採血は病気の診断や状態把握に必要不可欠な検査です。しかし、看護師のなかには、人の体に針を刺す行為に抵抗があり、採血に苦手意識を持つ方も少なくありません。一方で、採血を得意とする看護師も数多くいるのが実情です。
当記事では、採血を成功させる手順やコツ、注意点を解説します。採血に苦手意識のある方は改めて基本を押さえ、コツをぜひ実践の際に活かしてください。
採血の手順
採血は、患者さんの健康状態を把握するための医療行為です。注射針を使って表在静脈から静脈血を採取し、さまざまな血液検査を行って病気の診断や病状の把握に必要なデータを収集します。
採血方法には真空採血管を用いる方法とシリンジを用いる方法がありますが、基本的な流れは同じです。以下では、採血作業の手順を4つのステップに分けて解説します。
必要なものを用意する
採血行為をスムーズに進めるには、使用する物品を準備することが大切です。物品はすぐ使える状態で整理し、採血時に片手で簡単に取り出せるよう、適切に配置しておきましょう。採血用に準備する主な物品は、以下の通りです。
【シリンジ採血】
- シリンジ
- 注射針もしくは翼状針
- ブラッドトランスファーデバイス
【真空管採血】
- ホルダーつき注射針
【共通する物品】
- 指示書
- アルコール綿
- 手袋
- トレイ
- 針捨て容器
- 駆血帯
- サージカルテープ
- インジェクションパッド
- 真空採血管
- 真空採血管スタンド
- 肘枕
物品の配置場所を事前に確認しておくと、手技中に混乱せず集中して採血を進められます。指示書を再確認し物品に漏れがないかチェックしたら手洗いし、患者さんのもとに向かいましょう。
採血の準備をする
氏名やID番号を照合して患者さんの本人確認を行い、手技中に使用する物品を提示しながら、採血の目的と採血量、アレルギーの有無などを分かりやすく説明・確認します。患者さんが安心して協力できるように、採血の流れや採血後の注意点についても伝えましょう。
次に駆血帯を巻き、血管を選びます。血管の性状や走行を確認し、適切な血管を選んでください。その後、穿刺部位をアルコール綿で消毒します。消毒は中心から外側に向かって円を描くように行い、十分に乾燥させましょう。
穿刺する
消毒液が乾いたら、採血針を皮膚に対し15~30度の角度で刺します。刺入時は、針先の刃面を上に向け、針先が血管に入ったのを確認したら針をやや水平になるように角度を変え、血管の走行に沿って5mm程度進めましょう。
この際、患者さんに声をかけると、安心感を与えられます。また、痛みやしびれがないかを患者さんに必ず確認してください。
採血をする
穿刺部を固定したまま、真空採血管またはシリンジで血液を採取します。真空採血管を使う場合は、しっかりとホルダーに装着し、必要な本数の採血管を順番に差し込んで血液を採取してください。テープで翼状部分を固定すると、採血本数が多くてもズレません。
シリンジの場合は、内筒をゆっくりと引き、丁寧に血液を吸引します。強く内筒を引くと血管に負担がかかり、溶血のリスクが高まるため注意しましょう。
必要な量を採取したら駆血帯を外し、穿刺部に消毒綿を当てて針を抜きます。シリンジの場合は先に採血管をホルダーから外してください。
その後、消毒綿で穿刺部位を真上から3分~5分程度押さえ、圧迫止血します。抗凝固薬を服用している患者さんには、通常よりも長めに圧迫する必要があるため、その点も配慮してください。
完全に止血されていることと、異常が発生していないことを確認したら絆創膏を貼って採血終了です。
採血をするときのコツ

採血の際は、以下のコツを押さえると成功しやすくなります。
血液を採取しやすい血管を選ぶ |
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採血する際は、まっすぐで弾力のある部分を選びましょう。血管の走行は人によって異なりますが、肘の正中皮静脈・橈側皮静脈・尺側皮静脈から探すのが基本です。 |
腕を温める |
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採血開始前に蒸しタオルなどを使って患者さんの腕を温めると、血管が拡張しやすくなります。 |
駆血帯を締めすぎない |
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駆血帯は橈骨動脈が触れる程度の強さで締めましょう。血管を圧迫しすぎると血流が悪くなり、血管が見えにくくなる可能性があります。 |
患者さんに協力してもらう |
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自分自身で血管が見えやすい位置を把握している患者さんも少なくありません。血管が見つからないのであれば、患者さんに「いつも採血をしている場所」を教えてもらうのも効果的です。 |
手を握ってもらう |
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採血するほうの手の親指を中にして軽く握ってもらうと、適度に腕の筋肉が収縮して血管が見えやすくなります。 |
針を固定する |
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針を刺した後はしっかりと固定し、針が動かないようにします。針が動くと血管が傷つき、十分な血液量を採取できないケースがあるためです。 |
患者さんの姿勢に配慮する |
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採血時には患者さんの姿勢も重要です。過去に気分が悪くなったことがある患者さんには、座位ではなく仰臥位で採血を行うとよいでしょう。 |
なお、採血部周辺をトントンと叩くと血管が見えやすくなると言われていますが、現状エビデンスがありません。手をグーパーしてもらうクレンチングも、筋肉のカリウム流出を招いて数値に影響が出る場合があるため避けましょう。
採血における注意点

採血業務は細心の注意を払って行う必要がある医療行為です。スムーズに終了すれば問題のないケースが大半ですが、まれに採血に伴う合併症が起こるため注意が必要です。以下では、採血担当者が注意すべき主な点を紹介します。
アレルギー
採血時に使用する消毒薬や手袋に含まれるラテックスなどに対して、アレルギー反応を示す患者さんがいます。アレルギー反応は、軽度な発疹やかゆみのケースもあれば、アナフィラキシーショックに至るケースもあるため、必ず事前に記録チェック及び患者さんへの聞き取りを行い、アレルギーの有無を確認しましょう。
既往があると分かっている患者さんには、別の消毒剤やラテックスフリーの手袋を使用するなどの対策が必要です。採血中や採血後にアレルギー症状が見られた場合、ただちに担当医師へ報告してバイタルサインを測定し、適切に処置する必要があります。
止血困難・皮下血腫
患者さんの体質や服薬状況、止血方法によっては、止血困難・皮下血腫が発生する場合があります。通常の止血時間は5分程度です。しかし、出血リスクの高い患者さんには5分以上の圧迫止血を行うことが推奨されます。
特に抗凝固薬や抗血小板薬を服用している患者さんや、出血傾向がある患者さんでは、完全に血が止まったかどうかをより入念にチェックしましょう。また、採血部位を強く揉まないのも、皮下血腫の防止には大切です。
神経損傷
採血時の神経損傷はまれですが、発生した場合には患者さんに持続的な痛みやしびれを引き起こす恐れがあります。特に、正中神経が走行する部位での深い穿刺は神経損傷のリスクが高いため、注意が必要です。
神経に近い部分を刺す場合には、短い針の使用も検討しましょう。また、針を刺す際は浅い角度で、かつ深くまで針を進めないように心がけます。なによりも、神経分布や血管の走行を正しく理解しておくことが大切です。患者さんが痛みやしびれを訴えた場合は、ただちに針を抜き、状況を確認して適切に対応してください。
血管迷走神経反応(VVR)
血管迷走神経反応(VVR)は、迷走神経の過度な興奮により血圧が低下し、徐脈・めまい・気分不良・意識消失などを起こす場合がある合併症です。この反応は、採血に対する極度の不安やストレスが誘因となることが多くあります。
VVRを予防するためにも、患者さんに対して事前にリラックスできる環境を整え、適切な声がけを行いましょう。また、過去にVVRを経験したことがある患者さんには、仰臥位での採血を行い、転倒などのリスクを最小限に抑える配慮が必要です。万が一反応が発生した場合には、ただちに針を抜いて患者さんを安静にさせ、必要に応じて医師に連絡しましょう。
まとめ
採血を成功させるためには、適切な物品の準備や手技だけでなく、患者さんへの丁寧な説明やリラックスした環境作りが欠かせません。採血時には神経損傷や皮下血腫、血管迷走神経反応(VVR)などの合併症が起こる可能性もあります。これらを防ぐには、針の刺入角度や血管選びに注意し、患者さんと常にコミュニケーションを取りながら進めることが大切です。
看護職専門のキャリアアドバイザーが在籍する「マイナビ看護師」では、スキルアップやキャリアチェンジを考える看護師の方をサポートしています。医療に関する知識を活かしていきたいという方は、ぜひ「マイナビ看護師」にご相談ください。
※当記事は2024年11月時点の情報をもとに作成しています
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