病態・病態生理とは? 代表的な疾患の病態についても解説
  • 2024年8月25日
  • 2024年8月22日

病態・病態生理とは? 代表的な疾患の病態についても解説

 

医療では病気の原因や症状、また細胞や組織、器官など体内で起きている変化を理解し、患者さんの体内の状況を把握したうえで治療を行う必要があります。しかしながら、医学や医療現場において「病態」「病態生理」「疾病」となんとなく似た言葉が登場し、具体的にどのように異なるのか分からないという方もいるのではないでしょうか。

当記事では、病態、病態生理、疾病のそれぞれの意味を解説します。代表的な疾患の病態についても触れるため、ぜひ知識としてお役立てください。

病態・病態生理とは

病態とは、病気が人体の構造や機能に及ぼす変化を指します。患者さんの病態をもとに診断や治療方法が決定するため、迅速に病態を把握することは非常に重要です。

また、病態生理は患者さんの体の中で起こっている変化を把握し、変化の原因は何なのかを明らかにすることです。変化のメカニズムや経過を解明することを、病態生理学といいます。

患者さんの自覚症状や訴え、臨床検査の結果を通して、現れている症状を総合的に把握します。把握した症状から原因となる病気を分析し、今後その疾患がどのように経過して、どのような治療が必要になるかを考えます。

病態と疾病の違い

病態と疾病の違いを明らかにしておきましょう。

疾病は、特定の原因によって引き起こされる身体の機能障害や心身の不調を指します。医学的な用語であり、医師によって診断され医療の対象となる状態です。

一方、病態は疾病によって引き起こされる身体の変化や異常を意味します。そのため、疾病を正しく理解するには、病態の知識も必要です。

さまざまな疾患の病態

さまざまな疾患の病態

看護を行う際は、それぞれの疾患における病態を理解しておくことが重要です。

患者さんの体内でどのようなことが起こり症状が出ているのか、今後どのような症状が出る可能性があるのかを理解することで、より適切なケアを提供できます。

ここからは疾患群別に分けて、なかでも代表的な疾患の病態を解説します。

心疾患

心疾患とは、心臓に起こる疾患の総称です。なんらかの理由で心臓の動きに異常が発生し、全身に十分な血液を送れなくなります。
(出典:SMART LIFE PROJECT「病気について知る 心疾患」

代表的な疾患は、以下の3つです。

虚血性心疾患

心筋に十分な酸素や栄養が届かなくなる疾患です。

動脈硬化が原因で冠動脈が狭まることや、冠動脈のけいれんによって血流が悪くなることで起こります。

冠動脈の血流が悪くなり心筋が血液不足になる「狭心症」と、血管の詰まりなどで血液の流れが途絶え、心臓の組織が壊死する「心筋梗塞」があります。
(出典:SMART LIFE PROJECT「病気について知る 心疾患」

不整脈

脈の打ち方や回数が不規則になる状態です。

不整脈には、脈のリズムが不規則になる「期外収縮」や脈のリズムが速くなる「頻脈」、脈のリズムが遅くなる「徐脈」などの種類があります。
(出典:国立研究開発法人 国立循環器病研究センター「不整脈」

心不全

心不全は、心臓のポンプ機能が低下して、全身に血液を送り出せなくなる状態です。心筋梗塞や弁膜症、心筋症などの病気のほか、高血圧などの心臓に負担がかかる状態が原因となって発症します。

息切れや動機、むくみなどの症状が出て、疲れやすくなります。
(出典:公益財団法人 日本心臓財団「心不全とはなにか」

心疾患は日本人の死因の第2位であり、令和5年度には、23万人以上の方が亡くなっています。
(出典:厚生労働省「令和5年(2023)人口動態統計月報年計(概数)の概況」

免疫疾患

免疫疾患は、身体にとって有害な物質を認識して排除する免疫機能に異常が生じ、正常な細胞に対して攻撃をする状態です。
(出典:厚生労働料学研究費補助金(難治性疾患政策研究事業)自己免疫疾患に関する調査研究班「当調査研究班について」

代表的な3つの免疫疾患を解説します。

バセドウ病

甲状腺機能亢進症の主な原因として挙げられる疾患です。自己抗体によって甲状腺が刺激され、甲状腺ホルモンが過剰に分泌されます。

甲状腺が腫大し、動悸や手の震え、体重の減少のほか、下痢や筋力低下、精神的なイライラなどの症状が起こります。
(出典:一般社団法人 日本内分泌学会「バセドウ病」

1型糖尿病

膵臓のβ細胞が破壊され、血糖値を下げるホルモンのインスリンが分泌できなくなる疾患です。インスリンが出なくなることで糖質などの代謝が悪くなり、慢性的な高血糖状態から糖尿病を発症します。

強いのどの渇き、尿量の増加、体重減少などの症状が出ます。
(出典:一般社団法人 日本内分泌学会「1型糖尿病」

全身性エリテマトーデス

関節や神経系、血液、皮膚などのさまざまな組織や臓器が免疫系により攻撃され、慢性的な炎症が起こります。

ほぼすべての患者さん(98-99%)が、血液中に抗核抗体を保持していることが特徴です。
(出典:難病情報センター「全身性エリテマトーデス(SLE)(指定難病49)」

血液疾患

血液疾患とは、血液中に含まれる細胞の量や機能に異常が生じる疾患や、血球または血漿に含まれるたんぱく質が影響を受ける疾患を指します。
(出典:MSDマニュアル「血液の病気の概要」

代表的な血液疾患である、以下の3つを解説します。

白血病

白血病は、白血球系細胞が無限に増殖する血液のがんです。がん化した血液細胞の種類によって骨髄性とリンパ性に分類されます。また、白血病細胞の増殖速度によって、急性と慢性に分かれており、それぞれの疾患は全く別の病気です。

症状としては貧血によるめまいや発熱、息切れ、頭痛のほか、白血球減少による肺炎・敗血症、血小板減少による鼻血や皮下出血などの出血症状などがみられます。
(出典:日本赤十字社医療センター「白血病とは」

悪性リンパ腫

白血球の中のリンパ球ががん化する病気です。リンパ球が異常に増殖するため、多くの場合、首やわきの下、足の付け根などにあるリンパ節に腫れやしこりがあらわれます。

リンパ球は血液やリンパ液によって全身に流れることから、さまざまな臓器に発生する可能性があります。
(出典:国立研究開発法人 国立がん研究センター「リンパ腫の病気について」

骨髄異形成症候群

骨髄にある造血幹細胞に異常が起こり、正常な血球が作れなくなる疾患です。造血幹細胞が成熟した血球に成長できず、赤血球や白血球、血小板が減少します。血液細胞が未熟な状態で血液中に存在することも特徴です。

また、減少する血球の種類によって症状は異なります。赤血球が減少すると貧血や動悸息切れ、白血球が減少すると感染症を発症しやすくなり、血小板が減少すると内出血や鼻血が出やすくなります。
(出典:慶應義塾大学医学部 血液内科「骨髄異形成症候群」

消化器疾患

消化器疾患とは、消化管や肝臓、胆のう、膵臓などに起こる疾患の総称です。非常に多くの疾患があり、そのなかでも以下の3種類について解説します。
(出典:医療法人六輪会 六輪病院「消化器科で診る主な病気」

食道がん、胃がん、大腸がんなどの悪性腫瘍

食道や胃、大腸などの消化器に起こるがんは、喫煙や飲酒などを含め、生活習慣や感染によって発症するといわれています。一般的に早期は症状が出にくく、進行してから症状に気づくケースが多い傾向です。
(出典:がん情報サービス「がんという病気について」

2022年の調査では、がんの罹患率で高いのは肺がん、大腸がん、胃がんとなっています。
(出典:がん情報サービス「最新がん統計」

肝硬変

肝硬変は、慢性肝炎によって肝臓が線維化し、硬くなった状態です。肝硬変の症状は多彩であり、むくみや腹水、黄疸、脳症、食道静脈瘤からの出血など、さまざまな症状がみられます。
(出典:国立研究開発法人 国立国際医療研究センター 肝炎情報センター「肝硬変」

虚血性大腸炎

何らかの原因で大腸の血流が悪くなり、粘膜に炎症や潰瘍ができる疾患です。急な強い腹痛や吐き気、血性の下痢などの症状が出ます。

動脈硬化や血栓などがある方に発症しやすいため、高齢者に多い疾患ですが、若年者にも起こる病気です。
(出典:大阪胃腸内科・内視鏡クリニック「虚血性大腸炎とは」
(出典:兵庫医科大学病院 もっとよく知る! 病気ガイド「虚血性大腸炎」

呼吸器疾患

呼吸器疾患は、鼻やのど、気管、肺にかけての呼吸に関わる器官に起こる疾患を指します。代表的な呼吸器疾患は、以下の3つです。
(出典:医療法人社団 雄昂会 やたがいクリニック「呼吸器疾患」

慢性閉塞性肺疾患(COPD)

長期にわたって、たばこの煙などの有害物質を吸い込むことで気管支に炎症が起き、気道の腫れや分泌物の増加によって肺に取り込む空気の流れが悪くなる病気です。

特徴的な症状は、身体を動かしたときの息切れやせき、たんなどです。
(出典:一般社団法人 日本呼吸器学会「慢性閉塞性肺疾患(COPD)」

肺結核

結核菌に感染することで起こり、咳などで人から人に感染します。主な症状は咳や血の混じったたん、発熱、倦怠感などが挙げられます。
(出典:一般社団法人 日本呼吸器学会「A. 感染性呼吸器疾患」

気管支喘息

細い気管支が慢性的に炎症を起こしており、少しの刺激で気道が狭まる疾患です。刺激を受けると発作的に空気を取り込む気道が狭まるため、息苦しくなります。

原因はハウスダストやペットのフケ、カビなどのアレルギーや喫煙、ストレスなどが挙げられます。
(出典:一般社団法人 日本呼吸器学会「気管支ぜんそく」

呼吸器疾患は喫煙が主な原因となるケースが多く、これまでの喫煙年数に比例して発症リスクが高まる傾向にあります。

腎・泌尿器疾患

腎・泌尿器疾患とは、腎臓や尿管、膀胱、尿道などに起こる疾病です。腎・泌尿器疾患の中から、以下の3つの疾患を解説します。

腎不全

腎臓の機能障害が進行して機能を維持できなくなることで、体内の生理的なバランスが保てなくなる疾病です。

不全になると正常に尿を排出できずに老廃物が蓄積し、吐き気やめまい、倦怠感のほか、血圧の上昇、肺水腫などのさまざまな症状が起こります。
(出典:長崎大学大学院医歯薬学総合研究科泌尿器科学 長崎大学病院泌尿器科・腎移植外科「腎臓の働きと腎不全」

腎がん、膀胱がん、前立腺がんなどの悪性腫瘍

腎がん、膀胱がん、前立腺がんは、泌尿器領域の3大がんと呼ばれています。

腎がんは、腎臓の尿細管にできるがんであり、初期は無症状です。腫瘍が大きくなると血尿や腹部のしこり、痛みなどの症状がでます。

膀胱がんは、男性や60歳以上の高齢者に多く、血尿によって気づくケースが多い傾向です。

また、前立腺がんはほとんど初期症状がなく、進行すると排尿困難や頻尿、排尿痛などが起こるケースもあります。
(出典:長崎大学大学院医歯薬学総合研究科泌尿器科学 長崎大学病院泌尿器科・腎移植外科「腎泌尿器がん」

尿路結石症

尿路結石症とは、尿に含まれる物質が結晶化し尿路に存在している病気です。

尿と一緒に排出される過程で結石が尿の通過をさえぎる状態や詰まる状態になると、強い痛みが起こります。
(出典:長崎大学大学院医歯薬学総合研究科泌尿器科学 長崎大学病院泌尿器科・腎移植外科「尿路結石症」

まとめ

病態とは病気が人体の構造や機能に及ぼす変化を指し、患者さんの診断や治療方法を決定するのに重要な要素となります。看護を行う際には、それぞれの疾患における病態を理解し、患者さんの体内で起きている病気の状況を把握して、適切なケアをすることが大切です。

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※当記事は2024年6月時点の情報をもとに作成しています

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