狭心症とは? 種類4つと原因・検査と治療方法を解説
  • 2024年11月23日
  • 2024年11月21日

狭心症とは? 種類4つと原因・検査と治療方法を解説

 

狭心症は、心筋梗塞と合わせて虚血性心疾患と呼ばれている病気です。「虚血性」は血液が不足している状態を意味し、狭心症では心臓に直結する冠動脈が細くなり血液が十分に流れていない状態になります。ちょっとした運動をするだけで動悸が止まらなかったり、眠っていたら胸が苦しくなったりする症状がある場合は狭心症の症状に該当するため、早めの受診・治療がおすすめです。

当記事では、狭心症の種類ごとによる症状や状態、また狭心症になる原因や検査方法、治療方法などを解説します。

狭心症とは? 種類を解説

狭心症とは、心臓を取り巻く冠動脈が何らかの原因でつまって狭くなり、血液が流れにくくなった状態を指す冠動脈疾患です。

冠動脈は心臓を動かす筋肉(心筋)に酸素や栄養分を送る血管であり、血液の流れが悪くなると心筋が血液不足になり酸素や栄養が足りない状態に陥ります(虚血性心疾患)。症状が進行すると息苦しさや胸の痛み、動悸などの狭心症症状が現れ始め、さらに悪化した場合は、冠動脈が完全に塞がる心筋梗塞へと発展するケースも少なくありません。

狭心症には大きく分けて4つの種類があり、タイプによって症状が出る状況も異なります。それぞれのタイプの特徴について確認し、適切かつ的確な治療・処置を行えるよう理解を深めましょう。
(出典:公益財団法人 日本心臓財団「狭心症とは」
(出典:医療法人社団 東京医心会 ニューハート・ワタナベ国際病院「狭心症」
(出典:医療法人社団 公仁会 大和成和病院「狭心症とは」

労作性狭心症

労作性狭心症とは、「階段を上がる」「力仕事をする」「運動する」などの労作を行ったときに、胸に圧迫感や灼熱感といった痛みが生じるタイプの狭心症です。

体に負荷がかかる動作を行うときは、安静時よりも多量の血液を体全体に送り出す必要があります。しかし、動脈硬化によって冠動脈狭窄が発生すると、心筋に十分な量の血液を送れません。その結果、心筋虚血が起こり、痛みが生じる場合があります。狭心症発作による痛みが続く時間は比較的短く、安静にしていれば数分程度で治まる場合がほとんどです。
(出典:公益財団法人 日本心臓財団「狭心症とは」
(出典:医療法人社団 東京医心会 ニューハート・ワタナベ国際病院「狭心症」
(出典:医療法人社団 公仁会 大和成和病院「狭心症とは」

安静時狭心症、冠攣縮性狭心症

安静時狭心症、冠攣縮性(かんれんしゅくせい)狭心症とは、夜間の就寝中や明け方に締め付けられるような胸痛を伴う発作が起こるタイプの狭心症です。痛みを感じる部位や痛みの性質は、労作性狭心症と大きな違いはありません。

安静時狭心症、冠攣縮性狭心症は、冠動脈が一過性の痙攣(けいれん)を起こし、心臓への血液供給が一時的に止まることで起こります。冠動脈の痙攣は、動脈硬化の進行過程でよく見られる現象でもあるため、経過をよく観察することが大切です。
(出典:公益財団法人 日本心臓財団「狭心症とは」
(出典:医療法人社団 東京医心会 ニューハート・ワタナベ国際病院「狭心症」
(出典:医療法人社団 公仁会 大和成和病院「狭心症とは」

不安定狭心症

不安定狭心症とは、体に負荷がかかる労作時だけでなく、軽い運動時や安静時にも狭心症の発作が頻繁に起こるようになった状態の狭心症を指します。

胸部圧迫感(締め付けられるような痛み)を強く感じるようになり、その頻度も徐々に増加していきます。完全に冠動脈が閉塞する一歩手前の状態で、狭心症の中でも心筋梗塞の危険性が高いとされています。

心筋梗塞に移行する危険性が高まっている状態であるため、症状が現れた場合はすぐに医師に連絡をとり、医療機関を受診しましょう。自宅などで発作を起こした場合は、ただちに救急車を要請してください。
(出典:公益財団法人 日本心臓財団「狭心症とは」
(出典:医療法人社団 東京医心会 ニューハート・ワタナベ国際病院「狭心症」
(出典:医療法人社団 公仁会 大和成和病院「狭心症とは」

微小血管狭心症

微小血管狭心症は、狭心症の発作が起こっているにもかかわらず、冠動脈に狭窄部位が見られない場合や、誘発試験を行っても冠動脈の痙攣が起こらない場合に疑われる狭心症です。冠動脈には異常が見られないため、心筋にある微細な血管が狭くなり、血液の流れが悪くなっていると考えられます。

微小血管狭心症は、X線血管造影検査では病変部位が撮影できない小さな病変を想定しているため、多くの場合は推定による診断となります。自覚症状から判断することは難しいものの、重症化するケースは多くありません。

(出典:公益財団法人 日本心臓財団「狭心症とは」
(出典:医療法人社団 東京医心会 ニューハート・ワタナベ国際病院「狭心症」
(出典:医療法人社団 公仁会 大和成和病院「狭心症とは」

狭心症になる原因

狭心症になる原因

狭心症の発症原因の多くは「動脈硬化」です。動脈硬化とは、加齢や高血圧などさまざまな要因により血管が柔軟性を失い、硬くなった状態を指します。

動脈硬化が進むと、血管の壁の厚みが増して内腔が狭くなるリスクが高まります。また、コレステロールなどが血管壁にたまり、「プラーク(粥腫)」と呼ばれコブ状のものが形成される場合もあります。プラークは血流を妨げるほか、大きくなって破れたときに血栓が生じ、血管を塞ぐことで心筋梗塞を引き起こす恐れがあることにも注意が必要です。

動脈硬化が起こる要因には下記のようなものがあります。該当する方は特に注意し、早めの対策を心がけることが大切です。

【動脈硬化が起こる主な危険因子】

  • 高血圧
  • 高脂血症(脂質異常)
  • 糖尿病
  • 腎臓病
  • 肥満
  • 喫煙
  • 高頻度のアルコール摂取
  • 家族歴
  • ストレス

(出典:一般社団法人徳洲会 徳洲会グループ「心臓血管外科の病気:狭心症と心筋梗塞」
(出典:国立循環器病研究センター「不安定狭心症」
(出典:公益財団法人 心臓血管研究所 付属病院「狭心症の初期症状をチェックして早めの対策を!」
(出典:医療法人社団 東京医心会 ニューハート・ワタナベ国際病院「狭心症」

狭心症の検査方法

狭心症の検査方法

狭心症の症状が見られる場合、ほかの疾患と鑑別したうえで治療方針を決定するために必要な検査を行います。狭心症の検査方法・診断方法としては、下記のようなものがあります。

心電図検査 心臓の収縮・拡張している状態を把握し、心筋が酸素不足か、また以前に心筋梗塞が起こっていないかなどが把握できます。狭心症が疑われる場合は、運動後に心電図を図る「負荷心電図」を行うこともあります。
胸部X線検査
(胸部レントゲン検査)
胸の痛みが肺や肋骨など心臓以外の部位に現れている場合に有用な検査方法です。心臓の大きさや肺の血液の流れを確認し、心臓の状態を調べます。
心エコー検査 エコー(超音波)を使い、心機能(心筋の動きや弁の状態など)をリアルタイムで確認できる検査です。発作時に検査を行うと、症状の原因となる血管を推定できる場合があります。
血液検査 コレステロール値や血糖値など、狭心症のリスク因子に関わる項目を中心に調べます。また、心筋梗塞が起こっていないか確認するために、心筋細胞からクレアチンフォスフォキナーゼなどの酵素が血液中に漏れ出ていないかチェックします。
冠動脈CT検査 短時間で心臓の断面を撮影して三次元化することにより、冠動脈の状態を調べる検査です。
心臓カテーテル検査
(冠動脈造影検査)
手首・鼠径部の動脈から挿入したカテーテルを介して造影剤を冠動脈に注入し、狭窄や攣縮(れんしゅく)、血栓の有無を調べます。狭心症の確定診断に必要となる検査です。

なお、上記以外の方法として、ホルター心電計を用いた24時間体制の心電図検査や、放射性同位体を体内に注入して血液の流れを測定する心筋シンチグラム検査などもあります。
(出典:国立循環器病研究センター「不安定狭心症」
(出典:医療法人社団 東京医心会 ニューハート・ワタナベ国際病院「狭心症」
(出典:医療法人社団MYメディカル MYメディカルクリニック「狭心症とは?症状・原因・治療法について」

狭心症の治療方法

狭心症の治療方法

狭心症の治療には、薬物療法や手術といった方法が選択される場合もありますが、まずは生活習慣を見直すことが大切です。動脈硬化の悪化を防ぐために、高血圧の方の場合は減塩を、糖尿病や肥満のある方はカロリーコントロールを心がけるなど、毎日の食事に注意しましょう。喫煙習慣がある方は禁煙し、適度な運動を日常生活に取り入れることも重要です。

生活習慣を改善しても狭心症に効果が見られない場合は、薬物治療や手術による治療を行います。ここでは、狭心症の改善に向けた薬物治療や、狭心症手術について解説します。

薬物治療

薬物による治療は、狭心症の症状・病変が軽度の場合や、病変した部位が心臓に重大な影響を与えないと考えられる場合に選択される治療方法です。狭心症治療では、主に下記のような薬剤が使用されます。

ニトログリセリン
(硝酸薬)
発作時に応急処置として使用する舌下剤です。即効性が高く、服用後1~2分で発作の症状を軽減できます。
カルシウムブロッカー 冠動脈の収縮を防ぐ効果が期待できる薬剤です。
抗血小板薬・抗凝固薬 血液が固まるのを防ぎ、血栓の形成を予防する効果が期待できます。
β-ブロッカー
(ベータ遮断薬)
血液の量を減らして血流を改善する作用が期待できる薬剤です。
(出典:医療法人社団 東京医心会 ニューハート・ワタナベ国際病院「狭心症」
(出典:医療法人社団 公仁会 大和成和病院「狭心症とは」
(出典:一般社団法人徳洲会 徳洲会グループ「心臓血管外科の病気:狭心症と心筋梗塞」
(出典:公益財団法人柏市医療公社 柏市立柏病院「狭心症・心筋梗塞とは」

心臓カテーテル治療

手首や鼠径部の動脈からカテーテルを挿入し、冠動脈の病変部位でバルーン(風船)やステント(筒状の網目の金属)を膨らませる手術です。狭くなった血管を広げて血流を改善することにより、狭心症の症状が緩和することが期待できます。

心臓カテーテル治療は内科的治療であり、体への負担が比較的少なく、入院期間も数日程度で済むケースが多く見られます。一方で、より重篤な症状には対応できない場合があることに注意が必要です。
(出典:医療法人社団 東京医心会 ニューハート・ワタナベ国際病院「狭心症」
(出典:医療法人社団 公仁会 大和成和病院「狭心症とは」
(出典:一般社団法人徳洲会 徳洲会グループ「心臓血管外科の病気:狭心症と心筋梗塞」
(出典:公益財団法人柏市医療公社 柏市立柏病院「狭心症・心筋梗塞とは」

冠動脈バイパス手術

冠動脈の狭くなっている部位や閉塞している部位を迂回し、新しい血管をバイパスとしてつなぐ外科手術です。自分の体内の別の部位にある血管を切り取り、一方を大動脈に、もう一方を冠動脈病変が起こっている部位の先につなぎます。

冠動脈バイパス手術は外科治療であり、内科治療である心臓カテーテル治療と比べて患者さんの負担が大きい傾向があることに注意が必要です。病変の場所や程度にもよりますが、下記のようなケースで冠動脈バイパス手術を選択する場合が多いことを押さえておきましょう。

【冠動脈バイパス手術が選択される主なケース】

  • 重症度が高く、心臓カテーテル治療で完全に治療できないと考えられる場合
  • 心臓カテーテル治療がうまくいかず、命にかかわる状態になった場合
  • 再発を繰り返す場合

冠動脈バイパス手術には、心臓をいったん止め、人工心肺を心臓の代わりにして行うオンポンプ手術(ON-CABG)と、人工心肺を使わずに心臓を動かしたまま行うオフポンプ手術(OFF-CABG)があります。どちらにもメリットとリスクがあるため、患者さんの病態や年齢、健康状態などの要素を総合的に判断し決定します。
(出典:医療法人社団 東京医心会 ニューハート・ワタナベ国際病院「狭心症」
(出典:医療法人社団 公仁会 大和成和病院「狭心症とは」
(出典:一般社団法人徳洲会 徳洲会グループ「心臓血管外科の病気:狭心症と心筋梗塞」
(出典:公益財団法人柏市医療公社 柏市立柏病院「狭心症・心筋梗塞とは」

まとめ

狭心症とは心臓につながる冠動脈の一部が狭くなり血流が悪くなることから、心臓に必要な血液や酸素が供給できなくなる疾患です。動脈硬化が大きな原因で、加齢や高血圧などさまざまな要因によって血管の内腔が狭くなり狭心症のリスクが高まります。治療には一般的に薬物療法または手術などがありますが、まずは動脈硬化の悪化を防ぐために生活習慣を見直すことが重要となります。

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※当記事は2024年9月時点の情報をもとに作成しています

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