• 2022年2月28日
  • 2022年10月17日

ツアーナースとは? 主な仕事内容や給料相場・メリットを徹底解説

 

看護師の代表的な勤務先は、主に病院・クリニックなどの医療機関や、老人ホーム・訪問看護ステーションなどの介護福祉施設が挙げられます。看護師は、基本的に働く環境が固定されていますが、なかにはあらゆる場所が職場となる働き方をする看護師の方もいます。それが「ツアーナース」です。

ツアーナースは、医療機関や介護福祉施設などで働く一般的な看護師と働き方は大きく異なります。では、具体的にどのような働き方をする看護師で、どれほどの給料を得られるのでしょうか。

当記事では、ツアーナースの概要や主な仕事内容から、気になる給料相場と働くメリット・デメリット、さらに働くうえでの注意点まで徹底的に解説します。ツアーナースとして働くことを検討している看護師の方は、ぜひ参考にしてください。

ツアーナースとは?

ツアーナースとは、学校や企業、もしくは団体の旅行・課外活動に付き添って、参加者の体調管理や急病・ケガの対応を行う看護師のことです。

一般的にイメージされる看護師は、「病院や介護施設に駐在して勤務する看護師」ですが、ツアーナースは前述の通り旅行・課外活動に付き添うという働き方をするため、特定の職場があるわけではありません。

あらゆる場所へ同行し、参加者の健康な活動をサポートするツアーナースは、病院や介護施設などでは得られない知識を得ることが可能です。

また、似たようなジャンルとして「イベントナース」が挙げられます。イベントナースは、ライブ会場やスポーツイベントなどの行事に同行し、各種イベント会場の救護室で参加者の看護業務を行う看護師です。ツアーナースは主に旅行に同行するため宿泊を伴う案件が多い一方で、イベントナースは1日で終わる案件が多くなっています。なお、ツアーナースを含めてイベントナースとする派遣会社・求人も多々あります。

ツアーナースと病棟看護師との違い

看護師と聞いて多くの方が想像する「病院で働く看護師」は、「病棟看護師」と呼びます。ツアーナースと病棟看護師はどちらも看護師資格を保有するれっきとした看護師ですが、雇用形態・勤務環境・働き方において大きな違いがあります。

まず、病棟看護師は特定の病院に正規雇用(正社員)として就職するか、非正規雇用(アルバイト・パート)として働くかの2パターンが多く、決められたシフトで明確な業務時間があることが基本です。

一方で、ツアーナースは単発派遣で働くことが基本となります。日々、必ずしも勤務可能範囲内での旅行・イベント行事があるとは限らないためです。正社員やアルバイト・パートでツアーナースとして活躍する、ということはほとんどなく、基本的には派遣社員として勤務することとなります。さらに、宿泊が伴う派遣先が多く明確な業務時間も存在しません。

また、病棟看護師の場合、職場である現場には医師やほかの看護師、さらに臨床検査技師などあらゆる医療従事者が常に存在します。しかし、ツアーナースの現場は基本的に医療従事者が看護師1〜2人のみというケースがほとんどです。

さらに、ツアーナースの現場では医師が同行することがありません。病棟看護師は医師の指示にもとづいて行動するケースも多々ある一方で、ツアーナースは看護師が自ら判断し、動く必要があります。

このように、ツアーナースは病棟看護師と働き方において大きな違いがあり、時には病棟看護師よりも重い責任を果たさなければならないケースもあるでしょう。同時に数人の患者さんが発生する可能性もあるため、幅広い看護知識だけでなく、適切な看護を提供する冷静さや臨機応変に対応できる能力、いわゆる柔軟性も必要です。

ツアーナースの主な添乗先

ツアーナースの主な添乗先:園児の遠足

ツアーナースの主な搭乗先には、下記が挙げられます。

  • 園児の遠足
  • 小中学生の修学旅行・林間学校、および部活動の合宿
  • 企業の各研修(社員研修・合宿研修など)、および社員旅行
  • シルバー世代のバリアフリー旅行 など

上記を見て分かるように、ツアーナースが同行する旅行は、幅広い年齢層の参加者がいます。搭乗先や参加者の年齢層によって起こり得る病気やケガは異なるため、あらゆる搭乗先に対応できる幅広い看護知識が必要となることも覚えておきましょう。

また、旅行・イベントの内容によって同行する期間も異なります。例えば、小中学生の修学旅行や企業の研修・旅行は2〜3日同行する必要がある一方で、園児の遠足やバリアフリー旅行は1日(日帰り)同行のパターンが基本です。

ツアーナースの仕事内容

ツアーナースの仕事内容:病気やケガの応急手当

ツアーナースは、同行する旅行やイベント中における参加者の健康管理や病気・ケガの応急手当がメインの仕事内容となります。看護師としての業務だけでなく、参加するツアーの詳細を把握することも重要な仕事の1つといえるでしょう。

下記は、ツアーナースの具体的な仕事内容です。

  • 主催者との打ち合わせ
  • 参加者の健康状態の把握
  • 参加者の食事管理・服薬管理
  • 病気やケガの応急手当

ここからは、各仕事内容についてさらに詳しく紹介します。

主催者との打ち合わせ

ツアーナースは、同行するツアーが決定した際、ツアー主催者と事前打ち合わせを行う必要があります。打ち合わせの方法は、現地(学校・企業など)での会議、もしくはWeb会議や電話が基本です。

打ち合わせでは、主に下記の内容を確認します。

  • ツアーの日程・スケジュール
  • 全参加者の人数・健康状態
  • 救護バッグの中身
  • 持ち物
  • 集合場所・集合時間

そのほかに気になる点があれば、打ち合わせの時点で確認しておくようにしましょう。確認した内容はすべてメモに記しておくと、当日スムーズに動けます。

参加者の健康状態の把握

同行するツアー参加者の中には、持病のある方や体調の悪化しやすい方がいるケースも多々あります。特にシルバー世代においては健康状態のよくない参加者も少なくないため、一人ひとりの状態を細かく確認しておくとよいでしょう。

加えて、ツアー中は「シルバー世代のツアーの場合、定期的に脈拍チェックの時間を設ける」「学校の宿泊行事の場合、子どもたち一人ひとりの健康カードを担任の先生に記入してもらう」など、あらかじめ起こり得るリスクに備えることも必要です。

参加者の食事管理・服薬管理

ツアー参加者の食事管理や服薬管理も、ツアーナースの重要な仕事です。学校の宿泊行事で特に気を付けておきたいのが「食物アレルギー」で、事前に宿泊先と相談・調整を行っていても何らかの原因でアレルギーの食物を摂取してしまうケースもあります。万が一の事態を防ぐため、ツアーナースは配膳時に食事内容をチェックしましょう。また、アナフィラキシーショックが起きた際は「エピペン®」の使用が求められます。
(出典:厚生労働省「救急蘇生法の指針2015」

また、参加者の中にはこのようなアレルギーのほか、あらゆる持病を抱える方もいます。ツアー中に服薬が必要な方に対しては、適切に服薬できるよう管理しましょう。自己管理能力が未熟な児童の場合は、ツアーナースが薬を預かるケースもあります。

病気やケガの応急手当

参加者にとって慣れない環境となるツアー中は、突然の病気やケガの発生リスクが少なからずあります。所見から疑わしい病気を判断し、適切な看護処置・アドバイスを行うことは、ツアーナースの特に重要な仕事といえるでしょう。

ツアーナースの応急手当は、厚生労働省の「救急蘇生法の指針2015」が定める「一次救命措置」「ファーストエイド」の範囲となることが多いです。

一次救命措置
  • 胸骨圧迫
  • 人工呼吸
  • AEDを用いた電気ショック
  • 気道異物除去 など
ファーストエイド
  • 熱中症の対応
  • 包帯・絆創膏・ガーゼなどを用いた切り傷・擦り傷の応急処置
  • テーピングなどを用いたねんざの応急処置
  • アナフィラキシーショックの対応
  • 気管支喘息発作の対応 など

(出典:厚生労働省「救急蘇生法の指針2015」

ツアーナースとして同行中のスケジュール例

ツアーナースとして同行する女性

ここからは、「小学6年生の修学旅行に同行する場合」のツアーナースのスケジュール例(1日目)を紹介します。ツアーのスケジュールを把握しておくことで、ツアーナースの働き方がイメージしやすくなるでしょう。

時間 スケジュール ツアーナースの業務
7:00 集合
  • 指定の場所に集合する
  • 先生・児童にあいさつをする
  • 児童の健康状態をチェックする
  • 救急バッグの受け取り・確認をする
  • 酔い止め薬を服用してもらう
8:00 移動
  • 乗り物酔いしやすい児童を見守る
  • エチケット袋を用意する
11:00 目的地到着
  • 児童とともに行程に参加する
  • 先生の指示に応じつつ看護体制を整える
12:30 昼食
  • 配膳内容をチェックする
  • 服薬の必要な児童に対し服薬管理を行う
14:00 移動・行程先到着
  • 乗り物酔いしやすい児童を見守る
  • エチケット袋を用意する
  • 行程に参加もしくは待機する
17:00 移動・宿泊先到着
  • 看護部屋の確認・準備を行う
  • 常駐看護師へのあいさつ・申し送りをする
18:00 夕食
  • 配膳内容をチェックする
  • 服薬の必要な児童に対し服薬管理を行う
19:30 レクリエーション
  • 行程に参加もしくは待機する
  • 体調不良の児童の看護を行う
21:30 入浴・就寝準備
  • 児童の健康状態を把握する
  • 健康カードを記入してもらう
  • 児童の服薬管理を行う
22:00 職員会議
  • 児童の健康状態を報告する
23:00 巡回
  • 児童の部屋を巡回する
  • 体調不良の児童がいれば看護を行う
24:00 入浴・就寝
  • 日報を記入する
  • 入浴を済ませ看護部屋で就寝する

なお、2日目は旅行の疲れで体調を崩しやすい児童も多くなるため、体調変化にはより気を付けることが大切です。

ツアーナースの給料相場

ツアーナースの給料相場

ツアーナースは単発派遣で働くことが基本となるため、「日給制」で考えることがポイントです。ツアーナースの日給は、約1万~1万5千円が相場となっています。3泊4日のツアーの場合、4日分×1万~1万5千円で約4万~6万円ほどの報酬を受け取ることが可能です。

また、海外ツアーの場合は国内ツアーよりも日給が高まる可能性があります。同行による交通費や宿泊代金、食費はツアー主催者がもつこととなるため、ツアーナースの収入は魅力的といえるでしょう。ツアーナースとして勤務経験の豊富なベテラン看護師を募集している案件は、特に案件1本あたりの単価が大きいことも特徴です。

ツアーナースになるには? 登録から勤務開始までの流れ

ツアーナースになるには? 登録から勤務開始までの流れ

ツアーナースになるには、派遣会社に登録することが一般的です。登録から勤務開始までの主な流れは、下記の通りとなっています。

(1)派遣会社に登録する Web上でツアーナースに強い、もしくは専門の派遣会社を探し、気に入った派遣会社に登録する
(2)希望条件を伝える 登録した派遣会社から電話・メールでの連絡後、希望条件の相談を行う
(3)気になった求人に応募する Web上で見つけた、もしくは紹介を受けた求人に応募する
(4)社内選考・研修が行われる 派遣会社による社内選考、もしくは研修が行われる
(5)事前打ち合わせを行う 社内選考・研修の結果が届き、勤務が決定したら、ツアー主催者との事前打ち合わせを行う

ツアーナース求人を取り扱う派遣会社は多々あり、それぞれ異なる特徴をもっています。ご自身に適した派遣会社を見つけるようにしましょう。

ツアーナースになるために必要な条件

ツアーナースになるためには、「看護師免許」もしくは「准看護師免許」が必要です。いずれも保有していない場合は、派遣会社に登録することができません。

また、宿泊を伴うツアーやシルバー世代のツアーなど、リスクの高いツアーにおいては、「看護師免許必須」「正看護師のみ可能」とする派遣求人も存在します。中には、1~3年以上の実務経験が問われるケースもあるでしょう。

ツアーナースになるために求められるスキル

ツアーナースになるために必ず求められる条件は「看護師免許もしくは准看護師免許の保有」のみですが、そのほかにも「もっておくべきスキル」は多々あります。下記は、ツアーナースとして求められるスキルの一例です。

幅広い症状に対応できる応用的な医療知識

ツアーナースは1人もしくは2人など限られた人数で看護を行うため、様々な状況に柔軟に対応できる看護師が求人に通りやすい傾向にあります。ツアーナースとして活躍したいのであれば、ある程度の看護経験を積むようにしましょう。

コミュニケーション能力

ツアーナースは、ツアー参加者とともに行程に参加することもしばしばあります。参加者に起きた何らかの異変を感じとったり、参加者から体調に関する相談をきちんとしてもらったりするためには、参加者とコミュニケーションをとり、距離を縮めておく必要があるでしょう。そのため、ツアーナースにはコミュニケーション能力が重要といえます。

臨機応変な対応力

ツアー内容やツアー参加者の年齢層などによって、起こり得るトラブルはさまざまです。どのような事態が起きても冷静に、かつ適切に行動するためには、臨機応変な対応力が欠かせません。

ツアーナースとして働くメリット・デメリット

ツアーナースとして働くメリット・デメリット

ツアーナースとして働くことには、メリットはもちろんデメリットも存在します。下記に、働くメリット・デメリットを紹介するため、ツアーナースとして働くことを検討している方はぜひ参考にしてください。

<メリット>

  • ライフスタイルにあわせて働くことができる
  • 仕事をしながら旅行も楽しめる
  • 煩わしい人間関係に悩まされない
  • 病院勤務では得られない知識を得られる
  • アルバイト・パートとのWワーク(掛け持ち)ができる

ツアーナースは単発派遣であり、ツアー中以外は決まった勤務時間・日にちがありません。そのため、ご自身の予定にあわせて働けます。また、仕事としてツアーに同行しながら、ご自身も旅行を楽しむことが可能です。病院勤務では得られない知識を得られる点も、ツアーナースならではの魅力といえるでしょう。

<デメリット>

  • 閑散期がある
  • 業務時間が明確でなく、長くなるケースがある
  • 未経験者や経験が浅い場合は同行できる案件が限られる

ツアーナースは仕事が不定期であり、学校や企業の行事が少ない月は閑散期で稼ぎにくくなってしまいます。また、ツアー中の業務時間も明確ではなく、宿泊行事においては朝から夜まで働き詰めとなりやすい点が難点といえるでしょう。

ツアーナースになるうえでの注意点

ツアーナースの注意点

ツアーナースは仕事をしながら旅行を楽しめるうえ、都合にあわせて働くことができ、かつ比較的高収入である点から、魅力的な仕事だと思う方も多いでしょう。しかし、決してラクができる仕事ではありません。

「旅行もしながらお金ももらえて一石二鳥だ」と考えてツアーナースとして働く方の中には、自分の想像と現実のギャップに驚く方もいます。

ギャップの激しさによって、ツアー中にモチベーションが下がってしまわないよう、あらかじめツアーナースとして働くうえでの注意点をおさえておきましょう。

旅行を存分に楽しめるとは限らない

「仕事をしながら旅行も楽しめる」という内容でツアーナースを募集する求人も多々ありますが、すべてのツアーナースが存分に旅行を楽しめるわけではありません。旅行やイベント行事を楽しむのはあくまでも参加者(生徒・社員・シルバー世代の方たちなど)であるためです。

ツアーナースは、あくまでも「看護師として同行する」のであり、自分が楽しむよりもツアー参加者の健康管理や体調のサポートが最優先となります。決して旅行感覚で参加しないようにしましょう。

医療行為が少ないが責任は重くなる

ツアーナースは、一般的な病棟看護師よりも医療行為を行うことは少なくなります。しかしその一方で、背負う責任は重大となることに注意が必要です。

前述の通り、ツアーナースが活躍する現場には、基本的に1〜2人の看護師しか配置されません。園児の遠足など比較的規模の小さいツアーの場合は1人となるケースも多く、自分以外の医療従事者は配置されないため、起こり得る事態すべてを自分1人で判断し、動くことが求められます。事態の内容によっては速やかに対応したり、機転を利かせた措置をとったりする必要があるため、事前にリスクを想定しておきましょう。

まとめ

ツアーナースとは、学校や企業、もしくは団体の旅行・課外活動に付き添って、参加者の体調管理や急病・ケガの対応を行う看護師を指します。看護師と聞いて多くの方が想像する「病院で働く看護師(病棟看護師)」は決められたシフトがあり、明確な業務時間が存在することに対し、ツアーナースは単発派遣で働くことが基本です。

ツアーナースの派遣求人の中には、定められた年数以上の実務経験を必須条件としているものもあります。「ツアーナースとして働きたいけど、実務経験が及ばない」という場合は、まずどこかの職場に就職して実務経験を積むことがおすすめです。 「マイナビ看護師」では、全国の看護師の求人情報を豊富に掲載しています。無料転職サポートでは、キャリアアドバイザーが一人ひとりに適した求人紹介サービスも行っております。就職・転職を検討している方は、ぜひマイナビ看護師をご利用ください。

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