好中球は白血球の中の顆粒球の一種で、白血球全体の約45~75%を占めています。体に入ってきた細菌や真菌感染などの侵入物を貪食して体を守る防御機構となっています。傷ができたときに生まれる膿は、好中球が侵入物を貪食して、顆粒中の酵素や活性酸素で消化・殺菌して死滅したものです。
当記事では、好中球とはなにか、また好中球の増加・減少の原因となる病気や状態の特徴を解説します。好中球に関する知識を深めたいという方は、ぜひご一読ください。
好中球とは
好中球(Neutrophil)は、白血球のなかでもっとも数が多い顆粒球の一種です。白血球は、異物から体を守る免疫機能を持ちます。また炎症巣に移行するために、血管内皮に接着する機能や、血管から組織へ入り炎症巣に移行する遊走、細菌などの異物を細胞内に取り込む食作用など、感染防御や異物を除去するための機能が備わっています。そのうち好中球は細菌や真菌の感染に対して重要な防御役割を果たします。
好中球の特徴は、遊走能・貪食能・殺菌能を持ち、異物に対する最初の防御ラインとして活躍する点です。血液中にある好中球は、感染などの刺激を受けると該当組織に移動して侵入した異物を取り込み、内部の酵素や活性酸素で消化して無害化します。
好中球の増加の原因となる病気の特徴

好中球増多症は白血球増加症の一種であり、一般的には血液中の好中球が正常値である7,000/μlを超えて増加する状態を指します。好中球は成熟型と未熟型に分類されますが、基本的に好中球増多症と診断が下されるのは、成熟型が主体となって増加した場合です。以下では、MSDマニュアル 家庭版の情報を参考に好中球増多症の原因となる可能性がある病気や状態を6つ解説します。
(出典:MSDマニュアル 家庭版「好中球増多症」)
感染症
感染症は、好中球増加の主な原因の1つです。細菌が体内に侵入すると、それに反応して好中球が動員され、異物の貪食と殺菌を行います。この反応は、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)などの造血因子が産生されることにより促進されます。特に細菌感染症における好中球の割合を確認することは大切です。
血液像検査では好中球は分葉核球(SEG)と呼ばれる成熟した細胞と、桿状核球(BND)や後骨髄球(MM)、骨髄球(MY)と呼ばれる幼若な細胞に分類されます。
感染性の疾患が原因の場合、重症度が高くなるほど好中球の増加が顕著に見られるのが一般的です。通常は成熟してから血液中に放出される好中球が、感染の重症化に伴い、未熟な状態のままで血液中に現れることもあります。成熟した好中球よりも未熟な好中球の比率が増大することを、核の「左方移動」と言います。左方移動はBNDなどの幼若な好中球が15%以上に増加する現象で、体内での好中球の消費が強く、骨髄からの供給が盛んであることを表します。
細菌感染症では肺炎・敗血症・髄膜炎などが代表的です。真菌感染症ではカンジダ症やアスペルギルス症などへの感染も好中球増加を引き起こします。
(出典:MSDマニュアル 家庭版「好中球増多症」)
炎症性疾患
リウマチ熱や関節リウマチなどの炎症性疾患も、好中球増多症の原因の1つです。これらの疾患では体内での炎症反応が持続し、それに対応するために好中球の数が増加します。炎症は、免疫系が何らかの異常や侵入物に対応するために引き起こす反応であり、好中球はその反応の中心的役割を担うためです。
また、やけどや外傷などの物理的な損傷によって発症した炎症により、好中球が増加する場合があり、好中球が損傷部位に移動し、感染や損傷の修復を助ける役割を果たします。
(出典:MSDマニュアル 家庭版「好中球増多症」)
血液疾患
慢性骨髄性白血病(CML)や真性赤血球増加症、本態性血小板血症、および骨髄線維症などの血液疾患も、好中球増加を引き起こす原因です。これらの疾患は慢性骨髄増殖性疾患とも呼ばれます。
多能性あるいは骨髄系幹細胞が異常に増殖し、好中球が過剰に生成されることが特徴です。慢性骨髄増殖性疾患が原因の場合、好中球を含む白血球だけでなく、赤血球や血小板にも異常が発生するケースが少なくありません。
(出典:MSDマニュアル 家庭版「好中球増多症」)
悪性腫瘍
悪性腫瘍の進行によっても好中球増加が見られる場合があります。悪性腫瘍では、腫瘍細胞が成長する過程で組織を破壊する、感染症を合併するなどして、炎症反応が生じます。この炎症反応により、腫瘍と戦うための防御機構が活性化されるのが、好中球の増加原因です。
また、腫瘍細胞が顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)を産生することで好中球の増殖が促進されることもあります。なお、悪性腫瘍があっても、初期状態では好中球が過度に増加する症状はほとんど見られません。腫瘍細胞がG-CSFを産生することで好中球が増殖し、腫瘍の進行に伴って好中球に変化が起きることが多いため、腫瘍の悪性度や進行状況を評価する際の1つの指標となります。
(出典:MSDマニュアル 家庭版「好中球増多症」)
外部刺激や生理的要因
外部刺激や生理的要因によっても一時的に好中球が増加する場合があります。たとえば、ストレスや激しい運動、妊娠などです。これらの状況では、身体が刺激に対する防御反応として好中球を増加させることがあります。
激しい運動や過度な精神的ストレスは、交感神経の活動が高まることで好中球が血液中に動員されるというのが通説です。妊娠中もホルモンバランスの変化や免疫系の調整により好中球数の増加が見られますが、一時的なものであれば正常な生理反応の一部と考えられています。
(出典:MSDマニュアル 家庭版「好中球増多症」)
(出典:日本医科大学多摩永山病院「周産期看護マニュアル よくわかるリスクサインと病態生理」)
感染症以外の外因性要因
感染症以外にも、特定の薬物の使用が好中球増加の原因となる場合があります。たとえば、コルチコステロイドやリチウムなどの薬物です。コルチコステロイドは、骨髄にある好中球を末梢血中に移動させる作用があり、その結果、血中の好中球数が増加します。
また、喫煙や鉛中毒などの中毒も、好中球数の増加に関係する要因です。喫煙や鉛中毒などの外因性要因によって引き起こされる好中球増加は、身体を有害物質から守ろうとする反応として現れます。
(出典:MSDマニュアル 家庭版「好中球増多症」)
好中球の減少の原因となる症状の特徴

好中球減少症とは白血球減少症の一種であり、一般的に血液中の好中球が正常値よりも低い、1,500/μl以下に減少する状態です。好中球は感染症に対する防御の最前線に立つ細胞であるため、その減少は身体の免疫力の著しい低下を招き、細菌や真菌の感染リスク増加を招きます。
場合によっては生命を脅かす重度の感染症を引き起こしかねません。好中球減少症の診断には、血液検査(血算)や骨髄検査を用いるのが一般的です。ここからは、以下リンク先の情報を参考に好中球減少症の原因となることの多い病気や状態を4つ解説します。
(出典:MSDマニュアル 家庭版「好中球減少症」)
(出典:MSDマニュアル プロフェッショナル版「好中球減少症」)
感染症
一部のウイルス性感染症や重度の細菌性感染症は、好中球減少症を引き起こす場合があります。ウイルス感染症では、体内の免疫反応によりリンパ球が増加し、代わりに好中球が減少するケースが少なくありません。
特に好中球の減少を引き起こしやすいとされるのが、インフルエンザウイルスや麻疹ウイルスなどです。また、敗血症などの重症感染症では好中球が急速に消費され、結果として血液中の好中球数が低下します。
血液疾患
再生不良性貧血や骨髄線維症などの血液疾患も、造血細胞での好中球の生産を阻害し、好中球減少症を引き起こします。好中球減少症が引き起こるのは、骨髄自体が正常に機能せず、好中球を含む血球の産生が低下するケースがあるためです。
その結果、身体の免疫力が低下し、感染症に対する抵抗力も弱まります。また、急性白血病などの血液がんも、腫瘍細胞が骨髄細胞を占拠して正常な好中球の生産を妨げることのある疾患です。
自己免疫疾患
全身性エリテマトーデス(SLE)などの自己免疫疾患では、免疫系が自分の身体の細胞を攻撃することによって、好中球減少が引き起こされます。自己免疫疾患では、好中球に対する自己抗体が産生され、好中球が破壊されるためです。
自己免疫性好中球減少症は慢性的な経過をたどることが多く、症状の程度は個人によって異なります。遺伝性・先天性のものは小児期に発症するケースが大半です。重症先天性好中球減少症の場合、造血幹細胞移植の適応対象となります。
薬物誘発性好中球減少症
抗がん剤や抗菌薬、抗てんかん薬、抗リウマチ薬などの薬物によって、好中球減少症が引き起こされる場合もあります。骨髄での好中球の生産を抑制することや、好中球を破壊する作用を持つことがあるためです。
特に、抗がん剤は腫瘍細胞だけでなく正常な細胞にもダメージを与え、好中球数の大幅な減少を招くケースが珍しくありません。一般的に、抗がん剤治療の開始後7日目から10日目頃から白血球の数が減り始め、10日目から14日目頃に最低になり、3週間くらいで回復していきます。好中球は体内に侵入した病原菌から体を守る働きがあるため、好中球が減少すると免疫力が低下します。その結果、口、肺、皮膚、尿路、腸、肛門、性器などの部位で感染症を起こしやすくなります。
人は常在菌と呼ばれる菌を持っており、健康な時には問題となりませんが、好中球数が減少し免疫力が低下している時には、常在菌による感染(日和見感染)を起こす可能性があるため注意が必要です。薬物誘発性の好中球減少症は治療中の薬物の種類や投与量によってリスクが異なりますが、早期に対応する必要があります。
まとめ
好中球は感染防御の最前線に立つ、白血球のなかでもっとも数の多い顆粒球の一種です。好中球はさまざまな原因で増減します。好中球の数の変化は、病態の進行や治療法を評価する重要な指標となるため、定期的な血液検査や必要な治療管理が大切です。
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※当記事は2024年11月時点の情報をもとに作成しています
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