視聴率12.9%で有終の美を飾った医療ドラマ「ザ・トラベルナース」を藤沢チヒロさんのマンガと考察でおさらい。
岡田将生演じるフリーランス看護師・那須田歩の成長と活躍ぶりから、「トラベルナース」という看護師の新たな働き方にも注目です。
ドラマ未見でも分かる、ザ・トラベルナースの魅力をおさらい
患者の名前と話数がリンクして物語が進む中、中井貴一演じる「“九”鬼 静」という名前から、第“9”話で静が患者になってしまうのでは……という筆者の予想を裏切り、全8回でフィナーレとなったドラマ「ザ・トラベルナース」。ちりばめられた伏線が見事に回収され、気持ちのいい大団円を迎えることができた。
【※以下、最終回のネタバレを含みます】
アメリカ帰りのNP(ナース・プラクティショナー。医師の指示で医療行為ができるナースのこと)である、フリーランス看護師の那須田歩(岡田将生)。
▶︎「ザ・トラベルナース」の見どころを第1話からマンガでチェック!
序盤では、医療の知識と高いプライドだけが目立ち、日本の病院に馴染めないのではないかと心配になったが、個性豊かな患者との出会いと別れを経て、「人を見て人を治す」ナースとして徐々に成長してきた。
相棒となった謎多きベテランナース・九鬼静(中井貴一)とはたびたび衝突しているが、同僚ナースたちから見ると歩と九鬼は「喧嘩するほど仲がいい」二人らしい。
天乃総合メディカルセンターでの三か月の雇用契約期間も終わりが見えてきた頃、事態は急変する――
実は、学生時代から歩を援助してきた「フローレンス財団」の理事長だった静。彼は心臓に爆弾を抱えていた。余命は半年とも三か月とも知れず、突然死の可能性もあるという。
歩は神崎(柳葉敏郎)に手術の直談判をするが、ゴッドハンドと称される彼にも、すでに手が施せないほどに病状は進んでいた。
「契約期間を満了するまでは、ナースの職務を全うする」と、患者にはいつも通りに接する静も、ついに仕事もままならないほどに症状が進んでしまう。そんな静を歩は献身的に看護した。
静にとって、天乃総合メディカルセンターで共に働く三か月は、歩を一人前のナースとして鍛え上げる最後の仕上げの期間だったのだろう。
そんな彼から絞り出された「君に看取ってほしい」という言葉。
信頼と親愛をこめた本心の吐露を受け止め、最期まで静に寄り添うことを決めた歩。
その時、二人のもとに朗報が飛び込んできた――!
***
ついにアメリカでの手術が叶うことになり、日本を発つことになった歩と静。
ナースハウスの面々からは、あらぬ誤解(カップル扱い)をうけつつ温かく送り出された。遠からず、絆を強めた二人が帰国し、また私たちの前に現れてくれるのではないかと、続編を期待している。
三か月の間に、相棒の歩のみならず、経営一辺倒の院長や冷徹な神崎医師の心を動かし、同僚ナースたちの労働環境などを含め、天乃総合メディカルセンター全体を「見て、治し」、救ってしまったスーパーナース・静。
本作はまた、全国各地の病院に短期雇用契約で勤務する看護師「トラベルナース」の存在を知らしめるドラマになった。
人手不足の地方や離島の病院に即戦力として迎えられ、自らのスキルを活かすフリーランス看護師のトラベルナースたち。休日は滞在地ならではの楽しみ方を満喫できるのも魅力のようだ。自分に合った土地、病院に出会えたときにはそこを本拠地として、地域に貢献することもできる。
多拠点生活を送る人が増えているなか、ナースの新たな働き方の選択肢として「トラベルナース」が本作を通して注目されているのではないだろうか。
全国各地に渡った看護のプロフェッショナルが今日も「人を見て人を治して」いるのだ。
文・イラスト:藤沢チヒロ、編集・藤田佳奈美(TAC企画)