「看護師を続けるべきか」悩んだときに考えたいこと
バイアス(思い込み、偏ったものの見方)の問題を突き詰めると、「人間は自分のことが一番よくわからない」という事実に行き着きます。実際、「他人へのアドバイスはうまいのに、なぜか自分のトラブルには正しく対処できない」といった悩みを持つ人も多いのではないでしょうか。
この現象は、複数の実験で確認されており、俗に「ソロモンのパラドックス」などと呼ばれます。古代イスラエルの国王ソロモンは、深い知恵を持った賢者として知られていますが、自分の身に起きたトラブルにはめっぽう弱い人物だったとか。そんな逸話をもとに、この名が付けられたのです。
さて、これからご紹介するのは、そんな「ソロモンのパラドックス」に立ち向かう際に役立つテクニックです。それを使って、視点をコントロールし、バイアスを乗り越えることができれば、今よりも高い判断力が身につくはずです。
転職成功率をアップする「イリイスト転職ノート」とは?
ここで紹介するのは、「イリイスト転職ノート」という手法です。ちなみに、イリイストはラテン語の「ille」(=「三人称」の意味)からきた言葉。古代ローマの政治家ユリウス・カエサルが『ガリア戦記』のなかで、自らの行動をあたかも他人事のように記した修辞法にちなんでいます。
「イリイスト転職ノート」の要点も『ガリア戦記』と同じで、自分の行動を「三人称」として記録するのが最大のポイント。もともとはウォータールー大学がバイアス解除のプロトコルとして提唱した手法で、実証研究では300人を対象に効果を確かめています。
では、実際のやり方を説明しましょう。同研究チームは、まず被験者に「その日に行った意思決定のなかで、もっとも悩んだものを教えてください」と伝え、それぞれに「仕事を辞めるか考えた」や「上司とケンカをした」などの日常のトラブルを思い出させました。
続いては、その「日常の悩み」について三人称の視点を使いながら、日記を使って説明するように指示。「彼は仕事を辞めるかどうかに悩み、転職サイトでより良い条件の職場を探した」といったように、自分が行った意思決定の流れを、まるで他人ごとのように書かせたそうです。1つの日記にかけた時間は15分、作業は1日1回のペースで行われました。
そして4週間後。被験者に複数のテストを行ったところ、「イリイスト転職ノート」を続けた被験者に目覚ましい変化が確認されました。悩みを三人称で書き記したグループは、他人の視点で物事を考えるのがうまくなり、複数の観点からトラブルや課題に対する対策を導き出せるようになったのです。
自分の行動を「三人称」で書いてみよう!
実験に関する論文の主筆であるイゴール・グロスマンは、「自分の意思決定を三人称で想像するだけでバイアスを簡単に消せることがわかった。この方法を使えば、私たちはより賢明に問題を対処できるだろう」と記しています。もちろん、適職を選ぶ場面においても同じこと。ぜひ自分が日常的に行った決断を三人称で記録してみてください。
では、ここまでをまとめておきましょう。「イリイスト転職ノート」の手順は次のようになります。
① 1日の終わりに、自分がその日に行った就職・転職に関する意思決定の内容を三人称で書き出す
②日記には最低でも15分をかけ、2段落ぐらいの文章を書く
ここで書き出す内容には、必ず次のポイントを含めるようにしてください。
●どんなことを決めたのか?
●どのような流れでその決定にいたったのか?
●その決定をするために、どのようなエビデンスを使ったのか?
●その決定により、どんな結果を期待しているのか?
●自分の決定にどのような感情を抱いたのか?
「彼・彼女」を主語にしたノートの記述例
具体的な記載例は次のようになります。 「逆求人型就職サイト経由で、衣類メーカーからメッセージが来た。とりあえず“彼”がネットでその企業について調べてみたところ、自社で製造ラインの一部を作っていることがわかった。これは、“彼”が重んじる『多様』の考えにも一致することから、1Dayインターンへの参加を決めた。“彼”が期待するのは、『どこまで多様性があるかを確かめる』というポイントだ。インターンへの参加を決めたことで事態が一歩進み、“彼”は良い気分になっている」
「“彼女”はどうすればいいかわからず、ひとまず自己分析のため、就活団体主催のグループディスカッションに参加。『学生時代に統計を履修したことを推した方がいい』とアドバイスを受けたので、“彼女”はそれをベースにエントリーシートのひな型を作る。とりあえず達成感は出たが、これが果たして正解なのかまったく自信を持てていないようだ……」
ノートを読み返すことが、正しい自己分析につながる
「イリイスト転職ノート」をつけるメリットは大きく2つあります。
まず挙げられるのは、意思決定の記憶をあとから改ざんできないということ。人間には自分の記憶を都合よく書き換える性質があり、たとえば「ちょっとネットで調べただけだが、実際に面接に行ったら良い企業だった」といった結果が得られた場合、私たちは後から「自分のリサーチが成果を上げた」などと事実とは違うストーリーに変えてしまうものなのです。この状態を放っておくと、いつまでたっても職探しの精度は上がらないので、注意しましょう。
もう1つのメリットは、意思決定のパターンがはっきりすることです。あとで日記を読み返してみると、「自分はいつも華やかな業界に反応するところがあるな」「ネットの口コミを必要以上に信じがちだな」と、何かしらの傾向が見えてくるものですが、それこそが「イリイスト転職ノート」のよさ。下手な自己分析ツールよりも、正しく自分を見つめる機会を与えてくれることでしょう。
転職は意思決定の流れを知ればうまくいく
転職を決意した際、活動に関する記録や就活ノートをつけている人もいると思います。とはいえ、その記述の多くが、会社やセミナーの雰囲気、面接の質問と回答、自己分析などに費やされていたりはしませんか?
もしそうであれば、次は「イリイスト転職ノート」を使って、意思決定の記録をつけてみてください。意思決定の流れを知れば、きっといい転職活動ができるはずです。

『科学的な適職 4021の研究データが導き出す、最高の職業の選び方』鈴木祐著(2019年 クロスメディア・パブリッシング) 本コラムは同書を元に再構成しています。
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