NIHSSは、世界的に医療現場で広く使用されている脳卒中の神経学的重症度を評価するスケールです。しかし、医療に従事している方の中には、NIHSSが何なのか、またどう使用して評価するのか分からない方もいるのではないでしょうか。
当記事では、NIHSSの詳しい意味や使用方法、項目ごとの評価方法について解説します。脳卒中患者の評価とケアに関する専門知識を深めたいという方は、ぜひお役立てください。
看護のNIHSSとは?
NIHSS(National Institutes of Health Stroke Scale)とは、脳卒中や脳出血、くも膜下出血などの脳卒中の神経学的重症度を評価する代表的なスケールの1つです。国際的に標準化されたスケールとして、医療現場で広く使われています。
脳卒中は、生命の危機や後遺症の発現につながるケースが多く、予後を良好にするためにも早期治療が欠かせません。NIHSSは、脳卒中における重症度の迅速かつ的確な把握に向けて、重要な役割を果たしています。また、脳卒中発症後の経過観察の目的で、NIHSSが使われる場合があります。
NIHSSの使用方法

NIHSSは、11項目の評価項目が書かれた世界共通の判定表を使うのが特徴です。意識水準・意識障害や視野などをはじめとする11項目を評価し、0点から42点までの範囲で点数化します。スコアが大きいほど重症度が高い状態を表すため、注意が必要です。
評価は、判定表に記載された順番通りに行う必要があります。一度評価した内容は、たとえ患者さんが言い直したとしても修正できません。また、特に指示がないかぎり患者さんを誘導してはなりません。判定表に記載する評価には、必ず最初の答えを選択しましょう。
ただし、NIHSSは評価項目の数や配点の影響により、同じ点数でも実際の重症度が異なる場合があります。実際の重症度評価では、NIHSSの点数だけではなく、患者さんの全身状態も的確に把握しながら総合的に判断することが大切です。
NIHSSの項目ごとの評価方法

NIHSSでは項目・評価方法などを理解したうえで、病院までの搬送時や初診時に速やかに評価し、緊急性の有無を判断できるようになることが重要です。11項目ごとの評価方法を具体的に解説しますので、患者さんのケアと回復に貢献するための参考にしてください。
意識水準・意識障害(質問・従命)
意識水準の項目では、患者さんを観察し、覚醒しているかどうかを確認しましょう。目を閉じている、またはぼんやりしていて、応答させるために声掛けや肩たたきなどの刺激が必要な場合は1点を加算します。応答させるために刺激が繰り返し必要な場合の評価は、2点です。反射的な反応や自律神経系の作用による反応のみのケースでは、3点と判断します。
意識障害(質問)では、今月の月名と患者さんの年齢を尋ねます。両方正解なら0点、片方正解で1点、両方不正解の場合は2点です。また、意識障害(従命)では、目の開閉と手を握る・開くの2つの動作を命じます。両動作をクリアできたら0点、片方正解で1点、両方不正解なら2点です。
最良の注視
最良の注視では、検査人の人差し指やペンライトの光などを追視させて、患者さんの眼球が左右水平に動くかを評価します。患者さんの頭が動く場合は、額を軽く押さえましょう。
眼球が正中を超えて左右に動けば正常ですが、部分的な注視麻痺が見られたら1点と評価します。患者さんの頭を横に向けた後、素早く反対側に向けても眼球がまったく動かない場合や完全注視麻痺がある場合は、2点の計上が必要です。
視野
視野の項目については、対座法を用いて右上・右下・左上・左下の1/4視野を検査します。片眼ずつ評価するため、患者さん自身や補助者に片側の目を覆ってもらうなどの準備が必要です。
検査人が示す指の数を数えてもらう、指が動いたら動いた側を知らせてもらう、といった方法によって視野を確認します。部分的半盲や消去現象が見られたら1点、完全半盲では2点、両側性半盲の場合は3点が加算されます。また、昏睡などで評価ができないケースでも、3点の計上が必要です。
顔面麻痺
顔面麻痺の検査では、患者さんに以下3つの動作を指示します。
- 「イー」と言って、歯を見せて笑ってもらう
- 目を大きく見開いてもらう
- 目をぎゅっと閉じてもらう
顔面下半分に軽度の麻痺が見られたら1点、顔面下半分に完全な麻痺がある場合は2点です。顔面上半分と下半分に麻痺が見られたら通常完全麻痺と見なされ、3点と評価されます。意識障害がある患者さんには、痛み刺激による反応を見て評価しましょう。顔面外傷、気管内挿管、包帯などは、なるべくこれらを取り去って評価をします。
上肢の運動
上肢の運動の検査では片腕ずつ運動麻痺の検査を実施します。肘を伸ばした状態で掌を下に向け、座位の場合は90度、仰臥位の場合は45度の位置で腕を10秒間保持できるかを確認します。このとき、検査者は声に出して10秒数えましょう。
検査者が手を離すと患者さんの手がベッドに落ちて動きが見られない場合は、重症度が最も高く、4点と評価されます。患者さんの手がベッドに落ちても動きが見られるケースでは、3点です。
下肢の運動
上肢の運動と同様に、片脚ずつ運動麻痺を検査します。仰臥位で下肢を30度挙上した状態で5秒間保持するように指示します。検査者は、声に出して5秒を数えましょう。
5秒以内に脚が下垂するがベッドまでは落ちない場合は1点、5秒以内にベッドまで落ちるが重力に抗した動きがある場合は2点と評価されます。検査者が手を離すと患者さんの下肢がベッドに落ちるケースの評価は、上肢の運動と同様です。
また、上肢の運動・下肢の運動では、除脳硬直などの反射による動きが見られると4点を加算します。
運動失調
四肢の運動失調をチェックします。鼻・指・鼻試験では、検査者は患者さんが肘を伸ばすと指先がちょうど届く位置に指を構えておきましょう。患者さんに、自分の鼻・検査者の指・自分の鼻と順に指で触れてもらい、両上肢の運動機能を確認します。
踵・脛試験は、片方の踵で反対側の膝を触り、踵で脛をなぞるように足首まで移動させて両下肢の動きを観察する検査です。四肢のうち一肢に失調がある場合は1点、二肢以上に失調がある場合は2点と評価します。認知症で指示を理解できない・麻痺・昏睡などの場合は、失調なしの0点とするため、注意が必要です。切断や関節癒合の場合は9点とし、合計に用いません。
感覚
爪楊枝を使った針刺激に対する反応を観察し、感覚の有無や左右差などを評価します。意識障害や失語症が認められる場合は、痛み刺激からの逃避反応で判断しましょう。刺激を与える場所は、顔面・上肢・下肢・体幹で、手首や足首への刺激は避けましょう。
強い刺激であれば左右両方分かる場合は1点、片側または両側について触れられた感覚が分からない場合は2点を加算します。昏睡状態の患者さんは、2点と判断します。
最良の言語
感覚までの検査で失語症が疑われる場合は、専用のカードを用いて検査を実施しましょう。意識水準から感覚までの検査で言語に関する十分な情報があり、正常と判断できる場合は、カードを用いた検査が省略可能です。
カードを使った検査の結果、軽度から中程度の失語症がある場合は1点、重度の失語症と判断できる場合は2点、全失語の場合は3点と評価します。
視覚障害がある方には、手の中に置かれた物品の同定、復唱、発語を命じます。気管内挿管の場合は書字で評価します。昏睡状態の患者さんには3点を与えます。患者さんが完全に無言か、1段階命令に全く応じない場合は3点となります。
構音障害
言語検査までの段階で構音障害が疑われる場合、専用の単語カードを用いて検査を行いましょう。言語検査と同様に、正常と判断できる多くの情報があれば、カードを用いた検査を省略しても問題ありません。
構音障害が軽度から中等度の場合は1点、重度の場合は2点と判断します。気管内挿管などの身体的な問題で発声できない患者さんは、点数に加算しません。全失語や昏睡の患者さんは、2点と評価します。
消去現象と注意障害
視覚・触覚・聴覚などの感覚様式や視空間または自己身体に対して不注意がある、同時刺激による消去現象がある場合は1点と判断されます。失語があっても両側に注意を向ける仕草がある場合は正常とします。
重度の半側不注意や2つ以上の感覚様式に対する消去現象があるケースでは2点を加算しましょう。さらに、自分の手が認識できない、空間の一部分にしか注意を向けられない場合も2点と評価されます。昏睡状態の患者さんも2点と見なすため、注意が必要です。
まとめ
NIHSS(National Institutes of Health Stroke Scale)は、脳卒中や脳出血、くも膜下出血などの神経学的重症度を評価するための標準化されたスケールです。医療現場で広く使用され、脳卒中の早期治療や経過観察に役立ちます。
NIHSSは、意識水準や視野など11項目を評価し、0点から42点で点数化します。評価は判定表の順に行い、一度評価した内容は修正できません。スコアが高いほど重症度が高いことを示しますが、点数だけでなく全身状態も考慮することが重要です。
このスケールを用いて迅速に重症度を把握し、適切な治療を提供することが患者さんの予後を左右するため、医療従事者は正確な評価方法を理解することが求められます。
※当記事は2024年7月時点の情報をもとに作成しています
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