医療を提供する病院であるため、一般病院での仕事内容とはやや異なる点が存在します。専門的かつ高度な知識を得られるなど働くメリットが多く、キャリアアップを目的とする転職者にも適した職場です。

ここまでの内容で、特定機能病院への就職・転職を考えている看護師さんは、ぜひ「マイナビ看護師」をご利用ください。マイナビ看護師の無料転職サポートをご利用いただいた登録者様には、非公開求人を含むぴったりの求人紹介や履歴書の添削サービスなど、あらゆる転職サポートを行います。

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※当記事は2022年10月時点の情報をもとに作成しています

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