心理職の国家資格である「公認心理師」を取得するためには、当然国家試験に合格する必要があります。公認心理師国家試験の受験ルートには、A~Cの通常ルート、D~Fまでの経過措置ルートがあり、それぞれ対象要件が異なります。
(参考:一般財団法人 日本心理研修センター「公認心理師試験について 3 受験資格取得ルート」)
当記事では、数あるルートの中でも「Gルート」に焦点を当てて、対象要件から難易度、合格するためのポイントを徹底的に紹介します。公認心理師資格に関心を持つ人や、Gルートでの受験を目指す人は、ぜひ参考にしてください。
公認心理師国家試験のGルートとは?
そもそも公認心理師とは、医療福祉や教育などの分野において、心理学の専門的な知識と技術をもったうえで、心理に関する支援や指導、教育および指導を行う職業です。公認心理師が活躍できるフィールドは幅広く、資格を取得しているだけでも転職に有利となります。
公認心理師国家試験におけるGルートは、2017年9月に公認心理師法が施行されたことに伴う、5年間限定の経過措置、いわゆる特例の受験区分です。すでに心理職として働いている人など、その他の正規・経過措置ルートでは受験資格が得られない人に向けたルートとなります。現任者を対象としたルートであることから、「現任者ルート」とも呼ばれます。
Gルート以外の公認心理師国家試験の受験ルート

第4回公認心理師国家試験までの受験ルートには、Gルート以外にA・B・C・D・E・Fの合計7ルートが存在していました。このうちA・B・Cは公認心理師法に基づいた通常ルートであり、D・F・Gが経過措置のルートです。
Gルート以外の受験ルートでは、大学での必要科目の履修が必須です。その後は、大学院に進学して受験資格0を得るパターンと、実務経験を積んで受験資格を得るパターンに分かれることも覚えておきましょう。
ここでは、2021年に行われた第4回公認心理師国家試験の情報を参考に、Gルート以外の国家試験の受験ルートを、「A・B・Cの通常ルート」と「D・E・Fの経過措置ルート」に分けて詳しく紹介します。
(参考:一般財団法人日本心理研修センター「第4回公認心理師国家試験 受験の手引」)
通常ルート(A・B・C)
受験区分A・B・Cは、公認心理師法に基づいた通常ルートです。それぞれのルート詳細は、下記の表を参考にしてください。
ルート | 受験資格の取得方法・対象者 |
---|---|
A |
(1)4年制大学で必要科目を履修する (2)大学院で必要科目を履修する |
B |
(1)4年制大学で必要科目を履修する (2)施行規則第5条で定められた施設において、2年以上の実務経験を積む |
C | (1)A・Bルートと同等の知識や技術があると認められる |
今後、主流となるであろうルートはAルートです。そして、次ぐサブルートはBルートとなるでしょう。Bルートは大学卒業後、施行規則で定められている、限られた施設での実務経験が必要である点に注意してください。2021年12月現在、規定する認定施設は9施設です。
(参考:厚生労働省「公認心理師法第7条第2号に規定する認定施設」)
そして、CルートはA・Bルートと同様の知識や技術を有すると認定された人、具体的には海外の大学・大学院で必要科目を履修した人などが対象のルートとなっています。
また、A・Bルートで受験資格を取得できるのは、大学入学が2018年4月の人のみです。そのため、公認心理師国家試験をA・Bルートで受験できるのは2024年からとなり、次の第5回公認心理師国家試験では対象外となる点に注意してください。
Gルート以外の経過措置ルート(D・E・F)
D・E・Fルートは、通常ルート以外の経過措置ルートです。公認心理師の養成課程が作られる前に大学・大学院を卒業した人や、すでに心理職として働いている人を対象とした受験区分といえます。
2021年に行われた第4回公認心理師国家試験では、「D1」「D2」「E」「F」の合計4ルートが存在していました。それぞれのルート詳細は、下記の表を参考にしてください。
ルート | 受験資格の取得方法・対象者 |
---|---|
D1 |
(1)2017年9月15日より前に大学院で必要科目を履修する |
D2 |
(1)2017年9月15日より前に大学院に入学する (2)2017年9月15日より後に大学院で定められた科目を履修する |
E |
(1)2017年9月15日より前に4年制大学で必要科目を履修する (2)2017年9月15日以降に大学院で必要科目を履修する |
F |
(1)2017年9月15日より前に4年制大学で必要科目を履修する (2)施行規則第5条で定められた施設において、2年以上の実務経験を積む |
2022年に行われる第5回公認心理師国家試験は、すべての経過措置ルートでの受験が可能です。なお、Fルートの定められた施設はBルートと同様のため、前述した「公認心理師法第7条第2号に規定する認定施設」を参考にしてください。
Gルートの対象となる要件

Gルートを受験するためには、所定の要件を満たす必要があります。要件は、公認心理師法に記載されています。
この法律の施行の際現に第二条第一号から第三号までに掲げる行為を業として行っている者その他その者に準ずるものとして文部科学省令・厚生労働省令で定める者であって、次の各号のいずれにも該当するに至ったものは、この法律の施行後五年間は、第七条の規定にかかわらず、試験を受けることができる。
一 文部科学大臣及び厚生労働大臣が指定した講習会の課程を修了した者
二 文部科学省令・厚生労働省令で定める施設において、第二条第一号から第三号までに掲げる行為を五年以上業として行った者
(引用:厚生労働省「公認心理師法」)
上記の文章だけを見ても分かりにくいものの、要約すると「5年以上の実務経験があること」「公認心理師現任者講習会に受講する」の2つがGルートの所定要件です。
ここからは、各要件についてより詳しく紹介します。
5年以上の実務経験
Gルートで国家試験を受けるためには、まず5年以上の実務経験が必要です。この実務経験は心理職としての経験にあたり、領域も広いものとなっています。自身がこれまで経験してきた業務内容がGルートでの受験資格要件を満たすのかを知りたい場合は、過去に行われた国家試験の受験の手引を参考にしましょう。さらに、単純に5年以上の実務経験があればよいというわけではなく、実務経験の期間も定められていることに注意してください。
第4回公認心理師国家試験における受験の手引では、Gルートにおける実務経験機関の具体的な考え方が示されていました。

(引用:一般財団法人日本心理研修センター「第4回公認心理師試験 受験の手引」)
上記の画像を見ると、たとえ5年以上の実務経験があったとしても、2012年9月16日からその5年後である2017年9月15日(公認心理師法が施行された日)までの間に、少しでも実務経験がなければ受験資格は得られないことが分かります。
そのため、例えば「2012年4月まで一度心理職として3年間働いており、2019年4月から再度現在も心理職として働いている」という人の場合、Gルートでの国家試験の出願はできないことに注意しましょう。
自身の実務経験がGルートの要件を満たしているかどうかは、下記2つのポイントをすべて満たしているかどうかで判断してください。
- 心理職として働いた期間が5年以上ある
- 2012年9月16日から2017年9月15日までの間に心理職として働いていた
上記のポイントを満たしているかどうかを確認したうえで、実務経験証明書を作成しましょう。
公認心理師現任者講習会の受講
Gルートで国家試験を受けるためには、公認心理師現任者講習会の受講も必須です。公認心理師現任者講習会は、国内の各団体が実施しており、40,000円(税込)の受講料を支払えば、誰でも受講できます。講習科目と所要時間については、下記の表を参考にしてください。
科目 | 所要時間 |
---|---|
公認心理師の職責 | 1.5時間 |
精神医学・一般医学に関する知識 | 6時間 |
心理的アセスメント | 3時間 |
心理支援 | 3時間 |
主な分野に関する制度 | 7.5時間 |
主な分野に関する課題と事例 | 7.5時間 |
振り返り | 1.5時間 |
所要時間合計 | 30時間 |
第5回公認心理師国家試験に向けた公認心理師現任者講習会は、2021年7月1日から2022年2月28日までの期間に実施されています。申し込みから受講完了までには主に2か月程度の期間がかかるため、まだ受講していない人はすぐに申し込みましょう。
なお、公認心理師現任者講習会を実施している各団体は厚生労働省の公式ホームページから確認できます。講習会は24時間いつでも受講できるオンデマンド配信型のオンライン講義となるため、各自予定を立てて受講完了できるようにしましょう。
(参考:厚生労働省「令和3年度開催公認心理師現任者講習会」)
公認心理師国家試験のGルートには審査がある?

Gルートは、出願したすべての人に適用されるルートではありません。Gルートでの出願後、日本心理研修センターによる審査が行われます。審査に通れば受験票が届きますが、審査に落ちると審査落ちに関する書類や連絡が届きます。
審査に通るかどうかは、実際に申し込んでみなければ分かりません。審査に通るかどうかを調べるためには、事前に自身で受験の手引や法令をくまなくチェックすることが最も適切です。なお、日本心理研修センターでは審査に関する個別の質問を受け付けていないため、審査に通るかどうかの問い合わせは控えておきましょう。
Gルートでの審査落ちに関する情報を詳しく知りたい人は、下記記事も参考にしてください。
Gルートで公認心理師を目指す難易度

Gルートでの国家試験は、難易度がやや高いと言っても過言ではありません。過去3年間に行われた国家試験において、Gルートの合格率は下記の通りとなっていました。
第4回公認心理師試験 (2021年9月19日実施) | 55.7% |
第3回公認心理師試験 (2020年12月20日実施) | 50.0% |
第2回公認心理師試験 (2019年8月4日実施) | 41.8% |
(出典:一般財団法人日本心理研修センター「第3回公認心理師試験(令和2年12月20日実施)合格者の内訳」)
(出典:一般財団法人日本心理研修センター「第2回公認心理師試験(令和元年8月4日実施)合格者の内訳」)
試験実施回数を重ねるにつれ徐々に合格率は上昇しているものの、受験者の約半数しか合格できていないということが分かります。さらに、第4回公認心理師国家試験においてGルートの合格率は最も低いことも特徴です。
Gルートは、心理職として働きながら国家資格の取得を目指すルートであるため、試験勉強に時間がとれないといったことも大きな要因となっているのでしょう。
公認心理師国家試験のGルートは2022年9月まで!

Gルートは、公認心理師法の新たな策定・施行に伴う期間限定の受験申込区分です。Gルートでの出願が可能となるのは2022年までのため、次の第5回公認心理師国家試験がラストチャンスとなります。
Gルートでの出願を検討している人は、現任者講習会を早めに済ませておきましょう。なお、試験日当日に5年の実務経験がなくても、特例措置が有効となる2022年9月14日までに5年を満たす見込みがある人であれば受験可能です。
(参考:厚生労働省「今後の公認心理師試験のスケジュール(予定)」)
【参考】第4回公認心理師資格試験の概要
現段階で、第4回公認心理師国家試験から2024年に実施予定の第7回公認心理師国家試験までは、毎年2~3か月ずつ前倒しで試験が実施されると予定されています。次の第5回公認心理師資格試験は、2022年7月頃に実施される見込みです。しかし、2021年12月時点で詳細の日程はまだ発表されていないため、情報確定を待ちましょう。
なお、試験の概要については第4回公認心理師国家試験と同様となることが想定されています。例として、第4回公認心理師国家試験の概要を下記に説明します。
第4回公認心理師国家試験の概要 | |
---|---|
試験日 | 2021年9月19日(日) |
所要時間 | 一般:120分 弱視等受験者:160分 点字等受験者:180分 |
試験地 | 7都道府県(北海道・宮城県・東京都・愛知県・大阪府・岡山県・福岡県) |
手数料 | 28,700円 |
2021年9月に実施された第4回公認心理師国家試験の申込受付期間は、2021年5月24日から2021年6月25日まででした。第5回公認心理師国家試験の実施日が予定通り12月となる場合は、3~4か月前の2022年8月から9月にかけて受験申込書の受付が開始されるでしょう。なお、試験会場は年度ごとに変更される可能性があるため、必ず最新情報をチェックするようにしてください。
(出典:一般財団法人日本心理研修センター「第4回公認心理師試験 受験の手引」)
Gルートで公認心理師国家試験に合格するためには?

Gルートでの受験は、2022年に実施される第5回公認心理師国家試験が最後となります。日々の仕事と両立して試験勉強も行わなければなりませんが、30時間の現任者講習会の受講が残っている人にとっては特に、勉強時間が非常に限られているケースも多いのではないでしょうか。
最後に、勉強時間が残り少ない人に向けて、合格するための勉強法ややるべきことを紹介します。
現職と勉強を両立する
まず、最も大切なことは「仕事と試験勉強の両立」です。仕事のために試験勉強がおろそかになったり、反対に試験勉強のために仕事がおろそかになってはなりません。
忙しい日々の中、2つのことを両立するには多少無理をしなければならないケースもありますが、参考書を絞って効率的に勉強するなど、なるべく上手に両立できる方法を探しましょう。
Gルートの場合は、現場で多くの学びを得られます。日々の仕事も試験対策のうちと考え、積極的に多くの経験をすることも有効といえるでしょう。
過去問や模試を繰り返す
忙しい日々の中、効率的に試験勉強を行うのであれば、過去問や模試をとにかく繰り返すこともポイントです。
日本心理研修センターの公式ホームページ上では、合格発表とともに実際に出題された問題冊子も公表されています。PDF形式でのダウンロードとなっていますが、すべて印刷して紙にすれば、実際の試験イメージも把握できるでしょう。
過去問を一通り解いて答え合わせをし、苦手な問題をクリアできるようになったら模試を行い、さらに点数を上げるためにまた過去問を解くといった流れが最も効率的といえます。
配点・出題率の高い科目に重点を置いて学習する
日本心理研修センターの公式ホームページでダウンロードできる過去問は、あらゆる科目の問題が組み込まれています。さらに出題率の低い問題も出てくるため、より効率的に勉強したいという場合は、配点・出題率の高い科目をピックアップした問題集・本を用いて学習しましょう。
全国に点在する書店やネット書店にある問題集は、出題傾向をつかんで過去問が紹介されています。過去問は科目別に出題されていることも多く、インプット・アウトプットがさらにしやすくなるでしょう。
スキマ時間に学ぶ工夫をする
仕事が特に忙しい人は、なるべくスキマ時間を有効に活用して勉強することを心がけましょう。通勤中の電車内や休憩時間中など、試験勉強に回せるスキマ時間は意外と多くあります。問題集やノートで、苦手な箇所に貼り紙や付箋を貼るなどの方法もおすすめです。
問題集やノートを持ち出せない場合は、YouTubeなどの動画配信サイトで試験勉強に役立つ知識の解説動画を閲覧するのもよいでしょう。音だけでも十分参考になるため、歩いているときなど何かをしながらイヤホンを装着して解説動画を流しておくことも1つの手です。
受験資格の確認や手続きはできるだけ早く行う
どれだけ必死に勉強をして自信のある状態となっても、Gルートでの受験審査に通らなければ意味がありません。そのため、受験資格の確認や手続きはできるだけ早く行うことをおすすめします。
前述の通り、Gルートには審査があります。審査落ちすれば当然試験は受けられないため、事前に前回の試験の手引を見たり法令をくまなくチェックしたりして、受験資格があるかどうかをまず確認しましょう。
公認心理師の現任者講習会がまだ済んでいない人は、すぐにでも申し込むことがおすすめです。ベースとなる準備をできるだけ早く済ませることで、試験勉強も集中して行えるでしょう。
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公認心理師とは? 受験資格の取得ルートや合格率を解説
まとめ
公認心理師国家試験におけるGルートは、2017年9月に公認心理師法が施行されたことに伴ってつくられた特例の受験区分です。法施行日から5年間までの期間限定措置であり、Gルートでの受験申込は2022年に実施される次の第5回公認心理師国家試験がラストチャンスとなります。Gルートでの所定要件を満たしている人は、第5回公認心理師国家試験の合格を目指しましょう。
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