助産師として働く日々の業務の中で、英語の必要性を感じることはそこまで多くないかもしれません。しかし、「助産師は英語を学ぶ必要がない」と判断するのは早いといえます。
当記事では、助産師にとっての英語の必要性や、英語を身に付ける方法、助産師が英語を生かせる職場などを紹介します。今の職場では英語を学ぶ必要がないと思っている人も、キャリアチェンジを視野に入れているのなら、自分の将来に英語は必要なのか一度考えてみましょう。
助産師は仕事で英語を使う?
一般的な医療機関や産婦人科に勤務している助産師であれば、英語を使う頻度はそこまで多くありません。基本的には日本人の患者さんが多く訪れ、日本語で会話をするため、英語が話せなくても特に心配はないでしょう。
しかし、海外から来た妊婦さんで日本語が話せないときには、英語でコミュニケーションを取る必要があります。働く職場や地域によっては、英語しか通じない妊婦さんと話す機会が増えるため、働き場所の選択肢を広げるためにも英語を勉強しておくとよいでしょう。
助産師が英語を使う機会の多い地域
外国人が多く住む地域の病院では、自然と英語を使う機会が増加します。2020年12月末時点の在留外国人総数上位の市区町村は、下記の表の通りです。
市区町村 | 在留外国人総数 |
---|---|
川口市 | 39,300 |
東京都新宿区 | 38,726 |
東京都江戸川区 | 37,798 |
東京都足立区 | 34,140 |
東京都江東区 | 31,295 |
上記5つの自治体は、いずれも都心部やその近郊に集中しています。JRや私鉄など交通アクセスに優れている点や、比較的家賃の安いUR賃貸住宅が整備されている点が、在留外国人の多い5つの自治体の共通点です。
また、在留外国人が集中している自治体には、その地域ならではの背景もあります。たとえば、東京都江戸川区では2000年問題を契機に優秀なITエンジニアとしてインド人が多く採用されました。東京都江東区には東京国際交流館があり、留学生や外国人研究者が集う姿がよく見られます。東京都新宿区は、日本語学校や外国人がアルバイトできる飲食店が多く点在している点が人気の理由です。
東京都以外では、大阪市生野区や愛知県豊橋市、千葉県船橋市などが在留外国人総数上位にランクインしています。いずれも交通インフラの整備された自治体です。そうした自治体では、日本語の話せない外国人の妊婦さんが多く訪れる可能性があるでしょう。
今後の助産師に英語が必要となる理由
在留外国人の少ない地域に勤める助産師でも、これからは医療機関のある地域に関係なく、英語が必要となる時代が来るかもしれません。その大きな理由として、在留外国人・訪日外国人旅行者の増加が挙げられます。
1990年に約100万人だった在留外国人の数は、30年経った2019年末には293万3,137人と約3倍に増加しています。訪日外国人旅行者数についても、2009年は671万人でしたが、2019年には3,188万人に達しました。新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、2021年の訪日外国人旅行者は減少していますが、アフターコロナの時代には再び増大する可能性も十分に考えられます。
また、医療機関を受診した在留外国人のうち半数以上が言葉の問題を抱えており、通訳者や知人の付き添い、翻訳アプリの使用などのサポートが必要な状況です。また、訪日外国人旅行者の増加によって、都市部や主要観光地だけでなく、全国各地の医療機関で言葉の問題を抱えた外国人の対応に迫られる可能性があります。
訪日外国人旅行者が安心して医療機関を受診できるよう、政府は「訪日外国人に対する適切な医療等の確保に関する総合対策」を打ち出しています。現在は助産師として働くうえで英語の必要性を感じていなくても、今後在留外国人・訪日外国人旅行者からのニーズが高まっていく状況を見据えれば、最低限の英語力が求められる機会が増える可能性はあるでしょう。
(出典:厚生労働省「外国人患者の受入れのための医療機関向けマニュアル」)
助産師が英語を身に付ける方法
社会人になると、中学や高校、大学のような授業を通して英語を勉強できるわけではないため、自分で身に付ける方法を考える必要があります。助産師が英語を勉強する方法は、下記の3つが一般的です。
- 英会話スクールに通う
英会話スクールでは、講師から直接レッスンを受けることによって、日常会話レベルのコミュニケーションを身に付けることができます。ただし、一般の受講生と同じカリキュラムで進むため、専門的な医療英語を学ぶことはできません。「辞書を引く」「インターネットで検索する」など違う方法で助産師として必要な英単語を補うのがおすすめです。 - 独学で勉強する
本や動画、音声など、独学で英語を勉強できる教材もあります。独学では、日常会話から医療英語まで、学びたい分野を重点的に勉強することができます。1つの教材に頼るのではなく、さまざまな教材・方法をカスタマイズして勉強するとよいでしょう。たとえば、本で単語の意味や文法を学んでいる人は、リスニング力やスピーキング力を上げるために音声付きの教材を併用するとよいでしょう。 - 海外インターンシップに行く
海外インターンシップは、実際に海外に行って英語を学ぶプログラムです。現地の人とコミュニケーションを取ることで、実践的な英語を身に付けることができます。数か月から数年のまとまった期間を要するため、社会人になってインターンシップに参加するのであれば、今の仕事を休職・退職することを視野に入れる必要性が出てきます。大きな経験を得られるものの、今後の人生への影響をよく考えてから参加を決めるとよいでしょう。
さまざまな勉強法の中から、自分に合う方法を見つけて英語を身に付けましょう。
英語力のある助産師が活躍できる場所
助産師の資格を生かし、かつ英語力を発揮できる職場には、さまざまな種類があります。自分がどの程度英語能力を発揮したいのかによって、働ける場所やできる仕事も変わってきます。事前に自分のやりたいことを明確にしたうえで、希望を叶えられる転職先を見つけましょう。ここからは、助産師が英語力を生かせる職場を紹介します。
保育施設・インターナショナルスクール
保育施設やインターナショナルスクールなどの子どもと関わる職場では、助産師を募集している場合があります。発熱やケガなどの応急処置、子どもたちの健康管理、衛生管理などが主な仕事です。助産師免許を取得する際に必要となる、看護師免許を生かして働くことができます。
英語教育に力を入れている保育施設やインターナショナルスクールでは、日々の会話でも英語を使って話すことが求められます。日常会話程度の英語力を身に付けておくと、施設の方針に合わせた仕事ができるでしょう。
一般企業
一般企業が助産師を募集する場合に多い職種は、健康・保健や医療、女性特有の妊娠や育児などの相談に答えるヘルスカウンセラーです。特に外資系企業の場合、外国人が多く働いているため、ヘルスカウンセラーとして英語で接する必要があります。また、安全性情報管理(PV)業務を担っている企業では、薬の副作用や安全性に関する英語の文章を翻訳したり、消費者からの問い合わせに対して英語で記録したりと、高度な英語スキルを求められることもあるでしょう。
英検の級数やTOEICの点数を応募資格として指定している企業もあるため、ある程度英語の勉強が進んだ後に英検やTOEICを受験するとよいでしょう。
海外の医療機関・国際機関
海外の医療機関で働いたり、国際機関を通して現地に助産師として派遣されたりするケースもあります。日本で助産師として勤務するときと同じように、出産前の健康管理や食事指導、出産の立ち会いなど現地の妊婦さんのケアを行います。
海外の医療機関や国際機関で働くのであれば、英語ができることは必須条件です。妊婦さんとコミュニケーションを取る必要があるため、日本語だけでは婦人科系の医学用語をうまく説明できません。妊婦さんが安心して出産の日を迎えられるよう、英会話だけでなく、英語の読み書きまで身に付けておきましょう。
まとめ
助産師として働く中で、今は英語を必要と感じることが少ないかもしれません。しかし、地域や情勢が変われば、英語が必要になる可能性があります。また、キャリアチェンジを考えたときに、英語を勉強しておけば、転職先の幅が広がるでしょう。
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