医療機関への就職・転職を考えている方のなかには、「貴院」と「御院」の違いや使い分け方が分からないという方もいるのではないでしょうか。
履歴書やメールなどの文語でのやり取りはもちろん、面接をはじめとした対面による口語でのやり取りでは、貴院と御院を適切に使い分けることが大切です。
当記事では、貴院とは何かという点や正しい読み方・使い方にくわえて、御院との使い分け方などを解説します。また、自分が働いている医療機関の正しい読み方も確認しましょう。
※当記事は、文化庁の「敬語の指針」を参考に作成しております。
(参考:文化庁「敬語の指針」)
貴院とは? 正しい読み方と使い方
「貴院」とは、相手の病院を丁寧な表現で呼ぶ言葉です。読み方は「きいん」で、書き言葉として使われます。
貴院の「貴」は、尊敬や尊重に値するという意味の漢字です。相手方を指す言葉の前に「貴」を付けることで、相手への敬意を表せます。
一般企業で相手の会社を指す際に「貴社」という言葉を使うように、相手の病院を指す場合には「貴院」と表現するのが適切です。たとえば、履歴書の志望動機では「〇〇の仕事に従事したく貴院を志望いたしました」のような使い方をします。
病院以外の医療施設の敬称は?
「貴院」という敬称は、すべての医療施設に対して使えるものではありません。以下のように、医療施設の種類によって敬称を使い分けるのが適切です。
医療施設 | 敬称 |
---|---|
クリニック | 貴クリニック、貴施設 |
診療所 | 貴診療所、貴施設 |
介護施設 | 貴施設 |
医療法人、社会福祉法人 | 貴法人 |
訪問看護ステーション | 貴ステーション、貴事業所 |
ただし、「貴クリニック」や「貴診療所」「貴ステーション」といった表現は一般的にあまり浸透しておらず、相手によっては違和感を持たれる可能性もあります。心配な場合は、クリニックや診療所は医療施設という意味で「貴施設」、訪問看護ステーションは「貴事業所」と表現するとよいでしょう。
また、医療・介護施設の運営母体が株式会社の場合、敬称は「貴社」でも問題ありません。医療施設に対して敬称を使う際には、事前に相手がどのような種類の団体なのかを確認しておくことが大切です。
「貴」を付ける場合は「様」を付けない
相手への敬意を表す代表的な言葉に「様」がありますが、「貴院様」は適切な表現ではありません。「貴」という言葉は「様」と同じ役割を持っており、「貴院」はすでに敬語表現になっています。そのため、「貴院様」は二重敬語に近い言い回しになり、かえって失礼な表現になるため注意が必要です。
どうしても「様」を付けないと違和感を覚えるという方は、貴院ではなく「〇〇病院様」という表現を使うとよいでしょう。施設である病院に個人への敬称である「様」を付けるのは本来間違った敬語表現ですが、現在では一般的に使われており、不適切とはいえない表現になっています。
貴院と御院の違いや使い分け方は?

「貴院」と近い言葉に「御院」があります。いずれも相手の病院に対して使用する敬称ですが、明確な違いがあり、使い方が異なるため注意が必要です。
相手の病院を「文章で指すか、口頭で指すか」によって、「貴院」「御院」のどちらを使うべきかが変わります。「貴院」と「御院」の使い分け方について解説するので、敬称について迷った際の参考にしてください。
書き言葉:「貴院」
「貴院」は書き言葉であり、文章を書く際に使用します。たとえば、メールや手紙、履歴書などで相手の病院を指す場合には「貴院」を用いるのが正解です。
なお、相手の会社を指す敬称として一般的に使われている「貴社」も、書き言葉として用いられる表現となっています。「貴社」という言葉は、口頭で伝えると「記者」や「汽車」、「帰社」など同じ発音でさまざまな候補があり、相手にスムーズに伝わりにくいのが難点です。そのため、相手にとって分かりやすいよう、口語では「御社」という表現が使われるようになり、「貴社」は文語として用いられるようになったといわれています。
「貴院」が書き言葉として定着したのも、「貴社」が書き言葉として使われるようになった影響です。そして、「御社」と同じく話し言葉の敬称として「御院」が用いられるようになりました。
話し言葉:「御院」
「御院」は、口頭で相手の病院を指す際に用いる敬称です。読み方は「おんいん」となります。たとえば、面接官やほかの病院の方との会話では、敬称として「貴院」ではなく「御院」を使うのが適切です。「御院」を文章で用いるのは、一般的にマナー違反とされているため注意しましょう。
なお、口頭で「御院」が使いにくい場合は、「こちらの病院」のように頭に「こちらの」を付けることで敬意を表現できます。
宛名に敬称を付ける場合は注意

手紙やメールを送る際、宛名に付ける敬称には特に注意が必要です。手紙を書き慣れていない人にありがちな間違いとして「〇〇先生様」や「〇〇院長様」という表現がありますが、これは二重敬語でありマナー違反となります。
「先生」や「院長」という役職名にはすでに敬意が込められているため、同じく敬称である「様」と組み合わせるのは適切ではありません。ただし、個人名に「様」を付けるのは問題ないため、「様」を使いたい場合は役職名を名前の前に記載しましょう。たとえば、「△△病院 院長 〇〇様」という書き方であれば正しい敬語表現となります。
なお、医療業界では手紙を書く際に「御侍史(おんじし・ごじし)」や「御机下(おんきか・ごきか)」という表現がよく使われます。「〇〇先生 御侍史」や「担当医先生 御侍史」のように、宛名書きで用いられる言葉です。いずれも「先生」の後に「御」を付けて使用するため、二重敬語ではないかと指摘されることもあります。しかし医療業界特有のマナーとして浸透している表現方法のため、日本語としての正誤よりも業界マナーを優先させて使用するとよいでしょう。
「貴院」を使った例文

「貴院」を使った代表的な例文をいくつか紹介します。
貴院におかれましては、ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。 |
---|
「〇〇におかれましては」から始まるこの例文は、ビジネスシーンでよく用いられる慣用句です。ビジネス文書ではいきなり本題から入らずに、時候の挨拶と今回のような挨拶の一文を書き出しに添えるのが一般的となっています。時候の挨拶は季節によって変わるため、ビジネス文書を書く際には毎回確認するとよいでしょう。 |
貴院の発展とご多幸をお祈り申し上げます。 |
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ビジネス文書の締めくくりとして使える一文です。「ご多幸」は相手に多くの幸せが訪れることを願う言葉となっています。「貴院のますますのご発展をお祈り申し上げます。」などの一文も同様の使い方が可能です。 |
貴院で医療事務としての経験を活かしたいと考え、志望いたしました。 |
---|
履歴書の志望動機などで応募先の病院を指す際には「貴院」を使用します。履歴書に「貴院」と記入した部分でも、口頭で自己PRをするときや質問に答える際などは「御院」に言い換える必要があるため注意しましょう。 |
自分が働いている病院の呼び方は弊院? 当院?

一般企業の場合、自分が働いている会社のことは「弊社」あるいは「当社」と表現します。「当社」は単に自分の会社を指す際に使用され、「弊社」は主にへりくだって相手を立てる際に用いられる敬語です。
一般企業と同じように、自分が働く病院を指す言葉にも「弊院」と「当院」があります。医療機関では「当院」を用いるのが一般的で、「当院の受付時間は19時までです」のように使用します。
「弊院」は主に手紙や書類などの文書上で、自分の病院を指す際に使用するのが一般的です。ただし、書類上でも「当院」を使用する病院は少なくないため、無理に「弊院」を使用する必要はないといえます。医療関係者のなかには「弊院」をへりくだった表現と認識している方もいるため、働いている病院での使用方法を確認してから使うとよいでしょう。
まとめ
求人応募先の病院を指す場合に使用する敬称として、「貴院(きいん)」と「御院(おんいん)」があります。違いとしては、貴院は書き言葉、御院は話し言葉として使用する点です。履歴書やメールのやり取りでは貴院を、面接では御院を使うことを心がけましょう。
マイナビ看護師では、貴院・御院の使い方も含めて、看護職専門のキャリアアドバイザーが履歴書添削・面接練習といった転職サポートをいたします。これから医療業界への転職を検討している方は、ぜひマイナビ看護師にご相談ください。
※当記事は2024年2月時点の情報をもとに作成しています
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