• 2023年1月31日
  • 2023年11月10日

保育園で働く看護師の役割・仕事内容|役立つスキル・経験と給与も解説

 

看護師の代表的な職場として、医療機関や介護施設をイメージする方も多いでしょう。しかし、看護師はこれらの職場だけでなく、保育園でも活躍できる職種です。近年では、アレルギーと診断される子どもも増加しており、保育園における看護師需要はますます高まっているといっても過言ではありません。

保育園で働く看護師でも、対象者の健康管理を行いながら健康を守るという点に変わりはありませんが、日々の具体的な仕事内容や役立つスキルはやや異なります。

そこで今回は、保育園における看護師の役割から仕事内容、働くメリット・デメリット、役立つスキル・経験までを詳細に説明します。子どもたちの健康を守りながら、すくすくと成長する姿を見たいと考えている看護師さんは、必見です。

保育園における看護師の役割

看護師は、病院・クリニックや各介護施設のほか、保育園でも活躍できる職種です。保育園で働く看護師は、「保育園看護師」とも呼ばれます。

乳幼児は特に疾病への抵抗力が弱く、心身機能の未熟度に伴う病気やケガのリスクは高いといえるでしょう。そのため、子どもが育つ環境において保育士の存在が非常に求められるようになりました。実際に私立保育園では、規模を問わず1名の常勤看護師の配置が義務付けられており、公立保育園においては配置義務はないものの、努力義務としてできる限り看護師を配置するよう定められています。

そして、保育園における看護師の役割は下記の通りです。

■保育園における看護師の役割

  • 子どもの発達状態や健康状態の判断にもとづいた保健的対応
  • 乳児保育に携わる職員間との連携
  • 保護者からの健康相談対応 など

メインとなる役割は保育園に通う幼児の保健的対応ですが、保育士や嘱託医との連携を図ることや、保護者からの健康相談に対応しつつ信頼関係を築きながら保育を進めることも、保育園看護師の大切な役割です。
(出典:厚生労働省「保育所等における保育の質の確保・向上に関する基礎資料」
(出典:厚生労働省「保育所保育指針」

医療機関で働く看護師との違い

そもそも看護師とは、傷病者やじょく婦に対する療養上の世話や診察の補助を行う仕事であり、医療機関は、看護師の代表的な職場でもあります。では、保育園で働く看護師と医療機関で働く看護師はどのような違いがあるのでしょうか。前述した保育園で働く看護師の役割と、下記に紹介する医療機関で働く看護師の役割を見比べながら、その違いをチェックしてみてください。

■医療機関における看護師の役割

  • 病状の観察や報告
  • 身体の清拭、食事、排泄などの療養上の世話
  • 治療の介助や処置
  • 健康状態の変化を瞬時に察知したうえでの適切な医療ケア・看護サービスの提供
  • 予防的視点に立った患者さんへの生活支援
  • 医療ケア・介護サービスなどのサービス全体における統合的なマネジメント
  • 終末期医療(ターミナルケア)の提供 など

(出典:厚生労働省「看護補助者が行っている業務の実態」

保育園で働く看護師の仕事内容

保育園で働く看護師の仕事内容

保育園で働く看護師は、医療機関で勤務する場合と立場が違い、仕事内容もやや変わることが特徴です。保育園看護師の具体的な仕事内容には、下記が挙げられます。

  • 子どもの体調管理
  • 職員の健康管理・保育指導
  • 園内の衛生管理・感染症対策
  • 保護者の健康相談対応

ここからは、それぞれの仕事内容についてより詳しく紹介します。

子どもの体調管理

保育園で働く看護師は、子どもの様子をしっかりと観察しながら、体調管理を毎日行うことが重要です。具体的には、下記のような看護業務を行いながら子どもの健康を管理します。

  • 検温や観察による健康状態の把握
  • アレルギー対応
  • 衛生指導(手洗い・うがい)
  • 健康診断・歯科検診の補助
  • 発熱やケガ・事故の対応 など

発育・発達状態が未熟な子どもは体調を崩したり疾病が発生することも多々あります。そのため、看護師は園児一人ひとりの様子を日々確認し、状況に応じて適切な対応をすることがポイントです。
(出典:厚生労働省「保育所保育指針」

職員の健康管理・保育指導

保育園で働く看護師は、園児だけでなく、保育園で働く職員の健康管理や保健指導も行います。

厚生労働省の「保育所保育方針」では、保育の質を向上させるため、職員が研修等を通じて必要な知識・技能を身につけることが求められています。その一環として、看護の知識を取り入れた保育指導を職員に行うこともあるでしょう。

また、職員はアレルギー診断を受けた園児や健康状態が不安定な園児に対して適切な処置をする必要があります。保育業務中の注意点・万が一容体が悪化した場合の応急処置方法といった保育指導も職員に対して行います。
(出典:厚生労働省「保育所保育指針」

園内の衛生管理・感染症対策

園児は免疫力が低い上、子ども同士が濃厚に接触することも多いため、保育園で働く看護師は園内の衛生管理・感染症対策に努めることも重要です。手洗いや消毒などで感染源を絶つことはもちろん、換気や職員自身の健康管理など、看護師が注意しなければならないことは多くあります。

万が一衛生状態に問題があった場所は、看護師が職員とともに清掃・消毒を行います。また、清潔な環境を保つために、職員間で話し合って衛生ルールを策定するケースもあるでしょう。

園内の衛生管理や衛生ルールの策定においては、厚生労働省の定める「保育所における感染症対策ガイドライン」の活用が有効です。
(出典:厚生労働省「保育所における感染症対策ガイドライン(2018 年改訂版)」

保護者の健康相談対応

保育園の職員は、保護者からの相談に応じ、保護者に対して支援することも求められます。看護師の場合は、保護者から子どもの健康に関する相談を受けるケースも少なくありません。子どもの健康に不安を抱える保護者に対して、適切な相談対応や保健指導を行うことも、保育園で働く看護師の重要な業務です。

また、保護者の健康相談に応じることはもちろん、すべての保護者が安心して子どもたちを預けられるよう、園での取り組みや感染症情報を記載した「保健だより」も定期的に作成することもあります。保健だよりは、子どもたちの健やかな成長を守るために必要なおたよりであり、保護者への保健指導・保護者へ子どもたちの健康についての情報を届けるためのツールです。
(出典:厚生労働省「保育所保育指針」
(出典:松阪市「保育園・こども園ほけんだより」

保育施設の看護師求人・転職・募集おすすめ一覧 – マイナビ看護師・公式

保育園で働く看護師のスケジュール

保育園で働く看護師のスケジュール

保育園で働く看護師は、園児たちの体調管理はもちろん、うがいや手洗いの指導や保護者に対しての保健指導、保育補助など多くの役割を担います。

1日の具体的な業務の流れは以下の通りです。

8:00~ 出勤 出勤後はミーティングに参加し、病欠の有無や健康状態など、園児の情報を保育士と共有します。
8:30~ 健康状態のチェック 登園してきた園児の連絡帳を確認し、健康状態を把握します。場合によっては、個別に検温などを実施することもあります。
9:00~ 保育補助 散歩の同行や遊びの時間の見守り、おむつ交換、トイレ補助など、保育業務の補助を行います。看護師の場合は、体調の変化が起こりやすい、0~1歳の園児の保育補助を担当するケースもあります。
12:00~ 昼食 園児たちの食事サポートや、薬の服用が必要な園児への薬の与薬、アレルギーのある園児の対応をします。園児と一緒に昼食をとる場合が多いです。
13:30~ 記録・書類作成など 園児たちの様子を記録や、保育園が発行する健康だよりなどを作成します。
16:30~ お見送り 園児たちが帰宅する際に、お見送りをします。園での活動中に気になることがあれば、保護者に伝えます。
17:30~ 帰宅 業務が終了したら、保育士に必要事項を伝達して帰宅します。

上記のほかにも、体調が悪くなった園児の対応を行うなど、保育園で働く看護師の業務は多岐にわたります。

保育園で働く看護師の給与は?

保育園で働く看護師の給与は?

厚生労働省が発表した「令和4年度賃金構造基本統計調査」によると、看護師全体の給与は以下の通りです。

年収 月給 賞与
約508万円 約35.2万円 約86.2万円
(出典:厚生労働省「令和4年賃金構造基本統計調査 結果の概況」

続いて、保育園で勤務する看護師の給与は、下記の通りです。

年収 月給
私立 約408万円 約34.0万円
公立 約476万円 約39.6万円
(出典:内閣府「令和元年度幼稚園・保育所・認定こども園等の経営実態調査集計結果」

病院勤務などを含めた看護師全体の給与と比べると、保育園勤務の看護師の給与は少し下回ります。私立と公立の保育園を比較すると、公立のほうが給与が高い結果となっています。

求人サイトなどに掲載されている保育園勤務の看護師の給与は、約16万円~約30万円となっています。給与は勤務地によって異なり、地方の保育園のほうが低く、東京都内や神奈川県など都心に近いほうが高いのが一般的です。賞与は、約1か月~約3か月と保育園によって差があるため、事前にしっかりと確認しておく必要があります。

正社員ではなく、パートアルバイトの場合は、時給約1,000円~約1,500円で募集されている求人が見られます。保育園よっては、正社員に比べると少ないですが賞与があるケースもあり、待遇はさまざまです。

託児所ありの保育園も多く、育児と両立しながら働きたいと考えている人にとっては、働きやすい環境が整えられている傾向があります。また、「土・日休み」「日勤のみ」である場合がほとんどのため、夜勤を希望しない人にも、保育園勤務の看護師は向いているといえるでしょう。

看護師が保育園で働くメリット・デメリット

看護師が保育園で働くメリット・デメリット

看護師が保育園で働くことには、いくつかのメリット・デメリットがあります。ここでは、メリットとデメリットをそれぞれ分けて説明します。

■看護師が保育園で働くメリット

  • 残業や夜勤が少なく、プライベートの時間を確保しやすい
  • 医学的な知識の活用で保育園の質向上につなげられる

保育園は、土日祝日が休みとなることがほとんどです。保育園で働く看護師の休日はカレンダー通りとなり、スケジュールが立てやすくなるでしょう。加えて、夜勤がないため安定した生活リズムで働ける点もメリットです。また、医学的知識を大いに活用でき、保育現場の質向上につなげられる点も魅力といえます。
(出典:厚生労働省「保育の担い手となれる看護師の対象拡大により、健康管理など保育の質が向上」

■看護師が保育園で働くデメリット

  • 看護師の業務をすべて1人で対応する必要がある
  • 夜勤や残業、休日出勤がないぶん給料が少なくなる

基本的に、公立・私立を問わず保育園が雇い入れる看護師の数は1名程度と限られています。そのため、看護師業務をすべて自分1人で対応する必要があり、ときには大きな負担を感じる可能性もあるでしょう。また、夜勤や残業、休日出勤のある医療機関と比べて、保育園は看護師の給料が少ない点にも注意が必要です。
(出典:厚生労働省「保育所等における保育の質の確保・向上に関する基礎資料」

看護師が保育園で働くときに役立つスキル・経験

看護師が保育園で働くときに役立つスキル・経験

看護師が保育園で働くときに役立つスキル・経験には、下記のようなものが挙げられます。

●保育スキル

保育園看護師は勤務中、保育士のサポート役として普段から多くの園児のお世話をすることも多々あります。子どもとのコミュニケーション能力やピアノ・工作能力を含めた保育スキルは大いに役立つでしょう。

●小児医療やアレルギーに関する知識

保育園では、子どもならではの疾患やアレルギーを抱える園児も多くいます。そのため、小児医療やアレルギーに関する専門知識をもち、子どもの小さな違和感を瞬時に察知できる看護師は即戦力として活躍できるでしょう。

●子育て経験

保育園で働く看護師は、園児の健康管理だけでなく、保育士のサポート役として日々多くの子どもたちと関わります。場合によっては、おむつ交換や泣いている子どもをあやすなど基本的な子育て知識を要する業務も行うため、子育て経験は非常に強い武器となるでしょう。

保育園で働くのに向いている人の特徴は?

保育園で働くのに向いている人の特徴は?

保育園で働く看護師には、病院勤務の看護師と異なる業務を担当するため、保育園で働くことに負担を感じる人もいるかもしれません。

ここでは、保育園で働くのに向いている人の特徴を3つ解説します。

  • 子どもが好き
    保育園では、基本的に毎日多くの子どもと関わりながら仕事をします。子どもたちと過ごすことや、子どもたちの成長に関われるのは、保育園ならではです。子どもたちの笑顔と成長に充実感を感じられる方は、保育園勤務に向いているといえます。
  • デスクワークが得意
    保育園は、デスクワークの多い職場です。園児たちの様子を記録する書類作成や、保護者向けの健康だより、園内の掲示するポスター作成など、事務作業の割合も多くあります。事務作業が苦にならない人のほうが、保育園勤務に向いているでしょう。書類作成には期限があるケースも多いため、自己管理をしながら業務を進めることが大切です。
  • コミュニケーションを取ることが好き
    保育園ではさまざまな人と関わるため、他者とコミュニケーションを取る機会が多くあります。園児や保育士だけでなく、保護者との関わりも避けては通れません。保育士と保護者、看護師が1つとなって、子どもたちの生活を見守ることが大切です。

また、子どもは自分の体調の変化などを言葉にするのが難しいため、日頃からコミュニケーションを取って、異変に早く気付くことが重要です。信頼関係をきずけるように、積極的にコミュニケーションを取る必要があるでしょう。

看護師が保育園へ転職するときのポイントは?

看護師が保育園へ転職するときのポイントは?

保育園への転職を考えている場合には、いくつか注意べきポイントがあります。ポイントを抑えて転職活動を行うと、よりスムーズに新しい職場が見つかるでしょう。

ここでは、看護師が保育園へ転職するときのポイントについて解説します。

求人情報を確認する

保育園の求人は、園によって業務内容や勤務時間が異なるため、事前にしっかりと確認しておく必要があります。

たとえば、看護師がクラスの担任を受け持つケースはほとんどありませんが、まれに担任として募集をかけている保育園が存在します。保育園の担任となると業務負担が増えるため、自分にできるかどうかをしっかりと検討することが大切です。同時に、業務内容に見合った給与や待遇であるのかも、確認しておきましょう。

また、看護師の配置は1人であることが多い一方で、園の規模が大きければ2人看護師が配置される場合もあります。同じ看護師がいる園のほうが働きやすい方は2人体制の園を探しましょう。

そのほかにも、園児の人数や他園の看護師との連携の有無についても、確認が必要です

転職理由をまとめておく

面接では転職理由を尋ねられるため、転職理由についてまとめておくことが大切です。

保育園は、それぞれ教育理念や方針が異なります。数多くある保育園の中から、なぜこの保育園を選んだのかという理由を明確に説明できるように、準備しておきましょう。保育園のどのような部分に魅力を感じたのか、保育園の特徴などを考慮しながらまとめます。

また、保育園は長期的に働いてくれる人材を確保したいため、長期的なビジョンについても考えましょう。保育園での勤務で何を成し遂げたいのか、しっかりとアピールすることが大切です。特に今自分が持っているスキルなどを踏まえて志望動機を考えておくと、さらに採用担当者に響きやすいでしょう。

転職エージェントを利用する

保育園での看護師募集は、全国でも求人数があまり多くないのが現状です。そのため、自分で求人を探すのは難しいケースがあります。保育園での求人を探している場合は、転職エージェントを利用すると、効率的に求人を見つけられます。

転職エージェントや転職サイトでは、保育園勤務に特化した求人を簡単に検索することが可能です。また、アドバイザーによる面接対策や、相談受付などの支援も整っており、安心して転職活動を進められます。

まとめ

看護師は、病院・クリニックや各介護施設のほか、保育園でも活躍できます。保育園で働く看護師の主な役割は、園児の発育状態に適した保健的対応・職員間連携・保護者対応などで、子どもの体調管理から園内の衛生管理、保健指導・アドバイスまでさまざまな業務を担当します。

安定した働き方ができ、保育の質向上に貢献できる点は、保育園看護師の大きなメリットです。しかし、園内の看護師は1名程度と少数となるため、看護師業務の負担が大きい点や、夜勤・休日出勤がない分給料の高さは期待できない点に注意しておきましょう。

全国の看護師求人を掲載する転職サイト「マイナビ看護師」は、保育園からの求人情報も提供しております。無料転職サポートサービスでは、業界に精通したキャリアアドバイザーが非公開求人を含む求人の紹介から、履歴書の添削、面接のサポートまで、幅広く転職活動を支援いたします。保育園での転職を検討している看護師さんは、ぜひお気軽にご相談ください。

※当記事は2023年7月時点の情報をもとに作成しています

著者プロフィール