MFICUは、リスクやハンデを抱えた妊婦・胎児の治療を行う施設です。施設数や看護対象者が限られることもあり、NICUやGCUのことを知っていても、MFICUにはなじみがない方は多いでしょう。
当記事では、MFICUの概要や現状に加え、同じく集中治療を担当する各ICUの種類と特徴を紹介します。MFICUに欠かせない存在である助産師の詳細も徹底的に解説するので、産科医療や母子救急医療などに携わりたいと考えている方は、ぜひ参考にしてください。
MFICUとは?
MFICUとは、「Maternal Fetal Intensive Care Unit」の頭文字を取った略称で、日本語では「母体・胎児集中治療室」と訳されます。
妊婦に重症妊娠高血圧症候群・重篤な合併症・多胎妊娠などのリスクがある場合や、胎児に切迫早産・疾患が予想される場合に、妊婦や胎児が入院する施設です。患者さんの状況に応じてNICU・GCU・小児科のほか、さまざまな診療科と連携を図りながら24時間体制で対応します。
主に産科部門・産婦人科部門に属しているものの、産科のある病院すべてにMFICUが設けられているわけではありません。「総合周産期母子医療センター」であれば、必ずMFICUが設置されています。
MFICUの雰囲気や看護体制など
一般的なMFICU病棟の雰囲気や看護体制などは、以下の通りです。
MFICUの雰囲気 |
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MFICUは全室個室となっている以外、各病室の雰囲気は一般病棟とほとんど同じです。各部屋はクリーンルーム仕様となっているので、自由な窓の開閉はできないものの、冷暖房・換気設備が完備されるなど入院期間の安全性・快適性に配慮されています。また、各個室に備え付けの機器は遠隔確認が可能です。 |
MFICUの看護体制 |
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MFICUでは、総合周産期母子医療センターの指定基準に従い、下記の医療体制・看護体制を基本としてそろえる傾向にあります。
(出典:厚生労働省「周産期母子医療センター整備の現状等について」) また、病院によっては出産後を見据えた保健・育児指導や、治療の甲斐なく亡くなってしまった場合のグリーフケアに力を入れる施設もあります。 |
※看護体制や設備などはあくまで一例であり、すべての病院に共通しているとは限りません。
MFICUの施設基準や地域格差の詳細
現状、MFICUには、NICUのように明確な施設基準が定められていません。しかし、厚生労働省はMFICUの病床数について、下記の目標を1つの指針として提示しています。
- 人口約100万人に対して総合周産期母子医療センターを1か所整備する
- 総合周産期母子医療センター1か所につき、MFICU6床以上を備える
上記の基準は東京都や大阪府の症例データをもとに算出された数値です。そのため、人口の割合や予測される出生数などが異なる地域に対して、画一的に当てはめることの問題点も指摘されています。地域によっては必要とされる人員が確保できず、MFICU加算が取れない病院も存在する状況です。
2014年に行われた厚生労働省医政局調査では、診療報酬で加算が取れた都道府県数は16と半分以下にとどまっているほか、病床数は地域ごとで格差が生じています。しかし、2017年には1万人あたりのMFICU病床数は全国平均で9.0床となっており、必要数の目安には達したと判断されました。
ただし、医療圏によっては少ない病床数で広い地域を担当する必要があり、広域搬送や医師配置の工夫は必須です。そのため、三次医療圏の人口によっては6床未満でも可、6床以下の場合は産科の医師1名+オンコール1名でも可とするなど、基準を一部緩和する動きも見られます。
(出典:厚生労働省「MFICUの施設基準・入院基準・地域格差等に関する検討」)
(出典:厚生労働省「周産期母子医療センター整備の現状等について」)
(出典:厚生労働省「周産期医療について」)
(出典:大阪府「大阪府周産期医療体制整備計画」)
ICUの種類をMFICU以外で5つ紹介!

ICUとは「Intensive Care Unit」の頭文字を取った略称です。日本語では「集中治療室」と訳され、広義にはNICUやCCUといった特定の疾患に対する治療室を含める場合があります。MFICUは、さまざまな種類があるICUの1つです。ICUにはMFICU以外に下記の5種類があります。
- NICU
- GCU
- PICU
上記のICUはMFICUと連携することが多く、配置換えで所属する可能性もあるので、あらかじめ概要を把握しておくとよいでしょう。ここでは、MFICU以外のICUについてそれぞれの特徴を簡単に解説します。
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NICU
NICUとは、「Neonatal Intensive Care Unit」の頭文字を取った略称で、日本語では「新生児集中治療管理室」と訳されます。早産児や、出産後・出産直前にリスクやハンデが判明した病的新生児が入院する病棟です。
新生児3人に対して1人以上の看護師を配置し、保育器に安置した状態で呼吸・心拍・血圧などを24時間体制で監視・管理します。新生児のみを対象とするNICUは、妊婦・胎児を専門とするMFICUや、退院に向けて準備するGCUと連携して治療にあたることがほとんどです。MFICUに入院した妊婦から生まれた新生児がNICUに入院し、GCUで療養後に退院する流れとなります。
GCU
GCUとは、「Growing Care Unit」の頭文字を取った略称で、日本語では「新生児回復室」と訳されます。主にNICUで急性期治療を受け、回復期に入った新生児や乳児が入院する病棟です。施設によっては、「回復治療室」「継続保育室」「発育支援室」「移行期治療室」などと呼ばれることもあるでしょう。
基本的には退院後の生活に向けた継続ケアと育児指導が行われるものの、新生児の容態によってはNICUへ移動することもあります。一方、新生児の病状が安定している場合は、NICUを経由せず直接GCUへ入ることもあります。
PICU
PICUとは、「Pediatric intensive care unit」の頭文字を取った略称で、日本語では「小児集中治療室」と訳されます。ICUと同じく、24時間体制で集中的な治療と監視が必要となる重症患者のうち、小児患者を専門として救命にあたる病棟です。
病気や事故による障がいに加え、一般的な小児病棟では診療しきれない、人工呼吸・体外循環・中枢神経・術後管理などを必要とする小児患者を治療します。基本的にPICUでの治療対象は15歳未満に限定されるものの、患者さんが小児特有の疾病を有する場合は受け入れる施設も見受けられます。
MFICUでの勤務に求められるスキル

MFICUでの勤務に向いている方の特徴や求められるスキルは、以下の通りです。
赤ちゃんが好きな方
赤ちゃんに対して無条件の愛情を抱ける方は、助産師としての適性が高い方です。赤ちゃんが好きであれば、妊娠中から産まれる瞬間、誕生後まで赤ちゃんとそのお母さんに対して自然に敬意を払い、細やかな心遣いができるでしょう。
また、どのようなハンデや疾患を持った赤ちゃんにも深い愛情を持って接することは、赤ちゃんだけでなくお母さんの心を支えることにもつながります。
体力・精神力がある方
出産は、介助を行う助産師にとっても大仕事です。陣痛が始まったといってすんなりと出産は終わらず、担当する妊婦さんたちが連続して産気づけば超過勤務が続くこともあります。また、すべての赤ちゃんが無事に産まれてくれるとは限りません。長時間に及ぶ出産にも対応する体力と、不幸に直面しても妊婦さんのことを思ってしっかりとサポートできる強い精神力がある方は、助産師に向いているといえるでしょう。
判断力・決断力がある方
当初は正常分娩と診断された場合でも、想定外の事態は起こり得ます。わずかな処置の遅れが母子の命に係わる出産現場では、状況の変化に応じて速やかな意思決定が行える判断力と決断力が必要です。
思いやりがある方
助産師には、出産にまつわる介助や指導に加えて、妊産褥婦の精神的なケアも求められます。特にMFICUへ入院する患者さんは、出産や育児に対する大きな不安・ストレスを抱えている方が多くいます。安心して出産と育児に臨めるよう、妊娠中から産後までの長期間にわたり、お母さんの気持ちに寄り添った支援を行うことも助産師の仕事です。
まとめ
MFICUは、出産時のリスクがある妊婦や、ハンデ・疾患が予想される胎児のための入院施設です。総合周産期母子医療センターを中心に設置されており、24時間体制で母子の健康状態を監理・治療します。MFICUにおける看護師や助産師の需要は高く、今後も活躍が期待されている状態です。
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※当記事は2022年4月時点の情報をもとに作成しています
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