ジャパンコーマスケールとは? JCSの特徴やGCSとの違いを解説
  • 2024年9月22日
  • 2024年9月20日

ジャパンコーマスケールとは? JCSの特徴やGCSとの違いを解説

 

ジャパンコーマスケール(JCS)は、日本で開発された患者さんの意識障害を評価するスケールです。JCSは覚醒状態を3段階に分け、さらに細分化して全9段階で評価するため「3-3-9度方式」とも呼ばれます。

一方、グラスゴーコーマスケール(GCS)は国際的に使用され、開眼機能、言語機能、運動機能の3要素で評価しますが、時間がかかる点が課題です。

当記事では、JCSとGCSの特徴や違い、意識障害の患者さんに対応する際のポイントについて解説します。

ジャパンコーマスケールとは? JCSの特徴とGCSとの違い

ジャパンコーマスケールとは、脳神経外科領域で開発された患者さんの意識障害の程度を評価するアセスメントスケールです。意識障害を起こした患者さんは呼びかけなどにも反応しないため、相手からは状態を聞き取れません。そこで、医師や看護師などは、スケールを用いて評価を行い、患者さんの意識状態の変化を把握します。

ジャパンコーマスケール(Japan Coma Scale)は、頭文字を取ってJCSと略されます。また、JCSは患者さんの覚醒状態の程度によって3段階に分け、さらに3段階に細分化して全9段階で評価する方式です。このため、JCSは「3-3-9度方式」と呼ばれることもあります。

意識障害の程度を評価する指標には、JCSのほかにグラスゴーコーマスケール(GCS)があります。GCSは海外でも広く使用されているスケールで、E(開眼機能)・V(言語機能)・M(運動機能)の3つの要素に点数をつけ、合計点を評価する点が特徴です。

GCSはJCSより詳細に意識状態を分類できますが、複雑で結果の算出に時間がかかります。反対に、JCSは簡易的ではあるものの、スピーディーに評価をできるという特徴があります。
(出典:日本救急医学会「用語解説① 意識レベルの評価法〜JCSとGCS【プリベンタブルデス ある救急医の挑戦】」

詳しくは以下の記事でも解説しているため、参考にしてください。

意識レベルとは? 4つのスケールやアセスメントの順番を解説

意識障害の患者さんに対応するときのポイント

意識障害の患者さんに対応するときのポイント

患者さんが意識障害を起こしている場合は、複雑な対応を迅速に行うことが求められます。ここでは、意識障害の患者さんの対応時に押さえておきたいポイントを解説します。意識障害を起こした患者さん相手にも、慌てず落ち着いて対応できるように準備しておきましょう。

JCSとGCSを使い分ける

患者さんに適切な対応を行うには、意識レベルを迅速に評価することが重要です。患者さんの意識レベルの深度を素早く評価するために、日頃からJCSとGCSの両方で評価する習慣を身につけておきましょう。GCSはJCSよりも覚えにくく、工夫して覚える必要があります。

GCSを覚えるための方法の1つに、アジミ体操があります。アジミ体操は、割り振った番号とジェスチャーを結びつけ、意識レベルの深度を表す方法です。GCSをなかなか覚えられない場合には、アジミ体操を参考にするとよいでしょう。

日本国内では、JCSとGCSの要素を取り入れたECSが使われるケースも多く見られます。そこで、JCSとGCSの双方について理解を深める重要性がますます高まっています。JCSとGCSをうまく使い分けられると、ほかの医療従事者との情報交換がスムーズに行えるようになるでしょう。
(出典:日本医事新報社「対談 意識障害」

ABCを評価する

患者さんに意識障害が起きている場合でも、障害の原因検索より優先すべきは命の確保です。救命のためには、どのような疾患においても、早期に「ABC」を評価したうえで安定させる必要があります。

ABCは、次の救命に必要な3つの要素を、頭文字で表した言葉です。

  • A(Airway):気道確保
  • B(Breathing):呼吸状態
  • C(Circulation):循環状態

上記の3点を安定させるために、患者さんの状態を観察し、気道の確保と循環動態の安定を最優先で行いましょう。

意識障害の原因検索とは異なり、JCSやGCSによる意識障害の深度評価も、ABCの評価と同様に重要です。意識障害の深度評価とABCの評価は、可能な限り同時並行で迅速に行うことが理想です。
(出典:中外医学社「①意識障害に出会ったら」

「DONT」を行う

ABCを評価して安定させた後、次に意識障害の原因検索を行います。原因検索においては、「Do DON’T」を用います。「DON’T」は次の4つの要素を表す用語です。4つの測定結果から、必要な対処や治療を見極めましょう。

  • D(Dextrose):ブドウ糖
  • O(Oxygen):酸素
  • N(Naloxon):ナロキソン
  • T(Thiamin):ビタミン B1

上記4点のうち、血糖値と酸素飽和度は簡易測定器ですぐに測れるため、最初に測定するとよいでしょう。

また、DON’Tで測れる要素のうち、ブドウ糖や酸素、ビタミンB1が欠乏していると、低血糖脳症や低酸素脳症、ウェルニッケ症候群が起きている可能性があります。遷延すると重大な後遺症を残す恐れがあり、疑いがあればすぐさま治療を行うことが大切です。

麻薬使用者の意識障害には、ナロキソンを投与する場合があります。ナロキソンは、状況を判断してから必要があれば投与しましょう。
(出典:中外医学社「意識障害〜たかが“AIUEOTIPS”,されど“AIUEOTIPS”〜」

AIUEO TIPSで鑑別する

「AIUEO TIPS」は意識障害の原因によく使われる語呂合わせで、意識障害の鑑別の基本として暗記が必須の知識です。意識障害は多くの原因の中から鑑別する必要があります。素早く鑑別できるよう、AIUEO TIPSを覚えておきましょう。

下表にAIUEO TIPSをまとめているため、参考にしてください。

A Alcohol アルコール、せん妄
I Insulin インスリン、低血糖
U Uremia 尿毒症
E Encephalopathy/Endocrine/Electrolytes 脳症/内分泌疾患/電解質異常
O Oxygen/Opiate 低酸素血症、高二酸化炭素血症/薬物中毒
T Trauma/Temperature 頭部外傷/低体温、高体温
I Infection 感染症、敗血症、脳炎
P Psychiatric/Porphyria 精神疾患/ポルフィリン症
S Stroke/Seizure/Shock 脳血管障害/けいれん/ショック

AIUEO TIPSの鑑別範囲は広範囲にわたります。広範囲から疾患を鑑別する場合、患者さんの病歴や身体所見から疑わしい疾患に目星をつけ、さらに原因を深く探っていきます。

ただし、AIUEO TIPSの扱いには注意が必要です。AIUEO TIPSをすべて網羅しようとすると、患者さんの病状には不要な検査を求められるケースもあります。AIUEO TIPSはあくまで鑑別疾患の覚え方として考え、AIUEO TIPSをもとに検索することを意識づけましょう。

また、AIUEO TIPSを覚えるにあたっては、各疾患の緊急性も頭に入れておきましょう。AIUEO TIPSの中でも、緊急性が高い疾患の優先順位を上げて検索すると、適切かつ迅速な処置につながります。
(出典:J-STAGE「臨床推論の症例検討会」

意識障害の原因として考えられる疾患

意識障害の原因として考えられる疾患

意識障害の原因として考えられる疾患は多岐にわたるものの、2種類に大別できます。ここでは、意識障害の原因となりうる疾患の分類について解説します。意識障害の原因がどちらであるかを素早く判断できると、より迅速な鑑別・検索につながるでしょう。
(出典:J-STAGE「意識障害」

頭蓋内疾患

頭蓋内疾患は一次性脳障害とも呼ばれ、脳幹や大脳など、脳の重要な部分に病変があります。突然発症するのも頭蓋内疾患の特徴です。頭蓋内疾患でも重度と分類される疾患には、脳卒中・ショック・頭部外傷などが挙げられます。

頭蓋内疾患が起きている場合、神経学的な局所兆候が現れるのが一般的です。特に瞳孔に症状が現れるため、患者さんの瞳孔の大きさや対光反射を行った際の左右差を確認しましょう。

また、頭蓋内疾患では片麻痺が起きることが多く、麻痺の対側に瞳孔散大や対光反射消失などが認められます。

全身性疾患

全身性疾患は二次性脳障害とも言われている疾患です。全身性疾患には、代謝性疾患・中毒性疾患・呼吸障害などがあります。全身性疾患が起きると、脳に病変が起きているわけでなくとも、脳に取り返しのつかないダメージが残ることもあります。低酸素血症や低血糖、体温異常によって意識障害が起きている場合は特に緊急度が高く、迅速な処置が必要です。

また、全身性疾患は、突然発症する頭蓋内疾患と比べて、症状が徐々に現れる傾向があります。頭蓋内疾患に比べて瞳孔の異常や片麻痺などが起きるケースはあまり見られません。このように、頭蓋内疾患とは症状の出方が大きく異なるため、症状を総合的に見て判断しましょう。

まとめ

ジャパンコーマスケール(JCS)とグラスゴーコーマスケール(GCS)は、意識障害の程度を評価するための重要なツールです。JCSは日本で広く使用されており、覚醒状態を簡易的に評価できるため、迅速な判断が求められる現場で役立ちます。GCSは国際的に認知され、より詳細な評価が可能ですが、評価に時間がかかる点が課題です。両者の特徴を理解し、状況に応じて使い分けることが重要です。

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※当記事は2024年7月時点の情報をもとに作成しています

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