• 2023年10月26日
  • 2023年11月1日

「錠剤つぶし」の実態に昭和大・倉田客員教授が警鐘~「薬剤師の積極介入を」

 

沢井製薬が50~70代の男女2000人を対象に9月28~29日に実施した調査で、服薬時に飲み込みにくさを感じる人の2割超が「錠剤を砕いて飲む」などの不適切な飲み方をしているとの調査結果が出たことを受け、昭和大薬学部客員教授の倉田なおみ氏は、最適な剤形を選択できるよう薬剤師が積極介入すべきと訴えました。

製剤に詳しい昭和大薬学部客員教授の倉田なおみ氏は10月25日、都内で講演し、服薬時に飲み込みにくさを感じる人の2割超が「錠剤を砕いて飲む」などの不適切な飲み方をしているとの調査結果が出たことを受け、錠剤嚥下障害のある患者がOD錠(口腔内崩壊錠)など最適な剤形を選択できるよう薬剤師が積極介入すべきと訴えた。

講演は、「錠剤嚥下障害」をテーマとした沢井製薬主催のメディアセミナーで行われた。

不適切な服薬方法の問題については、沢井製薬が50~70代の男女2000人を対象に9月28~29日に実施した調査で、「毎回の服薬時に飲み込みにくさを感じる人」の13.3%が錠剤を砕いて飲んでおり、「食事に混ぜる」(2.2%)、「薬剤をカプセルから出して飲んだ」(6.7%)などを合わせると不適切な飲み方をしている人は2割超に上るとの結果が出た。

倉田氏は、自らが研究責任者を務めた厚生労働科学研究の調査(2021年7月~2022年1月)でも、内服薬を服用している介護施設利用者の2割超が粉砕して服用している実態が明らかになったことを紹介。「錠剤を砕くと生命に関わる有害事象が起こることがある」として、「錠剤をつぶすという文化をなくす」「錠剤が飲めない場合はOD錠などを選択すべき」と訴えた。

■「OD錠製造の制限は患者のためにならない」

現在、医薬品の供給不足が社会問題化する中で「必要のないOD錠は整理すべき」との議論があることについて、倉田氏は記者の質問に答え、「患者本位で考えるべき。普通錠を2錠飲む場合と普通錠とOD錠を飲む場合とではOD錠が入っている方が飲みやすいというデータがあり、OD錠が増えれば増えるほど飲みやすくなる。私は全部の錠剤がOD錠でいいかなと思っている。OD錠の製造を制限するのは患者のためにはならない」と強調。

OD錠がない場合の対応については「細粒剤を飲める患者かもしれないし、とろみ剤などを使うと上手に飲める患者かもしれない。患者の嚥下能力に合わせてどの薬を選択するかは薬剤師の腕の見せ所」と述べ、介護施設などの現場に薬剤師が積極介入できる環境整備を求めた。

倉田氏とともに記者の質問に答えた沢井製薬の横田祥士研究開発本部長は、技術的な問題として「OD錠の開発が難しいものもある。すべてがOD錠にできるというものではない」と説明した。

中央社会保険医療協議会は10月27日、医療従事者の処遇改善をテーマに議論した。診療側は、医療従事者の処遇改善を実現するための原資として診療報酬の引き上げを要望。支払側は医療機関内の財源配分の工夫で処遇改善の原資を捻出するべきだとして、引き上げに強く反対した。

医療従事者のうち看護職員に関しては2022年10月に、賃金を月額平均で1万2000円程度引き上げることを目指して「看護職員処遇改善評価料」を新設。届出医療機関の賃金改善の実績額は平均1万1388円となっており、概ね目標が達成されたことが確認されている。しかし同加算は届出対象が救急医療で一定の実績がある医療機関に限られる、看護職員以外で処遇改善を行える職種に病院薬剤師が含まれていない―などの課題もあり、医療関係者からは対象医療機関や職種の拡大を求めている声が上がっている。

一方、医療と他産業を比較すると、コメディカル(医師・歯科医師・薬剤師・看護師を除く医療関係職種)の給与平均額は全産業平均を下回るのが現状。さらに医療関係職種の有効求人倍率は近年2~3倍程度で推移し、入職超過率は産業計を0.3ポイント下回るなど、人材の確保は極めて難しい状況にある。

同日の総会では厚労省が、「看護職員処遇改善評価料」の実績や他産業の賃上げ動向などを踏まえた医療機関等の職員の処遇改善のあり方を論点として提示した。

■「医療機関はコスト増を価格に転嫁できない」―診療側・長島委員が強調

診療側の長島公之委員(日本医師会常任理事)は、売上に相当する診療報酬が公定価格である医療機関は、一般企業のようにコストの上昇を価格に転嫁できない特性があることを繰り返し強調。「医療従事者の賃上げの確実な実施のためには診療報酬を引き上げ、賃上げの原資を確保する対応が必須だ」と主張した。これに対して支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は、「医療機関のマネジメントによって医療費の増加分を賃金が相対的に低い職種に充てる流れにしていくべきだ。安易に診療報酬を引き上げるべきではない」と反発した。

同日の総会には、診療報酬調査専門組織・入院・外来医療等の調査・評価分科会のとりまとめも報告され、今後、分科会の指摘事項を踏まえた議論を進めていく方向性が確認された。

「全部の錠剤がOD錠でもいい」と患者本位の製剤の大切さを訴える倉田客員教授


出典:Web医事新報