緩和ケア病棟のスタッフとして働く場合、特別な資格はいりません。しかし、資格を取得して専門知識や技術を身につけておくことで、患者さんと関わる際に役立つことが多々あります。
そこで今回は、緩和ケア病棟で働く際に役立つ資格5つと、それぞれの取得方法をご紹介します。緩和ケア病棟での主な仕事やスタッフに求められるスキルなどについてもご紹介しますので、患者さんや家族に寄り添った仕事をしたい方は、ぜひ当記事をお読みください。
緩和ケアとは|ケアの目的と主な仕事内容
緩和ケアとは、がんをはじめとした生命に係わる病気に直面した患者さんやその家族に対して開始されるケアです。身体の痛みや精神的・経済的・社会的負担などの問題へ適切に対応して苦痛を和らげ、人生の最後を迎えるまで人としての尊厳を守り、生活の質の維持・向上を目指します。
緩和ケアは、患者さんの治療開始と並行して行われ、病気の状態・進行段階に応じて内容も変化します。下記は、緩和ケアチームを構成する主な職種と役割です。
医師 |
|
---|---|
看護師 |
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薬剤師 |
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理学・作業療法士 |
|
臨床心理士 |
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医療ソーシャルワーカー |
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(出典:厚生労働省「緩和ケア」)
(出典:厚生労働省「診断時の緩和ケア」)
(出典:厚生労働省「痛みへの対応について」)
(出典:厚生労働省「今後の緩和ケアのあり方について(案)」)
(出典:順天堂大学医学部附属順天堂医院「緩和ケアって何?」)
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緩和ケアとは|治療内容や看護師が果たす役割・求められる能力も
緩和ケア病棟のスタッフに求められるスキル

緩和ケア病棟で働くスタッフに求められるスキルとして、主に以下の3つが挙げられます。
- コミュニケーションスキル
- 疾患などに関する専門知識
- 洞察力
患者さんやその家族にとって、初めて病気に直面するケースが珍しくありません。医療に関する知識も少なく、伝え聞いた話や曖昧な情報で悲嘆に暮れる方もいるでしょう。
患者さんたちの不安を少しでも和らげ、安心して治療に専念してもらうためには、相手の考えを否定せず尊重し、心の痛みに寄り添う姿勢が大切です。緩和ケア病棟のスタッフは、常に患者さんたちと丁寧にコミュニケーションを図り、心の拠りどころになれるだけの能力が求められます。
さらに、患者さんが感じる身体的苦痛を和らげるためには、患者さんの現状を正確に理解し、医師やスタッフと共有できるだけの専門知識も必要です。現状と今後の対応を患者さんたちへ分かりやすく正確に伝える際にも、専門知識は必要となります。
緩和ケアの対象となる患者さんや家族のなかには、不安やストレスを隠す方も少なくありません。本人が表立って訴えかけられない痛みを敏感に察知する洞察力も大切です。
緩和ケア病棟で働く際に役立つ資格の取得方法

緩和ケア病棟に勤務するだけであれば、特別な資格は必要ありません。勤務先に緩和ケア病棟があり、配属指示が出されれば働くことが可能です。適正ありと見なされれば、新卒看護師が配属されることもあります。
しかし、緩和ケア病棟は専門性が高く、看護師にも高いスキルが求められる職場です。基本的には、一般病棟などである程度の経験を積んだ看護師にニーズがあります。
必須ではないものの、以下で紹介する資格を取ってスキルアップすればより患者さんに寄り添ったケアを行えるでしょう。
認定看護師
認定看護師は、日本看護協会から特定の看護分野において「熟練した看護技術と知識を有する」と認定された看護師のことです。実践・相談・指導の3つの役割を担います。
【受験条件】
- 日本の看護師免許を有する
- 実務研修が通算5年以上ある
【資格取得の流れ】
5年の実務経験 ※うち3年以上は認定看護分野の実務経験 | ||
↓ | ↓ | |
A課程認定看護師教育機関 ※2026年度まで | B課程認定看護師教育機関 | |
↓ | ↓ | |
認定看護師認定審査 ※A課程の修了者は2029年度まで |
||
↓ | ||
認定看護師認定証交付・登録 |
【カリキュラムの概要(B課程)】
共通科目 | 11科目 | 380時間 | |
---|---|---|---|
専門科目 | 認定看護専門科目 | 11科目 | 225時間 |
特定行為研修区分別科目 | 1科目 | 22時間 | |
演習・実習 | 総合演習 | 15時間 | 165時間 |
臨地実習 | 150時間 | ||
合計 | 792時間 |
※800時間に満たない場合は、特定行為研修区分別科目の追加を検討
認定看護師の資格は5年ごとの更新が必要です。認定看護師になると、より高度な知識とスキルをもとにした緩和ケアを行えるほか、看護師指導者研修会などで研修指導者として後進の教育に携われるメリットもあります。
(出典:公益社団法人 日本看護協会「認定看護師」)
終末期ケア専門士
終末期ケア専門士は、一般社団法人 日本終末期ケア協会(JTCA)が2020年に創設した資格です。緩和ケアの対象となった患者さんのなかでも、回復の見込みがない方や家族が間近に迫る死と向き合うためのサポートを提供します。
【受験条件】
受験資格基準 | 経験2年以上 | 経験3年以上 |
---|---|---|
該当資格名 |
医師 ※介護士と介護福祉士の実務経験が合算して3年以上あれば受験可 |
栄養士 ※実務者研修修了証のコピーの提出が必要です。 いつ受講したものであっても構いません。 |
【資格取得の流れ】
受験申込フォームより受験申込 |

送付された書類に必要事項を記入し、返送 |

審査委員会による受験資格該当審査 |

審査結果通知送付 |

試験会場の予約 |

受験・合格 |

認定登録手続き |
【カリキュラムの概要】
Ⅰ.概論
Ⅱ.終末期におけるチームケア
Ⅲ.日常生活を支えるケア
Ⅳ.身体症状とそのケア
Ⅴ.意思決定支援
Ⅵ.家族ケア
Ⅶ.スピリチュアルケア
Ⅷ.グリーフケア
Ⅸ.看取り期のケア
Ⅹ.終末期を取り巻く社会資源
Ⅺ.疾患別終末期ケア
(引用:日本終末期ケア協会「学習内容・資格取得までの流れ」)
終末期ケア専門士の資格は3年ごとの更新が必要です。終末期ケア専門士の資格取得後は、終末期に対する専門的な知識が身につくだけでなく、有資格者専用のアプリや協会・関連団体などが主催するイベントなどへ参加できます。また、「終末期ケア上級専門士」「JTCAアドバンスインストラクター」を目指すことも可能です。
(出典:日本終末期ケア協会「終末期ケア専門士」)
がん看護専門看護師
がん看護専門看護師は、緩和ケアのなかでも「がん」に重点を置いたケアを専門的に学び、高いスキルを身につけたスペシャリストです。実践・教育・相談・調整・研究・倫理調整の6つの役割を担います。
【受験条件】
- 日本の看護師・保健師・助産師の免許を有する
- 看護系大学院の修士課程を修了済み
- 実務研修が通算5年以上ある
【資格取得の流れ】
看護師・保健師・助産師の免許取得 |

看護系大学院修士課程修了 (日本看護系大学協議会が定める単位を取得) + 5年の実務経験 ※うち3年以上は専門看護分野の実務経験 |

認定審査(書類審査・筆記試験) |

専門看護師認定証交付・登録 |
【看護系大学院の必要単位】
- 専攻必須単位:24単位以上
- CNS共通科目:14単位以上
がん看護専門看護師の資格は5年ごとの更新が必要です。専門看護師になると、研修指導者として人材の育成に携われるほか、コーディネーター役や地域社会を含めた看護活動など、活躍の場が広がります。
(出典:公益社団法人 日本看護協会「専門看護師」)
(出典:厚生労働省「がん看護専門看護師・がん化学療法・がん放射線療法看護認定看護師の養成・就業状況について」)
メンタルケア心理士®
メンタルケア心理士®は、メンタルケア学術学会が認定する心理カウンセラーの民間資格です。
【受験条件】
- 誰でも可能
【資格取得の流れ】
メンタルケア心理士®講座受講申込 |

通信添削の課題(全5回)提出 |

修了認定テストに合格 |

受講修了証書の発行 |

こころ検定2級受験 |

メンタルケア心理士®資格登録の申請 |

メンタルケア心理士®資格取得 |
【カリキュラムの例】
- テキスト
- 精神解剖生理学基礎
- 精神医科学基礎
- カウンセリング基本技法
- 講義DVD
- ポイントグラフィックDVD
- 添削問題集・解答用紙
メンタルケア心理士®は合格後の更新がいりません。精神解剖生理学と精神医科学の基礎知識を学べ、文部科学省が後援するこころ検定®2級に対応しています。
(出典:ヒューマンアカデミー たのまな「メンタルケア心理士®講座」)
タクティール®ケア
タクティール®ケアは、スウェーデンで生まれたタッチケアの1つです。手足などに柔らかく触れながらコミュニケーションを図ることで、身体の痛みを和らげ気持ちを穏やかにする効果があります。
【受験条件】
- 誰でも可能
【タクティール®Ⅰ資格取得の流れ】
タクティール®Ⅰ講習受講申込 |

講習受講(2日間) |

記録をJSCIへ郵送 |

認定試験(筆記試験・実技試験) |

資格取得 |
【カリキュラムの例】
1日目 |
|
---|---|
2日目 |
|
タクティール®ケアの資格は5年ごとの更新が必要です。日常的なケアのなかで、薬を使わず痛みを和らげたい方の希望を叶えやすくなります。
(出典:JSCIスウェーデン福祉研究所「タクティール®ケアを学ぶ」)
(出典:社会医療法人 禎心会「タクティールケアⅠコース」)
まとめ
緩和ケアとは、がんなどの生命に係わる病気を患う患者さんやその家族に対するケアのことです。緩和ケア病棟で働くスタッフには、コミュニケーションスキル、疾患などに関する専門知識、洞察力が求められます。
緩和ケア病棟で働くにあたって特別な資格は必要ありませんが、仕事内容は専門性が高いため、就職・転職前に資格を取得しておくと安心です。具体的には、認定看護師や終末期ケア専門士、がん看護専門看護師を取得するとよいでしょう。ほかにも、メンタルケア心理士®やタクティール®ケアといった技術が身につく資格もおすすめです。
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※当記事は2023年1月時点の情報をもとに作成しています
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