• 2024年7月6日
  • 2024年7月1日

血尿スケールとは? 血尿のメカニズムや原因となる疾患例も解説

 

血尿スケールは、尿路系の疾患の重症度を推定する指標の1つとして用いられます。

たとえば、あきらかに透明度のない赤・黒っぽい血尿では、血の部分が固まり、膀胱で詰まるケースがあるので、できる限り早めに医療機関を受診し、適切な治療を受けることが推奨されます。ただし血尿スケールはあくまでも目安であり、正しい診断には医師による診察や検査が必要です。

当記事では、血尿スケールとは何か、および血尿のメカニズムと原因になりうる代表的な疾患なども含めて、詳しく解説します。

血尿とは

血尿とは、尿に血液が混ざっている状態を指します。血尿には、大きく分けて肉眼的血尿と顕微鏡的血尿の2つのタイプがあります。

肉眼的血尿も顕微鏡的血尿も、尿検査で赤血球、白血球、タンパク、糖などを確認し、超音波検査で腎臓や膀胱、前立腺などを詳しく調べます。さらに必要に応じてCT検査や膀胱鏡検査などの画像診断を行い、原因を特定します。

肉眼的血尿

肉眼的血尿は、尿に血液が混じっているのが肉眼で確認できる状態です。尿の色が薄いピンクから濃い赤、時には黒っぽく見える場合もあります。

腎臓・尿路系のいずれかの部分(腎臓、尿管、膀胱、尿道など)で出血があることを示しています。出血の原因としては、尿路感染症、膀胱炎、膀胱がん、腎炎、尿路結石、外傷などが考えられます。

痛みが伴わない場合でも、膀胱がんのような深刻な疾患の兆候を示すことがあるので、尿の色に異常が見られた場合は、その原因を特定するために泌尿器科を受診することが強く推奨されます。

顕微鏡的血尿

顕微鏡的血尿は、尿に血液が混じっている状態ですが、肉眼では色の変化が確認できず、顕微鏡を用いた尿検査で初めて赤血球が確認されるタイプの血尿です。健康診断や人間ドックの際に行われる尿検査で見つかることが一般的です。

顕微鏡的血尿は多くの場合軽度であり、良性のことが多いです。しかし、尿路結石、腎炎、尿路感染症、尿路系の悪性腫瘍など、さまざまな原因で顕微鏡的血尿が生じることもあります。症状が顕著でない場合でも進行することがあり、放置すると健康に重大な影響を及ぼすリスクがあるため、原因を特定し、必要に応じて適切な治療を行うことが重要です。

血尿スケールは肉眼的血尿の段階を判定する基準

血尿スケールは肉眼的血尿の段階を判定する基準

血尿スケールは、肉眼的血尿の程度を色によって分類し評価するための視覚的な基準です。医療現場で患者さんの尿の色を確認し、血尿の重症度を判定する際に使用されます。

血尿スケールでは、尿の色がピンクから赤、さらには黒に近い色までの変化を5~6つ程度に段階分けして評価するのが一般的です。各段階は、血尿の濃度が異なることを反映しており、濃い色ほどより重度の血尿を示しています。

尿の色の変化が医療現場で簡便に評価できるため、無症候性血尿や慢性的な疾患の患者管理において役立っています。

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血尿の色と疾患の部位には関係がある

血尿の色は、出血の部位によって異なると考えられています。

たとえば、腎臓からの出血は尿の生成段階で血液が混じるため、尿が赤茶色や黒っぽい色を呈することがあります。これは血液が尿路を通過する間に酸化し、色が変化するためです。一方で、尿道や膀胱からの出血では、ピンクや鮮明な赤色の尿が見られることが一般的です。出血部位が尿の排出口に近いため、血液が酸化する前に体外に排出されるためです。また、肝臓の問題や脱水などの影響でオレンジ色の尿が出ることもあります。

しかし、血尿の色だけで疾患の部位や原因を完全に判断することは難しく、誤った診断を招く可能性も当然あります。たとえば、同じ膀胱からの出血でも、出血量や患者さんの水分摂取状態によって尿の色は異なることがあります。したがって、血尿を観察した際には、その色と一致する可能性のある疾患を考慮しつつ、しっかりとアセスメントを行うことが重要です。

血尿のメカニズムと原因になりうる代表的な疾患

血尿のメカニズムと原因になりうる代表的な疾患

血尿が発生する際には、膀胱・前立腺・腎臓・尿管・尿道などに異常があるとされています。以下では、血尿が発生する際に疑われる代表的な疾患を解説します。

なお、あくまでも疾患は一例であるため、詳しくは医師の診断に従ってください。

尿路感染症

尿路感染症は尿路系のどこかで細菌が感染し、炎症を引き起こす疾患です。尿路感染症の多くは上行性感染によるものとされ、上行性感染は外尿道口から侵入した細菌が尿路を逆行性に感染して、炎症を起こします。
(出典:日本緩和医療学会「尿路感染症」

尿路感染症は上部尿路感染症と下部尿路感染症に分けられ、上部尿路感染症の代表例は腎盂腎炎、下部尿路感染症の代表例は膀胱炎や尿道炎です。特に女性は尿道が短く直線的であるため、細菌が侵入しやすく、尿路感染症になりやすいとされています。放置すると再発を繰り返し、治りにくくなることもあります。

急性尿路感染症の典型的な症状として、急性膀胱炎の場合は頻尿や尿意切迫感、排尿終末時痛などが観察されます。

尿路結石

尿路結石症は、腎臓から尿道に至る尿路のどこかに結石が形成される疾患です。中年期の男性に多く見られますが、女性の患者数も増加していると言われています。尿路結石の大部分は上部尿路、特に腎臓や尿管に形成されます。

結石が尿の流れを阻害することにより、疝痛発作が起こるケースが多くあります。治療方法としては、水分摂取の増加や食生活の調整が推奨される一方で、結石が自然に排出されない場合には破砕術や内視鏡手術を行うのが一般的です。尿酸結石やシスチン結石など、明らかな原因疾患がある場合には、それらの治療や尿のアルカリ化などが有用です。

糸球体疾患

糸球体疾患は、腎臓の微細な血管構造である糸球体が損傷を受けることにより生じる一群の腎症です。糸球体は、血液から老廃物や余分な水分をろ過して尿を作る役割を担っています。主に原発性と続発性の2つに大別され、原発性は腎臓自体の問題から生じ、続発性はほかの全身疾患が原因で発生します。

糸球体腎炎は、急性糸球体腎炎・急速進行性腎炎・微小変化型ネフローゼ症候群・巣状分節性糸球体硬化症・膜性腎症・膜性増殖性糸球体腎炎・IgA腎症などに分類されます。
(出典:一般社団法人 日本腎臓学会「5.糸球体腎炎-一般のみなさまへ-」

糸球体疾患の症状としては、尿検査で尿タンパクと尿潜血が陽性となるほか、むくみ、倦怠感、食欲不振、高血圧などが挙げられます。

膀胱がん

膀胱がんは、膀胱の内側を覆っている尿路上皮から発生するがんで、主に膀胱の内部に腫瘍を形成します。膀胱がんは多くが尿路上皮がんとして知られ、侵入深度に応じて筋層非浸潤性膀胱がんと、筋層浸潤性膀胱がんに分類されます。膀胱がんの一般的な初期症状は血尿であり、進行すると排尿痛や頻尿、残尿感などを伴うこともあります。がんが進行すると、尿が出にくくなったり、わき腹や腰、背中が痛んだり、足がむくんだりすることもあります。

血尿は膀胱がんの非常に典型的な兆候で、痛みを伴わないことが多いため、ほかの症状がない間にがんが進行することがあります。そのため、特に50歳以上の方で血尿が確認された場合は、速やかに泌尿器科での診察を受けることが推奨されます。

診断には尿検査、超音波検査、CT検査、膀胱鏡検査などが用いられます。
(出典:国立がん研究センター がん情報サービス「膀胱がんについて」

血尿が出た患者さんに対する問診の内容

血尿が出た患者さんに対する問診の内容

問診の目的は、血尿の性質、持続時間、頻度、関連症状を詳細に把握し、適切な診断と治療の方向性を定めることです。

問診の内容例
  • 無症候性か、それとも症候性か
  • 血尿がいつ始まったのか、その色や頻度、血塊の有無など
  • 過去に同様の症状があったかどうか
  • 尿が下着に付着しているかどうか
  • 外傷はないか
  • 薬剤の使用(特に抗凝固剤や抗がん剤の使用など)
  • 放射線治療や泌尿器関連の手術歴
  • 腰痛、側腹部痛、下腹部痛、排尿時の痛み、頻尿、発熱、浮腫などがあるかどうか(随伴症状の確認)
(出典:京都泌尿器科医会「肉眼的血尿」

上記の問診内容例はあくまで一例であり、患者さんの症状や病歴に合わせて適宜追加・変更する必要があります。

まとめ

血尿スケールは、肉眼的血尿の程度を複数段階に分けて判定する基準です。肉眼的血尿とは、尿の色が肉眼で赤く見える血尿を指します。一方、顕微鏡的血尿は、尿検査で顕微鏡を用いて初めて赤血球が確認される血尿のことです。

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※当記事は2024年5月時点の情報をもとに作成しています

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