MMSEとは、「Mini-Mental State Examination(ミニメンタルステート検査)」の略で、認知症や軽度認知障害(MCI)の疑いがあるかどうかを調べる簡易検査です。患者さんの認知機能を点数化して評価するもので、認知症の早期発見や認知機能の変化を追跡する際に役立ちます。
当記事では、MMSEの目的や実施方法、評価基準を分かりやすく解説します。認知症の診断をサポートする情報を知りたい方や、MMSEの実施方法を理解したい方はぜひ参考にしてください。
MMSEとは? 実施の目的や流れも
MMSEとは、認知症の疑いがあるかどうかの診断を目的として、患者さんの認知機能レベルを点数化して計測するスクリーニング検査です。「Mini-Mental State Examination(ミニメンタルステート検査)」の略で、患者さんの認知機能低下が疑われるときに実施します。
(出典:認知症臨床研究・治験ネットワーク「認知症の検査」)
MMSEを実施する際は、下記の4つの用具を用意しましょう。
- MMSEの評価用紙
- 筆記用具(鉛筆、消しゴム)
- 時計もしくは鍵
- 白紙
質問者はMMSEで定められた11項目の設問を出題して、患者さんが回答します。患者さんの回答から点数を付けて、11項目の点数を合計して認知機能の評価を行うという流れです。
改訂長谷川式簡易知能評価スケールとの違い
日本で実施されている認知症の検査には「改訂長谷川式簡易知能評価スケール」もあります。MMSEと改訂長谷川式簡易知能評価スケールとの違いは主に下記の3点です。
- 質問の項目数
MMSEは11項目の質問で構成されているのに対し、改訂長谷川式簡易知能評価スケールは9項目で構成されています。 - 回答方法
MMSEの回答方法は口頭・命令の実行・読解・書字・図形模写と種類があります。対して改訂長谷川式簡易知能評価スケールの回答方法は口頭のみです。 - 点数
MMSEは、点数によって「軽度認知障害の疑い」と「認知症の疑い」という2つの基準があります。改訂長谷川式簡易知能評価スケールでは、20点以下が「認知症の疑い」という1つの基準のみです。
(出典:認知症臨床研究・治験ネットワーク「認知症の検査」)
(出典:一般社団法人 日本老年医学会「認知機能の評価法と認知症の診断」)
MMSEの評価項目11個

MMSEは30点満点のテスト形式で、下記の評価基準で認知症の診断を行います。
点数 | 診断 |
---|---|
28~30点 | 異常なし |
24~27点 | 軽度認知障害(MCI)が疑われる |
23点以下 | 認知症の疑いがある |
ただし、MMSEはあくまでも簡易検査であり、診断できるのは軽度認知障害(MCI)の疑いや認知症の疑いのみです。認知症の早期発見に役立つものの、MMSEのみで認知症の診断を確定させることはできません。
以下ではMMSEの評価項目11個について、各項目の内容と出題の具体例を解説します。
時間の見当識(5点)
時間の見当識は、患者さんの時間の認識や理解を評価する項目です。年月日や曜日・季節などを下記のように質問して、患者さんに口頭で回答してもらいます。
●時間の見当識の出題例
- 「今年は何年ですか」
- 「今日は何日ですか」
- 「今の季節は何ですか」
1問1点の質問を合計5問出題して、正解していれば得点とします。
年についての回答は、西暦・和暦のどちらでも構いません。季節も春・夏・秋・冬に加えて、初夏・晩秋や梅雨といった回答でも、今の季節に合っていれば正解です。日についての質問は、1日でも間違っていた場合は不正解とします。
場所の見当識(5点)
場所の見当識は、場所の認識や理解を評価する項目です。都道府県や市町村、施設名・階数・地方名などを質問して、口頭で回答してもらいます。
●場所の見当識の出題例
- 「都道府県で言うと、ここは何ですか」
- 「今いる施設は何ですか」
- 「ここは何階ですか」
場所の見当識の質問も、1問1点で5問を出題します。
施設名の回答は正式名称のほか、通称や略称でも合っていれば正解です。
即時想起(3点)
即時想起は、新しいことを記憶する能力を評価する項目です。質問者は下記のように関連性のない3つの物品を言って、患者さんに物品の名前を復唱してもらいます。
●即時想起の出題例
- 「今から言う言葉を覚えて、繰り返し言ってください」
例1:「桃、きつね、電車」
例2:「田んぼ、洋服、コップ」 - 「今の言葉は後で聞くので覚えておいてください」
物品の名前を1つ1点として、患者さんがいくつ答えられたかで点数を計算します。
3つの名前は後で再び復唱してもらうため、3つすべてを答えられなかった場合は6回を限度として、全部答えられるようになるまで繰り返します。3つの名前を1秒間隔で伝えた後に、繰り返すことができれば正解とします。
計算・言葉の逆唱(5点)
計算・言葉の逆唱は、簡単な計算ができるかどうか、もしくは言葉の逆唱を行い情報に対する反応や記憶力を評価する項目です。以下のように計算問題を出題するか逆唱問題を出題します。
●計算・言葉の逆唱の出題例
- 「100から7を引いた数を言ってください」
- 「フジノヤマを逆から読んでください」(逆唱問題)
- 「3-5-2-9を逆から言ってください」(逆唱問題)
計算問題の出題では、患者さんが回答した後に「その数字からもう一度7を引いてください」と言います。7を引く計算を合計5回してもらい、正解した数1つにつき1点ずつ点数を加算します。次の7を引く際「93から7を引くといくつですか?」などヒントを出してはいけません。逆唱問題では、単語や数字を逆から言うように患者さんへ伝えましょう。
なお、患者さんが計算を間違えた場合は、間違えた時点で質問を打ち切ります。
遅延再生(3点)
遅延再生は、新しく記憶した内容について時間をあけてから思い出せるかを評価する項目です。2つ前の「即時想起」で出題した物品の名前を患者さんに回答してもらいます。
●遅延再生の出題例
- 「先ほど覚えてもらった3つの言葉は何でしたか」
回答する順番にかかわらず、正解した名前1つにつき1点です。
また、答えが出てこないときは「1つは植物です」のようにヒントを出すことも認められています。ヒントを出した場合も、正解すれば名前1つにつき1点を加算します。
物品呼称(2点)
物品呼称は、物品の正しい名前を思い出せるかを確認する項目です。下記のように2つの物品を患者さんに見せて、物品の名前を質問します。
●物品呼称の出題例
- 鍵を見せながら「これの名前は何ですか」
- 消しゴムを見せながら「これの名前は何ですか」
名前を質問する対象は、身の回りのものであればほかの物品でも構いません。患者さんが物品の名前や通称を正しく答えられれば、1つにつき1点ずつ加算します。
文の復唱(1点)
文の復唱は、文章を正確に記憶できるかを評価する項目です。
質問者は下記のような文章を聞き取りやすい速度で伝えて、患者さんに復唱してもらいます。
●文の復唱の出題例
- 「私が今から言う文を繰り返してください」
例1:みんなで力をあわせて、綱を引きます
例2:みんなで輪になって、ダンスを踊ります
問いは必ず、ゆっくりと口頭のみで行います。患者さんが復唱できるのは一度だけで、正確に答えられれば1点です。一語でも間違えた場合は不正解とします。
口頭指示(3点)
口頭指示は、指示を理解して実行できるかを評価する項目です。
質問者は下記のように3段階の指示を出して、患者さんに指示の内容を実行してもらいます。
●口頭指示の出題例
- 「右手に紙を持ってください」「紙を半分に折ってください」「紙を私に渡してください」
- 「左手にハンカチを持ってください」「ハンカチを端から丸めてください」「ハンカチを私に渡してください」
患者さんが混乱した場合は途中で打ち切ってください。患者さんが指示の通りにできた回数を1点ずつ加算します。
書字指示(1点)
書字指示は、書いてある文字を読んで実行できるかを評価する項目です。
●書字指示の出題例
- 「紙に書いてある文字を読み、文字の通りにしてください」
例1:「目を閉じてください」
例2:「手を挙げてください」
書いてある文字の通りに実行できれば1点を加算します。文字を読めない、または読んでも実行できない場合は不正解です。
自発書字(1点)
自発書字は、患者さんの文章構成能力を評価する項目です。白紙と鉛筆を渡して、患者さんに文章を書いてもらいます。
●自発書字の出題例
- 「渡した紙に何か文章を書いてください」
内容にかかわりなく、意味のある文章を書ければ正解です。状態などを表す四字熟語も正解とします。
自分の名前や名詞だけを書いた場合は不正解です。
図形模写(1点)
図形模写は、患者さんの空間認知能力を評価する項目です。図形の描かれた用紙と白紙・鉛筆を患者さんに渡し、図形を模写してもらいます。
●図形模写の出題例
- 「紙に描いてある図形をそのまま描き写してください」
例として、重なった2つの五角形を模写する場合の採点基準は、2つの五角形があり、1か所で交差していれば正解です。手のふるえや図形のサイズ感は問いません。
2つの五角形を描いていない、描けていても交差していない場合は不正解とします。
(参考:静岡てんかん・神経医療センター「Mini-Mental State Examination (MMSE)検査シート」)
(参考:福島市在宅医療・介護連携支援センター「Mini-Mental State Examination (MMSE)」)
まとめ
MMSEは、認知症や軽度認知障害(MCI)の疑いを確認するための簡易検査で、患者さんの認知機能を点数化して評価します。MMSEは認知症の早期発見に役立つ検査である一方、単独での診断には限界があるため、ほかの検査や専門的な診察との併用が推奨されます。
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※当記事は2024年12月時点の情報をもとに作成しています
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