バチ指とはどのような症状? 原因となる疾患も解説
  • 2025年1月25日
  • 2025年1月22日

バチ指とはどのような症状? 原因となる疾患も解説

 

太鼓のバチのように丸く膨らんでいる指先のことを、「バチ指」といいます。バチ指自体は病気ではなく、発生メカニズムや原因については完全には解明されていません。しかし、突然指先がバチのように膨らんできた場合には、何らかの病気が隠れている可能性が考えられます。

そこで今回は、バチ指の概要や見分け方、治療法、さらにバチ指の原因とされている主な7つの疾患について詳しく紹介します。バチ指について知りたい方はもちろん、バチ指の原因となる疾患の理解を深めたい看護師の方もぜひ最後までご覧ください。

バチ指とは?

バチ指とは、爪床の下にある軟部組織の増殖によって、一部またはすべての指先が太鼓のバチのように丸く膨らんだ状態を指します。爪と軟部組織の角度に変化が生じ、爪が指先を包み込んでいるかのように見えることが特徴です。

バチ指の発生メカニズムや原因については、医療が進歩した現在においても完全には解明されていません。しかし、肺疾患・心疾患や消化器疾患といった一部疾患の進行に伴って引き起こされることが分かっています。

また、血液の成長にかかわる特定のタンパク質が異常に働くことで血管が拡張し、結果として指先が肥大したという可能性も指摘されています。

とはいえ、バチ指が必ずしも疾患に関連するわけではなく、「遺伝によるもの」など病気の徴候ではないケースもあります。加えて、バチ指そのものが健康に直接的な悪影響を及ぼすことはほとんどなく、通常は治療の必要もありません。

バチ指の見分け方

バチ指かどうかを見分ける際のポイントとしては、「爪と軟部組織の角度」と「両手の指を背面(爪側)で合わせたときの隙間」の2点が挙げられます。

正常な指先の場合、爪と軟部組織の角度は160度程度となります。したがって、両手の指どうしを側面で第一関節から合わせたときには、爪が生えてくる部分あたりにひし形の隙間ができるのが特徴です。

一方で、バチ指の場合は爪と軟部組織の角度が180度以上に開き、両手指を背面で合わせたときには隙間ができません。これにより、バチ指の特徴的な膨らんだ指先が確認できます。

また、バチ指と混同されがちな症状として「マムシ指」があります。マムシ指は、遺伝によって引き起こされるものであり、指先や爪が横長でバチ指のような膨らみは見られないなど、原因や形状に明確な違いがあることも覚えておきましょう。

バチ指の治療法

バチ指は指先が徐々に丸く膨らんで変形するのみであり、痛みを伴うことはほとんどありません。あくまでも特定の疾患による症状の1つであり、バチ指そのものに対して直接的な治療を行うことは基本的にないと考えておきましょう。

バチ指が発生する原因となっている疾患が明らかになった場合は、その疾患に対する治療が行われます。バチ指の原因となる疾患が改善すれば、元の指先に戻る可能性もゼロではありません。実際に、疾患の改善や指先の血流促進によってバチ指が改善する余地は十分にあります。

しかし、現実的にはバチ指が形成されるまで長い時間が経過していることが多く、すでに器質化している場合は元の状態に戻らない可能性が高い点に注意が必要です。

バチ指の原因となる疾患

バチ指の原因となる疾患

前述の通り、バチ指は呼吸器疾患や消化器疾患が原因で引き起こされることが分かっています。

ここからは、バチ指の原因とされている主な7つの疾患について、疾患の概要やバチ指以外の特徴的な症状も挙げながら詳しく紹介します。

肺がん

肺がんとは、気管や気管支、または肺胞という小さな袋の細胞ががん化したものです。大きく「非小細胞肺がん」と「小細胞肺がん」の2つに分類され、いずれも喫煙習慣が最も大きな発生要因とされているものの、環境要因や遺伝的要因が関与する場合もあります。

肺がんは初期症状が見られないことが特徴で、ある程度進行してから初めて症状が出るケースも珍しくありません。主な症状としては、咳や痰・血痰、呼吸時の喘鳴、嗄声、顔や首のむくみ、さらに胸部の痛みや動悸、関節炎が挙げられます。

肺がんに伴うバチ指は、腫瘍の進行に伴う血流の妨げが原因で引き起こされると考えられています。バチ指が現れた時点では、胸痛や血痰といった症状がすでに重くなっていることも多く、バチ指をきっかけに肺がんに気付くケースは少ないとされています。

なお、同じく喫煙習慣が発生要因とされる呼吸器疾患としては「慢性閉塞性肺疾患(COPD)」があります。慢性閉塞性肺疾患はがんではないものの、肺がんを合併する可能性がある点に注意が必要です。

特発性肺線維症

特発性肺線維症とは、何らかの原因で傷がついた肺胞を修復するために増加したコラーゲンによって、肺の組織が線維化する(硬くなる)疾患です。「IPF」と呼ばれる特発性間質性肺炎の一種で、国の難病に指定されています。

健康な肺では、たとえ肺胞に傷がついてもその傷は修復され、スムーズなガス交換が維持されます。しかし、長期にわたって繰り返し肺胞に傷がつくと、その傷を治そうとする働きによって大量のコラーゲン線維などが肺胞の壁(間質)に蓄積されます。その結果、酸素や二酸化炭素の通り道である間質が厚く硬くなる「線維化」が起こると考えられています。間質に線維化が起こると肺が十分にふくらまなくなり、ガス交換がうまくできずに酸素が不足し呼吸が苦しくなります。

特発性肺線維症の主な症状としては、肺機能の低下による息切れや空咳、労作時の呼吸困難が挙げられます。また、IPF患者さん全体のうち25~50%程度にはバチ指の症状が見られるといわれています。特発性肺線維症に伴うバチ指も、疾患がある程度進行してから現れる傾向です。

特発性肺線維症は進行性のある疾患ですが、進行スピードは患者さんによって大きく異なります。数年単位で徐々に進行する患者さんもいれば、急激に悪化する患者さんもいるため、早期発見と管理が非常に重要です。

先天性心疾患

先天性心疾患とは、心臓や血管における構造の一部に、生まれつき異常が見られる疾患です。「非チアノーゼ性心疾患」と「チアノーゼ性心疾患」の2つに大別され、それぞれ異なる症状を引き起こします。

非チアノーゼ性心疾患は、心臓に穴が開いて大量の血液が心臓と肺の間を空回りするため、心臓や肺に負担のかかる疾患です。主な症状は心雑音や軽度の息切れであり、バチ指もさほど見られないことが特徴です。

もう一方のチアノーゼ性心疾患は、酸素の少ない赤黒い静脈血が、心臓の穴を通して大動脈から全身に流れるため、唇や手足が紫色になる「チアノーゼ」が現れるタイプの疾患です。長期化すると指先に十分な酸素が行き届かず、バチ指を引き起こすケースもあります。

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うっ血性心不全

うっ血性心不全とは、心臓のポンプ機能が弱まることによって全身に十分な量の血液を循環させられなくなり、血液の停滞(うっ血)を引き起こす疾患です。

うっ血性心不全の主な症状にはむくみや息切れ、倦怠感、夜間の頻尿などがあり、進行すると重度の呼吸困難を引き起こすことがあります。特に、肺に血液が停滞すると肺に水分が溜まる「肺水腫」が起こり、最悪の場合は命にかかわるケースもあります。

バチ指も、うっ血性心不全に関連して見られる症状の1つです。血流の停滞によって指先に十分な血液や酸素が供給されず、指が膨らむ・爪が変形することがあります。

感染性心内膜炎

感染性心内膜炎とは、心臓の内膜(心内膜)に細菌が感染し、炎症を引き起こす疾患です。細菌が血液循環を介して心臓に到達し、損傷を受けた心臓弁に付着することが原因で発症します。

感染性心内膜炎の主な症状としては、全身倦怠感、持続する微熱、体重減少といった全身症状、また関節痛、筋肉痛、腰痛や、脳血流障害、心筋梗塞、心不全症状もみられます。感染が進行すると末梢血流が低下し、バチ指が現れるケースもあります。また、感染が心臓弁にダメージを与えると心不全や脳梗塞のリスクも高まるため、早期の発見と治療が重要です。

肝硬変

肝硬変とは、B型やC型肝炎ウイルス感染、アルコール、非アルコール性脂肪性肝炎などによって肝臓に生じた炎症を修復するときにできる「線維(コラーゲン)」というタンパク質が増加して肝臓全体に広がった状態のことをいいます。

肝硬変には身体症状が見られない代償期と、症状が現れ始める非代償期があり、非代償期では血流の停滞や栄養素の吸収不良による黄疸やむくみ、腹水の蓄積、さらにバチ指が合併症として現れます。

内分泌疾患

内分泌疾患とは、体内のさまざまな機能維持に欠かせないホルモンの分泌異常によって、過剰分泌や分泌不足が生じる疾患です。

身体における各々の器官でさまざまな疾患があり、すべての内分泌疾患においてバチ指が見られるわけではありませんが、一部の内分泌疾患ではバチ指が特徴的な症状として現れることもあります。

バチ指に関連する代表的な内分泌疾患としては、副甲状腺ホルモンの過剰分泌によって起こる「副甲状腺機能亢進症」と成長ホルモンの過剰分泌によって起こる「先端巨大症」が挙げられます。

いずれの疾患も、進行すると生活に支障をきたすだけでなく、ほかの合併症を引き起こす可能性もあります。バチ指を含む早期の兆候に注意しつつ、早い段階で医師による診断を受け、病院で適切な治療を受けることが大切です。

まとめ

バチ指とは、何らかの原因で爪床の下にある軟部組織が増殖し、一部またはすべての指先が太鼓のバチのように丸く膨らんだ状態です。肺がんや先天性心疾患、肝硬変、内分泌疾患など一部疾患の進行に伴って引き起こされることが分かっています。バチ指を改善するには、発生要因となった疾患の早期治療が重要といえるでしょう。

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※当記事は2024年11月時点の情報をもとに作成しています

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