• 2024年5月14日
  • 2024年5月13日

看護師の働き方改革: 「しんどい、退職しよう…」の前にできること

 

2019年から働き方改革関連法が順次施行され、各業界で時間外労働の上限規制や有給休暇取得の義務化など、労働環境の課題解消に向けた取り組みが進んでいます。そうしたなか、看護師の働き方を見直す動きも出てきましたが、交代勤務・マルチタスク・サービス残業など、さまざまな要因(=すぐには改革しにくい要因)が重なっていることから、厳しい状況を改善するには至っていません。

疲れ切った現状から脱したくて誰かに助けを求めようとしても、相談できる人がおらず、適切な手段もわからない――。看護師のなかにはこんな思いを抱いている方も少なくありませんが、実はそうした看護師をサポートしてくれる団体があります。「全国医療従事者労働環境改善協会」です。同協会は、医療従事者の相談に対応してくれるだけでなく、勤務先と労働環境改善について話し合う役割も担ってくれる心強い存在。彼らの取り組みによって、みなさんの働き方改革が実現するかもしれませんよ。

■看護師が「辞めたい」と思う最大の理由は労働環境

終わらない日勤、ナースコール対応、緊急入院受け入れ、サービス残業、休日の委員会出席、夜勤に伴う体調不良、消化しきれない有給休暇、上がらない給与、パワハラ……。多くの看護師は、これらが常態化した労働環境で働いています。

マイナビ看護師が、看護師約1,200人の労働実態と就業・転職動向を調査しまとめた「看護師白書2022年度版」によると、看護師が退職を考え始めたきっかけ・理由として最も多かったのは「給与条件」で次いで「仕事内容・やりがい」「人間関係」となっています。そして、ここから読み取れるのは、看護師が「辞めたい」と思う最大の理由が労働環境にあるということです。調査に寄せられた具体的な看護師の回答を見てみると、以下のような意見が上がっています。

看護師が退職を考え始めたきっかけ・理由_グラフ

●出典 メディカルサポネット
●調査実施機関 株式会社マイナビ(医療・福祉エージェント事業本部 看護師白書編集部)
●調査目的 看護師の労働環境全般の改善に向けて、労働実態と転職活動を含む就業の意向を把握
●調査方法 インターネット調査
●調査時期 2023年2月28日~2023年4月11日
●調査対象 人材紹介サービス『マイナビ看護師』登録会員(看護師)
●有効回答数 1,271名

1位 「給与条件」への不満

給与を上げてほしい。夜勤をしないと給与が上がらない。でも子どもがいて夜勤ができないので、収入が3分の2程度になる(30代)
給与体系を見直してもらえたら、人員は確保できると思います(20代)
看護師の給与水準が高いと言われるのは夜勤をしていての話。日勤だけだと高くはないし、コロナ禍を体験したことで「使命感だけではやっていけない」と心底思います。賃上げと休みの確保をしてほしい(40代)

2位 「仕事内容・やりがい」

看護職は奉仕の仕事というイメージがあるためか、かなりの責任を伴う肉体労働にもかかわらず、低賃金で酷使されていると感じます。とてもやりがいのある仕事ですが、やりがいだけでは燃え尽きてしまいます(20代)
仕事の性質上、働く人の善意やボランティア精神によって成り立つ業界だと思う。また、人の役立つ人になりたいと医療業界に入ってくる人が多いためか、労働基準法や働き方改革を口にできない土壌がある。これは、大病院だろうが小さな事業所だろうが変わらないように感じる(40代)

3位 「人間関係」がつらい

人手不足で、良い看護ができずにいるのが現状。人間関係やチームワークが良ければ踏ん張れるが、そこが崩れると心身の疲弊が激しい(30代)
仕同僚から言葉とメモによる嫌がらせ。上司に相談しても相手にされなかった(40代)

「辞めたい」「転職したい」と考えるのは、悩みや困りごとが積み重なった結果ですが、それらは容易に解決できるものではありません。勤務先との交渉によって解決の糸口を見つけられる可能性もありますが、交渉についての知識や経験を持つ看護師は少なく、解決へと導いてくれる専門家が身近にいないことも事実です。そのため、交渉の舞台に上がることすらできないまま現状に甘んじている、または退職する道を選択しているのが実状ではないでしょうか。

■解決に光! 悩める看護師の味方「全国医療従事者労働環境改善協会」

JMIA(全国医療従事者労働環境改善協会)ホームページから問い合わせをすることもできます。

「新しい職場に望みを託して転職しようかな」。悩んだ末にそう思ったとしても、実際の転職には結構な時間とエネルギーが必要です。さらには、採用への不安や経済面の不安などもつきまとい、簡単に実行できるものではありません。

「今の職場に勤務しながら、解決方法をアドバイスしてくれる人がいてくれたら良いのに」「誰か代わりに解決してくれる人がいてほしい」。転職を検討したことがある方なら、一度はそう考えた経験がありますよね。とはいえ、そんな存在はなかなか見つからず、誰かに頼ることをあきらめてしまった方も多いでしょう

しかし、先に紹介した「全国医療従事者労働環境改善協会(以下JMIA)」なら、悩める看護師の思いや希望を実現できるかもしれません。

同協会は、労働環境が原因で疲弊してしまい、本来の力や思いを発揮できずにいる医師や看護師をサポートするため、2023年3月に設立された団体です。代表理事を務めるのは、7年間三次救急病院で勤務した経験を持つ元看護師の方です。看護師時代、過酷な労働環境によって心身ともに疲弊し、「患者さんの役に立ちたい」という思いが次第に薄れていったのだとか。そして、同じ理由で退職していく仲間の姿を見るたびに悔しい気持ちが募ったと言います。

そうした思いから「現場の声に耳を傾け、現場の状況を把握すればきっと解決策が見えてくる」「それが医療の質の向上にもつながるはず」と考え、JMIAを設立。医療現場の労働環境改善を目指して、日々活動を行っています。

<JMIAが目指すもの>
1.心と時間に余裕を生み出し、患者対応の質を向上させる
2.負担軽減によって、一人ひとりが本来の仕事に注力できる環境をつくる
3.確実かつ丁寧な作業ができる環境を実現し、医療ミスのリスクを防止する

JMIAをひと言で表すなら、医療従事者が言いたくても言えないような労働環境の課題や、それに対する改善策を医療機関と話し合ってくれる、“ありそうでなかったサポートサービス”です。弁護士や社労士と連携し、課題解決をめざします。

看護師のみなさんが幸せに働くためには、病院への交渉だけでなく、自分自身を取り巻く労働条件を理解し、変化に応じて情報をアップデートしていくことも必要です。JMIAでは今後、医療従事者に向けたセミナーや相談会などの機会を設け、労務管理の基本を理解したり、自分自身で労働環境改善に取り組んだりするためのサポートを行う予定です。

医学や看護の知識と並行してこうしたスキルを身につければ、看護師として働き続けるための大きな力となるのではないでしょうか。

■働きやすさを“私”の幸せにつなげよう

JMIAの理念や設立の背景を知ってもらったところで、具体的なサービスの内容についても紹介しましょう。JMIAでは、以下の3つを軸に活動を展開しています。

1.労働環境についてのお悩み相談
2.法的な見解をアドバイス
3.医療機関への改善提案

これらの活動で注目したいのは、専門家が第三者として介入する点。それによって医療機関側も事態を深刻に認識し、真摯に向き合ってくれることが期待できるでしょう。問い合わせや相談は、ホームページの専用フォームだけでなく、LINEからも行えるため、休憩時間や通勤時間にスマホから気軽にアクセスできます。非営利法人なので、利用料がいっさいかからず全て無料で利用できるのも、うれしいポイントです。

交渉しても解決が望めない場合や、すでに退職を決意している場合は、「退職交渉がうまくいくか」「残った有給休暇をどの程度消化できるか」なども大きな課題です。実際、退職を申し出たら強く引き留められた、有給休暇の消化を申し出たら上司に拒否されたという話もよく耳にしますよね。

退職時有給休暇申請代行サービスもある、JMIAに相談することで課題解消の可能性が高まります。また、JMIAとの関わりを通じて、課題を解決するための考え方や労務の知識などを学べば、今後新たな困りごとができた際に自ら行動を起こせるかもしれません!

■まとめ

医療の現場では、働き方改革が思うように進んでいないのが実情です。労働環境の改善が望めずに、つらい・辞めたいと思っている看護師の方も少なくないでしょう。しかし、みなさんの悩みや困りごとに寄り添ってくれる存在は必ずいます。例えば、今回紹介したJMIAもそうした存在の一つ。より良い労働環境を実現するための心強い味方となるはずです。「しんどいから退職しよう」と考える前に、まずは全国医療従事者労働環境改善協会 JMIAに相談してみてはいかがですか?

それでも改善が見込めず、「真剣に転職を考えたい」という場合は、ぜひマイナビ看護師にご相談ください。今抱える悩みや困りごとを把握した上で、キャリアアドバイザーが最適解をお伝えし、あなたの働き方改革をサポートします。

JMIAは、医療従事者の労働環境改善のために活動し、今の過酷な労働環境を変えます。「もっと良い環境で働きたい」「助けてほしい」というスタッフはもちろん、「もっと良い環境をつくってあげたい」という医療機関の声にも丁寧に耳を傾けます。医療従事者の労働環境が改善すれば、医療やサービスの質が上がります。ポジティブな輪は波紋のように広がり、いずれは医療業界全体の質の向上につながるでしょう。

医療従事者のために、今よりもっと、良い環境を。
JIMAは労働環境改善の「軸」として、皆さまと共に活動を進めてまいります。
https://kyokai-jmia.or.jp/

文/高山真由子(看護師・保健師・看護ジャーナリスト)

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