意識レベルとは? 4つのスケールやアセスメントの順番を解説
  • 2024年8月24日
  • 2024年8月22日

意識レベルとは? 4つのスケールやアセスメントの順番を解説

 

意識レベルの評価は、医療現場で患者さんの意識が清明かどうかを把握するために欠かせないプロセスです。JCS(Japan Coma Scale)、ECS(Emergency Coma Scale)、GCS(Glasgow Coma Scale)、Four Scoreの4つのスケールがあり、医療現場によって異なる指標が使われるケースも多くあります。特に一般的に日本国内で使われることが多い意識レベル評価のスケールはJCSであるため、看護師さんはアセスメント方法を覚えておきましょう。

この記事では意識レベルの4つのスケールの詳細や、JCSを使った意識レベルのアセスメント手順について解説します。

意識レベルとは

意識レベルとは、患者さんの意識状態を評価する方法です。脳疾患などが原因で患者さんの意識が清明であるかどうかを把握するために、医療や看護の現場で使われます。意識レベルを評価する方法にはJCS・ECS・GCS・Four Scoreの4つがあります。

JCS

JCS(Japan Coma Scale、ジャパン・コーマ・スケール)は日本で広く使われている方法で、以下のスケールが用いられます。

救急外来や集中治療室で日常的に使われているため、看護師の皆さんはきちんと把握しておく必要があります。

・JCSの評価スケール

レベル 説明
0 意識清明な状態
I 刺激しなくても覚醒している状態
1 だいたい意識清明だが、今ひとつはっきりしない
2 見当識障害がある(現在の日付・時刻や場所、周囲の人を正しく認識できない)
3 自分の名前、生年月日がいえない
II 刺激すると覚醒する状態(刺激をやめると眠り込む)
10 普通の呼びかけで容易に開眼する (何らかの理由で開眼できない方の場合、右手を握る・離す動作など合目的な運動ができ、言葉も出るが間違いが多い)
20 大きな声または体をゆすることにより開眼する (何らかの理由で開眼できない方の場合、手を握る・離すような簡単な命令に応じる)
30 痛み刺激を加えつつ呼びかけを繰り返すと辛うじて開眼する
III 刺激しても覚醒しない状態
100 痛み刺激に対し、払いのけるような動作をする
200 痛み刺激で少し手足を動かす、あるいは顔をしかめる
300 痛み刺激に反応しない
末尾にR 不穏状態にある
末尾にI 失禁している
末尾にA 自発性を喪失している
(出典:堺市「意識レベル(JCS:Japan Coma Scale)」

JCSは「覚醒しているかどうか」を軸とした評価です。自発的に覚醒しているか、刺激すれば覚醒するか、刺激しても覚醒しないかで判断します。正常値はゼロで、意識清明なレベルです。

短時間で判断できて分かりやすいため、深い医療知識のない人でも意識レベルの判断に活用できる指標です。ただし、一次性脳障害、特に脳血管障害や頭部外傷の重症度や緊急度、進行度を知る目的で作成された評価指標であるため、精神状態を評価するには適していません。

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ECS

ECS(Emergency Coma Scale、エマージェンシー・コーマ・スケール)は、JCSおよびGCSの問題点を改善する目的で開発された評価指標です。

・ECSの評価スケール

レベル 説明
I桁 覚醒している 自発的な開眼や発語、合目的動作を確認する
1 見当識あり
2 見当識または発語なし
II桁 覚醒できる 刺激による開眼・発語または従命をみる
10 呼びかけにより開眼や発語をする
20 痛み刺激により開眼や発語をする
III桁 覚醒しない 痛み刺激でも開眼や発語および従命がなく、運動反応のみがある
100L 痛みの部位に四肢を持っていく、払いのける
100W 引っ込める(脇を開けて)または顔をしかめる
200F 屈曲する(脇を閉めて)
200E 伸展する
300 動きがまったくない
※L:Localization(部位を同定できる)、W:Withdrawal(逃避行動がある)、F:Flexion(屈曲がある)、E:Extension(伸展がある)
(出典:J-STAGE「新しいスケール:Emergency Coma Scale の開発の経緯と有用性の検討について」

「自発的な開眼」「発語」「合目的動作」のいずれかが見られるかどうかで判断します。この場合の合目的動作とは、痛みを感じると払いのけようとするなど覚醒していると思われる動きをすることを意味します。

ECSの正常値は1で、見当識がある状態です。病院搬送前の救護や集中治療室など多くのシーンで使用でき、診断する人による評価のばらつきも少ないとされています。ただし、医療の現場で広く普及している状態とはいえません。

GCS

GCS(Glasgow Coma Scale、グラスゴー・コーマ・スケール)は世界で広く普及している評価指標です。日本でも脳疾患の患者さんに対して最初はJCSで判断し、その後GCSを使うことがよくあります。外傷性脳障害や蘇生後脳症などの予後推定にも有用です。

・GCSの評価スケール

E 開眼 説明
4 自発的に眼を開けている
3 呼びかけにより眼を開ける
2 痛みにより眼を開ける
1 眼を開けない
V 最良言語反応  
5 見当識障害がない
4 見当識障害があり、混乱しているが、数語以上の会話ができる
3 発語はできるが、不適切な単語しか話せない
2 発語はできるが理解できない音しか話せない
1 反応なし
M 最良運動反応  
6 命令に応じる
5 痛みの部位へ手が動く
4 痛みに正常な屈曲反応をする(脇が開くような動きがある)
3 痛みで異常な屈曲反応をする(肘・手関節・手指が屈曲し、脇が閉まるような動きがある)
2 痛みで伸展反応をする(肘を伸ばし体に沿って伸展する動きがある)
1 反応なし
(出典:中外医学社「救急白熱セミナー 頭部外傷実践マニュアル」

意識障害の状態を「開眼」「言語反応」「運動反応」の3つの側面から評価します。たとえば、「開眼」では自発的に目を開けていればE4(4点)、開眼しなければE1(1点)です。「言語反応」「運動反応」も同様に判断し、合計値で以下のように評価します。

  • 15点:正常値
  • 14点:軽症
  • 9~13点:中等症
  • 3~8点:重症

3側面の合計で評価するため、JCSに比べてやや複雑です。また、1つでも判断できない項目があれば評価できないという問題点があります。

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Four Score

GSCは意識障害の評価のほかに予後推定に用いられますが、気管挿管された患者さんの評価が正確にできません。そこで、GCSに代わる予後推定ツールとして、Four Score(フォア・スコア)が開発されました。

・Four Scoreの評価スケール

E 眼の反応 説明
4

眼を開けていて(または検者が開いて)追視できる
またはまばたきの指示に従える

3 眼を開けているが、追視がない
2 大声により眼を開ける
1 痛みにより眼を開ける
0 痛みによっても眼を開けない
M 運動反応  
4 親指を立てるか、グーまたはチョキができる
3 痛みの部位に四肢を持ってくる
2 痛みで屈曲反応をする
1 痛みで伸展反応をする
0 痛みに応じない、または全身のけいれん
B 脳幹反射  
4 瞳孔・角膜反射がともにある
3 一側の瞳孔が散大・固定している
2 瞳孔・角膜反射のどちらかがない
1 瞳孔・角膜反射がない
0 瞳孔・角膜・咳反射がすべてない
R 呼吸  
4 挿管されておらず、呼吸パターンは整っている
3 挿管されておらず、チェーンストークス呼吸がみられる
2 挿管されておらず、呼吸パターンは不整である
1 気管挿管がされており、人工呼吸器の設定換気回数を超える呼吸数である
0 気管挿管がされており、人工呼吸器の設定換気回数と同じ呼吸数、または無呼吸である
(出典:J-STAGE「徹底検証JRCガイドライン 脳神経蘇生」

「目の反応」「運動反応」「脳幹反射」「呼吸」の4つの側面から意識障害を判断する指標です。

たとえば「目の反応」であれば開眼しているか、指示にしたがって追視・まばたきすればE4(4点)、痛みを与えても開眼しない場合はE0(0点)です。ほかの各指標でも同じように判断し、合計で意識レベルを評価します。正常値は16です。

JCSを使って意識レベルをアセスメントするときの対応手順

JCSを使って意識レベルをアセスメントするときの対応手順

日本の医療現場で用いられている代表的な意識レベルの検査指標はJCSです。病院内だけでなく病院搬送前に実施する医療処置でも使われるので、看護師の皆さんはJCSを使って判断できるようになっておきましょう。

以下では、JCSを使って患者さんの意識レベルをアセスメントする際の手順を紹介します。流れをしっかり把握しましょう。

開眼しているか

最初に、患者さんが開眼しているかどうかを確認します。声をかけずに患者さんの様子を伺い、目を開けているかチェックしましょう。

目を開けていればJCSにおけるI桁の段階と判断できます。次に、I桁のうちのどの段階に該当するかを判断します。

【開眼がある場合】見当識はあるか

患者さんが目を開けている場合は、以下のような質問をして見当識があるかどうかを確かめます。

  • 今どこにいるか分かりますか
  • 今日は何月何日ですか
  • お名前を教えてください
  • 生年月日を教えてください

正しく答えられているかだけでなく、答えているときの反応もチェックします。内容が正しくても、ぼんやりしている、何を答えたかすぐに忘れているといった様子が見られたときは、JCSの0(意識清明である)にはあたりません。

回答と答えたときの反応によって、以下のように判断します。

0:意識清明である

1:今ひとつはっきりしない

2:日時や場所、人が分からない

3:自分の名前や生年月日がいえない

【開眼がない場合】刺激すると覚醒するか

患者さんが通常の状態で目を開けていない場合は、JCSの指標でII桁以降の段階です。刺激を与えて覚醒するかを確かめましょう。以下の順に刺激を強くし、どの段階で覚醒するかで評価します。

1.名前を呼ぶなど、声かけをする。

2.1で覚醒しないときは肩を叩くなど軽い刺激を与えながら、声かけを繰り返す

3.爪をぎゅっとつまむ、胸骨を軽く押すなど、徐々に刺激を強くする

覚醒したらそれ以上の刺激は与えません。刺激のどの段階で覚醒したかで以下のように評価します。

10:普通の声かけで目を開ける

20:大きな声をかける、身体を揺さぶるなどの刺激で開眼する

30:痛みを加え、呼びかけることで開眼する

【開眼がない場合】痛みにどのように反応するか

声かけや痛み刺激を与えても目を開けないときは、JCSでIII桁の段階です。痛み刺激を加えたときにどのように反応するかで判断します。なお、痛み刺激を与える方法は以下が望ましいでしょう。

  • 握りこぶしをつくり中指の第二関節で胸骨を強く圧迫する
  • 親指で眼窩上孔を強く圧迫する
  • ペンの柄などで左右の手足の爪を強く圧迫する

痛み刺激が原因で起きた反応に応じ、以下のように評価します。

  • 握りこぶしをつくり中指の第二関節で胸骨を強く圧迫する
  • 親指で眼窩上孔を強く圧迫する
  • ペンの柄などで左右の手足の爪を強く圧迫する

なお、異常肢位が見られるときは200と判断します。スコアだけでは読み取れないため、異常肢位であることを補足として書き込んでおきましょう。

まとめ

意識レベルの評価は、医療現場によって異なるスケールが使われるケースが多くあります。看護師さんは、よく使われることが多いJCS・ECS・GCS・Four Scoreの4つのスケールを使った評価方法を知り、患者さんのアセスメントに役立てましょう。特にJCSは日本国内ではよく使われるので、まず開眼しているか確かめ、開眼があれば声をかける・なければ刺激する、刺激しても開眼しなければ痛み刺激を与える、という手順を覚えておくと役立ちます。

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※当記事は2024年6月時点の情報をもとに作成しています

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