2021年10月31日(日)、無料配信のオンラインセミナー「看護師が理解しておくべき新型コロナウイルスのあれこれ」が開催されました(主催:笹川保健財団)。感染症専門医の忽那賢志先生による徹底解説や、訪問看護の現場で新型コロナウイルス感染症に翻弄された事例紹介があり、聞きどころ満載となった本イベント。国内外から約1,800人が参加した、当日の様子をレポートします。
新型コロナウイルスに関する最新情報は、下記ページ等をご参照ください。
<首相官邸HP:新型コロナウイルス感染症対策について>
正しい知識を医療現場で生かして
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は「100年に一度のパンデミック」とされるほど、全世界に大きな負の影響をもたらしました。訪問看護ステーションも例外ではありません。そこで、在宅医療分野の人材育成に力を入れている笹川保健財団は、コロナ禍で働く医療従事者の力になりたいという思いから今回のイベントを開催しました。
同財団会長の喜多悦子氏は、「現在、国内では新型コロナウイルスの勢いが徐々に弱まっていますが、医療現場には不安や疲労を抱えながら必死に闘っている患者さんと医療従事者がいます。このイベントを機に正しい情報や知識を整理して、現場に生かしてほしいと思います」と、期待を込めてあいさつしました。
コロナ禍で翻弄された訪問看護事業所のケース
イベント前半では、東京都豊島区で訪問看護事業所を開業する入澤亜希氏(在宅看護センター葵の空 代表理事)が登場し、新型コロナ対策に四苦八苦した体験談を紹介しました。
まず、事業所で実施していた3つの感染対策――(1)感染予防対策の徹底(パーテーションや空気清浄機の設置など)、(2)三密回避(3か所ある事業所にスタッフの配置を分散)、(3)スタッフのワクチン2回接種を紹介。次に、事業所の様子を第1波から振り返り、事態が一変した第4波の状況を次のように語りました。 「第4波のときにスタッフ1人が濃厚接触者となり、第5波のときには3か所ある事業所のうちの一つでスタッフ数名が陽性者となりました。すべてのスタッフが2回のワクチン接種を済ませていたので、「まさかブレイクスルー感染が起こるとは……」というのが率直な気持ちでした。
そこから、自宅療養中のスタッフが業務再開(PCR検査で陰性を確認)できるまで、他のスタッフの業務シフトを調整したり関係者に連絡したりと対応に追われる日々でした。他の2つの事業所のサポートもあり、なんとかこの難局を乗り越えることができたと思います。利用者さんとそのご家族、そしてスタッフのご家族に感染を拡大させずに済んだことは不幸中の幸いでした」
従来の感染症とは違う新型コロナウイルスの厄介さ
続いて、感染症医療の第一人者である忽那賢志先生(大阪大学医学部感染制御学講座教授)が登場。感染症の基礎知識をレクチャーした後、新型コロナウイルスの厄介な特徴について、次のように述べました。
「インフルエンザを含めて従来の感染症は、有症状時がウイルス排出量のピーク(最も感染力が高い)なので、そのタイミングでの感染対策が功を奏していました。ところが、新型コロナウイルスの場合、感染力が最も高くなるのは発症3日前~5日後です。その上、症状がまったくないまま経過するケースもあり、最適なタイミングで感染対策することがほぼ不可能に近い状況でした。そのため、無症状・軽症者がいつも通りに活動することで、爆発的な感染拡大が起こったというわけです。
こうした特徴や対策の難しさがあるため、今まであまり意識されてこなかった『会話時に飛ぶ飛沫』が注目され、従来の『咳エチケット』に加えて『ユニバーサルマスク』(症状の有無にかかわらず、すべての人がマスクを着用する)という考え方が誕生しました」 「ワクチン接種の効果もあり、高齢者や基礎疾患がある人の重症化や致死率は明らかに低下しています。
しかし、変異株(主にデルタ株)の影響により、第5波による感染者数は非常に増えました。今後は、重症者よりも軽症・中等症、あるいは自宅待機の患者さんが増えることになるでしょう。在宅医療を含め、どう安全に診療・ケアをしていくかが重要です」
ワクチンはCOVID-19収束に向けた希望の光
続いて、忽那先生は、COVID-19予防のために重要な3つのポイントについて解説しました。
まず、韓国で起こった室内での大クラスターを例に挙げ、三密(換気の悪い密閉空間、多数が集まる密集場所、近距離で会話をする密接場面)の回避がいかに重要であるかを述べました。
次に、手洗い・マスク着用については、飛沫の飛び方を検証した映像を見ながら、会話するだけで飛沫が飛ぶ様子や、マスクが飛沫の飛散防止に役立っている様子を確認しました。また、2人が対面したとき、どちらか一方がマスクを装着していればいいわけではなく、両者が着用することで適切な予防になることを分かりやすいスライドで示しました。
そして、切り札となるのがワクチン接種です。新型コロナウイルスのワクチン接種は、重症化しやすい高齢者や持病を抱えている人に対して特に推奨されています。ただし、接種してから時間が経過するにつれて予防効果は減弱する(感染予防効果は3か月後から、重症化予防効果は半年後から低下)ので、接種後に感染する可能性は否定できません。これらを踏まえて、忽那先生は「国内でも2021年12月から3回目の接種が始まる予定です。接種後の副反応は気になると思いますが、特に重症化リスクが高い人、そうした人に接する機会の多い医療従事者には接種をお勧めします」と述べました。
さらに、後遺症の症状や発生率の話題に触れた後、「まだ十分なエビデンスはありませんが、ワクチン接種後に後遺症が改善したというケースが報告されています。つまり、一度感染した人でも接種する意義があるということです。ワクチンはCOVID-19収束に向けた希望の光です。不安を煽るような誤った情報に惑わされず、正しい情報で動いてください」と力説しました。
看護師からの質問に忽那先生が回答!
最後は、参加者からの質問に忽那先生が回答する時間が設けられました。誰もが気になる質問ばかりでしたが、その中から厳選した3つをご紹介します。
Q1.陽性ではない患者さんを訪問診療(看護)する際、どこまで感染予防したらいいですか?
忽那先生:ウイルスを含む飛沫が飛ばないように、「お互いがマスクする」というのが現実的かつ効果的な対策です。マスク装着が難しい患者さんの場合は、目を守るフェイスシールドを医療従事者が装着するといいでしょう。また、約90%の感染が飛沫を介した接触感染で起こっています。ドアノブや手すり、共有PCといった接触が高頻度となる部分を定期的に消毒しましょう。
Q2.結婚指輪をはめたまま業務するのは、感染予防の観点から問題でしょうか?
忽那先生:感染対策で重視したいのは、十分な範囲を手洗いできているかどうかです。結婚指輪は表面がつるつるしているものが多く、汚染しにくいと考えられていて、海外では許容範囲です。それよりも「手首まで洗いにくい長袖の白衣を半袖に変える」「手や手首を洗いやすいように腕時計を外す」といった対策を徹底しましょう。
Q3.濃厚接触者になったスタッフが無症状で経過している場合も、14日間の自宅療養を厳守すべきでしょうか?
忽那先生:COVID-19の特徴からすると、潜伏期間となる最大14日間を自宅療養にしたほうが万全ではあります。ただし、無症状で1週間経過した後、次の1週間で発症する可能性はかなり低いです。随時PCR検査で状況確認・判断するのも一つの方法かもしれません。
こうして時間の許す限り多くの質問に回答した忽那先生は、最後に次のようなメッセージを送りました。
「いつまでこの状況が続くか分からず、不安や疲労を感じる人は多いでしょう。3回目のブースター接種や経口薬の投与が開始されれば、さらに致死率が低下し、いずれインフルエンザと同じような関わり方になると思います。厳密な感染対策が不要になる日が来ることを信じましょう」
国内の感染状況がいったん落ち着いたとはいえ、再びウイルスが海外から入ってくる可能性や、接種したワクチンの効果が減弱することもあり、感染拡大の火種はまだ消えていません。油断することなく第6波に備えて正しい行動を取る必要があります。
今回のセミナー内容を医療現場や日常生活で大いに活用していきましょう。
新型コロナウイルス感染症の拡大によって、看護師のみなさんは公私ともに大きな影響を受けたことでしょう。危機対応という面では、いまだに予断を許さない状況が続いていますが、そうした中だからこそ、新型コロナ対策の「これまで」をどう振り返り、「これ[…]
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