看護における沐浴とは、生後1か月頃までの新生児を対象に、身体を清潔に保つ目的で行うケア方法です。免疫の獲得が十分ではない赤ちゃんは、皮膚トラブルや感染症にかかりやすいので、入浴よりも清潔な環境で沐浴をするのが大切です。
この記事では、沐浴の基本的な手順や看護師による指導の注意点を解説します。沐浴は看護師が適切に行うだけでなく、新生児のお父さんやお母さんにも正しい方法を伝えなければならないため、指導方法も含めて覚えておきましょう。
沐浴とは
沐浴とは、生後1か月頃までの赤ちゃんの身体を、お湯や石けんを使って清潔に保つケア方法です。
赤ちゃんに沐浴を行う主な目的は、下記の通りです。
- 身体の清潔の保持
- 全身の観察
- 皮膚トラブルの予防
- 血行促進
- 新陳代謝の促進
- 睡眠の促進
- 愛着形成
赤ちゃんは病気に対する抵抗力が低く、皮膚トラブルや感染症が起こりやすいため、沐浴により身体を清潔にして健康状態をチェックする必要があります。また、スキンシップを図ることで愛着形成にもつながります。
赤ちゃんやご家族のケアに役立てるために、入浴との違いや沐浴を行う期間について理解を深めておきましょう。
沐浴と入浴の違い
沐浴と入浴は同じ意味で使われることがありますが、2つには明確な違いがあります。
沐浴と入浴の言葉の意味は、下記の通りです。
- 沐浴…沐浴槽(ベビーバス)で身体をきれいにすること
- 入浴…浴槽で身体をきれいにすること
沐浴は、大きな浴槽ではなく新生児用の沐浴槽を使って行います。沐浴槽を使うことで、細菌による感染を防ぎやすくなります。
沐浴はいつまで行う?
沐浴を行う期間は、生後1か月頃までが目安です。細菌やウイルスなどに対する抵抗力がつくまでは、沐浴槽に入れて身体を洗う必要があります。新生児は臍の緒が取れた部分から細菌が入る「臍炎(さいえん)」が起こりやすいため、臍がしっかり乾燥するまでは浴槽での入浴は控えます。
生後1か月頃には臍がしっかり乾いて抵抗力もついてくるため、大人と一緒の入浴が可能です。
ただし、いつまでにやめなければならないといった決まりはありません。やめるタイミングは、赤ちゃんの健康状態や成長、沐浴槽の対象年齢を考慮して判断しましょう。
新生児へ沐浴を行うときの禁忌
新生児の沐浴には、避けたほうがよいタイミングがあります。
以下の状態が確認できるときは、新生児の沐浴を避けましょう。
- 37.5℃以上の発熱がある
- 体温が36.0℃以下である
- ぐったりしていて元気がない
- 湿疹や発疹が多く見られる
- 哺乳力が弱い
- 頻回に嘔吐している
体調の変化があるときに沐浴をすると、状態の悪化や体力の消耗につながるおそれがあります。沐浴をするかどうかは、身体の状態を確認したうえで判断しましょう。
母乳やミルクを飲んだ直後や空腹時も、身体への影響が大きくなります。授乳後の沐浴は、30分以上経ってから行うことがポイントです。
沐浴の看護手順

新生児の沐浴をするときは、トラブルやミスが起こらないように事前準備を徹底したうえで、看護手順に従って安全に進めましょう。
看護師が新生児の沐浴を行うときの看護手順を詳しく解説します。
新生児をアセスメントする
沐浴をする前に、赤ちゃんのアセスメントを行います。
新生児のアセスメントでチェックすべき項目は、次の通りです。
- バイタルサイン
- 体重減少率
- 黄疸の進行度
- 活気
- 哺乳力
- 皮膚所見
体温の測定や全身の観察をして、沐浴ができる状態かどうかを判断します。脇や首周りなど皮膚が重なっている部分は発赤や湿疹などの皮膚症状を見逃しやすいため、丁寧に確認しましょう。
沐浴の準備をする
沐浴をスムーズに進められるように、着替えや道具を準備します。
着替えやすいように、長着・肌着・おむつの順に重ねておきます。肌着と長着は袖を通して1つにしておきましょう。身体を拭くバスタオルを一番上に置いたら、着替えの準備は完了です。
沐浴に必要な道具は、下記の通りです。
- 沐浴槽
- 洗面器
- 石けん
- 沐浴布(沐浴ガーゼ)
- ガーゼ
- 湯温計
- ヘアブラシ
- 保湿剤
家庭で沐浴を行うときは、シンクや洗面台に沐浴槽をセットすると腰への負担を軽減できます。
洗面器には、洗顔や最後のかけ湯に使うお湯を入れておきます。必要に応じて、綿棒・爪切り・臍ケア用品なども準備しておきましょう。
新生児は体温調節がうまくできないため、室温は24~26℃に設定します。お湯の温度は、夏は38~39℃、冬はお湯が冷めやすいため40~41℃を目安に準備します。
沐浴を実施する
新生児の沐浴の手順は、以下の通りです。
1 | 赤ちゃんを裸にして身体に沐浴布をかける |
---|---|
2 | 肘の内側でお湯の温度を確認した後、赤ちゃんを抱っこして足先からゆっくりとお湯に入れる |
3 | 洗面器のお湯でガーゼを濡らして顔を洗う |
4 | ガーゼで頭を濡らして石けんをつけて洗い、お湯でしっかり泡を流す |
5 | 首・胸・腕・手のひら・おなか・足を洗い、赤ちゃんをひっくり返して背中を洗う |
6 | お湯で泡を洗い流したら、元の姿勢に戻しておしりと股を洗う |
7 | 最後にかけ湯をしてバスタオルで身体を拭く |
赤ちゃんを沐浴槽に入れるときは、利き手ではないほうの手で首の後ろを支えて、利き手でおしりを支えます。濡らしたガーゼを使って、目尻・目頭・おでこ・頬・鼻の下・あご・耳の後ろの順番に汚れを拭き取りましょう。
赤ちゃんをひっくり返すときは、利き手を脇の下に挟んで親指で肩を持ちます。利き手の腕であごを支えるようにして赤ちゃんの身体を起こすと、スムーズに体勢を変えられます。赤ちゃんの姿勢を元に戻すときは、利き手ではないほうの手で首の後ろと後頭部をしっかりと支えましょう。
新生児の沐浴の時間は、着替えも含めて10分程度が目安です。
沐浴後のケアをする
赤ちゃんの肌は薄くてバリア機能が未熟です。沐浴後は、おむつを軽くあてた状態で保湿剤を使ってしっかりスキンケアをします。手のひらを優しくすべらせるように、クリームやオイルをなじませます。口の周りや耳の付け根は乾燥しやすいため、こまめな保湿が必要です。
全身のスキンケアが完了したら、服を着せてほかの部分のケアをします。
耳と鼻は、綿棒を使って入り口の水分を拭き取ります。大人用ではなく赤ちゃん用の綿棒を使いましょう。臍も綿棒を使って水分を拭き取り、消毒液で優しくお手入れします。最後にヘアブラシで髪を整えたら、沐浴後のケアは完了です。
沐浴を指導するときの注意点

沐浴指導をする看護師は、以下の点に注意しましょう。
- ケアのポイントと必要性をしっかりと説明する
- 不安が大きくなる伝え方は避ける
- 両親の片方だけに負担がかからないように配慮する
- 赤ちゃんと家族のペースで沐浴を行う大切さを伝える
ケアのポイントや必要性を丁寧に伝えることで、沐浴時のトラブルやミスを防ぎやすくなります。「なぜやらなければならないのか」「なぜ避けるべきなのか」など、理由をセットで伝えましょう。
ただし、はじめて赤ちゃんに沐浴をさせる家族は、不安を感じやすい傾向にあります。リラックスできるようにポジティブな言葉で指導するのが大切です。
また、両親のどちらか片方の負担だけが大きくなりすぎないように、家族全員に向けて指導することも重要です。家族で協力して、赤ちゃんとペースを合わせながら安全に沐浴できるような環境づくりを呼びかけましょう。
まとめ
沐浴は赤ちゃんの身体を清潔に保ち、感染症を防ぐだけでなく、ご家族が赤ちゃんと愛着を形成するためのスキンシップの機会でもあります。看護師にはご家族の不安を軽減し、適切な指導を行って、安心して沐浴ができるようサポートすることが求められます。お母さんだけに育児の負担がかからないよう、家族全員に向けて沐浴の手順を指導しましょう。
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※当記事は2024年11月時点の情報をもとに作成しています
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