• 2025年4月27日
  • 2025年4月23日

ホーマンズ徴候とは? 深部静脈血栓症の症状についても解説

 

ホーマンズ徴候とは、深部静脈血栓症(DVT)の参考所見の1つであり、ふくらはぎに痛みを伴う身体反応です。深部静脈血栓症は足の静脈に血栓が形成される疾患で、初期段階では腫れや赤黒い変色といった症状が見られることが特徴です。適切な治療が行われなければ、血栓が肺動脈に到達し肺血栓塞栓症を引き起こし、命に関わる可能性もあります。

当記事では、ホーマンズ徴候の特徴や深部静脈血栓症の発症リスク、予防策について解説します。深部静脈血栓症の早期発見と予防に役立つ知識を身につけ、日々の業務に活かしましょう。

■監修者
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院 内視鏡治療センター所属)

2009年群馬大学医学部卒。伊勢崎市民病院、群馬県立心臓血管センター、済生会横浜市東部病院を経て、2024年6月よりMyクリニック 本多内科医院院長。総合内科専門医、循環器内科専門医。

ホーマンズ徴候とは?

ホーマンズ徴候とは、深部静脈血栓症(DVT)で見られる身体所見です。具体的には、膝を伸展させた状態で足首を背屈した際にふくらはぎに痛みを感じる状態です。

ホーマンズ徴候は、深部静脈血栓症による静脈炎が起こっているかどうかを確認するための方法として取り入れられてきました。ホーマンズ徴候のチェックを実施した際にふくらはぎが痛いと感じた場合、深部静脈血栓症の徴候ありと判断されることがあります。

ただし、近年では深部静脈血栓症による静脈炎をホーマンズ徴候の有無のみで診断することはほとんどありません。現在ではより精度の高い診断をするため採血結果と超音波検査が重視されています。

ホーマンズ徴候が見られる深部静脈血栓症とは?

ホーマンズ徴候が見られる深部静脈血栓症とは?

ホーマンズ徴候が見られる深部静脈血栓症とは、足から心臓へと血液を戻す血管に血栓(血の塊)ができる病気です。血栓の形成には以下のウィルヒョウの三徴と言われる三つの要因が関わっています。一つ目は(手術やけが、炎症などによる)静脈の損傷、二つ目は(がんや血液凝固障害、薬剤などによる)血液凝固能の亢進、三つ目は心臓に戻る血流速度の低下です。

深部静脈血栓症では、足のむくみなどのさまざまな症状が発生するのが特徴です。ここでは、深部静脈血栓症についてさらに詳しく解説します。

深部静脈血栓症の症状

深部静脈血栓症の初期症状には、圧痛、下肢全体の腫れ、3cmを超えるふくらはぎ周径の左右差、圧痕性浮腫(指で押して離した後も凹みが残るむくみ)、身体表面の側副静脈などが挙げられます。症状は片側の足にのみ現れるケースがほとんどです。初期症状を放置していると、腫れが続いて皮膚が茶色く変色し、潰瘍へと発展するため注意が必要です。

また、血栓が流されて肺動脈を閉塞すると、肺血栓塞栓症を引き起こすこともあります。肺血栓塞栓症になると胸の痛みや呼吸困難などの症状が現れ、最悪の場合は死亡するケースもあるため、早期発見が重要となります。

深部静脈血栓症になりやすい人

深部静脈血栓症になりやすい方の特徴は、以下の通りです。

  • 高齢者
  • 妊婦
  • 出産直後の方
  • 肥満の方
  • 外傷・骨折などの治療中の方
  • 手術を受けたばかりの方
  • 脊髄損傷等でベッド上安静の方
  • がんの方
  • 慢性心疾患・自己免疫性疾患がある方
  • 経口避妊薬(ピル)を服用している方
  • 深部静脈血栓症・肺血栓塞栓症を患ったことがある方
  • 血栓ができやすい体質の方

また、健康な人でも、飛行機などの乗り物で長時間座ったまま・横になったままでいるときや、災害時の避難などで車中泊するときにも注意が必要です。

深部静脈血栓症の診断方法

深部静脈血栓症の診断には、主に超音波検査が実施されます。Dダイマー検査はスクリーニングとして使用され、静脈血栓症を疑う際には非常に有用な検査です。また、 CT検査などが行われるケースもあります。

深部静脈血栓症が疑われる際は、まずは病歴聴取・身体観察によって深部静脈血栓症の可能性の高さを判定するのが基本です。診察後に超音波検査を実施し、異常が見られた場合は深部静脈血栓症と診断されます。

病歴聴取・身体観察の時点で深部静脈血栓症の可能性が低いと判断された場合は、超音波検査で異常が見られなければほかの疾患を疑います。対して、事前の診察で深部静脈血栓症の可能性が高いと判断された患者さんには、超音波検査で問題がない場合でも、念のため再検査を行うケースも少なくありません。

再検査ではDダイマー検査を実施し、検査結果が正常であればその後はフォローアップのみの対応となるのが通常です。Dダイマー検査で異常が見られたら、後日改めて超音波検査を実施します。

ホーマンズ徴候はあくまで深部静脈血栓症の診断の参考基準の1つであり、診断を確定する方法ではない点に注意しましょう。

深部静脈血栓症を予防するには?

深部静脈血栓症を予防するには?

深部静脈血栓症は日々の生活の中で予防することが可能です。深部静脈血栓症の好発部位は、下腿筋静脈、特にヒラメ筋静脈、そして左腸骨静脈です。なかでも、ヒラメ筋静脈などから中枢へ進展して大きくなったフリーフロート血栓は、肺血栓塞栓症による突然死の塞栓源として多いことが知られています。深部静脈血栓症により肺血栓塞栓症を引き起こせば命に関わるケースもあるため、看護師の皆さんは、具体的な予防策を押さえておきましょう。

ここでは、深部静脈血栓症を予防する方法について詳しく解説します。

早期離床

深部静脈血栓症は、寝たきりで過ごすことによってリスクが高まる疾患です。病気やケガによる手術後は出血リスクなどを考慮して安静に過ごすのが基本ですが、安静が解除されたら医師の指示のもとで早期の離床を目指すことで深部静脈血栓症を予防できます。

早期離床を実現すると適度に身体を動かせるため、下肢のポンプ機能が促進されます。血流がよくなれば血栓予防につながり、深部静脈血栓症を防ぐことが可能です。

また、早期離床には深部静脈血栓症の予防以外にもさまざまなメリットがあります。具体的なメリットは、以下の通りです。

  • 呼吸器合併症の予防
  • 術後イレウスの予防
  • 筋力低下の予防
  • 術創の早期回復

看護師は患者さんに早期離床の必要性を説明する・家族のサポートを促すなどして、深部静脈血栓症の予防に取り組みましょう。

適度な運動

深部静脈血栓症を予防するには、ウォーキングなどの運動も有効です。日々の適度な運動を継続すれば、血流促進効果を期待できます。

血栓予防の基本は、通勤時・外出時に積極的に歩くことです。ウォーキングの時間を確保するのが難しい場合は、ふくらはぎのマッサージやストレッチなどのケアを取り入れることでも予防効果を得られます。

深部静脈血栓症予防に有効なストレッチの例は、以下の通りです。

  • 足首の背屈・底屈を繰り返す上下運動
  • 足首を内回り・外回りに10回ずつ回す運動
  • 肩を前方・後方に10回ずつ回す運動

深部静脈血栓症を防ぐには、長時間同じ体勢で過ごさないことが重要です。デスクワークや在宅ワークなどで運動が難しい場合は、定期的に立ち上がってストレッチする・伸びをするなどの対策を取り入れるのがよいでしょう。

水分補給

水分不足に陥ると血液がドロドロした状態となるため、血栓が形成されやすくなります。深部静脈血栓症予防には、体内の水分が不足しないよう意識して水分を補給することが有効です。

水分補給の際は、一度にたくさん水を飲むのではなくこまめに飲むのが重要です。寝起き・入浴前・就寝前などは、コップ1杯分の水やお茶を飲むとよいでしょう。

また、夏場や運動後などの汗を大量にかいた後は、スポーツドリンクを飲むのが効果的です。

汗には水分と電解質が含まれており、大量に汗をかいた後は水分・電解質の両方が不足します。水・お茶などで水分のみを摂取すると電解質の濃度を調整するために汗や尿が出ることから、結果的に脱水状態に陥ります。

基本的には水やお茶で水分を補給し、発汗時はスポーツドリンクを飲用して水分と電解質を補いましょう。

弾性ストッキングの使用

弾性ストッキングとは、特殊な構造によって下肢に圧迫圧をかけられるストッキングです。足首部分の圧迫圧がもっとも強く、上に向かうほど圧迫圧が弱くなるよう編まれているのが特徴です。

弾性ストッキングを着用することで下肢の静脈還流が改善され、足から心臓への血液の戻りをサポートできます。日中のデスクワークや立ち仕事をする際に着用しておけば十分な効果を得られます。基本的には夜間の着用は不要ですが、深部静脈血栓症のリスクが続く限りは終日着用する必要があります。

また、弾性ストッキングは病院以外でも購入可能であり、サイズや圧迫圧の強さによりさまざまな種類があります。初めて使用する場合には、まずは圧迫圧が弱めのタイプから取り入れるのがよいでしょう。

服薬

深部静脈血栓症は、特に高リスクの患者さんについては予防をしっかり行う必要があります。服薬による予防では、抗凝固薬を使用します。具体的な薬物の例は以下の通りです。

  • 低用量未分画ヘパリン
  • ワルファリン
  • フォンダパリヌクス
  • 直接作用型経口抗凝固薬

薬物療法を取り入れるのは、手術を受ける患者さんや重篤な疾患により寝たきりの患者さんなどです。それぞれの患者さんの持つリスクや受ける手術の種類、予防治療の期間などを考慮して、薬物の種類や服薬方法を決定します。

まとめ

ホーマンズ徴候は深部静脈血栓症の参考所見の1つで、深部静脈血栓症を放置すると肺血栓塞栓症を引き起こす危険性があるため、早期発見と適切な予防が重要です。深部静脈血栓症を予防するには、早期離床や適度な運動、こまめな水分補給、弾性ストッキングの着用といった日常的な対策が有効です。

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※当記事は2025年1月時点の情報をもとに作成しています

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